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Interview

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加熱式たばこ市場でシェア40%を取る掲載号:2018年8月

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寺畠正道 JT社長

たばこ業界のリーディングカンパニーであるJTも加熱式たばこでは他社の後塵を拝している。同社の加熱式たばこ「プルーム・テック」の供給体制が整い、全国発売がスタート。巻き返しの時がやってきた。民営化後としては史上最年少となる新社長に、今後の展望を聞いた。

「プルーム ・テック」全国発売

――民営化後では最年少での社長就任です。海外たばこの統括子会社JTインターナショナル副社長の経歴が示すとおり、海外での活躍が目立ちますね。

寺畠 JTに入社して30年になりますが、そのうちの12年以上、4割強が海外勤務です。イギリスやスイスで海外たばこ事業を立ち上げるという経験もさせていただきましたし、M&Aも数多く携わりました。海外事業は弊社の売上、収益ともに約3分の2を占めるまで成長してきました。

――国内の状況は。

寺畠 日本国内での紙巻たばこのシェアは61%を超えており、今も伸びています。このシェアを堅持していく一方、現在の一番のプライオリティは加熱式たばこです。日本のたばこ市場における加熱式たばこのシェアは約21%まで拡大しています。この市場でわれわれはまだ、あまりシェアを取れていない。実は私自身も2013年からプルーム・テックの開発に携わってきました。

これまでカプセルの製造が追いつかず、地域限定での販売をしてきましたが、供給体制が整い、7月2日に全国発売を開始しました。北海道でも、ほぼ全てのコンビニエンスストアで購入できます。

カプセルは静岡の工場で製造していますが、かなりテコ入れをしました。全国各地の工場から応援を入れ、海外のエンジニアも何十人と呼んで、24時間体制で工場を稼働させています。

7月の全国発売に向け、全ての日本の支社を回り、各社員と話をして直接、私の考えを伝え、頑張ってくれというエールを送ってきました。これからはプルーム・テックの良いところを、みなさんに伝えていきたい。

――プルーム・テックを楽しむためには何が必要か。

寺畠 まず最初に本体となるバッテリーと充電器がセットになったスターターキットが必要です。次に、パウダー状の葉たばこが入った専用カプセルをご購入いただきます。リキッド入りのカートリッジが入っていますので、バッテリーと連結させ、カプセルを挿し込めば、すぐに味わうことができます。

20年末カテゴリーシェア40%が目標

――加熱式ではフィリップモリス社のアイコスが強いですね。

寺畠 確かに先行されてはいますが、プルーム・テックの差別性はかなりあります。温度帯が全く違い、嫌なにおいもしません。使い勝手も良く、健康懸念物質は紙巻たばこと比べて99%以上削減しています。

紙巻はダメ、他の加熱式たばこもダメ。でもプルーム・テックなら吸ってもいいよ、というお店が東京を中心に約1600店まで増えました。JTグループ全体で製品を押し上げ、巻き返していきたい。

――同じ加熱式でも他社製品とは別ジャンルという考え方もできますね。

寺畠 新しいカテゴリーをつくりにいくという思いです。体温よりも低い30度温度帯のプルーム・テックは、他社の300度温度帯の製品とは違うカテゴリーだと考えていますし、ベネフィットも違います。差別性を訴求していくとことで、かなりシェアが取れるのではないかと考えています。

――先行されている危機感はありますか。

寺畠 もちろん危機感はあります。国内だけで見ると、この2年で弊社の利益も減っています。これを取り返さなければならない。

3年後の20年末までに加熱式のカテゴリーで40%のシェアを取るという目標を立てました。ほとんどゼロからの40%ですので、かなりハードルは高いのですが、プルーム・テックのベネフィットと新製品の投入により実現可能だと考えています。

――新製品とは。

寺畠 プルーム・テックの吸い応えを強化した「プルーム・テック・プラス」と他社と同じ領域の高温加熱式製品となる「プルーム・エス」です。製品開発も順調に進んでおり、最速ならば18年末から19年初めに投入できます。

――「プルーム・テック・プラス」の吸い応えはずいぶん変わりそうですか。

寺畠 今のプルーム・テックよりも吸い応えのある製品とするため、デバイスの構造等を工夫しました。私が試した感じでは、かなり煙量感がありました。

――「プルーム・エス」も楽しみです。

寺畠 高温加熱帯製品においては弊社は後発ですから、競合製品よりも操作性が良く、掃除やメンテナンスの手間は少なく、味の満足度を上げ、においも抑えたい。

――既存の高温加熱式には独特のにおいがありますが、これはJTの新製品でも消せないのでしょうか。

寺畠 完全に無くなるとは言えません。紙巻たばこは800度以上で燃焼していますのでにおいが出ます。プルーム・テックシリーズは30度と圧倒的に加熱温度が低いため、ほぼにおいが出ません。温度帯を300度まで上げると、それなりににおいは出ますが、このにおいを抑え、差別化できる商品を開発しています。

――昨年11月号で小泉光臣前社長は「プルーム・テックは加熱式たばこの最終形態ではない」と語っていました。2つの新商品がその最終形なのでしょうか。

寺畠 新製品は2品出しますが、やはり最終形態ではありません。この分野は何年かに1度は新しい製品が出てくるようなビジネスモデルになっていくと思います。開発はここで止まるわけではなく、その先を見据えた開発も続けています。

――開発費は相当かけているのですか。

寺畠 18年から20年の3年間で、グローバルで1000億円超を見込んでいます。開発し、設備投資をし、技術パテントを買うなどすると、加熱式にかかわる経費だけでこのぐらいかかる。18年はその中の約600億円を投資する予定です。

50歳以上の未開拓市場に光明

――加熱式市場はまだ伸びるのでしょうか。

寺畠 昨年、一昨年で急激に伸びました。それまでの1%程度から2年間で18%まで伸び、今年の3月までに21%。ここ3カ月は21%台であまり動いていません。いったん、伸びが止まりつつあります。

ただ、これから弊社のプルーム・テックが全国拡販をスタートします。また、10月以降には紙巻たばこ、加熱式ともに増税されます。その中で価格帯がどう変わるのか。このタイミングで加熱式が伸びる原動力になる可能性もあると思います。

――一定層までは行き渡ったという感覚でしょうか。

寺畠 そうした考え方もできますが、他社のデバイスは50歳を超える喫煙者にはあまり行き渡っていないようです。50歳を超える喫煙者というのは日本の喫煙者の40~50%とかなりの量を占めます。
 こうした層に対しては、プルーム・テックの使いやすさや低温という部分が“刺さる”可能性が高い。カテゴリーも違えば、開発・販売する母体も違うということを発信していきたい。

――販売戦略は。

寺畠 この4月から営業体制を変えて、直接お客さまや事業主さまにプルーム・テックのベネフィットをお話をして、納得いただける体制を整えました。紙巻たばこは、店舗の棚をおさえて、お客さまに認知してもらうのが勝負という一面があります。

それに対し、加熱式は、まずベネフィットを認知してもらう必要があります。また、スターターキットを買う3000円の初期投資もハードルを上げています。ただし、このハードルをクリアすると、定着率はすごく上がります。

――ほとんどにおいがないプルーム・テックには新たな可能性を感じます。

寺畠 社会的な課題を解決する商品にもなりうると思っています。火元を気にせず使えますので、高齢者でも安心です。家の中でもご家族の賛同が得られやすい商品だと思います。

また、例えばトラック業界では「長距離運転によるストレスもあるので、ドライバーに禁煙しろとは言えない。ただ、火元の問題もあるし、灰も出る。においが残ると、次に喫煙されない運転手が乗ると嫌がる」と聞きます。プルーム・テックはこうした問題も解決できます。

――海外における加熱式の状況は。

寺畠 加熱式においては、日本が圧倒的に先進国です。20%を超えているのは日本だけ。次が韓国で約9%。日本で伸びた影響があると思いますが、増えています。ヨーロッパは少なく、平均1%にも満たない状況です。

――日本が先行マーケットなのですね。

寺畠 日本は低ニコチン・低タールやメンソールが定着している独自性のあるマーケットです。自分もにおいは気になるし、他の人にも影響を与えたくないという、他者への配慮という文化的な側面もあると思います。

――北海道のマーケットをどのように見ていますか。

寺畠 非常に重要なマーケットととらえています。約1000億の売上高がある大きな市場ですし、人口も500万人を超えている。頑張らなければいけないマーケットです。

――ありがとうございました。

=ききて/八木沢考司=