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Interview

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リージョナル航空が成功するための5つの条件
FDA[フジドリームエアラインズ]内山拓郎副社長が語る
掲載号:2010年5月号

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内山拓郎 副社長

静岡の超老舗企業・鈴与が設立したフジドリームエアラインズが、ユニークな存在として航空業界の耳目を集めている。地域密着型の経営、小型飛行機で地方と地方を結ぶ運航は、HACのよき手本となりそうだ。

1801年創業の老舗企業が設立

4月1日、雨空の新千歳空港に赤い機体が降り立った。フジドリームエアラインズ(FDA)の富士山静岡空港と新千歳空港を結ぶ1番機である。
FDAとJALはこの日からFDAが運航する同路線(1日1往復)と富士山静岡空港ー福岡線(同3往復)の国内共同運航を開始した。
FDAはブラジル製のエンブラエルERJ170と同175を計3機所有しており、1号機のボディーカラーは深紅、2号機はライトブルー、3号機はピンクに塗られている。今後導入予定の4号機の色はまだ決まっていない。
静岡で行われた福岡便の開設セレモニーで川勝平太知事は「地域を背負うFDAとJALが協力するのはありがたい。(静岡)空港のために、県民と力を合わせてできる限りのことをしたい」と語った。
また、新千歳空港でも静岡線の第1便を祝してセレモニーが行われ、久保秀人FDA常務、山口幸太郎千歳市長、安川文夫国交省新千歳空港長らがテープカットをした。
FDAは6月1日に新千歳ー松本線と松本ー福岡線を開設する。
新千歳ー静岡間の普通運賃は大人3万5800円だが、55日前に航空券を購入する「55割引」を利用すると、1万9500円になる。
以下、FDAの実務を取り仕切っている日本貨物航空出身の内山拓郎副社長に話を聞いた。
――新規の航空会社を立ち上げた理由を教えてください。
内山 富士山静岡空港ができることになり、地方の足を確保するため、鈴与がフジドリームエアライ ンズ(FDA)を設立しました。鈴与は江戸時代から200年以上続く、地域とともに発展してきた企業です。これからの100年を展望する上で、静岡を中心 とするリージョナル航空(小型機で地方の都市間を結ぶ地域密着型の航空会社)が必ず必要になってくると考えました。
i2また、以前から関連会社に静岡エアコミュータがあり、ヘリコプターやビジネスジェット機を管理していました。その時点から、ゆくゆくは航空会社をつくろうという気持ちがありました。
――一般的に新規参入の航空会社は、格安運賃の会社というイメージがありますが、FDAはそうではなく、リージョナル航空という位置づけですね。
内山 コストをなるべく抑えて競争力のある状態にしようとするのは、当たり前のことです。私たちもそれを目指しています。ただ、私たちは小さい飛行機(70~80席台)を運航しますので、どうしても1席当たりの運航コストは大きな飛行機に比べて高くなってしまいます。
ですから、めったやたらと大手に価格競争を挑んでいては、自分の首を絞めることになるわけです。われわれは大手と競合しないリージョナル路線を選んで、すみ分けていこうとしています。

新千歳便には需要がある

――4月1日、富士山静岡空港と新千歳空港を結ぶ路線にFDAが就航しました。なぜ新千歳を選んだのですか。
内山 日本航空と全日空が1便ずつ就航したときから、静岡空港発着の全路線の中で新千歳は搭乗率が一番よかった。2社とも70%以上でした。したがって、静岡の人の需要があると考えました。
ところが、JALはこの路線から撤退するということなので、代わりに私たちが就航したというわけです。私たちの航空機はジェット機なので、ある程度長距離の路線が適しているというのも、理由の1つです。
また、南の福岡、熊本、鹿児島、日本海側の小松、真ん中の松本、そして北の新千歳を結ぶことで、日本を総合的にネットワークすることができます。
――静岡ー新千歳の第1便の搭乗率は93%、新千歳ー静岡の第1便が76%。まずまずの出足ですね。
内山 やはり静岡の人は北海道が好きですからね。静岡県は人口380万人で、1人当たりの県民所得が全国3位です。比較的裕福ですので、北海道への観光旅行の需要もあると考えています。
――逆に北海道から静岡に行く需要も喚起しなければなりませんね。
i3内山 北海道と静岡の交流を盛んにしたいと考えています。
静岡の観光でどういったものを売り込めるのかについては、じっくり腰を落ち着けて開拓していきたいと思っています。
静岡県はいままで2次産業に力を入れてきました。自動車産業、製薬会社もたくさんありまして、製造品出荷額も全国3位なのです。そのほかにも1次産業ではお茶の生産、ウナギの養殖、焼津港のマグロやカツオの水揚げなどがあります。
しかし、いまの川勝平太知事は「これからの日本は観光だ」と言っていますから、われわれとしてもそういう方向に転換していくことを期待しています。

機体整備や乗務員の養成は自前で

――北海道では新規航空会社としてエア・ドゥがいち早く設立されましたが、経営的にはうまくいかず、全日空の子会社に なってしまいました。HACもJALが資本の大半を引き上げる方向にあり、苦境が予想されます。この点、FDAは地域の航空会社の教科書になり得ると思い ます。リージョナル航空が成功するためには、何が肝要だと思いますか。
内山 リージョナルに限らず航空会社は、まず第1に安全運航体勢の確立が必要です。FDAは自社で乗員や整備士を養成していこうとしています。予約販売システムも自社開発です。ほかに頼んでやっていますと、どうしても高い料金を取られます。
2つ目は適切な路線の選択で、これも大きなウエートを占めると思います。
3つ目は適切な機材を選択することです。
4つ目は地域と協力したマーケティング戦略です。静岡はいま、熊本、鹿児島、金沢などの商工会議所、青年会議所との付き合いがどんどん増えてきています。地域全体で地方同士の連帯を深め、お客さまを増やそうという独自のマーケティング戦略を持っています。
5つ目はコスト管理をしっかりやっていくことです。
乗員教育や機体整備を他社に任せっきりにすると、費用がかさみます。
なぜなら頼む相手の全日空やJALは競争相手でもありますから、そんな安くやってくれるわけがありません。
――乗員・整備士の教育システム、機材の購入などの初期投資には、ばく大な資金がいるので、なかなか踏み切れないのが実情ではないでしょうか。
内山 例えば、機材を増やしていく、路線を増やしていきますと、乗員、整備士らいろいろな要員が必要になってきます。この要員は新しい路線が決まったので、「さあ来てください」と言っても、すぐ集まるものではありません。
i4パイロットは、短くても半年前にはかかえて訓練しないと間に合いません。常に余分な人員をかかえることになります。
これは仕方がない。単年度でみると、最初は収支などまったく合いません。航空会社はそういうものなのだと考えて、ある程度は準備をしてやらないと、資金がついて行きません。
また、日本国内に空港が90以上もあるから多すぎるという議論がありますが、ドイツには300近く、フランスはそれ以上あるわけです。
(ヨーロッパでは)リージョナルな小さい航空会社を自治体が助けているんですよ。地域の利便性や交通を守るために自治体がそうしているのです。道路をつくるのと一緒ですよ。北海道だって需要は低くても必要だから道路を建設しているじゃないですか。

FDAの就航率なんと98・4%

――FDA、並びに静岡のよさを語ってください。
内山 FDAは地方と地方を結ぶリージョナルなエアラインなので、ご搭乗いただいたお客さまには、「家族的な柔らかい雰囲気の乗りやすい航空会社だ」というイメージを持っていただいてほしいと思っています。
ただし、輸送機関ですから安全にお客さまを送り届けることが第一です。当社の就航率は2月末までで98・4%に達しています。台風などの天候によるキャンセルが出たことはあっても、機材故障で飛ばなかったことは一度もありません。
いま当社が使っているエンブラエルERJ170と同175という飛行機は、新造機なのに初期故障がほとんどありません。
このように信頼あるサービスをご提供できることが、一番の自慢です。
また、静岡には日本一の富士山があります。温泉などの観光資源も豊富ですし、温暖なので冬でもゴルフができますので、ぜひFDAの飛行機に乗って静岡に来てください。
――乗ってみて感じたことは、乗り心地のよさはもちろんのことですが、協力関係にある企業を上手に利用して機内サービス等をしているなということです。
内山 省力化、コストダウンに腐心していますからね。鈴与グループにはいろんな会社があり、数多くの企業とお付き合いがあります。そのこともFDAの経営にはプラス要素になっていると思います。静岡の人たちや団体企業も応援してくれています。機内の新聞も静岡新聞の協力です。

=ききて/酒井雅広=