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Interview

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”キレイ3世代”の美と健康のミュージアム掲載号:2015年1月

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大谷喜一 アインファーマシーズ社長

 札幌・大通地区の人の流れが大きく変わるかもしれない。調剤薬局最大手のアインファーマシーズは、2014年8月に閉館した旧丸井今井札幌本店大通別館を、1棟まるごと女性向けの複合商業ビルとして開業させる。一体どんなビルになるのか。大谷喜一社長に構想を聞いた。

チャレンジできる企業体質になった

――2014年8月に閉館した旧丸井今井札幌本店大通別館(札幌市中央区大通西1)は地上8階地下2階建て。延べ床面積は1万4432平方メートルに及びます。これを1棟まるごと借りて、ビル全体をマネジメントすると。いつごろからそうした構想があったのですか。
大谷 以前から考えていました。コスメを中心にしたドラッグストア「アインズ&トルペ」は、札幌の中心街で、大変いい成果をあげています。ただ一番大きな店でも660平方メートルくらい。やはり商品ラインが限られます。もっと商品を広げたい。オリジナリティーの高い、アインズ&トルペに行かなければ売っていないという商品をつくりたい。そうした思いはずっとあったわけです。
メーカーに頼んでPBをつくってもらうとか、海外から調達するとか、そういうことにトライしないと現状を突破できません。どこにでもある商品を単に売るというのでは魅力がない。オリジナリティーのある商品をどう開発していくか。ものすごく時間のかかることだけど、どこかでスタートさせなければならない。社員にも覚悟を求めなければなりません。覚悟を求めるためには、そういう環境が必要です。とりあえずやってみようというのであれば、うまくいくはずもありません。先に逃げられない環境をつくる。今回でいえば、まず器ありき。今わが社には、それをやる体力がある。だからトライしたいし、トライさせたい。そういうことです。
――そうは言っても、投資額は相当なものでしょう。
大谷 でも僕はこれを待っていた。そのための準備もしてきた。こればっかりは、企業に体力がないとできません。チャレンジできる企業体質になったということです。
――ビルのオーナーはSTV興発です。どちらからどんなアプローチを。
大谷 丸井今井がルイ・ヴィトンも含めて撤退するという話が出た段階で、弊社のほうからアプローチしています。
――交渉はスムーズに。
大谷 場所が場所ですから、候補はたくさんあったと思います。それでもオーナー側には、地元の企業に使ってもらいたいという思いがあり、当社もどれくらいの賃料であれば借りられるとか、駆け引きなしに交渉しました。それがよかったのか、わりと早い段階で当社に決まりました。14年の夏ごろです。
――何年の賃貸契約に。
大谷 15年です。いまはまだオーナーのほうで耐震や水回りの工事をしてもらっています。2月までかかるようです。
――フロアの構成は。
大谷 地下から地上2階までは、いろいろなテナントとの組み合わせを考えながら、当社で使いたいと思っています。たとえばアインズ&トルペにちょっとしたファーストフードの店を組み合わせるとか、それぞれのフロアにカフェを入れようとか。
――地下2階から地上2階までというと、売り場面積はどれくらいに。
大谷 床面積で約5600平方メートルです。そのうち1500平方メートル、450坪くらいをアインズ&トルペで使いたいと思っています。1フロアは大体1400平方メートル。その中で、たとえば地下2階なら330平方メートルくらいのテナントを入れて、残りはわれわれで使うとか、地下1階は全フロアわれわれが使うとか。
――もちろん、アインズ&トルペとしては一番大きい店になりますね。
大谷 そうです。現状で最大の東京・原宿の店は660平方メートルの広さです。先日、1カ月かけて全面改装し、12月10日にリニューアルオープンしました。15年には、池袋の西武百貨店に入っている店の全面改装をやります。ある意味、札幌新ビルの前哨戦です。
――全体のコンセプトは。
大谷 〝キレイ3世代〟です。「大人世代」、いわゆるおばあちゃんの世代。それに「娘世代」、お母さんや独身女性。そして「子ども世代」、女子中高生から女子大生。これら3世代を切り口に、あらゆる世代の「キレイ」を提案します。

利益率の高い商品をラインアップ

――4フロアを使う新しいアインズ&トルペはどんな店になりますか。
大谷 ビル全体で、女性のための美と健康のミュージアムを創造します。そのなかでアインズ&トルペはスペシャリティコンセプトストアとして、すべての女性に最新の「きもち・からだ・きれい」を発信する日本最大級のビューティー&ヘルス・ライフスタイルストアにします。
地下2階は、地下街からの導入部として集客性の高い食をメーンにしたフロアにする予定です。名づけて「キレイマルシェ」。美と健康を意識した有機野菜やオーガニックフードなどのテナントを入れながら、ニューアインズ&トルペには、体の中からきれいにする商品を置く。
地下1階は、全フロアを使って、話題のキレイを発信する「キレイトレンド&プレミアム」。アインズ&トルペ史上最大規模を誇るコスメ売り場にします。インポートから制度化粧品、通販ブランドのプレミアムコスメまでを集積。セルフコレクションからコンサルティングまで、あらゆる女性が〝なりたい自分〟に合わせてコスメを選べるフロアです。
1階はビルの顔となるフロア。最新のキレイを提案します。ライフスタイルショップとアインズ&トルペの今までにないコラボレーションをお見せします。
2階はワンランク上のキレイを体感するフロア。フットからヘアまで全身をキレイに整える〝魅せてくれる〟商品を集積したいと考えています。美しいシルエットや美脚といった話題のアイテムのほか、ビューティー雑貨の体感コーナーなど、試して実感して選べる場と時間を提供します。
――3階から上は。
大谷 7、8階はレストラン街にします。インバウンドのお客さま、道外のお客さま、道内のお客さま、それぞれを意識したお店を入れたい。
――残り4フロアは。
大谷 ライフスタイルにかかわるものとか、リラクゼーション、アクティビティ、メディカルといったところを考えています。
――オープンは。
大谷 15年10月の予定です。ビルは札幌の真ん中。インバウンドのお客さまも十分取り込めると思います。実際、アインズ&トルペには、外国人客が結構、来ています。原宿店は、売り上げの3割が外国人です。
――新ビルに女性が集まると、人の流れが変わりそうですね。
大谷 そういうふうにしたい。アインズ&トルペは北海道では集客力があります。でも道外の知名度はまだまだ。とくに首都圏で出店するのは大変です。03年に原宿に出店しました。一定の成果をあげているから東京駅や自由が丘にも店はあるのですが、家賃がものすごく高い。そういうところには、自分たちが製造し販売もするという、アパレル系などの利益率の非常に高い業態しか出られないんです。
――独自商品を開発というのは首都圏出店もにらんでということですね。
大谷 いまのアインズ&トルペの粗利では、首都圏の中心部に出店はできません。少し業態を変えて、利益率の高い商品をラインアップします。
日本で成果をあげているのは、ほとんどが製造販売の小売業。ユニクロ、ニトリ、ABCマート、無印良品……。そこに到達するためには、ものすごい努力が必要です。たくさんの失敗を重ねて今日があるのです。われわれも、すぐうまくいくとは思っていません。でも挑戦しないと。その1つのきっかけが今回の新ビルなのです。

地下街既存店の撤退は考えていない

――新ビルがオープンすることで、既存の地下街の店舗はどうしますか。
大谷 当然、影響は受けます。自店競合になりますが、〝札幌中心部にはアインズ&トルペがきちんとある〟と思っていただいたほうがいい。撤退などは、いまのところ考えていません。
――いま小売業は大変難しい局面にあるのでは。
大谷 ネットの広がり、高齢化、所得格差、消費税増税、さまざまな要因が少しずつ絡んで、今後、消費がどんどん増えるということは考えにくい状況です。だから積極的にインバウンドなどを取り込む努力は必要です。また、全道から札幌に遊びに来たとき、必ずアインズ&トルペに行きたいという店をつくらないと。
日常生活は郊外店で十分だけど、本当に何か楽しみたいというときは、アインズ&トルペに行こう、あそこはいろんなものがあるよと、全道・全国からの観光客、インバウンドのみなさんに思ってもらえるような場所にしたい。
――現状、物販の売り上げはどれくらいの割合を占めていますか。
大谷 全体の約1割。いずれは3割くらいにしたい。
――いつごろをめどに。
大谷 そういう会社にしなければならないと思っているだけで、いつになるかは正直わかりません。早いかもしれないし、時間がかかるかもしれない。
――ドラッグストアのM&Aも考えている。
大谷 もちろん、あるかもしれません。ただ、世の中にもうあまりいいものはない。明らかに業界は再編に向かっています。ドラッグストアも調剤薬局も。
――最後になりましたが、15年の抱負を。
大谷 15年は調剤薬局の価値が本当に問われる年になるかもしれないと思っています。もちろん、いままでだって価値は問われていた。でも14年の診療報酬改定を見ると、よりはっきりしてきました。在宅、24時間、ジェネリックの利用促進等々。いままでもやるべきことでしたが、これからはやらなければ認めてもらえない。そういう意味では元年です。とくに在宅に出ていくには、いままで以上に薬剤師のマンパワーが必要です。ところが薬剤師の採用がたいへん難しい。14年の薬剤師国家試験合格率は60%、8000人を大きく割りました。採用ができない。業界最大手の当社ですら大変です。中小チェーン薬局は本当に確保できない。また女性が多いから結婚を機に辞めてしまう。
そこに手を打つべく、2年ほど前から準備はしてきた。第2四半期決算では、売り上げは15%程度前年割れでしたが、通期で見ると計画通り達成できると思います。増収で若干の増益。15年はステージが少し変わって、利益率も上がる。そういう年にしたいですね。

=ききて/鈴木正紀=