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Interview

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ストップ〝新・55年体制〟
「野党結集の受け皿づくりが私の夢」
掲載号:2015年3月

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小沢一郎 生活の党と山本太郎となかまたち共同代表

55年体制崩壊、選挙制度改革、民主党政権誕生――「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表の小沢一郎氏は、政界再編のキーマンとして、数々の政局に関与してきた。次なる一手は、自民党に対抗する野党の結集だ。安倍内閣の問題点などを大いに語った。

アベノミクスのボロが出る前に解散

――昨年12月、突然の解散・総選挙がありました。
小沢 安倍晋三総理が自己保身のために、突如解散したわけです。自民党は議席が足りないわけではない。選挙をしなくたって、もともと安定多数を確保しています。解散をする理由が見当たらない。だから〝大義なき総選挙〟と言われたのです。
野党の連携、足並みがそろわないうちにやってしまおうということだったのでしょう。僕がかねてから言っているように、野党がバラバラだったら負けるに決まっていますから。
ただ、今回の選挙結果を見ると、自民党の比例票が前回より増えたわけではありません。北海道も野党が善戦したのではないでしょうか。
僕の地元(岩手県)も同じですが、アベノミクスの効果なんて肌で感じていませんよ。今後、徐々にアベノミクスの〝ボロ〟が出てきます。「実態がない実態」が明らかになってくるということです。
――アベノミクスの問題はどのような点ですか。
小沢 端的にいえば、新自由主義、市場原理主義という考え方です。安倍さんは「大きな企業が儲かり、正社員が豊かになれば、そのうち下まで滴っていく」と平然と言っていますよね。
大企業だけが恩恵を受ける一方、格差がどんどん広がっています。とくに都市と農村の格差はひどいありさまです。北海道はその最たるものでしょう。
――投票率は52・66%と戦後最低でした。
小沢 選挙は、相対的な良し悪しの判断になります。全体的な評価で、すべてが良いということはあり得ません。「良識ある棄権」という訳のわからない言葉もありますが、棄権しちゃいけない。だが、そうしたくなるくらい、自民党、公明党に代わる受け皿がなかったということです。それをつくれなかった僕らの責任は重いといえます。

天命は待たない、期待せずに遊ぶ

――小沢さんはこの間、野党勢力の結集を盛んに呼びかけてきました。
小沢 一緒の党になろうがなるまいが、とにかく選挙には統一体で臨まなければならない。1党に合併するという意味ではなく、1つの枠で戦うことが大事になります。それは、選挙協力だけではダメなんです。なぜなら、比例票が分散してしまうので、自分のところの候補者ではない人を推薦しても、票は掘り起こせません。やっぱり野党勢力が1つの傘に入らないと。
僕はいま、このままでは万年野党、〝新・55年体制〟になると言っているんです。
――小沢さんは1992年に自民党を離党し、新生党を結成。その後、社会党や新生党など8党による非自民の細川護煕連立政権が誕生しました。これにより、自民党一党支配の「55年体制」は崩壊しました。
小沢 民主党と日本維新の会が野党の中で多数を占めていますが、このままではどちらもいずれ細っていきます。野党の中には「万年野党のほうが気楽でいい」という声まであります。政権を取る気がないのだから、もう信じられません。現在は、55年体制下よりひどい状況です。
――小沢さんが主導する形で95年、小選挙区比例代表並立制が導入されました。
小沢 小選挙区制度を日本に導入したのは、政権交代が起きやすいようにするためでした。現に2009年には、自民党、公明党が下野し、民主党政権が誕生しています。
ところが、いまの野党はバラバラです。政権交代可能な受け皿をつくらなければ、日本には未来永劫、議会制民主主義が根付かなくなります。日本の将来が心配でなりません。自民党に対抗できる受け皿をつくることが、僕の政治家としての夢であり、日本のためにも一番いいことなんです。
――そのために小沢さんは、どんな役割を果たしていきますか。
小沢 まだわかりません。僕は「人事を尽くして、天命に〝遊ぶ〟」を座右の銘にしています。「天命を待つ」「従う」が普通ですが、自分にいいことを期待するというニュアンスが強い。それでは、いかんと考えて〝遊ぶ〟と言っています。自分の思いと違う天命が出ても、粛々と従うことが大切なのです。
ただ、これだけは言えます。野党の上層部は思惑があるので別にしても、野党議員と特に支援者の多数は「このままじゃいけない」と痛感しています。何かのきっかけがあれば野党勢力の結集はできると考えています。

国民にとって心もとない安倍総理

――小沢さんはリーダーとしての安倍総理を、どう評価していますか。
小沢 一国のリーダーは明確なビジョンを持ち、将来を見通して、自分自身で決断をする。その上で、自分で責任をとれる人でなければならない。安倍さんは昔からよく知っていますが、いい人なんです。でも、国民にとっては心もとないリーダーといえます。
――なぜでしょうか。
小沢 たとえば安倍さんはエジプト訪問時、テロ組織「イスラム国」(ISIL)と闘う周辺国に、2億ドルの支援を表明しました。
「人道支援」というきれいごとの言葉を使った。そんな言葉遊びは世界で通用しません。まず、戦争をするときには、戦費の調達から始まります。イスラム国と闘う国におカネをあげると明言したわけですから、人道もヘチマもないんです。
僕は大反対ですが、いわば安倍さんは「日本はアメリカを中心とする有志連合の一員だ」と宣戦布告したわけです。たいしたハラも決めないで、パフォーマンスで話をしてしまった。あの演説は軽率だったと言わざるを得ません。
「私が演説した結果、日本人がイスラム国に拘束されたことが公になった。しかし、どんな犠牲を払っても、有志連合とともにイスラム国と戦う。すべて私の責任だ」と言って対処するのが、一国の指導者、リーダーではないでしょうか。
でも、安倍さんはそんなことを言えないでしょう。場当たり、格好つけの話ばかりで、いざとなるとあたふたして何もできない。リーダーとしての責任をとれないじゃないですか。
この問題は、安倍さんが考える集団的自衛権そのものなんです。日本と直接かかわりのない紛争で、当事者の片方につくわけです。「人命第一」と言って、マスコミも野党も、そうした本質的な議論をほとんどしません。困ったものです。

農家のプラスになる農協改革が必要

――自民党内にリーダーとして「この人なら」と期待する人はいますか。
小沢 あまり思いつきませんが、たとえば谷垣禎一さんは判断を間違えたと思います。あの人は旧宏池会の流れで、俗な分け方をすれば〝ハト派〟でしょう。安倍さんがこれだけ右傾化一直線なのだから、党の幹事長になんてならずに、毅然とした考えを主張すればよかった。そうすれば、次のリーダーになれたと思います。党の幹事長を引き受けたことで、もう安倍内閣の一員になってしまった。
――小沢さんの目に、若い政治家はどう映りますか。〝雑巾がけ〟が足りないという指摘もあります。
小沢 政府を見ていればわかる通り、若手だけの問題じゃありませんよ。総理大臣以下、みんなそうなんだから。若い者だけ怒っても仕方がない。まぁ、雑巾がけを教えるベテラン政治家が、ほとんどいなくなった。それが、だらしないし、情けない。大人が悪いから子どもも悪くなるのと同じです。
僕は田中角栄先生、竹下登先生、金丸信先生という3人のボスに仕え、非常に参考になりました。
当時の日本は、経済も右肩上がりの良き時代でした。今の時代に必ずしも役に立つわけではありませんが、都市、地方問わず「みんな公平に」という政治でした。上から滴り落ちるのではなく、公平に分配しようという考え方です。
僕が仕えた3人の政治家は「足して2で割る」方式の名人です。公平、平等が一番の哲学としてある。僕も弟子なので免許皆伝、この方式の政治ならいくらでもできます。
しかし、いまの日本では、足して2で割るだけでは通用しないし、うまくいきません。そうはいっても、安倍さんのように強い人だけ強くなればという弱肉強食では、政治はいらなくなります。「国民の生活が第一」というスローガンのように、政治はできるだけ多くの人に安定した生活を送ってもらうためにあります。つまり、最大多数の最大幸福の実現です。
ベテラン政治家の胆力がないから、若い政治家も育たない。行動で示せないので、習う場面がありません。若い政治家は、自分の価値や政策を判断する基準を見つけられないのでしょう。
――最後に北海道の印象と可能性を教えてください。
小沢 北海道には僕の姉夫婦が住んでいたこともあり、縁はあるんです。
北海道は山ばかりが多い日本の中で、もっとも広大な平地を持っています。航空機や船便でも、日本で欧米に一番距離が近いのは北海道です。もっと地政学的、資源的な優位性を活用すべきだと思います。
農業でも耕作放棄地が増えています。実にもったいない話です。本当は、日本は食料の自給ができ、北海道はその核になるべき存在です。そのためには、農業を続けられる収入が農家になければならない。
だから僕は民主党政権時、反対を押し切って戸別所得補償制度を導入したのです。だが、自民党政権に代わり、なくなってしまいました。
いま、安倍内閣は「農協を潰す」という議論を進めています。農協をなくせば農家が本当によくなるのか、ということが問題です。
僕も農協の組合員なので、地元の会合で「あなた方は組織ばかり大事にして官僚化している。考え方を変えなければいけない」と言っています。でも、安倍さんのようにただ単に農協組織を解体して、あとは株式会社にするという手法では、農家はよくなりませんし、食料の自給体制を目指すことも不可能になります。農協をたたくのと、農家をやっつけることを、混同してはいけません。
(取材日=1月29日)

=ききて/前田圭祐=