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Interview

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お客さまの期待を”凌駕”します!掲載号:2015年1月

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羽山ひの木 札幌三越店長

 2015年に大規模な店舗改装が終了し、新たなスタートをきる札幌三越に、14年10月、初の女性店長が誕生した。高校時代はバスケットボール、札幌三越入社後は外商部で鳴らしてきた羽山ひの木店長に、今後の意気込みを聞いた。

〝基礎〟はすべて高校時代に培った

――札幌香蘭女子学園高校(現札幌山の手高校)バスケットボール部で活躍していたそうですね。
羽山 厳しい高校生活でした。いまの自分の基礎は、あの3年間でつくられたと思っています。
1年生は指名されたらなんであれ、パッと歌わなければならない決まりがありました。そういうことが瞬時にできないと、大勢の観客の前で最高のパフォーマンスも見せられない。
もともと私は人前に出てすぐ話せるようなタイプではなかったことを考えると、メンタル面はかなり鍛えられたと思います。
物おじせず人前に出て話せるようになったことは、現在もプレゼンテーションなどの場で、ものすごく役に立っています。
――札幌三越に入社した理由は。
羽山 当時できたばかりの札幌三越女子バスケット部に誘われたことがきっかけです。香蘭高校バスケ部の上島正光コーチと石田修務監督からも三越行きを強く勧められました。
私もバスケットをやめるつもりはありませんでしたし、新しいチームということで、自分のやりたいことができると思い、三越にお世話になろうと決めました。
入社後はフルタイムで働き、残業は免除でした。試合日は公休扱いで、合宿もさせてもらっていたので、バスケットをやる上で、かなりの配慮を会社からはいただいていました。
その一方で、だんだんとバスケットよりも実際に働いている時間がおもしろくなってきました。
高校までは休みなしでバスケットしかしていません。どこか行くにしても、すべて部活の遠征なので、常にジャージーです。おしゃれをして出かけるとか、みんなでレストランに行って食事をするということも、入社後に知ったことでした。
――なぜバスケットをやめたのですか。
羽山 上島コーチからは「3年間は絶対にやめるな」と言われていました。香蘭高校から三越に入社したのは当時、私以外にはいませんでした。
その私がすぐにやめてしまうと、三越は香蘭高校の選手をとらなくなると危惧していたからです。その言いつけを守って3年以上続け、後輩も三越に入ってくるようになりました。
ケガが重なり、長期入院が必要になったとき、使命は果たしたと考え、入社から4年後、悔いなくやめることを決めました。
――そこから生活はがらりと変わった。
羽山 引退したときはまだひざにボルトが入っており、松葉づえもついていた状態でした。そのため、店頭には立てなかった。
実はそのとき、会社に迷惑をかけると思い、退職を申し出たことがあります。しかし、当時のバスケ部の部長から「ケガでやめるのではなく、今後は三越人として仕事を頑張れよ」と言われ、会社に残りました。そして配属されたのが、外商部でした。
――これまでで印象に残っている仕事は。
羽山 1つは業務改善です。お歳暮やお中元などのギフト時期は、営業部門にかかる負荷がものすごく大きかった。その軽減と残業費の圧縮のため、アルバイトを雇い事務をおこなうシステムをつくりました。
一定の成果が出て、特別賞与もいただけました。そのときに、この会社ではやった分だけ評価をしてもらえるという喜びに目覚めました。
もう1つは〝ユニホーム〟づくりです。私は事務しかしていなかったのですが、先輩社員の働く姿を見ているうちに、営業をやりたいと思うようになっていました。その中でも、法人外商部にお客さまの企業のユニホームを制作するチームがありまして、そこに行きたいと希望していました。
そんなとき、たまたま三越の従業員ユニホームのデザインコンペがあって、私も応募したのです。それが社長賞を取った。それからあれよあれよとユニホームづくりを担当させてもらえるようになりました。
よく頭をかきむしってデザイン画を描いていました。世の中にないものをつくりあげるという経験は、百貨店で働いていても、誰もができることではなかったので、本当にやりがいがありました。
――2014年10月に店長に就任しました。
羽山 実際に店頭に立っていたのは最初の3年間だけです。その後、28年に渡り外商部にいたので、店長就任の内示を言い渡されたときは正直「大変なことになったな」と思いました。理由もわかりませんでした。
しかし、竹内徹札幌丸井三越社長からは「これからお客さまに寄り添ったお店づくりをしていく中で、誰がお客さまの感性に最も敏感なのかを考えたときに、顔が浮かんだのが君だった」と言われました。
私自身もそのような自負はあります。お得意さまに携わる仕事を十数年やってきたことが評価されての打診だったので、店長という大役を承ろうと決めました。

アマチュア目線で改善を重ねる

――札幌三越では初の女性店長ですね。
羽山 お客さまからは女性ということで、何か変わるのではないかと、期待されている部分はあると思います。そこは女性ということだけではなく、しっかりと期待の上を行きたいと思っています。
また、なったばかりの私が言うのもおかしいのですが、会社が次の店長をまた女性にしようと思うか思わないかは、私のでき次第だと思っています。
私としては、女性の後輩にバトンをつないでいきたい。そういう女性を育てたいし、出てきてほしいと願っています。
いま、三越伊勢丹ホールディングスでは女性の管理職がものすごく増えてます。女性がキャリアを積むには非常に働きやすい会社です。とくに出産、子育てをしながら働けるしっかりとした仕組みが社内にはあります。
そもそも、これだけ女性のお客さまが多いのですから、女性従業員が働きやすくなければダメだと思っています。
――就任してからの2カ月で何か変えたことはありますか。
羽山 これまでやってきたことは間違いではないので、大きく変えることはありません。
ただ、私たちマネジメント職も含めて、お客さまと接する時間は増やしました。例えば毎日夕方におこなっていたミーティングの廃止。集まらなくても、メール配信などで情報を共有できる仕組みをつくり、極力閉店までお客さまのそばに立てるようにしました。
また、店頭の媒体物などは、感性で見ることにしています。百貨店の媒体物をつくるプロの中で、一人くらいアマチュアがいてもいい。よりお客さま目線で、どう思われるかを考えるようになりました。
そうすると、これから出さなければならない媒体物は、果たしてこれでいいのか、あのお客さまなら何と言うかなという視点でチェックするわけです。
もちろん担当社員は全力で製作してくれているのですが、写真や掲載する商品を変えてもらったり、細かい指示をかなり出しています。自分から店頭に顔を出して、現場にお客さまの感性を伝えることもあります。
私たちから「売りたいのはこれだ」と見せることも必要です。しかし、つくり手思考になりすぎると、お客さま目線と少しズレが生じることがあるので、修正をかける必要があります。
――札幌三越の強みは。
羽山 いいものをよくご存じの、いわゆる〝大人〟のお客さまが非常に多い店です。非常に厳しいお客さまの目がありますし、ありがたいことに、声に出して評価を言ってくださる人も多い。お客さまとの関係が密接な百貨店だと思います。
――15年には店舗の大規模改装があります。
羽山 4月までには多目的トイレなど、いままでご不便をかけていた部分を整備します。9月になると、今までと全く違うフロアもできますので、お客さまには大きなインパクトを与えられると思います。ハード面だけではなく、サービス機能を充実させるというのがこれからのリモデルの取り組みです。
ある本に「戦略の本質は、自分たちの得意技を徹底的に磨き上げることにある」と書かれています。
これに当てはめると、私たちの一番得意な部分というのは、お客さまとの関係性です。今まで以上に従業員一人ひとりの質を上げていくことが極めて重要だと考えています。
例えば、三越らしい提案ができるカラーコーディネーターなど、有資格者を増やしていくといったこともやらなければなりません。これもきめ細かく質の高い接客で、お客さまとの関係性をつくっていくためです。
〝器〟が変わっても、一度見ればそれまでという人もいるかもしれない。
私が目指したいのはお客さまの期待を〝凌駕〟することです。そうじゃないと、ハートに訴えられないとさえ考えています。
細かいことですが、挨拶1つ、立ち姿1つ、商品を見せるときの手の持ち方1つにも〝三越らしさ〟がにじみ出てこなければならない。ですから、これからは、人材育成の部分を徹底的に強化していきます。

挑戦の先にはご褒美がある

――北海道の働く女性にエールを。
羽山 さまざまな異業種の人たちと接する機会がありますが、北海道にも元気で優秀な女性はたくさんいます。
若くして起業されて、自分の仕事に誇りを持っている。私はそういった人たちに刺激をいただいています。
逆に一歩が踏み出せないでいる人、「大変そうだから私はいいや」と、未来にネガティブな発想を持つ人もいることも事実です。私はそれを打ち破って先に進むと楽しいことがあると伝えたい。
責任ある立場になって責任ある人に会うと、それだけでも自分の人生の幅が変わってきます。大変なことにトライすると、自分の生き方、見ている世界が変わるという〝ご褒美〟が待っている。
私見ですが、女性は男性よりも、根性と粘り強さを持っているのではないかと感じます。であれば、徹底的に頑張ることを続けていきたいし、北海道の女性にも、自らの可能性を広げていってほしいと思います。
――ありがとうございました。

=ききて/松田尚也=