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Interview

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女性の力を生かし新たな〝楽しさ〟をつくる掲載号:2013年2月

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寺田 和正 サマンサタバサジャパンリミテッド社長

 女性の力が生かされている企業は元気がいい。若い女性を中心に圧倒的な人気を誇るバッグブランド「サマンサタバサ」は、社員の95%が女性だ。出産や育児で、やむを得ず職場を離れなければならない女性たちに、本当に必要な環境整備とは何か。寺田和正社長に聞いた。

女性を支える社会的インフラが貧弱

――〝ダボス会議〟ともいわれる世界経済フォーラムの「男女格差指数」によれば、日本の男女平等度は135カ国中101番 目だそうです。大きな要因は経済分野での女性の地位。役員に占める女性の割合はわずか1%、管理職も10%強にしか過ぎないといわれています。現在、こち らの従業員数は。
寺田 1300人くらいです。うち95%は女性です。
――それは創立当初から。
寺田 そうですね。男10人に対し女性数百人という感じです。バッグにしろジュエリーにしろ、当社は女性向け商品の小売ですから、店頭での対応はやはり女性にやってもらっています。当然、女性の数は多くなります。
――現在の店舗数は。
寺田 約290店です。
――新入社員も女性ばかりですか。
寺田 2012年度も150人くらい新入社員が入りました。男性の採用はゼロの年もありますが、今回は1人、男性が本社に入っています。
――女性ばかりで、やりづらいということは。
寺田 私は、ともに仕事をしていく上で、女性の能力は非常に高いと考えています。少子高齢化が進行し、団塊世代の大量退職で日本の労働人口はどんどん減少しています。そんないまだからこそ、より能力の高い女性にしっかり働いてもらいたい。女性がきちんと働ける場がないと、この国の発展はないと思います。
5年くらい前だと、われわれの業界は、正社員雇用という形態はあまり多くありませんでした。当社は1994年の設立当初から正社員、準社員といった雇用形態をとっています。準社員というのは正社員同様、会社の福利厚生は全部入っていて、1年間働けば正社員になれるというシステムです。時代とともに雇用に対するニーズも変わってきていて、いまは正社員にこだわるというよりも、結婚後の働き方を気にされている女性が多いと感じます。やはり女性の場合、出産、子育てがあります。長く働いてもらうため、より細かく対応していく必要があると思っています。
――女性役員は。
寺田 上席執行役員が6人いますが、うち2人は女性です。
――女性役員は増やしていきたい。
i2寺田 そこは自然体です。一人ひとりと向き合って、ふさわしい人が女性であったらそれでいいですし、男性も同様です。一人ひとりの能力とか可能性を信じた人事をやりたい。そう考えたときに女性に多くそういう人材がいれば、結果として数は増えていきます。
――女性社員のモチベーションは上がっているのではないですか。
寺田 販売員はすべて女性社員です。小さい店だと3?4人、大きな店だと20人くらいの数になります。店長クラスになれば部下を管理する役割。モチベーション高く働いている人は多いと思います。実際、入社2、3年でも、能力のある女性には店長をやってもらっています。もちろん、大きな店というわけにはいきません。20人の店舗を責任者としてやっていくのは、なかなか大変です。管理職として悩むこともたくさんあると思います。でも、だからこそやりがいを感じて頑張ってくれています。
――日本で女性の登用が進まないのは、なぜだと思われますか。
寺田 やはり結婚や出産が一番の理由ではないでしょうか。日本の場合、そうした女性を支える社会的インフラがあまりにも貧弱です。それは国の対策もそうですが、企業の側も含めてです。少なくとも保育所などのインフラが整えば、女性の活躍の場はもっと広がると思います。
当社も、男性も女性も同じステージに上がるためにはインフラの整備が必須ということで、本社が入居する同じビルの中に保育所をつくっています。

起業から20年、もう一度原点に戻る

――寺田さんの中では、まだまだ社内インフラは足りていないと。
寺田 足りていないですよ。ものの価値観もまた時代とともに変わっていきます。その価値観に寄り添っていないといい会社にならないでしょう。販売をやっている社員でも連続休暇で1週間ほしいという人もいるわけです。でも実際問題、みんなが1週間続けて休みを取るというのはなかなか難しい。でもそれが求められているとするならば、そういったことをできる体制に近づける努力をするべきだと思います。
――こちらは出産や育児で長期間職場を離れても、復帰に支障はないのですか。
寺田 働き方を選べるようになっています。普通に復帰もできますし、週何日の勤務というようなシフトも選べるようにしています。ここは意識的に変えてきました。そうしないと変わらない。もっともっと変えていかなければならないと思っています。
――女性ばかりの職場で、とくに気をつけていることはありますか。
寺田 あまり気にしたことがないです。結構、当社の女性社員は懐が深く、みんな僕のことを理解してくれているようです(笑)。
――先般、新千歳空港にも出店されましたが、道内展開は。
寺田 大丸札幌店に3店舗。札幌ステラプレイスに1店舗。札幌パルコに3店舗。丸井今井札幌店に1店舗。それに新千歳空港に2店舗。計10店舗です。
――サマンサタバサには、若い女性から大人の女性まで、さらには男性ものからトラベルグッズ、ゴルフウエアなど、さまざまなブランドがありますが、道内店舗のブランドは。
寺田 バッグと小物が主体ですが、ほかにアパレル3ブランド、ジュエリー1ブランドが入っています。
――北海道の売れ行きはどうですか。
寺田 順調です。11月下旬に北海道にうかがいました。実はいま、僕自身が各地に赴き、全社員と面談をやっています。
――それは毎年ですか。
寺田 いえ、久々です。10年くらい前まではやっていたのですが、それを今回復活させました。
――なぜ。
寺田 会社をつくって20年たちました。時代は常に変化しています。もう一度、原点に戻って全店舗を回ってみようということです。
――アジアを中心に海外にも展開していますが、そちらのほうにも。
寺田 もちろん回ります。2010年秋に台湾に出店後、香港、韓国、北京、シンガポール、上海に計21店舗出しています。12月22日には上海に3店舗目がオープンしました。
――アメリカへの進出はもっと早かったですね。
寺田 06年11月、ニューヨークのマディソンアヴェニューに路面店を出しました。でもアメリカは、まだこの1店舗のみです。
――間があいていますね。
寺田 その間、リーマンショックや中国がGDP世界2位になったりとか、いろいろなことがありました。その中での動きですから。
――アメリカも増やす。
寺田 将来的には増やしたいと思っています。世界ということになると、アメリカもヨーロッパもそうでしょうね。ただ、いまどこが注目されているかというと、やはりアジアです。
――なかなかヨーロッパは出られないですか。
寺田 オファーはいただいているんですけど、われわれの能力がそこまで追いついていない。追いつけば出しますよ。パリとかロンドンとか。でも、時間はかかるでしょうね。時期はまだ考えていません。
――しかし、アジアは急速に伸ばしました。
寺田 認知はされていて、オファーもあるし、売り上げも取れています。やはり価格帯もそうですが、素材の好みなど日本と違うところがあります。もっとマーケティングをしっかりやって、そのあたりをもう一歩も二歩も踏み込んで勉強していきます。
――価格帯は。
寺田 アジアのほうが日本よりちょっと高い。
――13年は48歳の年男ですね。
寺田 14年に消費税が上がります。それに向け、国内もさまざまな改革をしなければいけない。13年は消費税が上がる前の最後の1年。ここに勝負をかけて、本当の意味でのブランド価値を創造する1年になると思います。
自分の中で「サマンサタバサというブランドは、本当にお客さまの期待に応えられているのか」という思いを常に持っています。売れているとか、売れていないということよりは、期待に応えられているのかという思いのほうが強い。
――顧客の期待は何だと思っているのですか。
寺田 〝楽しさ〟だと思います。ディズニーランドは、来園者の期待に応えられている感じがあるじゃないですか。あそこにいくと親子の絆が深まるとか、楽しい思い 出がつくれるとか。当社の商品も消費材とは違うので、そこに感動とか楽しさがなければ、期待に応えていることにならないと思っています。
――寺田さんのイメージする〝世界ブランド〟とは。
寺田 海外で現地の人が持ってくれるということでしょうか。僕らが海外旅行にいって、どこかのストリートを歩いているとき、現地の人が当社のバッグを普通に持っている。それが世界ブランドなのではないでしょうか。ですから、売り上げがいくらというのではなく、現地の人が愛用してくれていること。それがブランドとしての認知になるのだと思います。

冠つけた女子プロゴルフ大会を主催

――スポーツブランドにも力を入れている。
寺田 ゴルフですね。
――ご自身は。
寺田 やります。
――子どものころから経営者になると心に決めて、そのためにはゴルフも必要だと中学生のころから始めているそうですね。
寺田 そうですけど、本気でやっていたわけではないので(笑)。あまり上手くはありません。
――12年は冠をつけた女子プロの大会を初めて主催されました。
寺田 まさにゴルフウエアのブランドを立ち上げましたので、その認知を広めるためにも重要な大会でした。ブランドの本格的な展開は13年の春からで、まさにこれから。しっかりやっていきたいですね。
――今回の大会は。
寺田 茨城県のイーグルポイントゴルフクラブです。
――今後、北海道でやるということは。
寺田 LPGA(日本女子プロゴルフ協会)的には、会場となるゴルフ場をどんどん回したいようですので、可能性はあると思います。

=ききて/鈴木正紀=