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Interview

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信金こそが地域活力を創造する掲載号:2012年2月

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北村信人 北海道信用金庫協会会長

 歯止めのかからない人口減少で疲弊し続ける地域経済。その再生には地域を支える中小企業を元気にするしかない。その役割は道内23の信用金庫が担っている。12月28日、大地みらい信金本店(根室市)に北村信人北海道信用金庫協会会長を訪ねた。

預金量は増えても融資先がない

――月1日、道内23信用金庫の2011年9月中間仮決算が発表になりました。前年同期比で見ても貸出残高は軒並み減少。それによって利息収入が減り業務純益が悪化した信金は19信金にのぼります。
北村 私が大地みらい信金の前身、根室信金の理事長に就任したのは1997年です。その当時の道内32信用金庫の平均の預貸率は約62%であり、私が理事長就任と同時に掲げた目標が65%まで引き上げることでした。しかしながら、その後は、預金量の増加等もあり、右肩下がりで、いまでは41%です。
――一方で、預金量は増えていますね。
北村 97年11月に北海道拓殖銀行が経営破綻しました。その後、一気に当庫の預金量は増えました。分母が大きくなったものですから、預貸率はあっという間に60%を割ってしまった。
預金量はその後も順調に増え、大地みらいはこの12月に3000億円を突破しました。現23信金のうち、順位でいうと9位の額です。
――預金量は増えても融資先がないと。
北村 少子高齢化をともなった人口減少時代に突入したいま、先行き不安ばかりで、お金が回るような経済状況ではありません。それは、この根釧地域に限ったことでもありません。不安があるから預金が増える。地元の中小企業も設備投資を控える。資金需要がない。われわれとしても融資先がない。どうしても預貸率は下がります。
同時に他業態との金利競争です。融資先がないので限られたパイを奪うために金利競争をしかけてくるのです。それも常識外の金利を出してくる。われわれも顧客を取られるわけにいかないので競争せざるを得ない。この部分も収益を悪化させる要因になっています。  道内23信金の9月中間仮決算では、純利益は全体で2割落ちています。減収減益が続いている状況です。
――他業態というのは地銀ですね。
北村 どことは言いません。ただ私は、適正な金利と付加価値を付けたサービスで、企業を育てる競争をしましょうと言っています。いまなら創業支援や販路拡大、企業再生等課題解決に向けたコンサルティング営業を徹底しているからです。
i2――それに対して地銀側は何と言っているんですか。
北村 「われわれも大手にやられているんです」と。でも、信金も大手と戦っています。
――こうした状況では、信金は今後も減収減益の決算が続いていくのでは。
北村 先の通り、預金は増えても資金需要が少ないという預貸のミスマッチが起きています。融資をしても低金利。有価証券等を含めた運用も低利回り。そういう意味では増益にするのは非常に難しい状況です。各庫とも現状でもかなり経費率を落としていますが、さらなるコスト削減に取り組むことが大事になります。
――人件費も落ちている。
北村 各信金によってさまざまでしょうが、大地みらいの場合、1人当たりの人件費は落としていません。ただ、全体の仕事量は増えても人を増やしていないので、1人当たりの生産性は高まっています。
――33信金から23信金にまで再編は進みました。今後も合併はありますか。
北村 あるでしょう。限界集落とは言わないまでも、それに近いような地域にも信金はあります。主なマーケットがそういう地域であれば、やはりいろいろ考えざるを得ない。ただし、以前のような救済型の再編は難しいでしょう。お互いのメリットが共有されることが重要な条件になるのだと思います。
――大地みらいは根室信金と厚岸信金の合併でした
北村 1年の合併ですから、ちょうど10年になります。当時、厚岸の幹部とこれからの金融のありようについてひざを詰めて話し合いをした。一番の焦点は、世の中がどんどん変わっていく中で、地域金融に対する役割も当然変わる。求められる中身も変わる。それが地域ニーズです。また個々の企業ニーズも変化するし、高度化する。そういうものに応えられないと地域金融機関と言えない、あるいは勝ち残っていけないと。そこが一番の合意点でした。ですから、吸収とか救済では全くなく、未来を見据えた「戦略的合併」だったのです。

金融の円滑化は当たり前のこと

――この2年間は「中小企業金融円滑化法」の効果もあったのか、倒産件数は増えていません。同法の1年延長も決まりました。
北村 金融庁は、これが最後でもう延長はない、これまで隠れていた不良債権について、今度は再建できない企業についてきちんと処理してほしいと言っているようですが、そもそも金融の円滑化というのは、間接金融をやっている金融機関にとって当たり前のことです。われわれの使命は金融の円滑化に尽きます。ですから私個人は、わざわざ法律を持ち込んで云々という必要はまったくなかったと思います。ただ、そうでない金融機関もあったとすれば、政府としてやったことは理解します。
条件緩和した件数を金融庁に報告していますが、本来、不良債権と認定した債権については、引当をしなければなりませんが、していない債権があるのかと言うと、それはないですよ。
金融円滑化というのは資金繰り支援ですから、ニューマネーも出ます。円滑化法施行前から、お客さまの返済期間の延長や返済負担の軽減などの要請には従来から対応させていただいています。
――延長の影響は。
北村 少なくとも信金にとっては何の影響もないと思います。しかし、それ以前に由々しきことは、事業者数の減少。各信金エリアで、下限でも2割、上限では3割くらい事業者数は減っています。それだけ融資先がなくなっているということです。これには必ず雇用がついている。雇用が失われるということは地域経済がどんどん先細るということです。ですから、できる限り企業を減らさないようにしなければなりません。しかも元気のある企業にする。そのためにわれわれは存在しているのです。われわれのバックボーンは相互扶助。まさに共存共栄で、地域の発展に寄与することが使命です。
――そうは言っても、中小企業の体力はだいぶ弱っています。信金として貸し出しを伸ばすためには、そうした地域の中小企業を活性化させることだと思いますが、どんどん人口が減る中でこれまでのような拡大志向では立ちいかなくなるのではないですか。
北村 グローバル化のスピードが増して今日を迎えています。加えて少子高齢化、人口減少によって市場が縮む。政府の力はない。  それでもわれわれは地域とともに生き抜いていかないといけない。ここが難しいところですが、お互いの知恵を出し合いながら、金融の持っているノウハウ、平たく言えば課題解決型コンサルティング機能を強化して乗りきるしかありません。企業が抱える課題はA社、B社、C社、全部違う。そこを応えられる金融機関でなければなりません。
北海道の経済、特に建設業については、公共工事に依存してきたことは否めません。また、そこに代わるものもそれほど出ていないのも事実です。
――これも公共事業ですが、北海道新幹線の札幌延伸が決まりました。
北村 私は根室商工会議所の会頭を6年やっていましたから、東北海道商工会議所の公の席で反対意見をぶつけています。結構、拍手をもらいました。  なぜ本州と四国の間に3つもの橋がかかるのか。それを考えれば北海道に新幹線を持ってくるなどというのは当たり前のことです。敷くことはいい。しかし、そこには地元の財政負担がある。いま道の財政状況は都道府県の中でも最悪の部類です。まったく財政に余裕がないのに、それをかぶって誰が払うというのでしょうか。道東のインフラはものすごく遅れています。生活道路も産業道路も。そうした整備をしてほしいと訴え続けてきても、国や道はほとんど手をつけない。そんな中で新幹線が札幌まで延びる。工期25年、ではその後釧路にくるか。きません。そもそも人口減少で日本人の利用客が減るのは明らか。航空運賃も安くなっているかもしれません。そんな不確定な事業のために莫大なお金を使うというのは納得が得られないのではないでしょうか。
――本来、地域にくるべきお金も新幹線に回されることになると思います。
北村 札幌への一極集中はますます進むでしょう。190万都市ですから医療も、教育も、当然、サービスも集まる。一方、地方の医療過疎は深刻ですが、道はそういう政策を取っていない。地域がこれだけ疲弊するなかで、札幌だけで生きていけるのか。生きていけませんよ。

融資は地域貢献のバロメーター

――その意味でも、官に頼らない地域をつくらなければなりませんね。
北村 国とか道とかにおねだりしないような地域を自らつくり出していくしかありません。
――預金量は増えても融資先がないということですが、いま23信金全体で預金量はどのくらいですか。
北村 6兆5000億円を超えています。
――そのお金を何とか生かせないのでしょうか。
北村 預金は信頼のバロメーターです。そして、融資は地域貢献のバロメーター。先の通り融資がどんどん減っている。もちろん、融資先があるのに貸していないということではありません。それぞれの地域のシェアを見てもらえば一目瞭然ですが、たとえば、大地みらいの主要エリアのシェアは60%。根釧地域全体のメーンバンクの比率は32・7%です。はっきりいってダントツです。貸し渋りなんてあるわけもない。
先行きが非常に厳しいから投資をしないということで、融資の需要が極端に少ない。しかし、それでは困る。だから需要が生まれるような地域につくり上げていかねばならないというのがわれわれの経営課題です。各地でそういう地場企業を育てています。
――具体的には。
北村 大地みらいでは、職員に農業経営アドバイザーのライセンスをとらせ、農の分野に参入しています。根釧地区には優秀な酪農家も多く、乳製品の6次化のお手伝いとか、農機具の購入、更新の際の融資などです。また、全道の信用金庫でみると、弊金庫を含め65人を超える中小企業診断士が在籍しており、地域のホームドクターとして、課題解決に向けたコンサルティング機能の発揮等、地域活性化のお手伝いをさせていただいております。
――根室ということでは、ロシアとの交流は。
北村 大地みらいではロシア語のできる職員を2人雇っています。2島返ってきたらすぐに支店を出そうと思って(笑)。ちょっと夢は遠のいた感じですが。
――2島返ってきても人のいない島ばかりでは。
北村 色丹にはいますよ。ですから色丹に支店を出す。商売にはならないけどロシアの情報を得る。本当に私の見果てぬ夢ですよ。

=ききて/鈴木正紀=