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Interview

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【若手経済団体トップ鼎談】
地域再生で我々ができること
掲載号:2019年1月

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大森美秋北海道商工会青年部連合会会長
松本崇之北海道商工会議所青年部連合会会長
中村圭日本青年会議所北海道地区協議会会長 

地方創生が叫ばれて久しい。その主人公の1人であり、なおかつ各地の将来を担うのが、地域に根を張る青年経済人の組織だ。代表的な3団体の道内トップが率直な思いを語り合った。

なぜ入会し、活動を通じて何を得たか

――自己紹介を。まずは北海道商工会青年部連合会の大森美秋さんから。

大森 真狩村の商工会青年部(Impulse)に属しており、飲食店と建設業を営んでいます。曽祖父が林業を始め、祖父の代で建設業、運送業と広げ、私で4代目。倶知安町の青年会議所(JC)と商工会議所青年部(YEG)にも参加しています。

会員は全国で約4万5000人。道内には152の単会があり、約2000人が参画しています。

――北海道商工会議所連合会の松本崇之さん、お願いします。

松本 道内の単会数は25で会員数は約1300人。全国では3万4000人を超えています。

地元の登別でハイヤー会社の社長を務めています。 もともと親会社の運送会社で整備を担当しており、ハイヤー会社の設立2年目に社長に就きました。

――日本青年会議所北海道地区協議会の中村圭さん、お願いします。

中村 建設会社を網走で経営しており、社長に就いて5年目。2代目です。

JCは道内に47地域で運動を展開しており、メンバー数は約1500人。所属できるのは20歳から40歳までで私は2018年末で卒業を迎えます。

北海道地区協議会は各地域のJCから出向したメンバーで構成され、毎年3つの大きな大会を開催しています。5月のJCフォーラム、7月に根室で開催する北方領土返還要求現地視察大会、9月の地区大会(全道大会)です。

実は18年の地区大会の場所は苫小牧で、大会前日に胆振東部地震が起き、一旦中止としました。そして、大会へのエネルギーを被災地支援に向け、ほぼ毎日、OBも含めたJCの有志が多数、厚真町などの被災地に入って活動しました。また、地区大会も11月23日に改めて苫小牧で開くことができました。

――道内のJCはこれまでも被災地支援ボランティアをやってきたのですか。

中村 はい。2年前の北海道豪雨災害の時も、十勝管内清水町など各地にメンバーが入り、復旧を手伝いました。

――YEGの定期的な大会は。

松本 役員らが出席する大規模な大会は3つあり、全国9ブロックで開かれるブロック大会、全国会長研修会、全国大会です。

研修会では主にディスカッションをします。自分の地域の課題などを出し合い、議論を重ねて発表します。政策提言につなげていくためです。

そもそもYEGの主要目的の1つに政策提言があります。かつては、なかなか発信力のある提言までたどり着きませんでしたが、ムードが変わったのは2年前。当時のYEGの全国のトップが、親会の日本商工会議所の会頭に実際に提言をおこない、道を切り開いた年でした。今年度のYEGの全国のトップは所信として「Passion」を掲げており、私自身も情熱を持って活動に取り組んでいるところです。

中村 JCも政策立案実行集団として運動を進めています。たとえば、先ほど申し上げた北方領土返還要求運動です。根室での大会は2018年で49回目でした。さらに今年度から新たな事業も始めました。ロシアの青年経済人と互いの事業を通じ地域課題の解決を目指す民間外交です。

対象エリアは極東ロシアで私自身もウラジオストクに2度赴き、現地の青年経済人と意見交換をしました。北海道の技術力や寒冷地ならではのビジネスモデルへの期待は強く、私たちに対しても好意的でした。

領土問題の解決のためにも、両国の国民間の信頼関係は不可欠です。最もロシアに近い地域で暮らす私たち道内の青年経済人が、もっと積極的にロシアに向き合うことが大切だ、とつくづく実感しました。

大森 JC以外の人も同行できるのですか。興味があります。

中村 大丈夫です。都合が合えばぜひどうぞ。

――道商工会青年部連合会ではどんな事業を。

大森 後継者育成塾や商品力強化支援事業などを実施しています。

――商品力強化支援とは。

大森 地方の商品をブラッシュアップし、全国に売り出そうという取り組みです。たとえば地元では“普通”のケーキと受け止められていても、クオリティがすごく高く、大都市圏でも販売に期待が持てる、あるいはネット販売できる、という商品があります。実際に親会の商工会が主催する商談会にも出品しています。

――商工会青年部に入ったきっかけは。

大森 13年前、地元の先輩に誘われました。「飲み会があって楽しいぞ」というような感じで。どんな活動をしているかも知らず、なんとなく入りました。

最初は言われるがまま、お祭りの手伝いなどをするだけでしたが、その内に地域活動とは何だろうか、と考えるようになり、連合会の事業に参画させていただきました。その時が転機だったと思います。地方が衰退していく中、何かアクションを起こさなければ、と真剣に考え始めました。

――周囲の同世代のマインドは変わりましたか。

大森 同じように危機感を持っている人は増えてきています。

――とりわけ地方は若者が少なくなってきています。

中村 JCも商工会青年部やYEGと同様、地域をもっとよくしようと思って活動を続けていますが、メンバー数は減少傾向です。だからこそ、個々のメンバーの育成に注力しています。それはメンバーがJCを卒業した後、いかに地元で活躍していくか、にもつながります。

松本 YEGでも会員間の交流を重ねる中で、人口減少社会への対応や本道経済を活性化するにはどうしたらいいのか、といった議論をしています。

――中村さんがJCに入った理由は。

中村 何度も誘いを断ってきましたが、ある時、同業でJCに参加している先輩から、こう言われました。「そんな考えでいいのか。お前は将来、会社を継ぐ立場なのに。トップに就いた時、磨かれていないお前だったら会社はどうなる。もっと社会と触れ合う経験をしたほうがいいぞ」と。

言われた瞬間はケンカを売られたような感覚も持ちましたが、私のことを思って率直に言ってくれたことがすぐにわかりました。

――松本さんは。

松本 大森さんと似ていてなんとなく入った口です。入会してまだ6年で日は浅いですが、登別で17年に開かれた北海道地区のブロック大会が、意識を大きく変えるきっかけになりました。

ブロック大会の開催地は数年前に内定するのですが、登別のYEG内部でやるかやらないか意見が割れた時期がありました。私は“やる派”。「努力もせずにできませんと断るのはないだろう。腹を決めてやろう」と話し、実行委員長を引き受けました。まだ入会して数年の時で副委員長の経験すらなかったのですが……。

私はやり遂げれば必ず、個人としても組織としても、見えてくるもの、得るものがあると考えています。

各地域に守るべき商売や技術がある

――みなさん地方都市で商売をされています。事業承継は深刻な問題では。

中村 地元の網走の建設業では後継者難の話は耳にしませんが、全道的に見れば農業や漁業といった1次産業、さらには地域の小売業や飲食店、小規模な製造業では担い手不足の感があります。

大森 後継者不足の要因の1つは、先輩の世代が子どもたちに商売を継がすのではなく、どんどん地域の外で就職させ、若手が戻ってこなくなったから。さまざまな事情はあるのでしょうが、その流れが続いた結果、地域経済は確実に萎んだと思います。

個人的には、地方の中小企業のM&Aを積極的におこなっていくべきだと考えています。各地域には守らないといけない商売や技術がいっぱいあります。

しかし、現実問題として、その地域の資金力や知恵だけでは守り抜けない。結局、後継者もいないから商売を畳む。本当にもったいない。都市部の企業が持つ力を借りて地方の財産を守り抜き、経済を再生させていけないだろうか、と考えています。

ところが年上の世代と話をすると、残念ながら諦めムードを感じる時も。しかし、ここで諦めたら、地方に未来はありません。

松本 立場上、各地のYEGの話を耳にしますが、地域によって親会の雰囲気は違う印象を持っています。「何かあったら俺たちが責任を持つから」と積極的に背中を押す地域もあれば、逆に無関心のところもあるようです。

――大森さんの言うM&Aはそう簡単ではないのでは。

大森 地方の中小企業が持っている技術や商品の有用性に目をつけ、盛んに買収をしている東京の企業も実際にあります。

ただ、まずは連携から始めてもいいと思っています。大げさなことでなくてもいい。都市部の企業が地方での仕事を引き受ける機会があったら、その地域の旅館を積極的に使うとか。そうすると、郡部にもお金が落ちます。

私は周囲に、工事のための仮事務所を作ったら、地域のスーパーや商店から弁当などの昼食を買いましょう、と言っています。ささやかなお金の循環かもしれないですが、これも連携だと思っています。

中村 そういう視点は大事だと私も思います。小さなマーケットを積み重ねていくという発想も。

災害時の協定を入口に連携を密に

――3団体の間には日常的な交流はありますか。

松本 登別エリアは交流が濃いほうだと思います。それから近隣の組織同士だと、何かするにしても一緒にやろうという話になりやすい。

中村 2年前、道内の青年経済人の団体が一堂に会する行事が網走で開かれ、パネラーの1人として参加をした経験があります。

松本 そうですね。YEGの内部では、そうした大会をきっかけに交流を深めていきたいという話が出ています。

大森 3団体の道内トップが定期的に会合を持てないかと以前から思っていました。9月に胆振東部地震が起き、ブラックアウトにもなりましたが、災害時の連携協定を結ぶのもいいのでは。 

中村 良いアイデアですね。地域によってはJCはあるけれど、商工会青年部はないとか、逆もパターンもあります。横の連携を密にすれば、発揮できる力もアップします。

今日、こうしてお会いしたわけですが、少なくとも年に1回、トップ同士で会う取り決めをしてはどうでしょうか。JCの役員任期は1年間ですが、目的をしっかり定めれば継続できると思います。

松本 いいですね。地方から人口が流出していく中、各組織の持ち味をうまくアレンジしていかなければダメな時代が来ているのかもしれません。

胆振東部地震の後、全国のYEG会員や単会から義援金をいただき、目下、活用方法を検討をしているところでした。もし事前に連携協定を結んでいれば、たとえば支援物資の部分はImpulseに、ボランティア活動はJCにとか、そういった話が実現していた可能性はあるでしょう。

大森 他県では3団体で災害対応の連携を組んでいるところが少なくないと聞いています。西日本豪雨の被害を受けた岡山県もその1つで、レポートをお願いしているところです。

中村 ぜひ、できれば近いうちに災害対応における3団体の連携についても話をしましょう。

=ききて/野口晋一=