「情報を先取り、タブーに挑戦」を編集方針とし、生活者・企業経営者に
最新かつ有益な情報価値をご提供する、北海道の地域政治・経済誌

ロゴ

トップページ > インタビュー

Interview

このエントリーをはてなブックマークに追加

安全・安心なバスで地域と観光の活性化に貢献掲載号:2014年12月

photo

平尾一彌 北海道バス協会会長

 運送事業者の最大の使命は、事故のない乗客の輸送だ。北海道バス協会は、安全確保に取り組む優良な貸切バス事業者に〝お墨付き〟を与える取り組みを推進している。同協会の平尾一彌会長に認定制度の中身、業界の現状などを聞いた。

地方自治体と一緒に地域の足を確保

――2012年に北海道バス協会の会長に就任されました。今年6月から2期目に入りました。
平尾 会長に就いたとき、公益社団法人の改革の時期と重なりました。
北海道バス協会も13年4月から「一般社団法人」に移行しています。古き良き体制を尊重しながら、改めて道バス協会の存在意義、役割を考えました。
私は新たなキャッチフレーズとして「存在感のあるバス協会、会員、社会に役立つバス協会」を打ち出しました。
道バス協会は全道に7つの地区ブロックがあります。それぞれの地域が抱える問題点や事情も異なります。現在、その解決策を図るため、私は各地域に出向き、地元事業者との交流を深めています。これが必要とされる道バス協会に向けた第一歩につながると思っています。
――今年は北海道でバスが走り始めて100周年という節目の年にあたるそうですね。
平尾 記録に残るものとして、北海道に初めてバスが登場したのは、1914年(大正3年)6月です。
根室で馬車運輸業を営んでいた大津滝三郎という人が、中古のアメリカ・フォード社製の幌型の車両(8人乗り)を2両購入し、根室から厚岸まで運行させました。
当時のバスは、庶民にとって高根の花であり、あこがれの高級車だったようです。その後、バスは道内各地の地域の足になりました。こうした歴史のあるバス事業に携わっていることに重い責任を感じます。

厳しさを増す乗合バス事業

――乗合バス事業の現状を教えてください。
平尾 北海道の乗合バスの輸送人員は、1969年の6億人台をピークに、年々減少の一途をたどっています。12年は約1億8500万人なので、ピーク時の3割以下にまで落ち込んでいるのが現状です。モータリゼーションの普及、地方の過疎化に伴う人口減少が、厳しい状況に陥っている主な要因です。
収支状況を分析すると、協会加盟の乗合バス事業者39社のうち、34社が乗合部門で赤字経営を余儀なくされています。近年の燃料価格の高騰も加わり、バス事業の経営をより圧迫しています。
すでにバス事業者の経営合理化の努力は限界に達しています。道路特定財源が一般財源化されました。国には業界をあげて、本来は見直されるべき軽油引取税の当面の税率(旧暫定税率)について、速やかな撤廃を要望していきます。
――昨年11月、「交通政策基本法」が策定されました。これにより、バス事業が地域交通に果たす重要性が明確に示されました。
平尾 現在、この法律に基づく交通政策基本計画策定が、国により進められています。今年5月には、地域のまちづくりと連携した「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律の一部を改正する法律」が、国会で可決成立しました。
バス事業者が地域路線を維持、確保するためには、道や市町村などの地方自治体の果たす役割も大きいと考えます。
先日、北海道町村会のみなさん方と懇談の場を設けました。今後も密接な連携を図っていきます。乗合バス輸送の現状を理解していただいた上で、地域の足をどのように確保していくかを議論していきたい。

価格競争に歯止め、新運賃・料金制度

――貸切バス事業については。
平尾 2000年に貸切バスの規制緩和がおこなわれました。国が安全と環境の規制強化を前提に、貸切バス事業の経済規制の緩和をした中で、新規事業者が一気に増加しました。それにより激しい価格競争が起き、運賃単価がどんどん下がっていきました。
貸切バスの事業者は、道内に約260社あります。そのうち、当協会の会員は107社にとどまっています。バス協会に入るメリットをしっかり打ち出して、会員を増やしていかなければいけません。
――今年3月、国は貸切バスの新運賃・料金制度を示しました。
平尾 新運賃制度は、安全と労働環境改善コストを反映した「時間・キロ併用制運賃」です。これにより、観光バスの運賃・料金はアップする傾向にあり、改善傾向にあります。
バス協会では主要な取引先に対し、新運賃制度への協力要請をおこなってきました。しかし、一部の観光業界関係者からは、この制度が道内観光客の減少の一因になりかねないという声が出ています。
北海道運輸局などの行政に指導もお願いしながら、この度の安全確保のためという改定趣旨の理解を深めていく必要があります。
――安全対策の1つとして「貸切バス事業者安全性評価認定制度」に取り組まれていますね。
平尾 12年に群馬県の関越自動車道で、居眠り運転による貸切バスの死亡事故が発生しました。乗客7人が死亡するという大変痛ましい事故により、貸切バスの安全確保や法令順守の問題が表面化しました。
また、昨年には高速道路で運転者の健康に起因する事故も発生しています。
バス事業者は、お客さまを「安全・安心」に目的地までお送りすることが何よりも大切であり、最優先課題です。
関越道の事故後、国から示された「貸切バスの安全・安心回復プラン」を踏まえ、協会員が一丸となり安全向上対策に取り組んでいます。その1つが「貸切バス事業者安全性評価認定制度」になります。
――どのような仕組みになっていますか。
平尾 貸切バスは観光バスとしてのサービスのほか、学校の修学旅行などの課外授業、企業の送迎など、さまざまなニーズで利用されています。
しかし、利用者や旅行会社にとっては、個々のバス事業者が安全性確保の取り組みを適切におこなっているのか、判断することが難しい状況です。そのため、安全性について十分に認識されない状況のまま、バス会社を選択しているケースも少なくありません。
この制度は、日本バス協会が11年度から運用を開始しています。貸切バス事業者からの申請に基づき、安全性や安全の確保に向けた取り組み状況について評価認定を実施します。
認定を受けた優良事業者は、国土交通省並びに日本バス協会のホームページで公表します。
あわせて、バスの車体には認定事業者の証しである「セーフティーバス」のシンボルマークのステッカーを貼ることができます。
マーク内には星印があります。初年度は1つ、2年に1度の審査をクリアすると増えていきます。最短4年で最高ランクの三ツ星となります。
また、事業者にとってもホームページや従業員の名刺などに認証マークを表示できるなど、広く安全性をPRすることもできます。
すでに一部の地方自治体や学校は、安全性評価認定制度を取得していることを入札条件に加えています。セーフティーバスの導入により、より安全な貸切バスを提供でき、業界のさらなる発展につながると心から願っています。
――道内のセーフティーバスの台数は。
平尾 14年9月時点で、55社(1101両)が取得しています。そのうち、バス協会員は50社(1046両)になり、増加傾向にあります。バス事業者の関心も高まっています。

道新幹線の2次交通の役割を担う

――道バス協会は今年10月から、セーフティーバス加入を後押しするコンサルティング事業を始めました。
平尾 バス事業者から依頼があれば、協会職員が営業所を訪問します。安全管理に関する点検などを評価し、セーフティーバスの認定取得をサポートします。これはスタートしてまもないですが、会員事業者のレベルアップを図るため、自主的な取り組みとして推進していきます。
――16年3月には北海道新幹線の開業が予定されています。道外や海外から多くの観光客が訪れるかもしれません。
平尾 私が会長に就任したとき、函館地区のバス協会会員から「道南だけではなく、道内全体で新幹線を盛り上げよう」という話がありました。今年9月には、函館市で新幹線とバスとの関連についての「バス利用促進セミナー」を開催しました。活発な議論が繰り広げられ、有意義なセミナーになったと思います。
現在、われわれ協会役員や職員は「つながる!ひろがる!北海道新幹線」という文字を入れた名刺を配って、業界の垣根を跳び越えて応援しています。
道新幹線の開業は、本道観光が飛躍的な発展をとげられる絶好のチャンスとなるでしょう。広大な北海道には観光地が点在しています。バスには2次交通としての十分な役割が見込まれます。新幹線開業までに、その期待に応えられるような体制を整えていきたい。
――最後に今後の抱負をお願いします。
平尾 北海道のバスは、道民生活とともに1世紀を超える歴史を歩んできました。地域の生活基盤を支えるだけではなく、観光産業の一翼を担う輸送機関でもあり、その責任を感じています。バス事業は必ずしも順風満帆な時期ばかりではありませんが、これは北海道がたどってきた道のりと同様です。
バス事業を取り巻く環境は、人口減少社会を迎えて新たな転換期にあります。そうした状況でも、人々や社会とともに、これからもバスは生活に欠かせぬ地域の足として、走り続けていくと思っています。本道バス事業の新たな発展を図るため、存在感のある協会を目指し、協会員の理解のもと、会長として職責をまっとうしていきます。
――本日はお忙しいところありがとうございました。

=ききて/前田圭祐=