「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

年商1000億円突破が私の使命だ掲載号:2013年2月

photo

出戸 信成 マックスバリュ北海道社長

 道内スーパー業界に40代社長が誕生した。11月に就任したマックスバリュ北海道の出戸信成氏は、同社の前身・札幌フードセンターの創業家でもある。激戦のマーケットにどう挑むのか、若き指揮官に意気込みを聞いた。

前社長の方針に沿って進める

10月29日、マックスバリュ北海道社長の山尾啓一氏の死去を受け、登板したのが出戸信成氏である。
出戸氏は1965年11月1日、札幌市生まれ。94年に同社に入社し、総合企画室長兼監査室長、常務兼人事本部長、開発本部長などを歴任した。
同社の前身、札幌フードセンターの創業一族。2代目社長・一成氏の長男である。2001年6月に就任した反田悦夫氏以来、イオン出身のトップが続いていたが、久しぶりに地元出身者が舵を取る形だ。
◇    ◇
――山尾前社長が急逝され、社長に就任されました。
出戸 山尾前社長は亡くなる前日まで精力的に仕事をされ、あまりに突然のことでした。12月5日に札幌で「お別れの会」をおこない、すぐに年末商戦という中、山尾前社長の方針に沿って、今期をしっかり着地させていきたい。同時に来期に向けて3カ年の中期計画の策定に着手したところです。
――お別れの会で出戸さんはどのような話を。
出戸 2部形式でおこなったのですが、従業員に向けては山尾前社長への感謝の気持ちと、再出発を切りましょうと訴えました。お取引先さまに対しては、11月12日に社長に就任したばかりなので、ご挨拶を含め、話をさせていただきました。
山尾前社長はコミュニケーションを大切にされ、積極的に店に足を運び、現場の声を方針に反映させていました。リーマンショック後、小売業界が厳しい環境にある中、ディスカウント業態の展開を含め、さまざまな新たな取り組みにリーダーシップを発揮されました。その結果、当社の業績は上向いています。
私も山尾前社長の現場主義を受け継ぎ、お取引先さま、従業員の声を吸い上げ、経営課題にあたっていきたい。
――率直に聞きますが、前身の札幌フードセンターの創業一族として、いずれは社長に、という気持ちはありましたか。
出戸 いいえ、まったくありませんでした。札幌フードセンターがマックスバリュ北海道になってからは、一人の役員として強い会社、いい会社にしていきたいという思いで、目の前の仕事に取り組んできました。
子どものころは「父の後を継ぐべきだ」と幼いなりに思っていましたよ。店の中で生活していたようなもので、父の働く姿を間近で見て育ちましたから。
――店の中で生活していたというと…
出戸 札幌オリンピックの前まであった、当時の円山店は、住居も兼ねていました。同じ建物に家と売り場、事務所が共存している格好で、トイレも従業員と共同でした。
売り場の間を走り回っていましたね。店は幼い私にとっては格好の遊び場でした。よく値札にいたずら書きをしたものですよ。両親が仕入れや店の運営で忙しく、手が離せないときは、従業員に銭湯に連れて行ってもらったりもしました。いい思い出です。
――94年に札幌フードセンターに入社されるまでは、何をされていたのですか。
出戸 大学を卒業後、大手食品メーカーに就職して約6年間、働きました。
――なぜ食品メーカーに。
出戸 将来、スーパー業界に身を置くことを考えたとき、やはり食品関係がいいと思ったからです。父から、その大手食品メーカーのセールスマンがとてもユニークで、企業としても魅力があるという話も聞いていました。

全身全霊で経営に打ち込んでいく

――主にどのような仕事をされていたのですか。
出戸 メーカー入社後は、業務用マヨネーズの製造現場に配属されました。企業秘密があるので製造過程は詳しくは言えませんが、納入先に合わせていろいろな種類があるんですよ。10人ぐらいの職場で正社員は私だけ。責任者としてやりがいのある仕事でしたね。
その後、大阪で営業マンをやりました。担当のお得意先はジャスコ(現イオン)とマイカル(2011年3月からイオン傘下に。その後、イオンリテールと合併)でした。
当社がイオングループ入りする前の話です。当時、店舗のチーフクラスだった人たちが、今はイオンのグループ会社で社長や役員を務めています。不思議な縁ですよね。
――社長就任に際して一成相談役から、なにかアドバイスは。
出戸 あらためて父から特別な話があったというわけではありませんが、多くの諸先輩から助言をいただきました。吸収できることは貪欲に自分のものにし、生かしていきたい。また、友人や同世代の経営者から受けた激励の言葉は、とてもうれしかった。
――47歳ということですが、日本のスーパー業界では若い社長だと思います。同業他社にはベテランの、御社にとっては手強い経営者も少なくない。特に意識していることはありますか。
出戸 この業界では40代の経営者は少ないかもしれませんね。人として幅や経験など、積み重ねていかなければ得られないものもあるでしょうが、とにかく全身全霊で経営に向かい合っていきます。
同業他社には世代的には、私の親と言ってもおかしくはない大先輩の経営者もいらっしゃいます。ただ、ことさら同業他社を意識するというより、地域密着を徹底して自分たちのできることを、着実に実行していくという姿勢です。

順調な新業態の小型版も展開中

――各店舗に足を運んでいるそうですね。
出戸 北は名寄、東は釧路、南は函館まで、道内に73店あります。12月に入ってから天候が荒れた日が続いたこともあり、時間はかかりましたが、12月中旬には全店舗を回り終えました。
――現場の雰囲気はどうでしたか。
出戸 この10年ぐらい、売り場と直接かかわるポストから離れていました。データだけでなく、各店舗を自分の目で見て現場の声に耳を傾ける中で、競争関係が大きく変わっていったことをあらためて感じました。特に、ここ数年の顕著な変化としては、さまざまな小売業が積極的に食品を取り扱っている点でしょう。
――ちょっと規模の大きいドラッグストアには、当たり前のように食品を置いていますよね。
出戸 そうですね。最近では、生鮮食品に力を入れているコンビニエンスストアもあります。小売の各業種が入り交じり、激しい競争を繰り広げているのが現状です。インターネットを活用して食品を購入する消費者もいらっしゃいます。
――食品スーパーとして、激しい競争に、どう対応していきますか。
出戸 商品自体は共通しているわけですから、どのようなニーズがあり、どういう形で消費者は購入しているのか、きめ細やかに分析し、対応していく必要があります。
そもそも人口減で今後、競争はいっそう激しくなることが予想されます。現場も経営陣も消費者の変化に素早く対応し、自らを進化させていかなければなりません。需要が変化して売れなくなったら、その背景には何があるのかを読み取り、こうすれば顧客の満足度を高められるのではないか、そういう試行錯誤を繰り返していくことです。
――対応策の1つが、数年前から始めた「ザ・ビッグ」だと思うのですが、その特徴は。
出戸 主力の「マックスバリュ」の平均的店舗と比べると、取り扱い品目を4割程度絞り込み、管理コストを抑えて低価格を実現し、訴求しています。
「ザ・ビッグ」はもともとマックスバリュ西日本が最初に手がけ、本道でも2010年から展開しています。延べ床面積2000平方メートルクラスが中心ですが、1000平方メートル規模の「ザ・ビッグ エクスプレス」もあり、この小型版は、当社が先べんをつけました。札幌市豊平区の平岸店を始め、数店舗あります。
また、「マックスバリュ」の小型版もあります。こちらは現在は1店舗(中の島店)だけですが、条件が合う案件があれば今後、増やしていきます。
――「ザ・ビッグ」の適正商圏はどのぐらいですか。
出戸 一概には言えません。都市部だと車で10分ぐらいの距離が想定される商圏ですが、地方だともっと遠くからも、お客さまが集まります。
――新業態の手応えは。
出戸 現在「ザ・ビッグ」は16店舗になり、売り上げも順調に伸びています。ただ、新たに取り組み始めた業態ですから、当初考えていた通りの部分もあれば、修正が必要な面もあります。そこについては早急に手直しをしていく。
――総店舗数におけるディスカウントストアの比率を高めていく考えはあるのですか。
出戸 構成比に重きを置いて出店やリニューアルを検討してはいません。ですから「ザ・ビッグ」を、これぐらいの割合にするなどとは考えていません。出店候補地の立地条件、競争環境を十分に見極め、「マックスバリュ」がいいのか「ザ・ビッグ」がいいのか、あるいは小型の「エクスプレス」がいいのかを決定していきます。地域のお客さまに支持され、信頼される店、商品を提供し続けることが最大の目的ですから。

来期も積極的に出店を続ける

――今期の状況についてうかがいたい。
出戸 12月7日に第3四半期決算を発表しました。
営業収益(売上高)は619億8300万円、経常利益は2億6100万円、純利益は8400万円となりました。ほぼ予定通りの実績です。また、今期から決算期を2月に変更しており、13カ月の変則ですが、通期予想は当初通り、営業収益880億円です。
――出店計画は。
出戸 数字については控えさせていただきますが、来期以降も積極的に、複数店ペースで出していきたい。すでに公になっている計画としては、札幌市西区の八軒地区へ出店します。
――重点エリアはありますか。
出戸 基本的には道央圏を中心に、いい案件があれば鋭意、検討していくというスタンスです。
――今後、消費増税の問題が焦点になると思いますが。
出戸 業界全体にとって大きなテーマです。前の増税のときはスーパー業界で「据え置き宣言」などのキャンペーンを打ち出す企業もあり、競争はいっそう激しくなりました。どこかが始めると、追随せざるを得ないですからね。
昔と比較すると、消費デフレが進む中、スーパー各社は全般的に利益率を下げています。高いところで3%台、低いところで1%台でしょうか。どう対応するかは当社だけでなく、業界全体にとって非常に悩ましい問題です。
――中期計画について教えていただきたい。どのような方向性になるのですか。
出戸 具体的な内容についてはまだ言えませんが、今の業績伸長の流れを確実なものにし、さらに成長の勢いを加速させていきたい。
振り返ると、2000年に札幌フードセンターと北海道ジャスコが合併し、マックスバリュ北海道となりました。その後、店舗の営業譲渡なども含めると、王子サービスセンター、ジョイ、菱栄商事の「りょうゆう」、ショップスと一緒になりました。この6社出身の従業員が、より強い会社になっていくために団結しています。
マックスバリュ北海道の誕生時、道内有数のリージョナルチェーンになることを掲げ、年商1000億円を目標としました。その当初目標の突破が、私の使命だと考えています。

=ききて/野口晋一=