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Interview

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念願のW杯初出場、
平昌への飛躍誓う
掲載号:2017年4月

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伊藤有希 土屋ホーム所属・女子スキージャンプ選手

今シーズン大きな成長を遂げた女性ジャンパーがいる。土屋ホームに所属する伊藤有希選手だ。1月に札幌で開かれたW杯で念願だった初優勝を果たした。伊藤選手に好調の理由、そして来年の平昌オリンピックへの思いを聞いた。

ジャンプに視野を広げて取り組む

伊藤有希選手は1994年5月10日、上川管内下川町生まれ。父親がコーチを務める下川ジャンプ少年団に4歳で入団。2011年、コンチネンタルカップレディース蔵王大会で、国際大会初勝利。13年4月に土屋ホームに入社し、14年のソチオリンピックでは個人7位入賞を果たした。

17年1月におこなわれた札幌大会でW杯初優勝。次の蔵王大会2戦で連勝を飾る。2月24日に開催された世界選手権で、2大会連続となる2位に入った。今シーズンは髙梨沙羅選手に次ぐ総合2位につけている。

◇    ◇

――1月14日のノルディックスキー女子ジャンプのW杯札幌大会で、初優勝を果たしました。その瞬間、どんな心境でしたか。

伊藤 ジャンプを始めた頃から世界一になることが夢でした。内容、結果ともに満足できる試合はめったにありません。札幌の試合もミスはありましたが、土屋ホームに入社して4年目で、世界一になることができ、うれしかったです。

――チームの監督は葛西紀明選手ですね。

伊藤 入社した1年目に葛西監督がソチオリンピックでメダルを獲得しました。夏の合宿以外で一緒にトレーニングすることはできませんが、多くのことを教えていただいています。

葛西監督の指導方法は言葉ではなく、競技、トレーニングへの取り組み方を“姿勢”で教えてくれます。そういう指導を受けられるのは、とても恵まれていると思います。W杯初優勝を報告したとき、葛西監督に「おめでとう」と言っていただきました。実は私のサインも葛西監督が考えてくれたんですよ(笑)

――次の蔵王大会2試合も連勝しました。初優勝後、試合に臨む心構えで、変わった面はありましたか。

伊藤 私は試合の結果が良くても悪くても、切り替えて次の試合に臨んでいます。勝ったからといって特別変わった部分はありませんが、結果的に日本で3勝することができました。少しでも日本で応援してくださっている方々に、恩返しができたかなと思います。

――昨シーズンと比べて、技術面、精神面で成長した部分はあるのですか。

伊藤 技術面では、まだまだ自信を持って飛んでいるとは言えません。
ただ、メンタル面では、今シーズン前に視野を広げて競技に取り組むことを、川本謙総監督(土屋ホーム副会長)にアドバイスいただきました。
いままで視野が狭いという意識はなかったのですが、ほかの選手はどういう練習、飛び方をしているのかを、いままで以上に見るようにしました。自分自身の現状を把握するこができ、試合にも結びついています。

――自分のジャンプで見てほしいところを教えてください。

伊藤 見てほしいところですか…。まだそこまでの自信はありません。逆に私はテークオフのタイミングが遅れやすく、ミスはほぼそこなので。私のレベルだと誰が見てもわかるくらい、遅れています。逆に見てほしくないところです(笑)

――テレマークのうまさは定評があります。

伊藤 中学校、高校時代は飛距離で勝っていても、テレマークが入らず負けたりしていました。飛型点で何度も負けることがあって、すごく悔しかったんです。
そんな思いはしたくないと、テレマークを入れる練習に力を入れてきました。

近くに髙梨選手がいて恵まれている

――故郷の下川町はジャンプが盛んです。始めたきっかけは。

伊藤 下川町は田舎で、遊ぶ場所は公園くらいしかありません(笑)。冬はスキー場に行っていました。その小さなスキー場の隣にジャンプ台があったんです。気持ちよさそうにお兄ちゃんたちが飛んでいて、その姿に憧れ、ジャンプを始めました。初の海外試合は小学6年生の冬です。コンチネンタルカップに出場しました。

――女子チームコーチを務める山田いずみさんは、女子ジャンプ界のパイオニアです。

伊藤 高校1年生の年に女子のW杯が初めて開催されました。私がこうやってジャンプが続けられるのも、いずみさんをはじめとして、女子の先輩たちが築いてきてくれたおけげです。本当に感謝しています。

――伊藤選手にとって、髙梨沙羅選手はどんな存在ですか。

伊藤 まだまだライバルと言えるレベルではありません。髙梨選手はW杯で50勝以上していますし、私はたったの3勝です。比べるレベルにも達していないと思います。

常に世界のトップを走り続けているのは髙梨選手です。そういう選手と同じチームでトレーニングをできることは、私を含めて本当に日本の女子選手は恵まれています。

他国の選手はW杯に出ないと髙梨選手、世界との壁が見えないですから。常日頃、見えるところに世界のトップがいます。そういう面ではいまの自分の実力が常にわかる状態なんです。

――来年2月には韓国で平昌オリンピックが開催されます。

伊藤 私としては一つひとつ目の前の試合に、全力で取り組むことに集中したいです。それを続けることがオリンピックにもつながると考えています。まずはオリンピックの代表入りを目指して、今シーズンを戦い抜き、夏もトレーニングしていきたい。平昌のジャンプ台はクセがなく、苦手な感覚はないので楽しみにしています。

――いまはシーズン中ですが、オフはどのように過ごしていますか。

伊藤 海外の試合会場はどこも山奥なので(笑)。近くのスーパーに行って買い物をしたり、街を散策することで気分転換を図っています。日常生活の中で、オン、オフをつけることが大切かもしれません。

――食べることが好きと聞いていますが……

伊藤 そうですね。好き嫌いはないので、何でも食べます。私は体重が減りやすいのでキープしないといけません。ほかの選手より食べるほうかもしれません。

パンも大好きなので、ヨーロッパにいても日本食が恋しくなることはないですね。でも、やっぱりお寿司が好きなので、札幌に戻ってきたらいつも食べに行っています。

今年から弟(伊藤将充選手)も、土屋ホームに入社させていただき、一緒にトレーニングしています。学生の頃よりは、話すようにはなりました。一緒に頑張っていきたいですね。

=ききて/前田圭祐=