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Interview

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〝すさんだ社会〟に絆を取り戻す掲載号:2011年12月

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工藤和男 連合北海道会長

 10月19、20日におこなわれた連合北海道の第24回定期大会で、第7代目の会長に選出された工藤和男氏。急速な少子高齢化の進行、非正規雇用の増大、格差・貧困問題など、直面する課題にどう取り組んでいくのか。ズバリ聞いた。

働くことを軸とした安心社会の構築

――会長就任おめでとうございます。とはいうものの、前会長の高柳薫さんは6月22日に北海道労働金庫の理事長に就任され、会長代行だった工藤さんが実質的に連合北海道のトップでした。
工藤 高柳さんは10月の任期まで連合北海道に籍を置きましたが、労金の理事長に専念されることから、権限・権能が代行だった私に委譲されました。事務局長がベテランの村田仁さんだったので、安心でした。
――工藤さんは連合北海道の副会長を2004年から5年、その後、会長代行を2年やられている。その意味では移行はスムーズだったのでは。
工藤 しかし、事実上、組織を動かしているのは会長、事務局長、そして常勤のスタッフですから。私自身、やはりこれまでとは違う緊張感があります。
――確かに組合員26万5000人のトップですから責任は重大です。
工藤 私は連合をつくってきた諸先輩が、離合集散を繰り返してきたそれぞれの労働組合を大同団結させた経過を見てきています。それは並大抵の努力ではありません。その上に、いまのわれわれがある。連合内にもさまざまな課題はありますが、さらに大きく育てていかなければならないと思っています。
――重点課題は。
工藤 まずは東日本大震災からの復旧・復興です。これなくして、日本の再生はありません。北海道として、労働組合として、ボランティア的な部分などで、どうたずさわっていけるのか。たぶん息の長い話になると思います。
次いで、少子高齢化の進行、長期にわたるデフレ、非正規雇用者の増大、格差・貧困問題など、持続性を脅かす構造的問題に、われわれは直面していると思います。これらの問題をいかに克服していくのか。キーワードは「働くことを軸とする安心社会」だと思います。本当の安心社会は、支え合い、助け合い、連帯、すなわち分かち合う人と人との絆の中からしか生まれません。人は働くことで社会に参加し、経済的にも社会的にも自立する。ここ20年、まさに日本は〝すさんだ〟と感じます。「失われた20年」などという言い方もされますが、われわれも反省しなければならないところが確かにある。やはり悪政を看過し、 自分で自分の首を真綿で絞めてきた部分があったと思います。一生懸命働いて、必ずしも結婚すればいいというものではありませんが、家庭が持てて、それなり の生活ができて、権利と義務をきちんと果たした中で、安心して老いていける。そういう社会であるべきだろうと思います。
i2――どう具現化していきますか。
工藤 働くことを軸とする安心社会という理念を構成組織全体が共有化しつつ、その運動の展開に重要な視点は「国民目線」「道民目線」だと思います。
連合北海道は、地域の人々に共感と賛同を得る運動を具現化し、さらに発信力を高めて、頼りがいがある組織だと道民のみなさんから思っていただけるような活動を展開していきたい。
――まさに〝すさんだ〟という表現が的確だと思います。その1つの背景に、この20年で爆発的に増えた非正規雇用の現実があると思います。
工藤 国内の雇用労働者は約5500万人、道内は242万人といわれています。この雇用労働者は、生産者でもあり、消費者でもあります。公正な、そしてきちんとした労働条件のもとで職場で働き、糧を得て、家族や仲間と支え合い、税金を払い、社会保障費を払い、まさしく日本の形をつくる原動力になっている。
一方で、非正規雇用の問題は「光あるところに影がある」の言葉に象徴されます。いまや非正規労働者は全雇用労働者の3分の1以上を占める状況です。彼らの生活はもとより、日本経済のみならず日本の社会で深刻な問題となっているのはご承知の通りです。こうした労働市場の変化を直視しながら「同じ職場に働く仲間」として非正規雇用への取り組みこそ、労働組合本来の任務だと思います。
――連合北海道に加盟する非正規の組合員は。
工藤 現在、全体で26万5000人の組合員がいますが、うち非正規は約5万人弱。それぞれの産別のみなさんのご協力をいただく中で増えています。この2年間、1万4000人の組織拡大を目標に運動してきました。結果は8534人の増。うち非正規は5432人で、この2年間で組織化された63.6%が非正規という状況です。
――今後、連合においても非正規の比率は増えていくでしょうね。
工藤 雇用・労働分野の規制緩和から、増えていくんだろうと思います。多様な働き方はあっていい。家計の補助的なことで働いている人もいれば、正社員になりたいと思って働いている人もいる。問題は非正規から社員になりたいという人に対し、企業側がそういう道をつくっておくことだと思います。

原子力問題は冷静沈着な議論が重要

――こうした社会における労働組合の存在意義を、どう認識していますか。
工藤 数は力ですから正規も非正規も、まずは団結する。労使間にはルールがあります。しかし、そのルールを働く側が知らない場合も多い。組合のあるところは労使間で協議できますが、ないところでも、経営側も厳しいかもしれませんが、社会的なルールを順守していただかなければなりません。
――連合にはそういうことを知らせる役目もある。
工藤 そうですね。昨年度1年間、北海道労働基準監督署が勧告是正した時間外手当の未払いの総額は約3億円です。私もさまざまな機会で発信していこうと思っています。前任の高柳さんから「会長は連合北海道として積極的に外に情報を発信していくことが重要だ」と言われています。私もそういう気合で発信していきたいと思っています。
――組合離れは進んでいるのですか。
工藤 帰属意識が薄らいでいるのは確かではないでしょうか。組合費は引かれているが、そのメリットは感じられない。かといって労働組合は必要だという人が多いように思います。
労働組合の大事な役割として世話役活動というものがあります。たとえばお金にかかわること、医療や住宅、法律的なこと、その他さまざまな相談や悩み。それらを相互扶助の形で対応しています。そうした原点に返った運動というのも、やはり構成組織には徹底してもらいたい。
――いまは非正規の人のほうが労働組合の必要性、重要性がわかってきているのではないですか。
工藤 メンバーだけの権利を守ればいいという時代ではなくなっています。産別によって濃淡はありますが、メンバーだけしかいないというユニオンショップ制は少ない。オープンショップ制のところは、非正規に対するアプローチを一生懸命やられています。
――今後のエネルギー政策ですが、連合内部には有力産別として電力総連があります。そのため、これまで原子力政策についての発言が弱かったように思う。
工藤 原発・エネルギー問題については、これまでの経過を若干お話ししておきたい。1994年8月、翌年の統一地方選に向けて5団体で合意した原子力についての見解がある。それは「原子力は過渡的エネルギーであり、脱原発を目指していく」というもの。その後、2000年、道議会において全会一致で「原発は過渡的エネルギー、脱原発の視点で、省エネ・新エネを推進しよう」という促進条例が制定された経過にある。その後、05年の定期大会で、原発は過渡的エネルギーであって、安全に関する情報公開を求めて、脱原発を目指すという政策方向を確認しました。08年のプルサーマル計画では、「連合北海道エネルギー環境政策委員会」の中で慎重な論議が必要と基本認識を示した上で、安全体制や情報公開について、最大限の努力を払うように求めてきたという経過の中で今年3月11日、東日本大震災が発生、そして福島第1原発の事故が起こったという流れです。
そういう意味では、北海道は47都道府県ある中で、条例108号(北海道省エネルギー・新エネルギー促進条例)が、ほかの県に比べて先進的になっていると認識をしています。
古賀伸明会長は10月4日の連合第12回定期大会で、さまざまな前提条件があるものの、今後の議論をしていくうえで、原発は中期的に縮減、将来的に依存しないというスタンスを示されたということでは、まさしくわれわれと気持ち、同じスタートといいましょうか、そういう形になったのではないかと、個人としては認識しています。
問題は、雇用だとか産業、起きた事故の重大性にかんがみて、時間軸をどういうふうにするのか。われわれは事故調査委員会の中身を知らないし、原子力にたずさわる人によってもさまざまな意見があるという現実の中で、しかし起きた事故は悲惨であり、実際、身近に原発がある。われわれは組織として議論をしていくにあたって、合理的に、客観的に、冷静沈着な議論を進めていくことが重要だと考えています。
――時間軸というのは。
工藤 正確な事故原因がわからないというのもあるし、被災の状況も正確には把握されていない。新たなエネルギー源はまだまだパーセンテージでは低いという現実もある中で原子力に代わるエネルギーをどこに依拠していくのか。環境の問題、産業の問題、雇用の問題が内在しています。それらを含めて、短・中・長期的にとらえるしかないのではないかということです。

TPP問題は拙速な判断避けるべき

――議論はこれから本格化すると。
工藤 エネルギー・環境政策委員会の中では、来年の6月に向けて中間的な報告ができるように取り組んでいます。9月20日の地方委員会で提起させていただいて、10月8日に第1回をスタートさせています。
――北電労との折り合いは。
工藤 電力という公益事業をおこなう企業の労働組合という立場で、電力総連さんから今大会中、発言がありました。福島の事故は同業種として大変申し訳ないということと、チェック機能の強化、信頼と安心を回復する観点で運動を展開していく、安定・安全を最優先にさせながら電力供給をする立場として頑張っていきたいという内容でした。連合中央の政策委員会の中でプロジェクトを設置し、古賀会長が挨拶した中期、そして将来的に脱原発を目指すために、さまざまなことを議論していくということですから、そことの連携を図っていきながら、連合北海道エネルギー環境政策委員会の中で議論をしていきたいと思っています。
――北電のやらせ問題については、どのような認識をもっていますか。
工藤 国や道が主催し、民主的な手続きのはずの場面で、やらせという問題が明らかになったということは、手続き上の問題も含めて、いかがなものかという認識をもっています。北電は第三者委員会の調査報告を企業としての回答としました。道も第三者委員会を設置します。いずれにしても真相が明らかにならない中で、連合北海道としてこの問題についてどういうふうに取り組んでいくということは、現状では持ち合わせていません。
――TPP問題はどう考えられていますか。
工藤 世界の貿易の自由化は避けて通れない課題であると思いますが、拙速な判断は避けるべきだと思います。国内産業をどう評価するのか。本当に自由化の中で正々堂々と生きていけるのか。それがまったくわからない中での前のめりの対応は、非常に違和感を覚えます。まして北海道の基幹産業は農業。より慎重にあるべきだと思います。

=ききて/鈴木正紀=