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Interview

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国民・道民合意がないままのTPP交渉参加には
断固反対!
掲載号:2013年1月

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高橋はるみ 知事

 北海道新幹線の札幌延伸決定という朗報があった反面、TPP交渉参加問題が浮上、自然災害にも襲われるなど、2012年は北海道にとって多難な1年だった。道民の先頭に立つ高橋はるみ知事に諸問題への対応を聞いた。

並行在来線問題は時間をかけ慎重に

――北海道新幹線の札幌延伸が正式に決まりましたが、完成までに24年間もかかるといわれています。工期短縮にどのように取り組みますか。
高橋 道内経済活性化のためにも、工事期間の短縮は必要ですし、一刻も早い札幌開業を求める声が寄せられています。
しかし、そのことによって年次ごとの道費負担が重くなるということは、道民のみなさんからお預かりした財布の中から出ていくおカネが多くなることを意味しますので、全道的なご理解が得られないのではないか、と思います。したがって、地方負担を少なくするような財政措置を国が講じてくれることを求め、それを前提として、工期の短縮を要請していきます。
――新幹線に関しては並行在来線をどうするのかも、大きな問題ですね。
高橋 道庁にとって一番大きな課題だと思っています。整備新幹線で200キロを超えるというのは、史上初の長さです。その全線にわたって並行在来線をどうするかという課題が存在します。渡島管内は渡島管内の、後志管内には後志管内の、それぞれ事情がある中で2011年の暮れ、並行在来線をJRから経営分離することについて、すべての沿線自治体のご理解をいただいた経過がございます。
相当慎重に並行在来線の議論は進めていかなければならないと思います。他のエリア、例えば、北陸での状況や、先に開通した青森、岩手の状況をしっかり勉強しているところです。
函館・小樽間については、通勤、通学などの日常生活や経済活動を支える公共交通機関として重要な役割を果たしていることから、JRから経営分離された後の地域交通の確保などについて検討・協議をおこなうため、12年9月7日、北海道新幹線並行在来線対策協議会を設立しました。
函館・小樽間は、後志と渡島、両管内にまたがっており、利用者の状況など地域を取り巻く環境に違いがあることから、この協議会には、それぞれの管内ごとに、沿線自治体と道で構成するブロック会議を設け、将来の利用者見込みに関する調査結果や、先行する3セク鉄道の状況、また、並行在来線に対する国の支援制度などを踏まえ、意見交換をおこなっています。
今後とも、このブロック会議を通じて、意見交換や協議を進め、新幹線の開業5年前までには、沿線自治体のみなさまと連携・協力しながら、地域交通の確保方策の方向性を決定してまいりたいと考えています。
――新幹線開通と在来線問題、便利になるところと不便になるところ、経済的にもプラスとマイナスがあります。この帳尻あわせが、道庁の腕の見せどころなのではないでしょうか。
高橋 マクロ的には「便利になるから、いいじゃないの」という議論になりますが、それぞれの沿線自治体によって利害が違うのです。そこをどうやって、われわれが間に入って、また民間の方々も巻き込みながら、調整を図るかということですが、これは時間をかけて、一つひとつきめ細やかに問題解決に向け、慎重にやっていかなければなりません。それが民主主義ですから。

道民の命と生活を守るため節電を

――冬の節電対策への考えもお聞かせください。
高橋 全国で唯一、北海道は国から、定量目標を踏まえた節電を要請されています。今回の節電のポイントは、各家庭にご協力いただけるかどうかにかかっています。夏場と比較して冬場は、家庭の電力需要のウエートが高まるのです。
そこで私たちは、国、市町村、北電と連携し、いろいろなアイデアを出し合いながら、またテレビ局にもご協力をいただいて、各家庭に対するアクセスをしっかりやらさせていただいています。
加えて、そういうことを前提に万が一、大きなトラブルになった場合、例えば北本連系に障害が出る、あるいは苫東厚真の火力発電所の故障などで厳しい状況になったときには、一時的緊急避難的に電力の需要を大幅に抑制していただくために、産業界の大口需要者に協力をしてもらう協定を結ぶこともしています。
人の命にもかかわることですから、なんとしても突発的な停電だけは避けなければなりません。また、計画停電も私は絶対に避けなければならないと考えます。計画停電の発動が決まるのは、直前です。さっぽろ雪まつりをはじめ、いろいろな冬のイベントもできなくなってしまいます。ただですら、夏場に比べ厳しい冬場の北海道観光に与える影響は甚大です。
道路や踏切の信号機なども停電で止まるところが出てきます。人の安全・安心にかかわることは、原則的に計画停電の対象外にするべきなのですが、北海道はあまりに広すぎて技術的にそれが困難なのです。冬場だからこそ、計画停電を避けなければならない理由はいっぱいあります。
ですから、道民一人ひとりがオール北海道で7%以上の節電に取り組んでいく必要があります。
――今年は節電を柱にやらざるを得ないことは理解できます。しかし、毎年、それではかなわない。北海道におけるエネルギー対策を今後どのように進めていきますか。知事は「北海道は再生エネルギー資源大国だ」と言っていますが…
高橋 それは事実です。資源としてもそうですが、動いているものをみても、再生エネルギー大国なのです。経産省が買い取り価格制度をスタートしましたが、その枠内で認可された再生可能エネルギーの全国の5分の1は北海道です。まだ潜在しているものもあるので、こうした動きも今後期待できると思っています。
道も、太陽光や風力発電、バイオマスや地熱発電など、さまざまなプロジェクトの実現に向けた支援や地域ごとに特色のある資源を生かしたエネルギーの地産地消の取り組みを推進していきます。
しかし、いまから発電施設を着工しても時間がかかります。この冬には間に合いません。また、再生可能エネルギーによる電力の買い取り価格の推移なども見極めていかなければなりません。
北海道が全国的にみて特殊であることはいろいろあるのですが、電力もそうで、1都道府県が1つの電力会社で完結しているのは、北海道だけです。電力の安定供給は法律上、知事の仕事ではありません。でも、法律上どう書いてあるかは別にして、私は、道民のみなさまの生活を守り、命を守り、そして産業活動を活性化する責務を有しているという観点から、電力の安定供給も北海道知事の責務だと思っています。

TPPは北海道全体を疲弊させる

――原発についてのお考えは…
高橋 北海道は〝脱原発の視点に立って〟省エネルギーや新エネルギー導入の政策を進めるという条例を全国で唯一持っています。北海道知事として、その中長期的な方向性を 追求していくのは責務だと思っています。泊の1号機、2号機、3号機については、その時々の知事が道民の理解を得てゴーサインを出してきたわけですが原発 の再稼働問題は、安全性の確認がなによりも大事です。原子力規制委員会で基準をしっかり議論し安全を見極めていただき、政府として必要性を判断した後に、 地元としてどう判断するかということになります。私は道民の代表である道議会議員のみなさんともしっかり議論した上で、われわれの考え方をまとめていくべ きだと思います。
――TPPについては賛成ですか、反対ですか?
高橋 原則として関税撤廃・関税ゼロという協定を2カ国ではなく、複数の国が一緒に結ぶという考え方には賛成できません。関税なり、いろいろなことで、それぞれの国の事情を勘案すべきです。それがTPP反対の第1の理由です。
第2は、対象が農業だけではなく20以上の分野にわたり、道民的、国民的視点からいろいろな疑問点があります。それについて半年以上前から国に質問状を出しているのに、一切回答がありません。このように、国民的議論、道民的議論がまったくなされない中で、反対か賛成か二者択一の争点化をするのにも反対です。
ただ一方で、日中韓のFTAであるとか、日豪EPAなど、いろいろな枠組みの中で自由貿易を探求する試みすべてが「ノーだ」というわけではありません。でも、日中韓FTAであっても当然、それぞれの国の事情を考慮する必要があります。
関税を原則ゼロとするのが議論のスタートラインであるTPPは、われわれ道民の利益に反します。道は、これまでも道議会や農業団体をはじめとする道内関係団体の皆さんとともに、国に対し「国民合意・道民合意がないまま、TPP協定交渉に参加することには、『断固反対』である」旨を強く訴えてきました。
国益、道民の利益、北海道の農業を守るという観点から、TPPをはじめとする国際的な自由貿易を模索する動きには、今後も目を光らせていきたいと考えています。
TPPによって農業がダメになるだけではありません。農業を基幹産業とする地域全体が疲弊します。市町村単位で、農業がダメになればお客さんがいなくなるのですから、商業も製造業もダメになり、それが北海道全体に波及します。
――フード特区について教えてください。
高橋 国の特区になることによって得られるメリット、規制・制度の特例措置、金利や税制上の優遇措置を受ける動きが出ています。また、「食品の機能性表示制度の見直し」で国との協議が整い、次年度から道独自の新たな食品機能性表示制度をスタートさせる準備をしています。
――最後に12年を振り返っての感想と新年への抱負を聞かせてください。
高橋 12年は1月末から積極的に道内の各地域を回り、みなさまの声を聞きました。3月に行った奥尻島は、雪景色がよかったですよ。
また、喫緊の課題である防災体制の強化や節電への対応、HACの経営再建への対応、年明け早々の記録的な大雪被害や年末に道内各地を襲った暴風雪被害、漬物を原因とするO157による食中毒事案など、本当に多くの困難な問題に直面し、道民の暮らしと経済を守るため、多くの方々の知恵と力を結集し、全力で取り組んできました。
13年は私にとって、知事就任から丸10年を迎える 節目の年であると同時に、任期4年の折り返しの年です。新しい年を、直面する困難を乗り越え、未来への確かな歩みを進める「前進の年」と位置づけ、引き続き、「攻め」の姿勢のもと、雇用の確保など直面する課題に全力で取り組んでいきます。  (11月26日取材)

=ききて/酒井雅広=