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Interview

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余剰スペースに無限の可能性掲載号:2019年6月

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河野貴輝 TKP社長

国内外で2147室の貸会議室運営を手がけているティーケーピー。オフィスビルのみならず、商業ビルやホテルにも出店を続けている。道内での需要や今後の展望などを河野貴輝社長に直撃した。

スタートは取り壊し決定のビル

河野貴輝氏は1972年10月13日、大分県出身。96年慶應義塾大学卒業後、伊藤忠商事に入社。為替証券部を経て日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)、イーバンク銀行(現・楽天銀行)の立ち上げに参画。2005年にティーケーピーを創業した。

同社は遊休不動産をオーナーから借り受け、時間貸しの会議室として貸し出す手法で事業を拡大。17年には東証マザーズへの上場も果たした。いまでは国内外に256拠点を有するリーディングカンパニーに成長を遂げた。以下、河野氏との一問一答。

   ◇    ◇

――伊藤忠商事時代にはどんな業務を。

河野 為替証券部でディーラーをやっていました。部門で1兆円ほどの資金を動かしており、先物オプション売買では一晩で大きな損失を出したり、利益を上げたりするような仕事でした。

――起業したきっかけを教えてください。

河野 伊藤忠商事では、日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)を設立。その立ち上げから関わりました。その後、イーバンク銀行(現・楽天銀行)を立ち上げ、資金集めから対外折衝まで奔走しましたが、自分で経営がしたいという思いが募り、ティーケーピー(以下、TKP)を設立しました。商社で金融に携わり、ネット証券、ネット銀行とベンチャーの起業をやってきたので、このノウハウを生かしてBtoBの世界で勝負しよう、と。

いわゆるシェアリングエコノミー的な考え方でインターネットを利用したビジネスを展開しようと考えました。しかし、最初から貸会議室ビジネスをやろうとは思っていませんでした。

――どのような経緯で1号店を開業したのですか。

河野 現在の六本木ミッドタウンのあたり、当時の防衛庁跡地に再開発地域で取り壊しが決まっている3階建てのビルがありました。

2階と3階の各20坪を借り上げ、家賃は20万円。3階を近くで工事をおこなっていた建築会社に仮事務所として月貸しをし、2階部分を時間貸しの貸会議室にすることにしました。 

自分で「貸会議室ネット」というホームページを作成しました。当時はインターネットが普及し始めたばかり。ヤフーBBが出る前で、貸会議室をインターネットで集客するなんて方法をとっていた会社は他にありませんでした。

――開業後の反響はいかがでしたか。

河野 案内はネットに出しているだけ。それなのにひっきりなしに問い合わせの電話が入ります。日に日にサイトパワーが上がっているという手応えはすごく感じました。
 そして貸会議室にはいろいろな使い方があることもわかりました。打ち合わせだけではなく、テレビドラマの撮影やオーディション会場としても利用されました。1号店、2号店と運営していく中で「これはやっていける」と確信に変わっていきました。

時間貸し会議室ビジネスの稼働率や回転率はどうなのかとよく聞かれるのですが、どの企業も社内に10人~20人程度のスペースであれば所有していると思います。それが100人、200人が入る規模のスペースとなると、その空間を自社で持っていること自体がコストにつながります。ですから、その空間をシェアしましょうという事業モデルです。

さらに、ただスペースを貸し出すだけではなく、お客様が希望する使い方ができるよう、空間のアレンジをおこなっています。机、イスの配置から始まりライティングや音響設備も準備します。その空間で実施されるイベントを成功へ持っていくのがわれわれの仕事なんです。どれだけ付加価値を高められるかが勝負所。ケータリングや宿泊施設運営、事務局代行サービスなどの業態もお客様からのニーズに応える形で広がっていきました。

地方初進出は札幌、苦い経験が糧

――2006年に札幌市内で宿泊施設を併せ持つ拠点を開業しました。これが地方初進出でしたね。

河野 設立2年目でかなり大きな決断でした。中央区南7西1の「ルーシス札幌」という宴会場が大きなホテルを借り受けました。しかし、客室が80室しかなくて効率が悪いんです。80室でも200室でも朝食を提供しないといけない。フロントにもスタッフを配置しないといけない。夜勤スタッフも必要となる。さらに部屋も広いので清掃も大変で冷暖房費も高くなり、コストパフォーマンスが悪かったんです。

私自身が3カ月間常駐していたのですが、当時は宿泊業界のこともわかっていなかったですし、勢いだけで事業を展開していた部分もあったので……。

結局、札幌第一ホテルに譲ることになりましたが、この経験が現在の経営に生かされています

――それでも現在、道内では札幌に12拠点、帯広に1拠点を構えています。北海道という市場をどう分析していますか。

河野 出店は札幌に集中しています。札幌駅・大通・ススキノにエリアが分かれていますが、まだまだ出店できる余地はあると思っています。

会議室のほかレンタルオフィスやコワーキングスペース、ホテルも展開可能だと思っています。さらに札幌ではレストランも出しているので複合的に展開できると考えています。

――札幌にある拠点の稼働率はいかがですか。

河野 かなり高いです。とくに宿泊施設が充実していますから。ホテルの稼働率は当社の中で一番高いと思います。札幌の拠点を利用されるお客様の約半数は、札幌以外のお客さんです。

――札幌・帯広以外の道内の主要都市へ進出する可能性はありますか。

河野 やはり旭川・函館は非常に興味があります。

業務提携や買収で展開を拡大

――アパホテルや大塚家具と業務提携を結んでいますが、その理由は。

河野 出店にあたって最優先するのは立地です。しかし、いい場所にはすでにいいビルがあるわけです。そしていいビルにはすでにテナントが入っており、その建物の中の200坪を会議室にしたいから貸してほしいと頼んでも優先順位を後回しにされてしまう。

ところがレンタルオフィスやコワーキングスペース、さらにはホテルにもすることもできる。たとえばそれで3000坪、複合的にビル1棟貸してくれとなると競争力が強まります。

多様かつ影響力のある業態、ブランドを持つことで仕入れの可能性が広がる。よりいい立地に出店できる可能性も高まります。

先日、レンタルオフィス事業を展開する日本リージャスを買収しました。リージャスというブランドがあれば、時間貸し会議室、月貸しオフィス、コワーキングと、すべて展開できます。商業施設を含めてすべてのスペースにアプローチできることが大切だと考えています。

札幌の旧丸井今井の南館がいい例です。5階から7階までの売り場だったフロアを好立地だったのですぐに借り受け「TKPガーデンシティPREMIUM札幌大通」としてオープンさせました。

土日は催事やイベント会場として利用し、平日はTKPの会議室にすれば予約が埋まります。このようなハイブリッドな使い方で商業ビルにも出店していきたいと思っています。

――昨今、働き方改革でコワーキングやシェアオフィスに注目が集まっています。

河野 大企業といえど自社でオフィスを持つ時代ではなく、あらゆる場所にサテライトオフィスがあり、どこでも出勤できるようになってきています。全社員が同じ場所、同じ時間に出社しなければならない道理はないのです。通勤ラッシュに巻き込まれることがなくなりストレスも軽減されるはずです。

日本リージャスを保有していたIWG(スイス)のリージャスは、110カ国、1100都市、3300拠点を誇ります。今回の買収を契機とし、TKPのお客様が各国のリージャスの会議室も使えるようになります。

――今後の出店プランを教えて下さい。

河野 国内の賃貸オフィスのマーケットでは、40兆円もの家賃が発生しています。その中で10%を獲得すれば4兆円。ホテルマーケットが2兆円を切っている中、大きな市場だと言えます。

現在、TKPと日本リージャスをあわせると約400拠点、約15万坪を展開しています。これを今後10年で1500拠点まで広げる計画を立てています。

これから4、5年の間に東京では、約150万坪の新しい賃貸オフィスができる。企業やテナントが新しいビルへ移転するに伴って、空きビルがたくさん誕生します。そのスペースをすべて当社で確保したい。多種多様なスペースとして利活用しながら貸会議室業界を牽引していきたいと思っています。

=ききて/佐藤裕樹=