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Interview

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北海道の企業家はチャレンジ精神が足りない掲載号:2009年3月

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宋 文洲 ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー

(そう・ぶんしゅう)1963年6月25日、中国山東省生まれ。中国・東北大学を卒業後、85年に北海道大学大学院に国費留学。天安門事件で帰国を断念。92年「ソフトブレーン」創業。98年本社を札幌から東京に移転。2000年東証マザーズ上場。05年東証1部上場。06年1月代表権を返上し取締役会長。同年8月、マネージメント・アドバイザー就任。45歳。 ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー
北海道大学に国費留学するも、天安門事件で帰国を断念。札幌で学生時代に開発した土木解析ソフトを販売し、28歳で「ソフトブレーン」を創業した宋文洲氏。青春のほとんどを札幌で過ごした宋氏が“故郷・北海道”の企業家にチャレンジをうながす。

村上世彰氏逮捕が経営を離れるきっかけ

--------経営を離れて。
もう3年になります。
--------すべてやった、ということで離れられたのか。
当時いくつかの要因が重なりました。1つは「企業の透明性」とか「公器」という言葉。オーナー企 業は株主と経営を分離しないでしょ。自分で株主総会をコントロールし、取締役会では誰も反論しない。自分はそういう会社にしない、だからその典型となる会 社をつくろうと。もともと40代でやめるつもりでいましたけど、42歳でやめる必要はなかった。
--------でもやめられた。
直接のきっかけは“村上ファンド”の、村上世彰氏の逮捕です。「僕はそう遠くない将来引退するつ もりだから、10%くらいの株は持つけれど、企業は公器だから、他の持ち株は放出しますよ、ほしい人はいつでも買いに来て下さい」とアナウンスしたとこ ろ、村上氏が一番早く買いに来た。彼と話すと、思うところは一緒だなと感じて、彼が株主になってから、当社の役員就任をお願いした。世間ではいろいろ言わ れているようだけど、僕はあなたのことぜんぜん怖くないから、中を全部見せるから来てみないかと。それで役員になってもらったのはいいんですが、半年もし ないうちに逮捕されてしまった。
--------そうでしたね。
ピュアにやろうとして、あれこれいわれるのには閉口した。どうせ経営はやめるんだから、いまやめてやるわと。それが引き金かな。
--------いまは、ちょっと早過ぎたなと後悔されている。
そうですね。まだ十分に経営者を育てていなかったし、サラリーマン社長にしたからといって公器になるかというとそうでもない。逆に、大株主だから公器にしないというわけでもない。ちょっと単純だった。
--------こういう時代になったからカムバックというのは。
それはないですね。一度男が言ったこと。後悔はしても撤回はしない。
--------いまは主にアドバイザーと文筆業ですか。
そうですね。コラムとかコメンテーターとか。アドバイザーのほうは、ソフトブレーンのほか数社やっています。言いっ放しのアドバイスしかできていないけど。それでも結構、忙しいですよ。

札幌で感じた閉塞感とコンプレックス

--------ソフトブレーンは宋さんが北大時代につくった土木解析のソフトを売ることからスタートしましたね。
北大を卒業する1年前に天安門事件があって、帰るに帰れない状況になりました。札幌の情報処理会 社に就職したけれど3カ月で倒産。そこで北大時代につくったソフトを完成させて自分で売ることにした。周囲からは無理だといわれたけど、ほかに何かやろう と思ったら借金しなければならない。でもこれはお金をかけなくてもいい。
--------どういうソフトですか。
北海道には橋とか、ダムとか、トンネルとかが多い。そこにどれくらいコンクリートを打てばちょう ど経済的で、しかも壊れないか。そういう計算のソフトです。それまで計算機センターでやっていたことをパソコンでやる。当時ノートパソコンが出始めたこ ろ。現場で計算して、その場で対策を取れるということで売れた。崩落した豊浜トンネルの事故の計算などもしました。
--------実績があがるまで苦労したのでは。
楽しくて、わくわくして毎日仕事をしていたので、壁とか障害とか感じなかった。いまも札幌には「北海道営業所」があります。住所は札幌市中央区北2東1、日宝北2条ビル9階。電話は011・233・0600です。オフィスの抱える問題があれば連絡してください。

景気の悪いときこそチャンスは大きい

--------東京に本社を移したのは。
 札幌でビジネスを6年間やっていて、閉塞感をものすごく感じた。息ができないというか。何だろう、 いつも同じ人と会って、同じ話題を繰り返すというのは耐えられなかった。何か新しいことにチャレンジしようとするとバカにする。どうせ俺とお前は“どんぐ りの背比べ”なんだから、しょせん知れていると。仲間のことを実は尊敬していなくて、自分たちを小さく評価する。そして、東京にしか目がいかない。東京コ ンプレックスがひどい。
--------現状ではIT業界をちょっと離れたところから見ていることになりますか。
 いまや「IT」は死語ですね。昔はITといえば未来への新鮮感があったけれど、いまは何の意味も感 じない。10年前に「ゼネコン」と言っていたようなものです。インターネットは昔の電話みたいになって、携帯電話は昔のポケベルみたいになって、みんな頭 打ちで成長もない。日本の人口は1億3000万人以上いないんだから。
--------業種を問わず、いま大変厳しい経済不況にあります。
 それぞれの産業の中で、競合他社に勝つためには、景気の悪いときこそチャンスです。シェアを奪いやすい。弱っているときに攻めると効果は大きい。気持ちの弱い経営者は、こういうときじっとして何もしないものです。戦うとき、相手が何もしてこないのは一番いい。
--------いま北海道は、長引く不景気に慣れてしまったようなところもあって、元気があるとはあまりいえません。
 北海道の企業家はチャレンジ精神が足りないのではないですか。生活者の立場からすると居心地がいい からとりあえず危機感がないのはわかる。困っていないもの。企業家がもっとしっかりしろと。生活者ならいいけど経営者だろと。もっと世界を飛び回って、生 活者をしばらく捨てなさいと。どうも札幌の経営者は生活者と同化してしまっている。

=ききて/構成鈴木=