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Interview

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外国人客を増やすなら
〝道民はもっと海外へ〟
掲載号:2015年8月

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観光座談会 

昨年からスタートした「北海道ドリームゲームショー」は、アジア各国の参加者が道内各地でクイズに挑戦。その模様をアジアで放映するという試みだ。その仕掛け人である小磯修二北海道大学公共政策大学院特任教授の司会により、樋泉実HTB社長、笹本潤一JTB北海道社長、塚見孝成北洋銀行常務執行役員地域産業支援部長の4人に、外国人観光客のさらなる誘致について語ってもらった。

アジアの若者と道民がSNSで交流

小磯 「北海道ドリームゲームショー」について、みなさんはさまざまな立場から参画されましたが、それぞれどう評価されますか。
樋泉 私がとくに意義があったと思ったのは、各国の若者と、道内各地の人たちとの間で、顔と顔が見える関係ができたということ。今はSNSがありますから、彼らが帰った後も、道内の人たちやスタッフとの交流が、それを介して始まっています。その交流に、北海道に興味を持った各国の人たちがさらに参加して、どんどん拡散しています。私自身も彼らとフェイスブックで交流しながら、それを目の当たりにしていますが、今回の試みはそのきっかけとなったと思います。
小磯

小磯 SNSについては、日本と今回の5カ国との大きな違いは、その普及率。たとえば台湾では、フェイスブックの利用率は世界一といわれています。今回の取り組みを通じて、新しい形のプロモーションについての重要度をより一層理解してもらい、より大きな輪にしていくこと。それがこれからの課題だと思いますし、今後もそういう方向性を目指していくことが必要ではと思います。
塚見 海外の若者がSNSを通じて北海道の魅力を拡散することで、インバウンドのすそ野が広がっていきます。学生が社会人になって結婚して、と、どんどん末広がりになっていくのではないでしょうか。
笹本 いままで、これだけ本格的に映像を使ったプロモーションというのは、なかなか無かったと思います。自治体の方々が地域別に、各国に出向いて映像やパンフレットでPRする、というのが主でしたから。映像が放映されると、その国のたくさんの人たちへ、一度にアプローチできます。これも非常に有意義なことだと思います。
小磯 映像を使って、積極的に企画提案していく、インバウンド戦略として取り組んだことの意義は大変大きいと思います。映像というのは、ほかの媒体に比べても地域の魅力や面白さを本当に力強く伝えられますから。これまで、映像で大きな観光客誘致の効果があったケースというのは、道内へ撮影で訪れた国内外の映画やテレビ番組が主でした。今回は積極的にこちらから映像発信を仕掛けたわけです。
笹本 今後は、どのようなネットワークを築いてどう広げていくか、ということが大きな課題です。どうしたら外国人来道客を増やし、北海道の地力を拡大させるか。今年、来年とこの試みの認知度を高めていけば、さらに魅力あるものになると考えています。

台湾人客は4度北海道を訪れる

小磯 数年前から、政府は外国人観光客年間2000万人を目標にしています。高橋はるみ知事も、外国人客来道300万人を掲げています。その実現に向けては課題も少なからずあるように思いますが、みなさんはどうお考えでしょうか。
塚見 私たちは金融機関ですから、そこから観光振興にどう寄与できるか、という課題を常に持っています。現状、外国人客の入り込みは道央圏が多いです。それを道南や日胆、そして道北、道東に広域化して300万人にまで増やしていかなければなりません。
私たちが考えていることとしては、地域資源の発掘ができないかということ。たとえば、北海道新幹線の開業をにらんで、JTB北海道さんと道南や日胆エリアでのモニターツアーを実施しました。そうした試みから地域に光を当てて資源を掘り起こし、観光化していく取り組みが重要ではないかと思います。
笹本 300万人を目指すと考えた時に、やはり一番のネックは物理的な問題。新千歳空港を始めとする空港のキャパシティやホテル、バスは不足しています。ただ、インフラの整備は短期間で簡単にとはいきません。塚見さんからお話が出たように、観光の広域化、分散化をしていくことが必要です。航空便であれば、新千歳以外の空港へ、いかにチャーター便や定期便をもってくるか。もう1つは、季節ごとに偏りがでますので、それをどう分散化するか。この2点がまず私たちの課題ですし、できることがある分野だと思います。
塚見塚見 私たちの事例で言えば、北海道新幹線の開業に合わせて、北海道産の「どさんこ」種の馬を生産されている方々と、体験型の観光牧場をやりたいという計画があり、ファンド資金を提供することを決定しました。それと最近、6次産業化の実例として、余市や仁木にブドウ生産から醸造までおこなうワイナリーが増えています。そこと近隣のニセコとを結んで、食、ワインと観光を組み合わせる。新たな地域の資源を発掘、観光化して、広域で連携する。そうした取り組みをしていくことが重要ではないかと思っています。
小磯 みなさんおっしゃるように、鉄道やバスなどの2次交通は大切です。ホテルなどの新規投資は難しく、需要が時期や場所によって偏在している状況をいかに分散化するかが大変重要です。
とくに道央圏の宿泊状況は、時期によってキャパシティの半分以上が外国人客の一方、道北や道東はまだまだ少ないです。いつどこに訪れても「北海道に来て良かった」という満足感を得られるように、きっちり取り組んでいくことが大事だと思います。
樋泉樋泉 それと今後は、2回目以降のリピート客をどう増やし、満足させるかですよね。台湾からは40万人以上が来道していますが、彼らの中では、北海道は4度訪れないと行ったことにならないといいます。最初は冬に雪を見て、次は夏、そして秋と。そうした認識が定着しているというのは、とても大事なことだと思います。
観光地だけでなく、道民の普通の暮らしや、特定の場所にしかないもの、日常生活みたいなものの魅力を発信していくことも必要です。おいしい食事やきれいな景色は世界中にある、と各国のメディアの方々にはよく言われます。それよりもっと日本や北海道の普通の暮らしを伝えてほしいと。場合によっては、私たちにとっては何の変哲もないことが、アジアの人にとっては非常に新鮮だということもありますから。おいしい食事にプラスアルファできるような人や文化、暮らしぶり。そういう再発見をしていくことが、これから必要です。
笹本 団体旅行から「FIT」つまり個人旅行化してきた時に、安全にわかりやすく道内を観光できるようにするためにはどうしたらいいか。これから来るであろうその波について、どう体制を整えるかも考えなくてはならないです。
小磯 もう1つ重要なのは、特にFITに対して、彼らが理解できる、わかりやすい情報がいかに北海道から発信されているかです。今はインターネットを通じて道内の各地域で宿や交通手段、そして観光地の魅力を情報として入手する時代です。交通施設やホテルと比較すれば、わかりやすい情報発信はソフトなインフラとも言えます。

観光をきっかけに相互交流を図る

笹本笹本 これからの観光産業は、直接かかわっている宿泊や運輸、土産物だけではなく、幅広い産業にプラスの経済効果がある。それが最近ようやく広まってきた感があります。4月の知事選、市長選でも観光に関連してそれがクローズアップされてきました。観光予算も増えたので、それをどういうふうに活用していくかが問われます。
小磯 観光者の消費によって、観光事業者だけでなく、地域の産業がすべて恩恵を受けています。その自覚を持ってみんなで政策、戦略を考えることが大切です。以前、北海道の観光消費の流れを丁寧に分析したことがあります。その結果、ほとんどの地域の産業に、観光客の消費が波及していました。観光産業は地域産業なのだという意識を持つことが、私は一番大事だと思います。
樋泉 居住人口の減少を外国人客による交流人口でカバーする、という北海道の方向性でいえば、住んでいる人がまずそれを理解すること。そうでなければ、おもてなしの意識は出てきません。地域全体で、自分たちの生活がインバウンドに支えられている、そういう認識が必要だと思います。
笹本 自分自身が海外旅行中に、現地で非常に親切にされたとか、そういう経験があると、外国人客に対しても親切にできると思います。ただ道民のみなさんは、海外旅行の経験がある人が少ない。パスポート取得率も全国平均よりかなり低いんです。そういった意味で、外国人に対して少し消極的なところがあるのではないかと思います。ヨーロッパのように、世界各地から観光客がきていると、どの国の人でも親切に対応してもらえる。その差は大きいです。これはリピーターやFITの増加にもつながってくると思います。北海道の人気を、一過性じゃなく持続させるためのポイントかなと思います。
小磯 私も道民も、海外に出なければならないと思います。先日、台湾を訪れてわかったのですが、実は台湾は、インバウンド大国なのです。台湾を訪れている外国人客の数は、約1000万人。人口が2200万人ですから、約半数近い。日本に当てはめれば、6000万人近い外国人が訪れている換算になります。しかも日本と同じ島国です。
なぜ世界的な歴史遺産や魅力的なビーチリゾートを持たない台湾がそこまでのインバウンド大国になれたか。そこに大きなヒントがあります。理由の1つは、海外にどんどん出ていることです。北海道にも40万人来ています。そこで、観光客が何を求めているかを体験する。観光というのは、相互交流なのです。道民はもっと外に出て、どうしたら満足度や魅力を高めることができるのかを経験し、観光地づくりを進めていったほうがいい。樋泉さんが言われる通り「北海道ドリームゲームショー」では、地域との交流が実際に生まれて、お互いに学びがあった。今後増えるであろうインドネシアやベトナムの観光客を呼ぶためには、こちらからも積極的に行ってみよう、という機運を高めていくことが必要でしょう。

=ききて/清水=