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Interview

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二階俊博に聞くなぜ、いま、国土強靭化が急がれるのか掲載号:2012年8月

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二階俊博 

 東日本大震災は多くの貴い命を奪い、そして不自由な避難生活をいまだ人々に強いている。だが、その一方で日本人は今回の災害から防災・減災の大切さ、人と人との絆の尊さを学んだ。自民党の二階俊博氏に国土強靱化基本法案について聞いた。

復興はもっとスピーディーに

――二階俊博さんは自民党国土強靱化調査会の会長を務めており、「国土強靱化基本法」の早期成立に心血を注いでいます。なぜ、この時期に同法が必要なのですか。
二階 自民党執行部の大島理森副総裁や茂木敏充政調会長らから、国土強靱化調査会というものをつくりたいという話がありました。今日の災害復旧を早め、防災、減災などの対策をして、党としての考えを明確にするときだ、そして長く続くデフレ状態から脱皮するための新経済成長戦略が必要ではないか、というものでした。
私も、それは大事なことだと思い引き受けました。
ただ、最初は、「強靱化」という名称のままではダメだと考えていました。「われわれは選挙に勝たなければならない。そのときに強靱化などということを言っていていいのか。字も書けないし、読むのも難しい。こんな言葉でいいのか」と直感的に思ったのです。
私がそう言うと、茂木政調会長は「よくわかりました。名称も含めて考えてくれませんか」とおっしゃった。大島副総裁からも「名前も人事も考えてくださいよ」と頼まれました。
それで3日ばかり悩んだのですが、せっかく執行部が考えた名前ですし、「強靱化とはなにか」ということから入っていくのも1つの方法ですから、「この名称のままいきましょう」ということにしました。
政治評論家やいろいろな立場の人から「こんな難しい字を使って大丈夫か」というアドバイスもいただきましたが、しっかりとした強靱化策を見いだすべく懸命に今日まで取り組んできました。
そうした勉強会を重ね、7月5日に党本部で出版記念会をおこなった、「国土強靱化 日本を強くしなやかに」(相模書房、定価2000円)の、第2弾を仕上げたいと考えています。
私たちは現在、国土強靱化基本法案、南海トラフ巨大地震対策特別措置法案、首都直下地震対策特別措置法案の3法案を衆院に提出しています。また、国民の皆さんにこの法案の意義を理解していただくことがなによりも大事ですから、国会審議の合間を縫って地方で説明会やパネルディスカッションを開催しています。
i2――民主党政権の防災計画では国民を守れない。
二階 そんな僭越なことは考えていませんがね…。民主党は民主党として、他の政党は他の政党としての案を出していただき、国会審議の中でお互いに意見を交換して、「なるほど、そっちの案のほうがいい」という場合は、「かたくなに一言一句自民党案でなくてはならない」などということを申し上げるつもりはまったくありません。
とにかくいまの状態を1日も早く解決しなければなりません。そして今後、ああいう地震や津波が起こったときに、今回の対応策が見本になるようにしなければならない。いまのような、こんなゆったりした対応では、どうにもなりません。東日本大震災から1年4カ月もたとうとしています。われわれは復興に向かって山を登らなければなりません。ところが、がれきの除去がまだ議題に上るようではダメですよ。もっとスピーディーにやるべきではないかという思いがあります。
しかし、広くみなさんの意見を聞くことも大事です。私どもは国土強靱化調査委員会の勉強会に、みのもんたさんにも来ていただきました。6月28日には、連合の古賀伸明会長に講演をしていただきました。今後も竹中平蔵慶応大学教授らを講師に招いていきます。
「早くこの法案が通って、災害復旧や将来のための減災に力を注げるような態勢をつくってもらいたい」とご意見、お手紙をたくさんいただいています。私たちは週2回のペースで議論を進めていますが、その間にも「財源をどうするんだ」、あるいは「デフレ対策はどうあるべきか」という声が出ています。いろんなことを勉強しながら対策を進めているところです。

歴史に学び、先人の教えを守る

――国土強靱化を評して、あるマスコミが『民主党の「コンクリートから人へ』に対して『自民党は人からコンクリートへ』だ」と書いたとき、二階先生は「たわけたことを言うな」と発言しました。国土強靱化というのは、昔ながらのハード一辺倒の公共事業とは違うということでしょうか。
二階 国民の英知を振り絞って考えなければならない事態のときに、「人からコンクリートへ」なんて駄じゃれのようなことを言っているような場面じゃない。ところが、いまなお、このときになっても、「コンクリートから人へ」と言っている人がいる。そんなバカなことを言っても、選挙民や一般国民は納得しませんよ。
衆院の消費税増税法案採決では民自公で協力しましたけれども、今後、こういった問題をやっていく上では、自民党も真剣な対応をしていかなければいけない。なんでも事なかれで「賛成」「賛成」ばかりを言ってられませんよ。
――災害の復旧はもちろん大事ですが、今後は災害に強い国づくりが肝要です。
二階 おっしゃる通りで、防災、減災対策が一番大事です。災害を受けてから騒ぐのでは、本当はちょっと恥ずかしいことです。しかし、過去の日本の歴史を振り返るまでもなく、大きな災害は繰り返されています。
「ここから下に家を建てるな」という先人の言葉が碑になっている。この教えは極めて有効なんですが、人間はだんだん傲慢になってしまいます。「そんなこといったって、それは1000年も前の話だ」などと言って、どんどん宅地開発をしたりして、人間の住むエリアを広げてしまう。そういう中で、また災害に襲われたということが現にあるのです。
やはり過去の歴史に学び、先人の教えをしっかり守っていくことも必要です。
――危険と思われる場所に人が住んでいるケースもあります。
二階 それは本人の自由意思ですから、「そこから引っ越しなさい」とか「立ち退きなさい」と言うわけにはまいりませんが、しかし、理想的には「このあたりまでは避難したほうがいいですよ」ということになれば、みんな考えますよ。そのときに政治はなにをできるか。つまり、融資をするとか、補助金を出すとか、いろいろな方策が考えられますが、これからのまちづくりをどうするかですよ。
いままでのようなまちづくりではなくて、ITやいろいろな新しい技術も進んできていますから、防災を念頭においた、できるだけ安い価格で、安心安全な家に住める方途を追求すべきです。
ことは人の命にかかわる問題ですから、あまりゆったりノンビリしているわけにはまいりません。自然の猛威、自然の恐ろしさを十分かみしめたわけですから、ここから先はある程度理屈抜きに、先般のような災害が襲った場合、「もう一度あの失敗を繰り返してはならない」ということを考えなければなりません。
法律にはできるだけそういうことも、にじみ出していくようにしていきたい。国会での議論の中でもそういう話が出てくると思いますが、しっかりと対応していきたいと考えています。

防災も訓練も練習はウソをつかない

――東日本大震災の被災したまちの復興はどうしたらいいのですか。
二階 地域住民、市町村の考え方、方針が一番大事ですが、だからといって「どうぞみなさん、ご自由に」というのは無責任でしょう。どこで折り合いをつけ方策を決めていくかがポイントですね。それは難しいことですが…。
「災害に襲われたときは高いところに逃げろ」と言うでしょう。「それしかないのか」と言いたい気持ちは私の心の片隅にあるのですが、あの津波の映像を見ると、高いところに逃げるしかなかった。それと、急ぐということですね。ゆっくりしていては間に合わない。野球のタッチアップのように、打球が上がったときには走る方向を定めてスタートを切るぐらいじゃないとね。ごたごた理屈を言っていては間に合わず、災害に巻き込まれる可能性が高まります。
それが残念なことですが、先般の災害で実証されたことです。
――小さい子どもや高齢者が逃げ遅れたりしますね。
二階 学校で訓練されていた子どもたちは、ほとんど助かっています。ですから、日ごろの訓練が大事です。名選手の言葉に「練習はウソをつかない」ということがありますが、まったくその通りだと思います。
災害が起きたときには、学校にいれば助かるということにしなければなりませんね。
また、自分の体力でどこまで逃げられるかということも、把握しておかなければなりませんね。お年寄りも逃げる練習、訓練が大事ですね。
それと同時に、雨の日はどうするか、夜だったらどうするかということを考えると、気が遠くなるほど困難な問題です。しかし、避けて通れない問題です。
この前の集中豪雨で私の郷里の和歌山県の紀南地域では、山ののり面を滝のように水が流れました。そこを逃げるといっても、ササや葉っぱに足を取られたり滑ったりして、なかなか動けなかった。だが、ある人は「懐中電灯を持っていて助かりました」と言っていました。日ごろの準備が大切なんですね。

人と人の信頼関係が命を守る

二階 隣近所との日常生活も大事です。お互いの安全を確保するという意味でね。避難所に行っても、「どこそこのおじいちゃんやおばあちゃんが来てないよ」ということがわかるのは、日常的に接しているからです。町内会でゲートボールなどの大会があるときは進んで参加するなど、みんなと協調することが、安全を守ることにもつながるのです。
――自民党の国土強靱化に向けた運動には、日本人の心のありようや、人と人の絆をつくることも含まれていますね。
二階 それが重要なことです。日ごろの信頼関係がなければ、「逃げなさい」と言っても誰も反応しません。市町村や町内会という単位で、お互いの信頼関係をつくっていくことが命を守ることにつながっていきます。日本人が地域社会と共に培ってきた伝統・文化を再確認すべきです。

=ききて/酒井雅広=