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Interview

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われわれが社会保障の将来不安を支える!掲載号:2018年6月

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有末真哉 三井生命保険会長

医療、介護、年金――国の社会保障に対して不安を抱く人は少なくない。将来、老後の安心を考えたとき、役割を果たすのが生命保険だ。北海道ともゆかりがある三井生命会長の有末真哉氏に、生保業界のいまを語ってもらった。

曽祖父は屯田兵として美唄に入植

有末真哉氏は1958年3月17日、東京都生まれ。札幌西高校、早稲田大学教育学部卒。80年4月、三井生命保険相互会社入社。2006年主計部長、08年執行役員企画部長、09年常務執行役員、13年3月専務執行役員を経て、同年6月に代表取締役社長に就任。18年4月から現職。以下、有末氏との一問一答。

   ◇    ◇   

――札幌西高校のご出身ですね。

有末 中学2年生から高校卒業まで、札幌に住んでいました。いま振り返ると、私の人生の中で、密度の濃い、人間形成の上で重要な5年間でした。

父の転勤で初めて北海道に来たとき、不安と緊張がありました。そうした中、周囲の人たちは私を受け入れてくれて、すぐに仲良くなろうと接してくれました。こうした寛容さは、北海道の方々の魅力です。

北海道での生活はとても心地よく、当時の恩師、友人とは、いまでも交流を続けています。

実は、私の曽祖父は屯田兵として、美唄の茶志内に入植しました。親戚から当時の苦労話を聞くと、いかに大変だったのかがわかります。そういった環境の中、道民は新しいものをどんどん取り込んでいこうという気質があり、開拓者精神が脈々と受け継がれていることを感じています。

――空知には三井グループの炭鉱もありました。

有末 当社は1927年(昭和2年)、三井合名が東京の高砂生命という会社を買収し、誕生しました。

創業と同時に全国に支店を5カ所つくりました。東京、大阪、名古屋、福岡、そして小樽です。将来、北海道は三井グループにとっても大切な場所になる。そうした理由から北の拠点をつくったものと思います。

戦後、道内に炭鉱が栄える中、当社にとって北海道はより重要なマーケットになりました。いまでも古くからのお客さまが、たくさんいらっしゃいます。

――有末会長は北海道とゆかりがありますが、道内勤務はないそうですね。

有末 そうなんです。せっかく生命保険会社に入ったのに転勤が一度もなくて……。入社以降、人事異動の際、「札幌支社を希望」と書き続けてきたのですが、ずっと東京勤務です。

私は大学で数学を勉強していまして、それを生かせる仕事に就きたいと思っていました。生命保険会社には、アクチュアリーという仕事があります。保険数理を専門に扱い、資格が必要です。

死亡率の調査研究や、将来のお支払いのために積み立てる責任準備金を計算する仕事に携わりました。また保険商品の価格を決めることから、商品開発にも関わってきました。

長くお付き合い、対面販売の強み

――生命保険業界の現状を教えてください。

有末 まず、日本人は保険好きと言われています。世界各国の中で普及率は高いと思います。日本人の相互扶助、みんなで助け合う思想からきているかもしれません。

近年、高齢化が進み、生産人口が減っています。以前の生命保険は、働き盛りの人たちが万一のことがあったときのため、家族が困らないように加入していました。それが日本の生命保険の発達の歴史でした。

いまはそれだけではなくなってきています。何かあったときに自分の家族、子どもに迷惑がかからないようにしたい。医療、介護、年金などの国の社会保障に対して、将来大丈夫だろうかという不安をみなさんお持ちです。自助努力で老後の準備をしたいと考えている年配の方々が多くなっています。そうしたニーズにきめ細かく応えられるかが重要です。

――インターネットなど、生命保険の販売チャンネルが広がっています。

有末 当社は営業職員による対面でのセールスが中心です。そのまちに住んでいる職員が、長いお付き合いの中で、本当に必要な保険をお勧めし、必要があればタイムリーに見直しのご提案をします。ライフスタイルを含め、どんな方なのかわかっているからこそ、そうしたお話ができます。

また、ご加入されている契約についても、ご加入時にはよくわかっていても、だんだんわからなくなってきます。そのため、1年ごとに当社の営業職員が直接うかがい、保険内容を確認し、改めてご説明させていただきます。

生命保険には難しいというイメージがあります。契約期間が長く、どうしても法律的な専門用語もでてきます。

損害保険の基本的な概念は、いま持っているものが元に戻る経済的補償をしますというものです。

一方、生命保険は価値の見いだしかたが、お客さまによって異なります。インターネットを通じて、手軽に加入ができるような機能も必要だと思いますが、十分なアフターケアは難しいと思います。

10年ほど前、インターネットが急速に普及し、生命保険も対面セールスがなくなる、と言っていた人までいましたが、いまでも販売のウエートが一番大きいのは対面販売です。

東日本大震災で実感團琢磨の経営哲学

――三井生命の主力商品に「大樹セレクト」があります。

有末 大樹セレクトは、死亡保障、生前給付、介護、医療の4つのカテゴリーがあり、それぞれ豊富な特約がラインアップされています。お客さまのご要望、状況にあわせて自由に設計していく商品です。

16年4月から発売を開始し、累計販売件数は30万件(18年3月時点)を突破しました。

もう一つ、外貨建ての商品があります。生命保険には予定利率といって、この先、何%の利回りで、お預かりした保険料を運用していけるのか。それを前提に商品価格を決めます。

国内の低金利が続き、円建ての保険で売れなくなる商品もでてきました。そこで、比較的まだ利率の高い通貨。たとえば、オーストラリア・ドル、アメリカ・ドルを使った商品を、5年前から販売しています。

外貨建ての場合、為替のリスクが懸念されますが、それを軽減するような手当をしています。たとえば、保険が満期になった時には、すぐに円に替えるのか。それとも、もう少し豪ドルとして持っていて、為替のいいときに円に替えるのか。お客さまにお選びいただくこともご提案しています。

――2016年4月に日本生命と経営統合しました。

有末 統合効果として、まずは商品の相互供給です。商品の開発には認可が必要です。システムを構築するのに時間と費用がかかるので、いま持っている商品を互いに供給しあっています。

たとえば、当社は経営者向けの保険、日本生命は外貨建ての保険を販売できるようになりました。

もう1つが人材の交流です。当社から若手を十数人、日本生命に出向させています。同じ生命保険会社でも、仕事の進め方が違います。お互い、良い部分を学び、取り入れていく環境をつくりました。

当社は90年の歴史がある会社ですが、大事にしてきた強みがあります。それを維持しながら、新しいものを入れていかなければ、企業の発展はありません。古いことを大事にしながら、新しいことを取り入れることが競争力につながります。

創業時、三井合名の理事長の團琢磨が社長を兼務していました。彼は1932年に命を落としましたが、「いつの時代もお客さまのためにあれ」という言葉を、経営の哲学として遺しています。

お客さまがあって、初めて事業が成り立つ。常にお客さまのことを考えて、商品を販売するという意味です。これはどんな企業にも相通ずるかもしれません。

東日本大震災の直後、この思想が、当社従業員に浸透していることを実感しました。

自分の家が流され、被災した当社の営業職員が避難所をまわっていました。加入している保険から何かお支払いできるものがないか、お役に立てることがないか、お客さまに直接会って話をしていたそうです。

これは対面で長くお付き合いしてきたからこそ、できることです。私はそうした営業職員を誇りに思います。

ICTを活用して地域密着の営業

――最後に道民にメッセージをお願いします。

有末 北海道は広大なので、全部のまちに営業拠点を配置できません。どうしても拠点の数が限定されます。そうした中、どうやってお客さまにサービスをご提供していくのか。

いま、携帯端末が開発がされたことで、営業の活動が変わりつつあります。どこでも営業部にいる時と同じように話ができます。

かつては、お客さまに保険の話をしても、正式なご提案の前には、一度営業部に戻り、設計書を作り直していました。携帯端末の登場で、お客さまが手続きに費やす時間、手間が大きく軽減しました。遠隔地の多い道内では本州以上に、重要なツールになっています。こうしたICT(情報通信技術)をうまく活用しながら、地域密着の営業を続けていきます。

北海道は当社としても、長く、大事にしてきた場所です。そこにいるお客さまとのつながりは、当社の財産です。

また、当社では地元企業とのつながりとして、新入社員向けのセミナーを開催しています。生涯設計の中での保険の活用方法などをご紹介しています。

いまや「人生100年時代」とも言われます。国民の中には、国の社会保障制度の将来に対する不安があります。自分たちの将来につけがまわってきたときに大丈夫なのだろうか、というものです。

国の社会保障制度の足りない部分をわれわれが担っていく。わかりやすく、使いやすい商品を提供していくことが、生命保険会社の社会的な使命だと思っています。

=ききて/前田圭祐=