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Interview

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“世界のルスツ”を実現する掲載号:2016年9月

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加森公人 加森観光社長

いまルスツ(後志管内留寿都村)では壮大な国際リゾート計画が進行中だ。事業主体は同地でスキー場や遊園地を運営する加森観光。開発規模は札幌ドーム28個分に当たる148万4986平方メートル。キーマンの加森公人社長を直撃した。

ウインタースポーツは“夜明け”

――ルスツリゾートの旧タワーホテルが「ウェスティンルスツリゾート」として6月8日に正式開業しました。順調ですか。

加森 ウェスティンとしては昨年12月に仮オープンしており、客単価は確実に上がっています。

――ウェスティンブランドでホテルの運営を委託した米大手のホテルチェーン「スターウッドホテル&リゾート」は、同じく米大手の「マリオット・インターナショナル」に、この春、買収されました。

加森 一緒になったことで、彼らの会員は全世界で7500万人になりました。この膨大な会員にルスツの情報も常時、発信されることになります。

――そもそもスターウッドとの接点は。

加森 昨年の春、われわれのほうから運営を持ちかけました。スターウッドには11のブランドがあります。中でもウェスティンは高級ブランドです。私はそのウェスティンに的を絞って交渉をしました。

――なぜです。

加森 今後のルスツを考えたとき、よりグレードの高いものを誘致しないといけません。ウェスティンよりもアッパークラスを持ってくる。それがルスツの価値をあげることになります。

――ルスツを世界的なリゾート地にすると。

加森 そうです。昨シーズン、すなわち今年の1~3月は、欧州からのお客さまが非常に多かった。どうしてかというと、欧州のスキー場に雪がないからです。どこも雪不足で競技もできない状態が続いている。こうした現象は、この先もたびたび起こるでしょう。そうした中、安定して雪があるのは北海道です。だから世界のリゾートになり得る。とくに冬のリゾートです。

――日本ですら本州のスキー場に雪が少なかった。

加森 そういう面で北海道の強さは際立っているのです。また中国の北京、上海から北海道へは、飛行機で3時間半。時間軸で見れば札幌―函館より近いということです。そんな近い距離に何千万人ものマーケットが広がっている。

――国内的に見るとウインタースポーツは斜陽ですが、世界的に見ると。

加森 夜明けですよ。とくにアジアは。2018年には韓国の平昌で、その4年後には中国・北京で冬季五輪が開催されます。そうしたことを背景に、いま中国のマーケットが爆発的に伸びている。かつて日本も1400万人くらいスキー人口がありましたが、そんなものではない。それが3時間半の距離にあるのです。非常に面白い距離だと思います。

――そうした情勢を踏まえてだと思いますが、ルスツリゾート内に249戸のコンドミニアムをつくると。

加森 着工は来年春を予定していて、いまは図面をさかんに描いているところです。建設予定地はウェスティンと、その北西側にある国道230号の間の1万2453平方メートルの土地。便宜上「Jエリア」と呼んでいます。コンドミニアムは23階建てのウェスティンの景観を損ねないよう4~7階の低層にして8棟。広さは37~162平方メートルとさまざまなタイプをそろえて計249戸つくる。コンドミニアムの1階は全部ショッピングモールになります。商業専用の建物も2棟つくる予定で、宿泊客だけではなく一般のお客さまも国道から立ち寄ってもらいます。

――投資額は200億円。

加森 そうですね。ただリスクのない進め方をしていきます。この開発はショッピングモールをつくるのが1つの目的です。その資金を捻出するのにコンドミニアムを上に乗せる。コンドミニアムは海外の投資家などに1棟ごと平均25億円前後で販売する。その売却益がショッピングモールの建設資金になります。4棟売れれば4棟分のショッピングモールをつくる。また売れたら広げていくという方式です。テナントには訪日外国人客に人気の高級ブランド店を入れるのはもちろんですが、野菜や魚介類など地域の旬の食材を扱うマルシェや、それらを味わえる飲食店も入れる予定です。

――先ほどJエリアがあると言われました。ほかにもエリアがあると。

加森 開発計画はAからNエリアまであります。それらを全部合わせると148万4986平方メートルになります。Jエリアは、そのうちの1万2453平方メートルということです。

――ルスツを国際リゾートにしようという範囲は全部、加森さんの土地ということですか。

加森 そうです。人の土地をあてにして計画しても意味がありあせん。

――それはどれくらいの広さになるのですか。

加森 われわれはプライベートジェット用の飛行場建設も視野に入れています。ゆくゆくはジェット機のチャーター便なども離発着できるよう滑走路は1800メートル。そこはルスツリゾートから札幌寄りにある土地で600㌶。喜茂別町などに72ホールのゴルフ場があり900ヘクタール。それにルスツの土地を合わせると二千数百ヘクタールというところでしょうか。それらを含めて“世界のルスツ”を実現していきたい。

――あまりに大き過ぎて想像もつきませんが(笑)、グランドデザインは。

加森 私がしています。それに沿って全体の設計をアメリカの会社に、個別の設計はイギリスの会社に依頼しています。ルスツ開発のほとんどは“スキーイン、スキーアウト”で、ゲレンデと直結させます。ゴンドラの中間駅をコンドミニアムの場所などにつくる。そういう設計をしています。

ルスツのよさは、周りを支笏・洞爺とかニセコ・羊蹄など国立公園に囲まれている自然豊かな地域にあるということ。でもルスツは国立公園ではありません。だから思い切った展開ができる。本当に地の利に恵まれていると感じます。

近くに尻別岳という山があり、急斜面なんですが、滑るのには面白い。欧米人には好まれる斜度です。喜茂別町、留寿都村、真狩村で持っていて、残念ながら私の所有ではありません。でもそこは交渉です。いままでにないスキーのコンテンツもつくっていきたい。

――当然、外資にルスツ進出を打診している。

加森 反応は悪くありません。すでに具体的に進んでいるエリアもあります。Mエリアではアメリカ、Eエリアはフランス。どちらも世界規模の企業です。私はルスツ地区だけという考えではなくて、やはり世界のリゾートと戦うためにはニセコ・ルスツが一体化して、1つのエリアという形で打ち出していかなければならないと思っています。

観光振興機構副会長就任のわけ

――なぜ、いまなのか。

加森 30年前に最初のゴルフ場建設に着手しました。そして、ゴルフ場の規制がかかる前に一気に4つ、72ホールまで増やした。当時の宿泊施設の収容能力からすると72ホールなど、まったく必要ありません。でもゴルフ場のキャパシティの分だけ、ホテルやコンドミニアムなどの開発もできる。

私は、当時からルスツを通年での世界的リゾートにしようと考えていました。ところが、その後“失われた20年”に突入。バブル経済が崩壊して、観光業そのものが非常に難しい時代が20年も続いた。それがここに来て金融緩和も含めて資金のメドもつきやすくなり、インバウンドも増加。北海道新幹線の開業、高速道路網の整備など、観光業に対する追い風が重なってきた。投資するには一番恵まれた環境です。各外資系のホテルなどもそういう理由で出てきている。

20年前なら、うち1社で開発するつもりでいました。しかし、いまはそうではありません。多くの人の力を借りてバランスの取れたリゾートをつくりたい。世界中の投資家や世界で名の通ったホテルなどが相手です。そのほうが早く実現する。

――札幌や東京のアートホテルを売却しましたが、この開発のために。

加森 そうです。岩手県の安比スキー場も売りました。伸びしろはルスツにある。アートホテルは稼働率が90%を超えていて、何でそんなに流行っているホテルを売ったのかと不思議がられることも多いのですが、稼働率90%超のホテルは、逆に言えばもう伸びしろがない。資金を投入するのであれば“伸びしろの大きいところに”ということです。

――そうした重要な時期にもかかわらず今回、北海道観光振興機構の副会長を受けましたね。

加森 昨年の暮れだったでしょうか。前会長の近藤龍夫さんから、新会長を支えてくれと頼まれました。近藤さんは観光分野以外のところから機構に来られて尽力された。そのことは私も承知しています。そんな近藤さんから頼まれたら受けないわけにいきません。

やはり北海道そのものが観光資源にならないと世界のリゾートには遠く及びません。個人でやることは限界がある。みんなと力を合わせ、北海道が一丸となって観光立国に取り組むことが、いまほど求められているときはないと思います。

=ききて/鈴木正紀=