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Interview

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合理性のない原子力政策は転換するしかない掲載号:2011年10月

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河野太郎 衆議院議員

 世界が震撼した東京電力・福島第1原子力発電所の事故から、すでに半年。いまだ収束の兆しは見えない。国策として原子力政策を推進してきた自民党にいながら、一貫して反原発を訴えてきた河野太郎衆院議員に、エネルギー政策の転換には何が必要なのかを聞いた。

知れば知るほど辻 褄が合わなくなる

――まずは野田政権発足の感想からお聞きします。
河野 日本の政治はしばらく滅茶苦茶でした。与野党まじめにこの国のことを考えた政治をやらないと、野田さんや与党だけに、ああしろこうしろと言うわけにはいかないと思います。ふた言目には解散しろと言ってみても始まらない。
――解散は反対ですか。
i2河野 任期の途中で解散するというのは、自民党一党独裁政権のときに、そろそろ俺も総理をやりたいから現職を降ろそうみたいなことです。議院内閣制で任期4年で選んでいるわけです。よほどのことがない限り、任期4年やるのが筋。そうでなければ成果はあげられない。
解散しろと言って、仮に自民党が衆議院で過半数を取ったとしても、参議院の議席は自民・公明を足しても民主党のほうが多い。いまの野党のやっていることをそのままやられて終わってしまいます。
自民党がいまやらなければならないのは、ねじれ国会のときにどういう意思決定をするか、そのルールをつくることです。自分たちが政権をとったときも、そのルールでやらしてもらう。それが大事だと思います。
――大連立に向かうと思われますか。
河野 大連立などする必要がない。他国の二院制もみんなねじれていますが、それらの国がみんな大連立をやっているかというとそうではありません。ねじれていても議論をして、一番いい答えはなにか、見つけています。大連立はそのプロセスを放棄しているに過ぎません。
――河野さんが立候補した2009年の総裁選で、世代交代がおこなわれていればとつくづく思いますね。
河野 (苦笑)
――自民党はこれまで原子力政策を推進してきました。その中にあって、反原発の立場を鮮明にしていたのは河野さんだけです。
河野 そうですね。
――与党にいながら河野さんだけが反対してこられた理由は何ですか。
河野 ほとんどの国会議員は真面目に考えていなかったんだと思います。「原子力は大事です」「原子力は安全です」と経済産業省や電力会社に言われて、それ以上のことを考えてこなかった。科学技術担当だった議員が、私があまりに反対論を述べるから「ウランを燃やすのも、プルトニウムを燃やすのも同じなんだから、なにギャーギャー言ってんだ」って(笑)。科学技術の担当議員が、ウランとプルトニウムの区別がついていない。そういうレベルです。
そして、みんなが安全だと言っているんだから安全なんだと。自分の頭で考えてくれよと言っても、お前のほうが違うだろうということなんです。これは原子力に限らず、いろんな問題がこういう形になっている。
それに電力会社から金をもらっていたということもあるんだと思います。
――初当選されたときから自民党の原子力政策はおかしいと。
河野 私が当選したのは1996年10月20日ですが、翌年の12月に第3回気候変動枠組条約締約国会議、いわゆる京都会議が開かれました。それに向け若い研究者やエネルギーに興味のある大学院生や学生、若い企業人を集めて「太郎塾」という名前の勉強会をずっとやっていた。その中で原子力政策というのは、知れば知るほど辻褄(つじつま)が合わなくなる。どう考えても理論が合わない。経済合理性もない。実は私自身、あまり安全性の話をしてきたことはないんです。むしろ安全性より経済合理性のほうを突いたほうがいいと思ったからです。だから党本部の会議などで私がそういう発言をすると「なんだ、お前は共産党か」とか言われて議論にもならない。
――今回の原発事故を受け、自民党は変わってきていますか。
河野 だいぶ変わりました。5月の連休明け、党内でエネルギー政策議員連盟を立ち上げて、原子力の見直しをやるぞと言ったら、経産省OBの議員も含め、50人くらいのメンバーが集まりました。
――若手が中心ですか。
河野 多いですね。やはり古い人は変われないんじゃないでしょうか。

電力会社にシッポを振るような知事

――先般、高橋はるみ知事が泊3号機の営業運転再開を容認しました。
河野 高橋知事も原子力村の一員で、経産省OBで、政治資金団体のトップが北海道電力の元会長なわけですから、中立、科学的な判断とは思えないですね。要するに、私はこういうポジションでなければいけないという“ポジショントーク”でしょう。
――本来なにをしなければならなかったと。
河野 これだけの事故があったわけですから、1つはハードウエアを確認する作業。それとソフトウエア、オペレーションがきちんとできているのか。たとえば訓練。いざというときに対処できるようになっているのかという確認をしなければいけない。アメリカの専門家が言うのは、日本の原発の訓練はなぜ午後5時ピッタリに終わるのか(笑)。NHKのある解説委員が言っていたのは、電源喪失といって訓練が始まるけど、どこかのタイミングで電源が回復したと。なぜか。シナリオがそうなっているから。それは訓練ではない。お芝居です。だからこそ確認しなければならない。
それに北電の経営体質の改善です。福島第1以前にも、相当数の事故がありましたが、常に隠蔽、捏造です。あるいは情報をきちんとあげない。そういうことを考えると、北電もやらせ問題がありましたから、少なくともハードウエア、ソフトウエアを確認して、経営陣を一掃して、経営体質を変える。そこに社外取締役がきちんと入って、本当に大丈夫なのか確認をする。それくらいのことをやって、初めて稼働しましょうというのが筋だと思います。
――「国が安全だと言っていますから」なんて何の根拠もないですからね。
河野 それに北電は、いきなり再生可能エネルギーの固定価格の買い取りを、法律を通した途端に、うちはもう買えないみたいなこと言いました。それは本州と北海道の連携線を太くすれば問題ないはずです。それをやらないと堂々と言ってのけるということからして、この体質をどうにかしないといかんだろうなと思いますね。
――北電内部で経営を刷新しましょうということにはならないでしょうね。
河野 そこは知事が出ていって、経営を刷新しない限り再稼働はできませんよ、再生エネルギーをもう買えないみたいな法律違反のようなことをおっしゃるんだったら、それは道としても考えなければいけませんね、くらいのことを言わなきゃいけないのに、なんかシッポを振っているようではどうにもならない。
確かに、法律的にいえば知事は関係ないよという話かもしれません。しかし、いまや知事の発言はある程度、電力会社にプレッシャーをかけられるようになっています。もんじゅの事故後に3県知事が申し入れをしたりして、立地県の知事が「うん」と言わないと原発は進まないような流れを勝ち取ってきました。それをあっさり放り投げるというのは、他の立地県に迷惑をかけることになる。
――外から見ていても、高橋知事の対応は弱腰に見えますか。
河野 原子力政策についての高橋知事の考えはよくは知らなかったですが、ちょっとびっくりですよね。
――今後、新たな原発はつくれないと思いますか。
河野 私はつくるべきでないと思います。党内でもそういう声が大きくなっている。立地する自治体が拒否するだろうという話もあるんですが、責任を地域に押しつけるのではなく、国の政策でもうやめますと、国が責任を負わないとだめだと思います。
その代わり、省エネや代替エネルギーをしっかりやる。再生可能エネルギーは分散型ですから、地域密着のエネルギーになっていきます。いまは札幌に吸い上げられている電気料金が地域に投資されて、地域で回るようになる。地域経済を活性化させる1つの要因になると思います。
北海道はとくに大事ではないでしょうか。ヒト・モノ・カネ、何でも札幌に集まっていますが、エネルギーの分野から分権を始める。むしろ北海道は率先してやらなければならないのに、北電に買い取り拒否のようなことを言わせて黙っているというのは、経済的なことを考えても違うのではないのかという気がします。
――青森県の原発は止められますか。
河野 三村申吾知事は相当に慎重です。それでも県全体が建設に前のめりになっているから止められてはいないのですが、ほかの知事だったらもっと進んでいたでしょう。三村さんが全部細かく見て、確認をして、ある意味、時間を稼いでいた。その間に国が政策転換をするのを待っていたんだと思います。そうやって三村さんが体を張ってきたのに、中央がまったくそれを見殺しにした。
――大間原発は北海道のすぐ近くです。
河野 本当は高橋さんも口を挟むべきだけど、あまりそういう話を聞いたことがありません。

大臣のひと言で規制は変えられる

――今後、自然エネルギーにシフトしていくのは間違いないと思いますが、どうもスピードが遅い。
河野 法律は通りましたけど、つまらない規制が多い。たとえばメガソーラーは普通の発電所と同じ扱いだから、免許を持った技術者を常駐させないといけないのか。パネルを開いているだけなのに普通の発電所と同じような規制にするのか。小水力発電にしても、大型のダムの発電所と同じ手続きをとらせるのか。そういうものはどんどん簡素化していかなければなりません。風力も耐震偽装問題で建築基準法を変えたときに一緒に巻き込まれてしまった。そこはもう少しきちんと整理し、最適なルールは何かということをやらないといけない。それに依然として国立公園・国定公園内の地熱の開発はだめ。これには1972年の覚書があるのですが、もう時代が違うんだから外すべきです。
あとは政治がどれだけ行政をコントロールできるか。野田政権で心配なのは、野田さん自身、エネルギーについてあまり詳しくない印象です。側近でエネルギーをやっている人間というのは電力会社とズブズブの議員。極めて危ない状況にあると感じます。
――つまらない規制は変えられるのですか。
河野 省令、通達、告示になっているものが多い。それは役所に入った大臣が「やめる」と言えばさっさとできてしまいます。
――それすら民主党政権ではやられていない。
河野 全然、進んでいないですよね。民主党になって規制緩和が進んだということはないですから。
――ソフトバンクの動きをどうみていますか。
河野 いいんじゃないですか。リスクをとってどんどんやろうという動きが出るのは大事だと思います。
小泉改革で失敗したのは、酒屋とかタクシーとか規模の小さいところの規制緩和をやってしまったことです。みんな規制緩和イコール痛い、嫌だという気持ちになってしまった。本当は電気とか空港とか、規模の大きいところを規制緩和して、新しいプレーヤーが入ってこられるようにすべきだったのです。そういう意味でもエネルギー、電気という分野はどんどん規制緩和を進め、既得権をなくしていかなければならないと思います。

=ききて/鈴木正紀(9月2日取材)=