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Interview

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原発再稼動で電気料金の引き下げを掲載号:2015年2月

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横内龍三 北海道経済同友会代表幹事

元日銀マンであり、また弁護士でもある横内龍三北海道経済同友会代表幹事(北洋銀行会長)に、ご登場願った。以下、原発、アベノミクス、食と観光等々、おだやかな口調ながらズバリ核心を突く〝横内発言〟をお届けする。

再稼働だめ、値上げだめでは解決しない

――先般、横内会長は北海道新聞紙上で、原発再稼働に向けて「道の動きが遅い。道は率先して調整役を果たそうとしていない」と断じ、少なからず波紋を広げましたね。
横内 原発に関して、私は長期的に依存し続けてはだめだと考えています。最大の理由は最終処理問題が決まっていないことです。
クリーンだということで原発依存を高めてきましたが、東日本大震災がわれわれにもう一回考え直せと教えてくれたと思います。
しかし、この問題は中長期的対策と短期的対策を分けて考えないといけない。
これだけ原発依存度を高めてきている中で、原発再稼働をしないと、それじゃあ、その代わりの電力をどうするのか。即時原発廃止を唱えてる方々の中には、原発を動かさなくても、停電も起こらずに供給できているじゃないかという意見があります。そういう方々に対して、私は現実を深く見てくださいと言いたい。
いまは火力発電に頼り切ってぎりぎりでやっているんです。どこかで万一、大型の火力発電所が故障して動かなくなったら、大変なことになる。
火力発電に依存しすぎるとCO2などマイナスの影響も無視できないし、エネルギーの地政学的なリスクも高まる。そういうリスクの高い状態をいつまでも続けていくことはできない。
肝心のクリーンな自然エネルギー、再生可能エネルギーなど、代替エネルギーでは短期的には対応できません。さらに、北海道電力を企業として成り立たなくして、それで安定供給ができるんでしょうか。これも無理です。
北海道電力の経営を成り立たせ、電力の安定供給を確保して、企業や個人生活に破綻をきたさないようにやっていくためには、短期的には、やはり規制委員会により新しく強化された安全基準をクリアした原発を動かして、電気料金を再び引き下げることが必要です。
原発再稼働はだめ、値上げはだめでは、足元の問題は解決しません。
泊原発は、いまは検討の次の順位ぐらいまできているようです。しかし規制委員会がOKを出しても、地域住民の方々が反対したらだめです。
ですから行政も、住民のみなさんとのディスカッションや理解を得る努力とか、そういう措置を並行してやっていかなければ、いざという時に間に合わない。

〝国債リスク〟をしょったアベノミクス

――アベノミクスは残念ながら北海道には届いてはいません。アベノミクスをどう見ますか。
横内 日本経済はデフレといわれましたが物価の低下はわずかです。結局、先進国共通の悩みでもありますが、圧倒的な需要不足の結果、日本の潜在成長力が低下する一方になった。
需要が圧倒的に冷え込んだ結果、バブルのバランスシートがまだ回復していない人や、リーマンショックでさらに傷ついた人もいるという社会構造の中で、第1の矢の金融政策、つまり金利とお金の量の政策は、かつてのようにはもう利かないことは明らかです。
にもかかわらず、それをものすごくやっている。
それで、どういうことが起きたかというと、日銀が国債を市場からどんどん買う。買った代金が金融機関の日銀当座預金口座に振り込まれる。本来はその預金が動かなければいけないのに、資金需要がないので止まったままです。
一方、日銀の量的緩和効果というのは、財政には非常にプラスです。
国債をどんどん買うから価格は上がる。つまり金利が安くなるので、国の財政上は金利負担が少なくなって、かつ第2の矢、財政支出による景気刺激をおこないやすくなっている。
そういう構造です。
私は、圧倒的な需要不足のもとでは、財政拡大は一時的にやむを得ないという考えです。だけど、それは一時的というのが大事であって、ましてや、いまは日本は世界最大の財政赤字国です。それでいながら何で日本の国債の信用が保たれているかというと、日銀が買うからです。
――いつまでも買い続けるわけにはいかない。
横内 はい。日本の景気が少しよくなって、日銀が引き締めなければならない時がきたら、今度は国債を売らなければならない。
それが出口論なんですが、国債売却を円滑に進め、適切な市場調整ができるか、そこが未知の問題です。
万一、やり損なうと国債金利が急騰して、日銀も含め、国債の保有者はみんな大打撃を受ける。これが国債リスクと呼ばれている問題です。
ですから第1の矢はほとんど効果がなく、第2の矢の効果は一時的にあって、北海道も公共事業でホッとしたけれど、それは永続できる政策ではない。
――どうすればいいのでしょうか。
横内 やっぱり本命は第3の矢となる成長戦略です。
成長戦略というのは、需要をいかに将来的に起こしていくかという観点からみると、いわゆる岩盤規制の問題や、産業自体が1つ上の付加価値を目指していく力を支援することなどで、
成長戦略が着実に効果を発揮すれば、後進国の追い上げに先行して成長力がついてくると思います。
アベノミクスは首をかしげる部分もあるけれど、一定の役割を果たしてきたし、今後、成長戦略をきっちりやっていけば、そこに日本の活路も見いだせると思います。
安倍首相は経済第一と言い続けてきました。今度の選挙でも経済最優先、地方の再生、中小企業の育成を最優先すると。だけど、いままでは特定秘密保護法や集団的自衛権などで、経済成長があまり論議されなかったように感じます。今度こそ経済最優先でやってもらいたいというのが、私のストレートな本音です。

ものづくりを軽視した地域は力が落ちる

――北海道は〝失われた20年〟の後もずっと厳しい状況が続いています。人口減少が急速に進む中、どう将来展望を開くのか。
横内 北海道はかつて炭鉱、造船などで栄え、それが衰退しました。そして本州資本がみんな引き上げてしまった。同じ産炭地の北九州などは大阪、近畿の経済圏と密着していたから機械工業の集積が残ったが、北海道には残らなかった。   歴史的にはこのことが一番大きいと思います。
また国主導の開発ということで公共事業依存型経済になっており、これも近年の大規模な公共事業削減で大変な痛みを経験しました。
そういう痛みの反面、いまよく言われる「食と観光」の2本柱のように、自立経済を目指す流れが出てきていると思います。
「食と観光」についてはこれまで標語として掲げられてきましたが、どういうあり方を目指すかについては、私はまだ十分ではないと思っています。
――どのような方向をお考えですか。
横内 全国の地方再生プランの中で、東北でも四国、中国、九州でも、どの地域も「食と観光」を掲げています。そんな中でどう北海道の特色を出すのか。
外の方々が北海道を見る目は、観光で行ってみるときれいな自然の中で食べ物もおいしい、となってくるわけですから、食と観光の分野は融合させていかなければならない。
この連携が、私はまだ不十分だと思うんです。
農業に従事しておられる方々や団体と、観光に従事しておられる方々や団体とがもう少し交流し、そこに製造・加工というものが間に入って、それで北海道の魅力をさらに強めることが必要です。橋渡しする製造業、食品加工業が大事です。
よく言われる6次産業化を含め、総合産業としての食と観光の高度化を、強力に推進していかなければならないと思います。
そこで大事なことは、ものづくりです。ものづくりを軽視したところは、だいたい地域の力は落ちていく。そして大企業がリードする面もありますが、地域の中小企業が核となってその力を生かしていくことが重要です。
先日、小樽で聞いた話ですが、人口減少が急速に進んでいて、いま小樽の全住宅の1割が空き家だそうです。
その小樽地域の生産高をみると、第1次産業もサービス業も減っている。
だけど減っていないのは、ものづくりの第2次産業だけだというんです。ですから、やはり政策というものは常に総合的に考えていかなければならない。
1つの強みを強力に打ち出すのも大事ですが、旗を掲げる上で、その基盤を総合的にみていく必要があるんだなということをしみじみ感じました。

北極海航路・苫小牧ハブに夢をはせる

――横内会長は、以前から北極海航路に熱心に取り組まれているそうですが。
横内 私どもは、目先、新幹線や東京オリンピックの練習場の誘致、その先の札幌冬季オリンピック誘致などを推進していますが、私は、さらにその先の長期展望として、苫小牧港を北極海航路のハブにするという夢を描いています。
4年ほど前、金融庁長官だった畑中龍太郎さんから「国土交通省の友人が北極海航路という面白いテーマに取り組んでいる。横内さんは北海道だから勉強してみては」とアドバイスされたのがきっかけでした。
北極海は海氷が広くて船舶の長距離運航は不可能でした。それが温暖化で砕氷船を使えば夏は航行できるようになった。ヨーロッパとアジアを結ぶ最短距離です。ただ砕氷船機能のついた貨物船は重量があって燃料を食うので、途中に積み替えるハブが必要になる。
苫小牧港は北極海航路と北米航路のちょうど接点に位置します。そこで苫小牧港を釜山港に負けないアジアのハブ港にしたいと。
心強いのは、苫小牧の関係者や道庁も勉強会を始めていることです。ぜひネットワークで結んでいきたい。北海道経済同友会でも近く、ワーキンググループを立ちあげ、この問題を勉強していこうと思っています。
――ありがとうございました。

=ききて/干場一之=