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Interview

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体制の整備は終わった
公的資金は設立百周年までに返済する
掲載号:2010年8月号

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横内龍三 札幌北洋ホールディングス社長 北洋銀行頭取

前期、有価証券などへの資金運用から2000億円超の大幅赤字を出した札幌北洋ホールディングス(HD)。ところが今期は過去最高となる316億円の純利益を計上。見事なまでの“V字回復”を指揮した横内龍三氏を直撃した。

最高益も配当を抑え内部蓄積を優先

――横内さんが北洋銀行の頭取に就任して丸4年がたちました。まさに“激動の4年間”という印象です。
横内 頭取就任後すぐ札幌銀行の合併に動きました。その準備が整って2008年10月、いよいよ合併 がスタートするぞというときにリーマンショック。09年3月期の赤字決算は確実となり、09年3月31日に1000億円の公的資金を注入しました。そこで 赤字は一期のみにとどめて、この3月期に黒字転換。その間、旧拓銀本店跡に「北洋大通センター」の建設もありました。このプロジェクトはリーマンショック 以前に計画したものでしたが、本年4月に竣工。また、6月には1年半かけて進めてきた42拠点の店舗統廃合がすべて終了しました。私自身も1つの大きな節 目を越えたかなという気持ちです。
――新しいビルはもう慣れましたか。
横内 まったく慣れていなくて、うろうろしています(笑)。物を運べるのは土日の夜間。まだ、すべての部署が移りきっていません。
――完了するのは。
横内 7月いっぱいかかると思います。
――6月24日が株主総会でしたね。
横内 前期の赤字決算は、お客様にも株主のみな様にも大変ご迷惑をおかけしました。中には拓銀破綻の 再来を心配された方もいらっしゃったかもしれない。幸いあとの対応はしっかりできまして、風評被害にさらされることもありませんでした。むしろ取引先のみ な様からご声援も頂戴し、早くしっかり黒字転換できたと思っています。ただ、現状では内部蓄積を優先せざるを得なく、配当は少し抑えさせていただきまし た。
i2_2 ――それにしても見事なV字回復でした。
横内 そもそも赤字をもう少しうまく回避できなかったのかという思いは残っています。リスク管理をうまくやって、赤字をできるだけ出さないようにすべきだったという思いは強い。そういう状況の中で昨年は、全役職員が本当に頑張ってくれました。
――史上最高益316億円というのはHDですが、北洋銀行単体の純利益302億円というのは。
横内 ほんのちょっとの差で2番目。1億円か2億円の差だったと思います。
最終利益の額もさることながら、この1年間で体質改善がしっかりできたことが大きいと思います。いろんな不良資産の整理を終え、有価証券の経理上減損処 理もだいたい終わりました。簿価を時価にまでしっかり下げてありますので、仮に日経平均が7000円台になっても損失の計上をしなくてもすむ。われわれと しては利益の額よりも、お客様に対して今後しっかり対応できる体質になったというほうが重要です。
――そうはいっても、これだけの純利益を出すには、さまざまな見直しを断行されたからだと思いますが。
横内 経費の面は自助努力でできますので徹底的に見直しました。人件費は役員報酬を大幅カット。一般 職員についてはボーナスの支給率を下げました。また合併に伴う合理化効果も大きかった。できるだけ前倒しで行ったことが、最終利益を確保する大きな要素に なりました。合併については、こういう事態を想定したわけではないですが、あのとき決断し、実行しておいて本当によかったと感じます。厳しいときに合併し ようといっても効果が出るまで2年はかかりますから。

1次産業、医療健康分野に融資拡大

――昨年1年、貸し出しが2500億円余り増えていますね。
横内 北海道全体の資金需要が、ともすればマイナスの状況の中で、私どもは貸し出しを4・5%ほど伸ばしています。これにはいろいろ理由があります。
1つは合併の作業の中で、北洋と札幌2行と取引しているお客様が1行取引になってしまった。だから別の銀行とも複数取引を図りたいと他行に流れる動きが ありました。合併すると店舗統合などでいろいろと移転事務のほうに時間がとられ、どうしても本業が手薄になる。こうしたときに他行に融資が移る面がある。 しかし、われわれの体制が徐々に整い、これらを完璧に取り返したのが昨年でした。
もう1つは、公的資金が入ったことで注入の条件である中小企業金融をさらに充実させたこともあげられます。本部組織を変え支店と一体となって、お客様に北洋を選んでもらおうという推進体制を強化しました。
また、地域の産業支援あるいは活性化、こうしたところに人員を厚めに配置して、お客様のビジネスマッチング、“産・官・学・金”の交流などについて積極 的に関与しています。将来的にお客様の業績が伸びていただければ、貸し出し機会も増えることになる。金融庁も地域金融機関は中小企業に対してコンサルティ ング機能を強化すべきと言っています。昨年1年われわれはこの部分に相当努力をしまして、お客様から評価をいただきました。
i2_4 ――今年度の状況は。
横内 伸び率としては昨年のレベルが高いので落ちてはいます。それでも現在2・5%くらいで走ってい ますので、全体の資金需要が出てこない中では引き続き健闘しているという感触です。ある意味、厳しい環境をくぐり抜けましたので、役員も職員もいい意味で 目つきが変わってきている。仕事に対するモラールもより高まっていると感じます。
――そういう中で1次産業、医療・健康分野に融資先を広げていますね。
横内 今後、成長が期待される分野には以前から力を入れています。東京で食についてのビジネスマッチ ングをやっていますが、こうした動きに合わせて道経連では「食クラスター」構想を進めている。農漁業の生産者、加工業者、輸送、小売までを結びつけ、さら には食と密接に関連する観光までも含めた地域活性化の構想です。やはり北海道に期待されるのは農業。われわれも、いまそこに全力をあげて取り組んでいま す。
――1次産業への融資は農協や漁連の系統金融機関と摩擦を起こしませんか。
横内 すでにでき上がっている仕組みの中にいきなり飛び込んでいくようなビジネスは考えていません。  たとえば農家のみなさんがインターネットビジネスを手がけたいとか、あるいは独自に消費者、小売と結びつきたいとか、農家が集まって農業法人で何かをや りたいとか、いままで系統金融がやっていない分野で資金需要があれば支援していくということです。
――医療・健康分野は。
横内 医療は安心・安全の一番の基本です。今後の人口構成は高齢者のウエートが高くなります。札幌と それ以外の地方との医療格差が出てきている中で、たとえば3つの医科大と各種医療機関、それに伴う医療関連企業の結びつきを、われわれがコーディネートし て、札幌圏だけでなく地方でもしっかり医療機関が存立していけるように、医療・健康分野も力を入れています。
もう1つ、北海道では環境に関連するビジネスも有望だと思います。ただ問題は、環境を事業としてきちんとやっていくためにはビジネスモデルが描けないと ダメだということです。たとえば、北海道には苫小牧市と十勝管内の清水町に2つのエタノールの生産設備があります。ところがこれは農林水産省の補助事業。 エタノールをつくるだけです。では、つくったエタノールはどうしているか。ガソリンと混合する施設は横浜にしかない。苫小牧から船でエタノールを横浜に運 んでいるんです。船で運べばそれだけ重油が必要です。ですから、本来は石油業界を管轄する経済産業省と連携して北海道に混合施設をつくらないと実はビジネ スモデルとして完結しない。本来、全体を見渡すべき環境省は何となく乗り遅れています。
風力の問題も、景観や高周波の影響などについて住民は心配しています。そもそも発電された電気を北海道電力が買い取る仕組みがどうなっているのか。この へんの枠組みがまだはっきりしていないので、ビジネスとして動き出すことができるのか不透明な部分もあります。私どもも金融面で応援できる体制にはありま すが、まだプラン段階で先に進めないことろがあります。まさにこれからの産業ですから関係者も相当力を入れているんですが、われわれの願っているほどのス ピード感は、まだないというのが印象です。
――そうした成長性を見極める“目利き”の養成は。
横内 そこが重要なポイントです。そういうノウハウを持った人材をどのように育てるか。現在、知識 と、現場での経験と、これを一体化するべく人材育成に力を入れています。先ほど地域産業支援の部署に人員を厚く投入したと言いましたが、みな若手です。知 識の吸収と経験。これでしっかり目利きの力を養っていかないといけない。これは一朝一夕にはできませんので、継続的にやる必要があると思っています。

エクイティ・ストーリーを示したい

――公的資金の返済はいつを予定していますか。
横内 具体的にいつという目標を定めたわけではないですが、公的資金を入れるとき今後どのくらい収益 をあげていけるかを考えました。通常で、われわれには年間200億円を超える収益をあげられる力はあると思っている。確実に年間100億円は内部留保を積 み上げることはできるだろうということで、法律の縛りは15年ですが、10年以内には返すという一応の計画は立てています。ただ税金からの資金ですので、 できるだけ早くお返ししたい。
たとえばこの1年、当期純利益で300億円をあげることができました。外部流出分を含めても二百数十億円の内部留保を積み上げられた。2年半分を1年で 稼いだということです。昨年はできすぎとしても、私は最近行内に向かって、2017年に北洋銀行の百周年が来る。何とかそのときまでにきちんと返して、百 周年を迎えようと言っています。ですから10年を7年で、そんな気持ちです。
――もちろん楽観は禁物ですが、合併後の体制が整ったいまの勢いだと17年までの返済は十分可能だと思いますね。
横内 返済は利益の積み上げが一番の主軸ですが、私どもは規模に比べて資本の額が小さいほうなんです ね。いまの状況がもう少し安定してきて、私どもの収益基盤もある程度確立してくることが実績として証明されてくると、今後の対応としてやりたいことがたく さんあるんです。機械化投資をしてそれをビジネスに生かそうとか。  そうした“エクイティ・ストーリー”を示して、増資なども考えています。そういうことがきちんと示せれば、また職員の士気も上がるでしょう。そうなれば 公的資金の返済などにもさらに弾みがつくと思います。

=ききて/2010年6月30日取材 鈴木正紀=