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Interview

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北海道の「稼ぐ力」を高める掲載号:2019年10月

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真弓明彦 北海道経済連合会会長

北海道経済連合会の新会長に、真弓明彦北海道電力会長が就任した。新たな本道経済界のリーダーは、道内経済界の強固な結集力によって、食と観光の振興やものづくり産業の基盤強化などを通じて「稼ぐ力」の獲得を目指す。

子どもの頃は命がけで遊んでいた

――子どもの頃はどんな性格でしたか。

真弓 生まれも育ちも旭川です。男3人兄弟の真ん中で、悪友にも恵まれた“やんちゃ坊主”でした。

小学時代は学校から帰るとランドセルを放り投げて、外遊びに直行。冬には校舎の2階から雪山に飛び降り、親だけではなく先生や近所の人たちから叱られたこともありました。

旭川らしい思い出ですが、氷点下30度以下になると学校が休校になります。そんな寒さの中、毛糸の手袋と靴下をそれぞれ2枚重ね履きし、友人とバスに乗り込みスキー場に。誰1人滑ってはおらず、今日は貸し切りだと喜び勇んだものの、寒すぎていくらワックスを塗ってもちっとも滑らない。顔につららをつけながら泣く思いで帰ったこともありました。今思うと命がけで遊んでいたんですね。

中学生になると夏は軟式庭球部、冬はスキー部と写真部に所属し、放課後と夏冬休みは多忙、いつ勉強していたのかと。母校の小中学校はいずれも廃校となり、さみしい限りです。

高校でも“いい友人”に恵まれ、とても充実した放課後を過ごし、大いに青春を楽しんでいました。

現在、高校、大学の同期・同窓会活動のお手伝いをさせてもらっていますが、先輩後輩、そして同期との絆・縁のすばらしさを感じています。

大学では電気工学科に進みました。卒論テーマは「直流送電」で、その特性や動作理論の調査などをおこない、指導を受けました。

北海道電力に入社後、送電分野への配属を希望し30年近く従事。今年3月に完成した「新北本連系線」も北電初の直流送電設備なので、感慨深いものがあります。

――北電入社後、振出しはどんな仕事でしたか。

真弓 最初の勤務先は「室蘭送電所」(現室蘭支店電力部)です。送電線の保守と工事をおこなう20人ほどの小規模事業所でしたが、このエリアには発電所や製鉄・製紙・製油などの工場も多く、設備規模も数も道内有数でした。

着任初日に送電線で事故が発生。事故の発生箇所と原因を突き止めるべく、主任と2人で虻田の山中に入りました。生まれて初めて「かんじき」を履き、熊よけの鈴を鳴らしながらの巡視です。足元を見ながらついていくのが精いっぱいで、上空の電線を見る余裕などありませんでした。

その後の1年半、高所での点検作業や工事業務などを経験しましたが、先輩や工事業界の人たちのプロ意識の高さと責任感の強さに感心し、また地権者や地域のみなさまのご理解で事業が成り立っていることを肌で感じました。

この1年半はまさしく会社生活の原点であり、現場が会社を支えていることを知った貴重な経験でした。

――これまで経験した中で、特に思い出深い仕事はありますか。

真弓 1989年に東京の海外電力調査会へ出向し、イギリスの電気事業について学ぶ機会を得ました。当時のイギリスはサッチャー政権下での国有企業民営化の真っただ中で、国有電力も翌年に民営化を迎える時期だったため、不安の声を職員から聞かされました。

社内報には「民営(分社)化後も昔の仲間と連絡を取り合い、忠誠心を持って仕事ができるのか?お客さまへ信頼度の高い電気を届けるという共通の目的のため、今まで通り協力していきたい」との職員投稿も見られました。

あれから30年を経て来年4月、日本の電力会社(旧一般電気事業者)も分社化(法的分離)を迎えます。

また、95年から2年間、当時の泉誠二社長の秘書を務めました。社長の立ち振る舞いや発言を身近で見られたこと、そして社内外の多くの人たちとお付き合いさせていただいたことは、大きな財産です。

いち早く人口減少の処方箋を示す

――今年6月、北海道経済連合会会長に就任した率直な感想は。

真弓 身の引き締まる思いであり、髙橋賢友前会長の歩みをしっかりと受け継ぎ、さまざまな課題に対処すべく、私なりにたどるべき道を切り開きながら、北海道の持続的発展に向けて力を尽くしていきたいと考えています。現在、副会長は10名体制で、それぞれの分野で活躍されている経営者の方々に就任いただいておりますが、意見交換を大切にし、全力で取り組んでいきます。

――北海道の経済の現状をどう見ていますか。

真弓 アベノミクスの成果やインバウンドの増加などに加え、食と観光を中心とした北海道としての取り組みの成果が結びつき、本道経済は回復基調にあると受け止めています。

一方で、2019年7月の道内の有効求人倍率は1・21倍と、114カ月連続で前年同月を上回っており、幅広い業種に人手不足が広がっています。

さらに、北海道の人口は全国よりも10年早く減少に転じ、今も全国より速いスピードで進行しています。中でも15~64歳の生産年齢人口の大幅な減少は、北海道における最大の課題です。

言うまでもなく、人口減少は働き手不足、そして生産や消費の縮小をもたらします。この深刻な事態に対処するため、全国の他地域に先駆けてこの課題に取り組み、いち早くその処方箋・モデルを示し、実践していくことが必要だと考えています。

また持続的な経済発展を遂げるためには、エネルギーの安定供給とともに環境保全が大前提であり、泊発電所の再稼働はもとより再生可能エネルギーの活用拡大に向けた取り組みも必要です。

――道経連ではどのような経済振興策に力を入れていきますか。

真弓 北海道の強みである食と観光を中心とした世界の需要の取り込み、ものづくり産業の基盤強化と産業人材の育成、宇宙関連など新産業の創出、スマート農業をはじめとするSociety5・0の実現による生産性向上などにより、「稼ぐ力」を高めることが重要と考えています。

食に関しては、われわれは本年度「道産食品輸出課題検討会議」を設置し、道内食品製造業や農業法人など1500社を対象としたアンケート調査などを通じて取り組むべき検討課題を見極め、北海道食産業総合振興機構(フード特区機構)、農林水産省北海道農政事務所、北海道などと連携しながら、海外の販路拡大を目指していきます。

先日は道が主催する「北海道食とワインの夕べinシンガポール」に出席しました。これは鈴木直道知事のリーダーシップのもと、経済団体や企業が連携し、道産品の販路拡大を目指した取り組みです。今後も官民が力を合わせ、道産品のよさを認識してもらうことが重要だと感じましたし、やはり「食」の基盤となる一次産業の発展は不可欠です。

特に農業においては、ICTやロボット技術を活用した無人トラクターなどスマート農業の実現、またそれに必要な光ファイバーの整備を進めることが重要です。これにより「国の食糧基地」としての役割を担いつつ、さらに発展させることも可能だと考えています。

観光分野では今後、G20観光大臣会合やウポポイ(民族共生象徴空間)の開業、北海道新幹線の札幌延伸といったプロジェクトが予定されています。さらにATWS(アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット)の誘致や、IR(統合型リゾート)の導入、北海道・札幌冬季オリパラの誘致に向けた活動なども進めているところです。

これらのプロジェクトを実現・成功に導くのはもちろんですが、道内7空港一括民間委託の各種施策とも有機的に連動させることで、広域的かつ滞在型の観光振興を道内全域に広げていきたいと思っています。

空港一括民間委託には、戦略的な空港路線誘致に加えて、空港と各都市、観光地を結ぶ二次交通の充実などが全道的な視野で進められることに期待しています。

――ものづくりや宇宙産業の振興策は。

真弓 北海道の総生産に占める製造業の割合は10・1%で、全国平均20・7%の半分にとどまっています。

道経連ではものづくり産業の基盤強化を目的に、本年度から「産学連携会議」を開催しています。この会議体において道内大学を中心に、各自治体や産業技術総合研究所、北海道立総合研究機構、北海道科学技術総合振興センター(ノーステック財団)などと連携しながら、知の結集による技術革新・ビジネスの創出、起業化の促進、専門性を有した産業人材の輩出などを目指していきます。

宇宙関連産業について、道経連では今年2月に「宇宙産業ビジョン『宇宙で変わる北海道の未来、日本の未来』―宇宙版シリコンバレーを目指して―」を公表しました。

5月には十勝管内大樹町で日本初の民間ロケットによる宇宙空間到達が成功しました。さらに6月には大樹町や十勝管内の企業などが次のステップとして、スペースポート整備のための企画会社を設立するなどの具体的な動きがみられます。道経連としても企画会社の事業を支援するとともに、宇宙データの利活用の先進地、あるいは宇宙関連産業の集積地の実現に向けて、精力的に動いていきます。

フェース・トゥ・フェースの議論

――道経連という組織は今後、どうあるべきだと考えていますか。

真弓 道経連は1974年に設立され、私は10代目の会長です。設立趣意書には「北海道の地域経済・社会の発展のため」と記されており、この目的はいまも変わりません。

しかし、われわれを取り巻く社会環境は大きく変化しています。これまでと同じ考え方、取り組み方では維持できるものも維持できなくなってしまいます。

先ほど話したように、これからは「稼ぐ力」を高めることが重要になっていきます。

確実に稼ぐ力を身につけるためには、各プロジェクトや行政に頼りすぎず、自分たちの稼ぎは自分たちで上げる。自らの力で自らが考え新たな産業構造を創り上げなければなりません。このような志をもっている人たちが多く、大変頼もしく思っています。

会長になって3カ月ですが、道経連という組織には多少大胆であっても、明るい将来に向けた構想を示し、道民に共感していただけるような各施策を熱意を持って進めていく力が求められていると感じています。

同時に、われわれが示す明るい将来への道筋は、地に足が着いたものでなくてはなりません。さまざまな分野・地域の人たちと連携し、フェース・トゥ・フェースで議論しながら、それぞれの事業・産業活動が自立し自走できるよう、スピード感を持って取り組んでいきたいと考えています。

=ききて/松田尚也=