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Interview

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平昌で4年前のリベンジ掲載号:2018年1月

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高梨沙羅 女子スキージャンプ選手

ソチ五輪の屈辱から4年。リベンジの舞台、平昌オリンピックが目前に迫っている。名実ともに女子ジャンプ界の〝女王〟として君臨する髙梨沙羅選手を直撃。金メダルへの並々ならぬ思いを語った。

平昌五輪へ向け最終調整の段階

高梨沙羅は1996年10月8日、北海道上川町生まれ。A型。身長152センチ。ソチ五輪では4位。昨季は2年連続4度目のW杯個人総合優勝を飾る。

   ◇    ◇

――11月3日~5日におこなわれた札幌3連戦で2勝をあげました。

髙梨 この3連戦はアイストラックという冬使用のレールで、ランディングバーンはサマージャンプ仕様というハイブリットな試合でした。冬本番に向けていいシミュレーションができたと思います。3連戦の経験することはあまりないので、自分のコントロールの仕方とかコンディションの維持など、いい勉強をさせてもらったと思います。

風が不安定でしたが、自分で立て直すことができました。精神的に削られていくようなタフな状況の中で、いかに自分のやるべきことに向かって準備していくのか考えられた。予行練習というか、シーズン本番に向けてつなげられた試合だったかなと思います。

――いよいよ五輪シーズンを迎えますが、どんな調整をおこなってきましたか。

髙梨 課題であるテイクオフの精度を高めることを意識しながらトレーニングしてきました。アプローチ動作中にいち早くベストな姿勢をとれるように練習してきました。理想のポジションを保つことも大切なのですが、レールの状態に合わせてスキーを滑らせることも大事です。

――天候や風など状況がめまぐるしく変わると感覚の調整が難しくなりますよね。

髙梨 そうですね。ジャンプの映像をビデオで見比べるとそんなに違いはないのですが、自分の中ではスキーの滑りだったり、飛び出し時にかかる重力が変わってくることがあります。その違和感が何かわからないときは、あまり深く考えず、自分で自分を陥れないようにモチベーションを高く持って飛んでいます。

悔しさをバネに目標は金メダル

――平昌五輪への抱負を教えてください。

髙梨 金メダルが1番の目標です。そのためにずっとトレーニングしてきましたし、ソチでの悔しい思いをバネに、当時の自分を超えたいと思って、この4年間やってきました。大舞台で目標をこの手でつかみ取れるように、できるかぎりのことをやって、自分を信じて飛びたいです。いままで応援してくださった皆さんにも楽しんでもらえるようなジャンプをしたいなと思います。

――ソチ五輪からの4年間で成長した点はなんですか。

髙梨 以前はずっと自身のジャンプのことや感覚的なところを重視してトレーニングしていましたが、それだけではダメなんだとソチオリンピックを経験して思いました。もっと心に余裕をもって、まわりを見渡すことが必要だと思いましたし、このままじゃいけないと感じました。

集中するとまわりが見えなくなってしまうクセがあるので、そこをなんとか直したかったんです。オン・オフの切り替えはできるようになってきたと思います(笑)。

そしてジャンプ台を攻略するにあたって自分の感覚だけを重視して、ジャンプ台の特徴を知ろうとしていなかったんです。それぞれのジャンプ台の傾斜角度が異なり、空中に飛び出すまでのレールの長さも違うんです。試合会場を自分のものにするためにどうしたらいいかと考えるようになりました。

――平昌のジャンプ台の印象はいかがですか。

髙梨 〝クセがない〟ことが特徴のジャンプ台だと思いました。なだらかというわけでもないですし、Rも急ではないと感じました。逆にそこが難しいかもしれないです。苦手でも得意でもないというか、つかみ所がないという印象です。

――そのジャンプ台に合わせるために意識するポイントはなんですか。

髙梨 自分の頭の中でそのジャンプ台のイメージを繰り返し膨らますことを考えています。昨季はオリンピックプレシーズンということで平昌でワールドカップが開催されました。そのときの感覚はいまでもはっきりと残っています。

ソチで経験、五輪は〝別物〟

――ソチはプレッシャーなどからいろいろなところで「ズレが生じていた」と話していました。

髙梨 当時はオリンピックを1シーズン中の1つの試合と思っていて、やるべきことは一緒ですし「ワールドカップもオリンピックも同じように1つの試合として目指していきたい」と言っていたと思います。それでもオリンピックを経験して〝まったくの別物〟だなと思いました。独特の雰囲気に飲み込まれていましたし、心の準備も足りていなかったと思います。今度は技術的にも精神的にも本番にピークを持っていけるようにしたいと思っています。みなさんの応援してくださる声が原動力となっています。

――伊藤有希選手の台頭など国内での競争も激しくなっています。

髙梨 競技をする以上は競う形になってしまいますが、私の中ではスキージャンプは個人競技ですし、最終的には自分との戦いだと思っています。ライバルとの戦いより、自分自身に勝てたかどうかで順位が変わってくるというシビアな世界。

近年で女子ジャンプのレベルが急激にあがっています。激しい勝負ができるようになることで競技レベルが男子に近づき、女子ジャンプをたくさんの人に見てもらえるようになりました。そういう世界が実現されてきたのですごい楽しみです。

二人三脚で頂点へ、山田コーチの存在

――髙梨選手の活躍の裏には山田いずみコーチの存在があります。

髙梨 私は小さい頃から山田いずみさんに憧れを抱いていました。こういうかっこいい女性になりたいと思ってジャンプをしています。いずみさんが近くにいて競技ができる環境が本当にありがたいですし、幸せです。通常のコーチでは言ってもらえないアドバイスをしてくれたり、精神的な部分でも助けてもらっています。細かい感覚的な部分でも意見をぶつけられる。本当に私のことを思って考えてくださっているので、悩みを言葉にせずとも察してくれます。

――いまは高梨選手に憧れて子どもたちがジャンプをしています。

髙梨 すごくありがたいことですね。女子ジャンプを見たことがきっかけで競技を始めてくれた子どもたちもたくさんいます。ジャンプは非現実的な競技で、気軽に楽しめるものではないですが、競技人口が増えて私もうれしいです。

――髙梨選手のように親が元選手という環境で育たないとチャレンジしづらい競技なのでしょうか。

髙梨 そうですね。私も生まれた町(上川管内上川町)のなかでスキージャンプがメジャーでなければやっていなかった可能性があるので、やっぱり特殊な競技ですよね。

――北欧諸国をはじめ海外でのジャンプ人気はすごいですよね。理由はなんだと思いますか。

髙梨 特に男子ジャンプの注目度はすごいですよね。ノルウェーでは国技になっていたり、競技が盛んな地域では国をあげて競技を応援しているからだと思います。

――競技前は詰めかけたお客さんのすぐ近くでウォーミングアップをしますが、どのような心境ですか。

髙梨 他のスポーツと比べると割と近いですよね(笑)

集中しているので見に来てくれた方から応援の声をかけられてもアップ中は対応できないんです。

「申し訳ありません」と思っているのですが、どうしても体が反応ができないんです。実はそこが一番の気がかりなんです……。

張り詰めたような顔で冷たい雰囲気を出していると思うんですけど、普段はなるべくまわりの人と交流ができるように意識しています。

――一年中世界を転戦していますが、リフレッシュ方法はなんですか。

髙梨 読書が好きなので、本を片手に喫茶店やカフェに出かけることもあります。

――どんなジャンルが好みですか。

髙梨 小説ですね。2、3冊を海外に持っていき、それをチームでまわし読みすることが多いです。あと写真を撮ることも好きです。誕生日プレゼントで「チェキ」みたいなポラロイドカメラをいただいたので、平昌にはそれを持っていこうと思ってます。

――今シーズン終了後にやりたいことはありますか。

髙梨 長い休みをもらって車で日本一周してみたいなと思っています。ドライブが好きということもあるのですが、日本に住んでいながら知らないところもたくさんありますし、そこを自分の目でしっかりと見たいです。

=ききて/佐藤裕樹=