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Interview

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〝北海道マジック〟でリピーターはもっと増やせる掲載号:2012年11月

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柴洋二郎 オリエンタルランド副社長

 東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの2012年度上半期(4?9月)の入園者数が過去最高を記録したオリエンタルランド。年間2500万人にのぼる入園者の9割はリピーターだ。その秘密はどこにあるのか。柴洋二郎副社長に聞いた。

来園者は「ゲスト」 従業員は「キャスト」

――柴さんは北海道大学の卒業だそうですね。
柴 偶然みたいなものです。私の生まれは神奈川県平塚市。東京の大学に行こうと思っていました。ところが受験の年、学生運動が激しさを増していて、東大の入試が突然中止。仕方がないので東京の私立に行こうと思っていましたが、高校の先生は国立大を勧めました。それなら行ったことのない北海道にしようと。それで札幌に受けに行って、気に入ってしまった。あまりに気に入ったので、大学に5年いました(笑)。
――卒業後は。
柴 日本興業銀行に入りました。勤務地は札幌支店。3年いましたので、8年余り札幌で生活しました。その後、東京に戻ったあとは、海外と東京しか勤務していません。ですから、私にとって札幌は〝第2のふるさと〟なんです。
i2――オリエンタルランドには、2005年の入社なんですね。
柴 興銀は02年に第一勧業銀行、富士銀行と合併してみずほ銀行になりました。その年、私は役員になり、みずほコーポレート銀行に1年。その後、常務として、みずほ銀行に2年いました。当時、この統合を機に経営陣の若返りを図るということもあって、私が54歳のとき、縁あってオリエンタルランドで仕事ができるという機会をいただいて転職しました。
――当時の配属は。
柴 営業本部長ということで入りました。ディズニーランドに営業など必要なのかと思いましたが、開園から今年で29年、営業戦略は実にきめ細かく、いろんなことをやってきています。
――現在、副社長ですが、テーマパーク統括本部副本部長・営業本部長も兼任されています。
柴 若い人がやりたいことをやれるような環境をつくるというのが私の仕事です。基本的にお客さまの年齢層は若いわけですから。中高年には、あまり口を挟ませない(笑)。
――ディズニーランドの驚異的なところは、リピーターの割合がものすごく高いところです。
柴 ディズニーランドとディズニーシーを合計した年間の来園者数は2500?2700万人。うち9割はリピーターです。
この2つのリゾートの素晴らしいところは、ソフトとハードの融合です。やはり一番重要なのはソフト。われわれはお客さまのことを「ゲスト」、従業員を「キャスト」と呼び、青空のもとの劇場という設定になっています。キャストは基本的にアルバイトですが、彼らがお客さまにきちんと対応することが何よりも大切です。そのために、キャストのモチベーションを上げる取り組みとか、ゲストに対し単なるマニュアルの対応ではなく、キャスト一人ひとりが自分で判断して行動するという仕組みづくりというのは、裏でたくさんやっています。パークに入るとディズニーの音楽がかかっていて、キャストは笑顔で迎える。お客さまも笑顔になる。その笑顔を見てキャストはもっと笑顔になる。そういう循環。お客さまからお手紙などをたくさんいただきます。クレームもありますが、一番多いのはキャストに対しての賛辞です。

ディズニーのパークは永遠に完成しない

――ハード面への投資は。
柴 安全のための維持更新と新しいアトラクション、新しいエンターテインメントへの投資として、平均すると年間300億円はかけています。
ウォルト・ディズニーの言葉に「ディズニーのパークは永遠に完成しない」というものがあります。常に新しいものがあって、何度きても飽きない。新しい感動、夢を提供する。そういう仕掛けをつくるという意味で、ソフトとハードの融合が重要なのです。
――リピーターを増やすという意味では、観光立国を目指す北海道も、いまの話が参考になるのかなと思います。
柴 ディズニーの場合、アトラクションにしてもエンターテインメントにしても、すべてにストーリーをつくっています。何をやるにも物語をつくる。ここが1つヒントになるのかもしれません。
北海道は質の高い観光資源がたくさんあるわけですが、それをそのまま売ってもお客さまには響かない。そのときは響いたとしても長く続かない。長く響かせるためにはストーリーをつくって、さまざまなプロモーションを重ねていくというのが、お客さまの誘致には欠かせないことだと思います。
――具体的にストーリーをつくるというのは。
柴 たとえば、阿寒、摩周、知床。それぞれ個別で売るのではなく、いくつかの複合したストーリーをつくって、それを広めていく。中国で北海道を舞台にした映画がつくられたときに中国の人が多数来訪したと聞いています。こうしたことも単発で終わらせず、連続してつくる仕掛けが必要でしょう。
――やはりプロモーションは重要ですね。
柴 いいものをつくって高く買っていただく。そのためにはプロモーションやセールスの仕方、ストーリーの構築が重要なポイントです。北海道の特徴でもある農業も同じだと思います。宣伝やプロモーションにしても、テレビの高いCMをやらなくても、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使えばいくらでもできます。私どももツイッターやフェイスブックなどをやっていて、日本の企業サイトとしてはトップクラスのフォロワー数になっています。そもそもSNSというのは口コミ。一番効くツールです。かつコストも安い。そうしたものをうまく使うべきだと思います。

嫌なことがあると1時間ほど園内を散歩

――東京ディズニーランドは来年30周年です。新企画は。
柴 5年ごとに周年事業をやっていますが、30周年の目玉は昼のパレードを5年ぶりに新しいものにします。全長は500メートルにも及びます。それと映画「スター・ウォーズ」をベースにしたアトラクション「スター・ツアーズ」では、フィルムを全部かきかえる大改装をやっています。こちらは来年中ごろにオープンします。
――ディズニーランドは、まさに「幸せを売っている」という感じがします。
柴 当社の企業使命は「夢・感動・喜び・やすらぎ」です。来園者のみなさまは、それを感じられて帰る。だからまた来ていただけるのだと思います。
私も社内でちょっと嫌なことなんかがあると、1時間くらいディズニーランドを散歩してくるんです。お客さまはニコニコ、キャストもニコニコ。何となく幸せな気分になる。
――笑顔って人を幸せにしますからね。
柴 そして、社に戻ってきて、さっき大声を出さなくてよかったなと。まさに〝ディズニーマジック〟です。そういう意味では〝北海道マジック〟をつくることによって、リピーターは大いに獲得できると思います。

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