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Interview

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ポッカ経営統合とベトナム進出 どうなるサッポログループの今後
上條努(サッポロHD社長)に経営戦略を聞く
掲載号:2011年7月

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上條努 サッポロHD社長

 東日本大震災が日本経済に与える影響は計り知れない。ビール業界も今年の需要予想を立てることは難しい。しかし、サッポロホールディングスは、2016年の創業140周年に向けて順調に事業を拡大している。

2016年目指し新経営構想着々

――サッポロホールディングス社長に就任してから約2カ月たちましたが、新社長としての抱負をお聞かせください。
上條 2007年、ホールディングス取締役経営戦略部長になりましたが、この年に2016年を目指したサッポログループの新経営構想を発表しました。2016年は、私どもの会社の前身である開拓使麦酒醸造所が札幌にできてから140周年目にあたります。そこに向かってサッポログループとしては、新たな企業集団をつくっていこうということで構想をまとめました。
この構想に従ってこの4年間、商品を通じたいろいろな価値の提案をおこなってきました。しかし、すべてが自分たちだけでできることではないので、「提携をして一緒に事業をもり立てていける相手とのつながりを深めよう」、また、これからは日本国内だけではなく、「海外でも事業を展開していかなければならない」ということを言ってきました。
こういった中で、ここ4年、経常利益を連続して上げることができましたし、ポッカコーポレーションと提携をおこなったり、丸大食品と合弁会社を設立するなどしてきました。
ポッカ社とはすでに経営統合をするということで3月末に株式を86%まで取得しました。また、本年の末にはベトナムに新工場ができます。このように新経営構想を着々と進めてくることができました。
私の役割は、このことの結果として「こういう効果をサッポログループにもたらすことができました」ということを、できるだけ早くみなさんにお伝えすることです。
「社長が代わっても、なにも変わらないじゃないか」と思われるかもしれませんが、これまで私が順繰りにかかわってきたことの成果を具体的に出すことこそが、私の役割だと思い定めています。
i2――新経営構想の中身をもう少し詳しく教えていただけますか。
上條 数量・定量的なことで申し上げると、グループとして酒税を抜いた状態で4500億円ぐらいの売り上げ規模、400億円程度の営業利益を目指していきます。また、先ほど申し上げたようなくくりで言いますと、アルコールで1800億円弱、ポッカさんを含めた非アルコールが1400億円程度、そのほか不動産、外食、海外での事業となります。
私の役割が全うできれば、ほぼこの数字に到達できるような状態にあります。利益面でもビール社はこのところコストをよく見直してやってきました。商品についても、北海道でのご愛顧に加えて、新ジャンルの「麦とホップ」が消費者の皆さまにご愛顧をたまわっていますので、視線の先に2016年というものが具体的に見えてきたのかなと思います。

「サッポロ」という名の責任

――サッポロHDにとって創業の地である北海道はどんな位置づけにあるのか。また今後、北海道でどのような事業展開を図っていきますか。
上條 サッポログループと北海道の皆さまとは、ごくごく当たり前のこととしてお互いに認識していると思いますが、「北海道はわれわれが生まれ育った大地」というのが、サッポロに勤務する者の第一の思いです。
また、北海道本社という組織もつくり、ご愛顧いただいている消費者のみなさんや行政のみなさんとのつながりを深めているところです。
もう一方、海外からの目という面で見ても、「きれいで清潔、安心があり、自分の未来に対する明るいイメージをもたらしてくれる地域だ」という北海道・札幌に対する高い理想像をうかがうにつけ、われわれがサッポロと名乗っているよさを十分感じています。海外で事業を展開していく上でも、われわれを支援してくれているのが北海道・札幌の存在であると思います。
――「サッポロ」という名を冠している御社が国内や海外で元気に活躍してくれることによって、北海道や札幌に対する大きなPR効果をもたらしているともいえます。ですから、道や札幌市も「サッポロさん、元気で頑張ってくれ」と思っているはずですよ。
上條 お互いの思いは共通しているわけですし、北海道に住んでいるみなさんの思いともイコールだと考えています。われわれは海外でも元気で頑張っていきますので、国内でもぜひぜひご支援をたまわりたいなと思っています。

サッポロユーザー広げるチャンス

――ポッカコーポレーションとの経営統合(子会社化)によって、どのような効果が見込まれますか。
上條 ポッカ社の事業については、「国内の飲料水の製造販売業」というところにばかり目が行きがちですが、実はポッカレモンという調味料やスープなど、食品部分でのポッカさんのブランドについても、消費者のみなさんにはよくご利用いただいています。
われわれは「リボンちゃん」でおなじみのサッポロ飲料の商品ラインアップを持っていますが、飲料水のところをなかなか力強く広げてこられなかった。ポッカ社が入ってくることは、とてもプラスになります。
食品についてもいろいろなものを手がけてはいるのですが、そう簡単には成果が出てこない。レモン部門で1番、スープ部門で2番のシェアを持っているポッカ社がグループ入りしたことで、食部門の範囲を広げられることも大きい。
実は飲料水が十分でないがために、サッポロの商品といったときに、アルコールつまりビールにしか向かいようがないということがあります。北海道でリボンシトロンやリボンナポリンを大変かわいがっていただいておりますが、それだけでは子どもさんや女性のみなさんに“サッポロユーザー”を広げるというチャンスが制約されていました。
それをポッカ社が加わったことで広げ、「子どもさんの時代からサッポロ」という会社になりたいと考えています。
また、当社はベトナムに新工場を建てるわけですが、ポッカ社はシンガポールに拠点を持っており、清涼飲料水の製造、販売、外食事業をやっています。東南アジアにおける戦略を組み立てていく上でも、ポッカシンガポール工場があるという事実がサッポログループにとって拠点拡大などの面でも大きな影響をもたらしてくれます。
――ポッカ社はいろいろな商品を出していますね。
上條 カップスープや粉スープにも定評があります。われわれになかった部門が加わったことで、消費者のみなさんがサッポロという名前にめぐりあっていただけるチャンスが間違いなく増えるものと思います。

夏に向けビール生産をフル稼働

――サッポロファインフーズが出している油で揚げていないポテトチップもすごくいいじゃないですか。
上條 「ポテかるっ」ですね。品質で高評価を得ていながら、これまではなかなかうまく進めることができませんでした。しかし、今年は味のバリエーションを増やし、また、通常のお客さまにも健康志向のお客さまにも支持をいただいており、非常に順調に売り上げを伸ばしています。
また、食の広がりを進めるためには、北海道とのマッチングを私自身も大いに期待しています。北海道の原材料を使ったものなどで範囲を広げていければと考えています。
私にとってもそうなのですが、北海道は自然としての強さを感じさせてくれる地域でもありますし、先ほど申しましたように希望や期待を抱かせてくれる地だと思っています。
――社長は生まれ育ちが仙台だということなので、個人的にも震災被害に心を痛めていると思いますが、グループとしてはどのような影響を受けましたか。
上條 大きな影響を受けた千葉と仙台の工場のうち、千葉は3月末から缶ビールの製造を再開し、現在はフル稼働しています。仙台は5月2日から稼働を始め、その後すぐにフル態勢に入る予定です(5月19日には本格稼働を再開)。両工場とも夏に向かって問題なく生産がおこなえるものと思っています。
ただ、いろいろな商品をご提供させていただくのがメーカーの務めだと認識していますが、状況が状況だけに集中して生産していかないと全体の供給量が追いつかないという現実がありますので、商品を絞って生産をしているところです。したがって、今年前半はすべてのお客さまのご要望にはお応えできないという点で、ビールファンの皆さまにおわびしたいと思います。
震災の影響で新経営構想の達成スピードが落ちることはありません。今後もサッポロの元気良さをぜひともお伝えしていきます。

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(取材=5月13日)

=ききて/酒井雅広=