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Interview

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挑戦する人を応援、ぜひイノベーションを掲載号:2012年6月

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石井純二 北洋銀行頭取

 北洋銀行が4月から新体制となった。副頭取だった石井純二氏が頭取に昇格。北海道のリーディングバンクの舵取りを任された同氏に、北海道経済について語ってもらった。

キラッと光るもの、優位性のあるものを応援

――現在の北海道経済の課題をどう見ていますか?
石井 デフレが長期間続いていますので、「景気は循環する」といった従来の論理を期待していてはダメです。構造転換論的な経済改革が必要です。
――北洋銀行の取り組みを教えてください。
石井 私どもでは、大きく分けて3つのことに取り組もうと思っています。1つは北海道にアドバンテージのある「食」と「観光」を積極的にお手伝いをさせていただくこと。特に昨年、北海道はフード特区の指定を受けました。これは非常に追い風になると思います。北海道の食は安心・安全で世界でも通じるブランドですし。ただ従来の第1次産業に付加価値を加えるために、食品加工の質を高めることが必要です。そして中国や新興国などに販路を広げていくということですね。私どもはいろんな大学と提携したり、北海道立総合研究機構や、中小企業支援センターとも密接な連携を結んでいます。また当行は中国に大連と上海に2つの拠点を持ってます。それらを生かしながら、橋渡し役をしっかりやっていきたい。
――観光についてはどうでしょう?
石井 従来の北海道観光はどちらかというと団体客誘致型でした。これを長期滞在型に変えていかなければなりません。それからリピーターが重要になってくると思います。この2つのことをやっていくには、「自然」と「おいしい食べ物」といった視点に加え、医療との連携が必要だと思っています。特に北海道には医療に関する大学が全部で4つあります。自然、食べ物、そして健康、これらがうまくコラボレーションできるようになると滞在型観光は飛躍的に増えていくのではないでしょうか。
――2つめの取り組みは?
石井 それは、“ものづくり産業”の支援です。北海道は特に第2次産業が弱く、中でも製造業だけを見ると、産業全体に占めるウエートは全国の都道府県平均18%に対し北海道は8%しかありません。
しかし、私どもでは札幌で「ものづくりテクノフェア」というものを毎年開いております。北海道ではこういう取り組みをしているところはあまりないのですが、今年で5回目になります。そこには150社の道内企業が出展し、数多くのバイヤーあるいは研究者が来場してくれます。昨年は1日で3700人もの入場者がありました。でもこれがなかなかうまくいかないのは、販路が弱い、マネジメントが弱い、あるいは資本力がなくて製造が拡張できないといった課題を抱えているからです。 ただ実際には本州に出て行ったり、海外に進出した企業があります。ものづくりに長けたキラッと光る企業があるんですね。私どもではこれらのサクセスストーリーをモデル化して、それをベースに経営サポートしていきたいと思っています。
それから3つめの取り組みとして注目しているのは、北海道に根づくフロンティア精神です。新しく事業を興す人、起業家の支援をしっかりしていきたい。実はこの10年間に、北海道の企業は約8000社減っています。人口もものすごく減っていますが、事業者数も減っているんですね。北海道にはいろんな研究機関がありますから、そこから事業を興す、独立する人がいます。そういうフロンティア精神に満ちあふれた人をしっかり応援していく。小さいかもしれないですけど、いずれ大きくなればと思っています。

銀行として全国初の取り組みもスタート

――具体的な取り組みをはじめていると聞きました。
石井  「イノベーションファンド」という商品を今回出しました。私は1月に頭取就任が内定していたのですが、これからは新しいファンドを出していこうと思い、これが初めての仕事となりました。具体的には議決権を持たない優先株を利用し、資金支援をしていきます。銀行で議決権を持たない株を持つことは非常に珍しいことです。全国の銀行でも恐らく初めてだと思いますが、私どもとしては「経営に役立ちたい」というスタンスです。起業家にも使っていただきたいし、それから先ほど話しましたものづくり産業の企業にも使っていただきたいと思っております。所轄部署に聞いてみますと、現在、20社程相談が来ているそうです。
――全国初とは画期的な取り組みですね?
石井 北海道に閉塞感がある中で、殻を破って元気を出してもらえばという思いです。ちなみに20社の内訳はさまざまな業態です。これを見て、北海道はまだまだがんばっている企業があるとうれしくなりましたよ。北海道と私たちは一心同体ですから。
――販路拡大という面でも、やはり中国は外せませんか?
石井 もちろんものにもよりますが、中国の大消費地は目は離せません。それと最近は東南アジア、特にタイ、ベトナム、インドネシアなどが有望ではないでしょうか。実際、北海道の企業でもそちらに目を向ける企業が非常に多くなっています。私どもも昨年、大連銀行とも連携しました。お得意さま同士のご紹介や、決済方法についての連携を模索しています。
また販路拡大という点では、私どもでは東京での物産展を、銀行としては珍しいくらい手広くやっています。一昨年からは鹿児島銀行と提携し、物産展を同時開催しております。そういった中で切磋琢磨して、大変盛り上がっています。昨年からは帯広信金にも入っていただきました。
また前回は観光も加わりました。観光の商談会は珍しいのですが、実際に1500人くらいが北海道に来るツアーの成約に至りました。
――M&Aにも積極的に取り組んでいらっしゃいますね?
石井 本部にM&Aの専門部署をつくっております。いちばん旬なのは事業承継です。ちょうど今、北海道の企業は3代目、世代交代の時期にきているんですね。非常にニーズが高まってきております。株価の資産価格を算定するとか、場合によっては相続させるとか、税務の問題が非常にあります。かなり専門性の高い知識が必要になりますし、こうした問題はなかなか相談する相手がいない。しかも秘密裏に進めないといけない。そういう面で実績が上がってきています。今のところ十数社成功しております。
i3――最後に道内企業にエールをお願いします。
石井 私は営業推進統括本部に属していましたから、お客さまのところに行くことが多かったのですが、みなさん本当にがんばっていますね。中でもぜひ取り組んでいただきたいのがイノベーションです。イノベーションというのは非常に広い意味がありまして、難しいことではありません。1つ見直せば、そこからアイデアが生まれてきますし、効率化も見えるかもしれません。そういうふうにイノベーションを進めてほしいですね。
――起業家に若い力は育ってきていますか?
石井 私どもでは次世代経営セミナーというのをやっています。道内の中堅・中小企業で、経営者になったばかりの若い経営者に対して講演会をしたり、企業の視察に行ったり、あらゆるテーマで議論をしたりしています。この間は一緒に大連に行きました。そういう面では、北海道のポテンシャルはまだまだありますね。挑戦してますよ。挑戦する人は、やっぱり応援します。キラッと光る企業はやがて育っていくと思いますし、そうした企業が現状を打破していきます。その役割は銀行が担っていますので、しっかりリンクして、その役割を果たしていきたいですね。

=ききて/柴田宣正=