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Interview

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【特別鼎談】北海道 食の現場の未来掲載号:2018年8月

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大山泰正イーストン社長
生方誠司サッポロビール北海道本社代表
渡邊智紀ワンダークルー社長 

北海道の食文化の魅力を道内外で発信する“最前線”となっているのが飲食店だ。従来から道産食材にこだわる飲食チェーンのイーストン、ワンダークルー、そしてサッポロビールのトップ3人が、北海道の食の未来を語り合った。

学生時代から飲食業にかかわる

――まずは自己紹介をお願いします。

生方 私は群馬県出身です。生まれたのは1964年で、87年にサッポロビールに入社しました。最初は営業、それから労働組合の専従、広報・人事などを経験し、2008年から12年までサッポロUSAというアメリカの販売会社の社長を務めました。日本に戻り人事総務部長に就いた後、当社のDNAの源である北海道に来たのは15年です。

――スポーツマンだと聞いております。

生方 学生時代にアルペンスキーをやっていたので、北海道では夏はゴルフ、冬はスキーを満喫しています。ただ素晴らしい食が豊富にある北海道に来てから体重が右肩上がりなので、いまはジョギングもしているところです。

大山 私は札幌生まれの札幌育ちの“アラ還”です。大学は東京で、アメリカにも留学させてもらいました。最後はニューヨークで過ごし、実家に戻りました。

父親が札幌で不動産などを営んでおり、そこで修業を始めるわけですが、どうも自分には合わない。そこで弟とともに何か事業を立ちあげようとなったのです。

兄弟そろって大学時代は飲食店でのアルバイトやイベント企画などをおこなっていたので、ススキノで「アルズ・バー」という店を1986年に開きました。

それから曲折はありますが、開けたり閉めたりしながら現在は札幌、旭川、仙台、関東地区に44店舗を出店しています。

渡邊 私は1982年生まれで、札幌の北区屯田出身です。親は北18条でお好み焼き屋を営んでおり、私自身も小学時代から店の手伝いをしていたので、働いている親の背中を間近に見ながら育ちました。

大学時代、親が店を閉めると言ったときに「自分に継がせてくれ」と頼んだことがあります。反対されました。やはり安定してほしいという気持ちが強かったのでしょう。結局、私は衣料品の大手企業に就職しました。

ただ、家の手伝いや学生時代のアルバイトを通じて、人の力で売り上げを変えられるという飲食店にはもともと魅力を強く感じていました。就職したときは3年でやめて起業しようと決めていました。

27歳で独立し、30歳までに3店舗を出すという夢に日付をつけたノートもつくり、その通りになりました。いま会社としては7期に入り、18店舗を展開しています。メーンの飲食店部門のほか、店舗プロデュースやグラフィック、インテリアなどのデザイン部門も持っています。

オシャレでスタイリッシュな両社

――生方さんはイーストン、ワンダークルーの両社にどのような印象をお持ちですか。

生方 両社とも共通してるのは、北海道の食文化を創造し、道内外へ発信されいるということです。

イーストン様は「おいしいものが大好き」「人が大好き」という貴社の標語にも表れている通り、風通しのいい社風とそれぞれが個性を発揮できるダイバーシティー的な思考、そしておいしい料理が魅力です。

海外の飲食店トレンドをつかんでおり、社員研修にも力を入れている。さらに生産から加工、販売まで手がける6次化産業への取り組みも始動されており、進化が止まりません。

ワンダークルー様の強みは、自社でウェブや店舗デザインなどのクリエーティブワークも手がけていることです。特にお店の魅力を伝える、また他店との差別化を図る上でデザインは必須として、北海道を代表するデザイナーも在籍されています。北海道の食材を積極的に使用し、食のシーンをまさにデザインしている。従業員の年齢も若く、イーストン様と同様に、明るく熱意あるスタッフが多い印象を持っています。

最近ではリニューアルオープンした旧永山武四郎邸に付設する旧三菱鉱業寮(札幌市中央区)にカフェレストラン「ナガヤマレスト」を運営するなど、ますます活躍の場を広げられています。

――逆に渡邊さん、大山さんはサッポロビールの存在をどのように感じていますか。

渡邊 最大のパートナーであり、第二の社員のような大切な存在です。全国の外食産業の最新情報提供や生産者の紹介など、さまざまな面でサッポロビールさんにはサポートしていただいています。

大山 サッポロビールさんを含めて取引先のみなさまは最大、なおかつ最優秀なコンサルティングファームだと思っています。

生方 当社は「お客さまの生活をより楽しく豊かにする」という経営理念をうたっています。まさにそれを実現するための大切な場所が飲食店だと考えています。ですから、オシャレでスタイリッシュな両社とともに北海道の食文化を広められるのは大変うれしいことだと思っています。

当社は飲食店との営業活動というのは創業以来ずっと続けていることです。さまざまなネットワークも持っています。食材から物件の紹介まで、あらゆる情報を提供できる部分というのはあるので、ぜひこれからもお力になりたいと考えています。

生産者とともに歩む6次産業化

――いま生方さんがお話ししたように、両社とも北海道の食材にこだわっています。その狙いと今後の展開を教えてください。まずは渡邊さんから。

渡邊 北海道のブランド名をつけさせていただき商売をしているので、自分たちにしかできないことを道内外に発信するのが当社の役割だと考えています。それは食材だけではなく、食べ方も含めてです。

例えばメーン業態の「エゾバルバンバン」ではジャガイモに塩辛とバターを乗っけて食べる地元流の食べ方をアヒージョにアレンジして提供しています。

いまエゾバルバンバンは道外では名古屋と香川県の高松市、長野県の松本市の3カ所に出店していますが、20年までには全国40店舗に増やしたい。また売れるコンテンツであるアヒージョの物販もスタートし、国内だけではなく、海外にも卸したいと考えています。

大山 私たちは店舗が増え、仙台や東京にも進出しようかというころ、一度自分たちの会社を見つめ直しました。本社がある札幌、北海道はまさしく日本の食糧基地です。その地元から安定的に安全な食材を仕入れて提供する。やはり北海道とともに歩むことが強みになると考え、道産食材にこだわるようになりました。

さらに店数が増えていくと、どうしても仕入れや物流などの仕組みを変えていく必要が出てきます。

そこで始めたのが「6次化チェーンレストラン」への進化です。生産から加工、物流、販売まで生産者と一緒になって新たな流れをつくり、トレーサビリティをよりしっかりさせたおいしい食をお客さまに提供する。16年からは上川管内下川町にある養鶏場を事業継承し運営しています。

われわれは生産者の気持ちがわかっていないのではないかと考え、やろうと決断しました。生き物を相手にすることの大変さを感じていますが、これからさらに6次化を進めていこうと思っています。

生方 当社のビールもまさに6次産業化された製品でして、北海道でも400軒の大麦生産者、それから4軒のホップ生産者と協働契約栽培を結んでいます。当社は142年前に国策でつくられた企業であり、民営化されるときには道庁から「今後もできるだけ北海道の原料を使用せよ」と通達を受け、それを連綿と守ってきました。生産者とのコミュニケーションも大切にしています。そうやって安定的な原料を使えるということはすごく重要なポイントだと思っています。

食のプロフェッショナルとして発信

――外食産業の課題、そして北海道の食文化をさらに発展させるために何が必要と考えておられるかも合わせてお聞かせください。

渡邊 安売り合戦からの脱却はしなければなりません。安売りが結局働く人のモチベーションを下げています。そして人手不足になり、お客さまの満足度も下がる。全国的に外食産業はこのような悪い循環になりがちです。

北海道はそもそも食文化が優れています。それをしっかりとわれわれが認識するべきです。食のプロフェッショナルとして知識・情報を持ち、お客さまに北海道の食文化の素晴らしさを伝えていく。私たちもまだまだそこはできていませんが、そうすることによってお客さまの満足度も上がり、飲食店で働く魅力も増すと考えています。

エゾバルバンバンを出店することは、そうした発信の場を増やすことと直結しています。当社が成長することが結果的には、北海道の食の発展にも寄与すると思っています。

大山 少子高齢化を迎え食を巡る環境は劇的に変化しています。コンビニにはイートインコーナーがあり、宅配もますます充実してくる。その中で店を構えるわれわれ飲食店はどうすればいいのか。やはりチェンジにとどまらず、イノベートが必要なのだと思います。

外食産業というのは労働集約型のビジネスです。しかし、働く人はいなくなってきている。原因は生産性の低さにあるのです。渡邊さんが言ったように薄利多売で大量生産大量販売という90年代までの成功スキームから脱し、いかに一皿に付加価値をつけられるかが課題と言えるでしょう。

一方で外食特有の食べる楽しさというところは変えてはいけません。そして生産者とメーカー、外食、小売りといった食にかかわる人たちが同じ方向に歩んでいけば、北海道の食文化はさらに進化すると思います。

生方 交流人口が増えているのはポジティブなことだと考えています。インバウンドや道外からのお客さまが北海道で消費するお金は大きく、これが経済活性化につながっています。

ただ北海道に来てからの4年間、惜しいと感じていることは野菜も海産物もお肉もおいしいのに、それがなかなか付加価値化されたり、個別に確固たるブランドが確立されるまでに至っていないという部分です。

寒暖差が激しい気象条件で育った野菜の甘み、豊かな養分を含む海で取れる海産物のうまみ、そういったものが北海道の人は当たり前になっていて“売り”にしていないこともしばしば見受けられます。それがちょっともったいないなと思っていたのです。

やはりイーストン様やワンダークルー様という外食チェーンが道外で北海道の食文化の魅力を発信されると、それがブランド化されて本家本元へ行ってみたいと思うお客さまがどんどん増える。すると交流人口が増えるので、北海道の経済活性化にもつながります。われわれもその支援をおこなっていきます。

――本日はみなさまお忙しい中、ありがとうございました。

=ききて/舟本秀男(進行)=