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Interview

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安心社会実現のため
野党は大きな“塊”に
掲載号:2019年12月

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杉山元 連合北海道新会長

間もなく結成30周年の連合北海道。非正規雇用の加入を中心に組織数は持ち直してきているが、政治闘争では結果が出ていない。2020年代の日本で労働者のための社会実現に向けて何ができるのか。新会長の杉山元氏を直撃した。

中小労働者や非正雇用の処遇改善

杉山元氏は1961年渡島管内長万部町生まれ。長万部高校卒業後の80年に日本電信電話公社(現NTT)入社。組合歴は92年全電通中央圏支部執行委員を振り出しに、2005年情報労連北海道協議会事務局長、13年NTT労働組合北海道総支部執行委員長と情報労連北海道協議会議長、連合北海道副会長を兼務。15年連合北海道事務局長を経て、10月29日の連合北海道定期大会で新会長に就任した。以下、杉山氏への一問一答。

   ◇    ◇

――NTT職員時代の思い出は。

杉山 札幌市内の西電話局に勤務していた20代半ば当時、電電公社が民営化してNTTになって間もなくだったことから、若手社員で「エアーズロック」というチームを結成しました。地域のみなさんと社員が触れ合う参加型イベントの企画をはじめ、金魚すくいや野菜の販売などを通じ、NTTを身近に感じてもらおうと考えたもの。NTTとしては全国でも例のない試みでしたね。

業務としては経理や人事、労務系の部署を経験しました。NTT北海道支社に異動した際は、民営化でできたグループ会社への出向人事や出向前の研修を手がけていました。出向には組合との協議も必要です。そのころから組合の役割や必要性などを認識し、気づいたら、会社側から本格的に組合活動へ携わるようになり、現在に至っています(笑)

――連合北海道の会員数は。

杉山 約25万人です。これまでの傾向としては行政改革や少子化、団塊世代の退職者増などから組合員が減少してきました。一方、パートタイムや派遣労働などの非正規雇用が増加傾向にあり、今年度は正規・非正規合わせて4270人の組織拡大を図りました。

――新会長としてまず取りかかりたい課題は。

杉山 春闘や働き方改革などを通じて、中小企業の労働者はじめ非正規雇用の処遇改善を目指していくことが一丁目一番地です。

とりわけ企業数の99・8%を占める中小企業労働者の賃金を底上げすることが、日本経済の屋台骨である個人消費の拡大につながり、また非正規労働の雇用の安定と処遇改善が、企業の存続と競争力強化には欠かせないと考えているからです。

もう1つは、道民・勤労者のみなさんが安心、安全に暮らせるような政策や制度をどうつくり上げ、実現していくかという取り組みについては、春闘の前段、道内に13ある地域協議会と連携し、各地域の自治体や経済団体、学校などと意見交換をおこない、さまざまな地域の課題を吸い上げ政策、制度づくりに生かしています。JR北海道の事業範囲の見直し問題や幌延町の深地層研究センター、地域の医療・介護の確保や経済の活性化など、さまざまな課題がありますから、毎年8月に中央省庁や北海道に対し要請行動をおこない、政策の実現に向けて取り組みを進めているところです。

同一労働同一賃金は人手確保にも道

――安倍政権が掲げる経済政策「アベノミクス」についてどう評価しますか。

杉山 経済の好循環を目指す、としていますが、現状は一部の富裕層にしか恩恵がありません。したがって、われわれは春闘を通じて労働者の賃金を上げ、GDPの6割を占める個人消費に回していく。個人消費が増えれば企業も収益が上がり、春闘でさらにいい回答を得る「経済の自律的成長」を目指し、この間の春闘に取り組んでいます。

――賃上げが正のスパイラルを導く。

杉山 今年の春闘でも「底上げ」「底支え」「格差是正」を掲げました。中小企業の組合員、労働者、非正規問わず月給や時給を改善する。そのためには大手企業追従、準拠からの転換が必要です。なぜなら中小企業は大手の要求額や妥結を見てから動くことが多いわけです。でも、そうではなくて、それぞれの労使が主体的に交渉をおこなっていくことが必要です。

もう1つ主張してきたことは、1つのサプライチェーン全体で生み出した付加価値を、その中にある企業で適正に配分しようということです。生産資材、製造、卸、小売など、過程はいろいろあって、それら全体でサプライチェーンが成り立っています。その「適正な配分」には、「適正な取引慣行」が重要です。また、10月から消費税が2%アップしましたが、その中で中小や下請け企業が、納入の際にそのまま転嫁できているのかを危惧しています。その意味でも「適正な取引慣行」に向け、今後も公正取引委員会や北海道経済産業局などに働きかける取り組みをしていきます。

――働き方改革関連法案の成立で、大企業は来年度、中小企業は再来年度から同一労働同一賃金の徹底が求められることになりました。

杉山 まずはシンポジウムや学習会などを通じ、労使ともに学ぶ必要があると考えています。たとえば、正規職員とパートタイム労働者で待遇差が存在する場合に、どんな待遇差が不合理なもので、どんな待遇差がそうではないのか。これについては原則となる考え方と具体例を示したガイドラインがありますから、そうした情報を発信していく。その上で、困っている労働者に対しては窓口(連合なんでも労働相談ダイヤル)での相談を通じ、組合の結成支援をはじめとする手助けをしていきます。

こうした取り組みを経て賃金を労働の価値に見合った水準にしていくことは、企業からすれば人材の確保や社員のモチベーション向上にもつながるわけで、人手不足に悩む企業に対する貢献にもつながるものです。

この30年で最大の成果は大同団結

――自治労北海道本部がおこなった意識調査で、29歳以下の組合員の3割が自民党を支持した、という結果が話題になりました。

杉山 個別の組合のことについて直接にはわかりませんが、一般的に組合活動は、たとえば選挙の年にどの議員を支援するかを、集会や広報誌などでやればやるほど効果の出るものです。

政治活動がなぜ必要なのか。組合員一人ひとりが、なぜ自分たちの生活や仕事に政治活動が必要なのか。そのメリットや必要性を、組合員自身がどのくらい認識できているかが重要だと思います。

いま、連合が掲げているビジョンは「働くことを軸とする安心社会の実現を目指す」というものです。各組合や地域から吸い上げた意見をもとに、安心社会の実現に必要な政策や制度を立て、それを実現する。政策や制度は実際には組合が実現するのではなく、政治の世界で決めること。だから連合として推薦する議員を増やしていくのが大事だということを、今の若い組合員にも理解してもらわなければならないと思います。

――09年に連合が支援する民主党による政権交代は、その活動が身を結んだものでしょう。

杉山 来年2月に連合は結成30年を迎えます。この30年で最大の成果は、1990年2月1日、全北海道労働組合協議会と北海道中立労働組合連絡会議、北海道地方総同盟の3つの労働団体が大同団結し、連合北海道が誕生したことです。そして30年の間に政権交代を始め、さまざまなことがありましたが、組織としては結成当時から強固なものになってきたと考えますし、それがわれわれ最大の成果であり財産です。

民主党が2012年に下野した後、民進党などを経て、今は立憲民主党と国民民主党と2つの政党を支援しています。でも連合の目指す政策や制度、ビジョンは、支援する党が2つに割れていても変わることはありません。

与党批判の受け皿として大きな塊に

――7月の参院選では、国民民主党公認候補が落選し、自民党の2議席獲得を許しました。連合のスタンスは変わらなくとも、選挙においては党分裂の影響は否めないのでは。

杉山 民主党の下野後、支持率が右肩下がりの中、支持率の低い政党がさらに2つに分かれたことで「本当にこの人たちは自公政権に代わって政権を取る気があるのか、まかせていいのか」と思われていたのではないかと思います。

今回の参院選では消費税増税や金融庁の報告書に端を発した年金問題、そして憲法改正が争点となりました。消費税増税だけをとってみても、反対する人が世論調査などで相当数いたにもかかわらず、立憲や国民の候補に票が回ったのかといえば、そうなっていません。現政権への批判票の受け皿になれなかった。それが数字に現れていたのではないでしょうか。このままだと近々にも噂される次期衆院選は厳しい戦いを強いられると思います。

ただ、今回の臨時国会前に、立憲、国民などの野党会派が衆参両院で共同会派を結成したことで、国会での政策論争や連携などから“おっ、野党も頑張ってるな”と少しでもその流れが変わってくれたらと考えています。

現在の臨時国会、そして来年の通常国会に向けて、共同会派として政策を浸透させ、与党批判票の受け皿になっていかなくてはいけない。もちろんその先には、大きな“塊”になってもらう必要があるというのが、連合本部、そしてわれわれの認識です。

――連合北海道としては野党合流などの大きな塊をつくるために、どう働きかけますか。

杉山 野党共闘や合流といったことはあくまで政党間で話し合うべき事柄です。そこは政党が主体的にやってもらうべきで、われわれはその応援団という位置づけです。でも、われわれの思いとしては、1つとなって頑張っていってほしい。大きな塊になる必要があることは間違いありません。

=ききて/清水大輔=