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Interview

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「食・観光・ものづくり」で
力強い経済構造をつくる
掲載号:2016年10月

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髙橋賢友 北海道経済連合会会長

人口減少はもとより、道内空港の民営化や泊原発再稼働など、道内経済界には課題が山積している。今年6月、北海道経済連合会会長に就任した髙橋賢友氏に課題解決、そして道内経済活性化に向けた意気込みを聞いた。

道経連の使命や重要性を強く認識

髙橋賢友北海道経済連合会会長は1953年7月16日、小樽市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。
77年北海道電力入社。99年事業開発室次長、2003年小樽支店長、05年経理部長、07年理事経理部長、09年常務、12年副社長などを歴任。15年に北電興業社長に就任し、今年6月から会長。北海道生産性本部会長、北海道経済同友会副代表幹事なども経験。今年6月、道経連会長に就いた。

◇    ◇

――北電時代はどのような仕事を。

高橋 1988年の夏から2年間、東京支社業務課に初めて管理職として勤務しました。入社以来、経理畑を中心に歩んでいただけに、資源エネルギー庁など中央官庁との慣れない対応に四苦八苦したことはいまでも覚えています。

また、99年9月から事業開発室の次長として、新規事業開発やグループ企業の再編業務を担いました。

当時は電力自由化の流れの中で徹底した経営効率化が求められていた一方、経営資源やブランドを生かした事業の多角化にも本格的に取り組み出しました。

温浴事業などさまざまな事業を立ちあげたことは楽しい思い出として残っています。

――道経連会長となった現在のご心境は。

高橋 大内全前会長は2年間の間に数多くの要職に就き、中央でも審議会の委員を務められるなど広範囲にわたり活躍されていました。そういう意味では、大内前会長にもっと続けていただくのがふさわしいと思っていましたので、会長就任のお話しをいただいたときは、正直、ちゅうちょしました。

それと同時に、北電時代から歴代会長の活動を間近に見ていて、道経連の使命や重要性は強く認識していました。私自身、地域とともに歩み育てられてきた人間として、北海道の発展に何か貢献することができたらという思いもありました。熟考の末、やるしかないと決心した次第です。

もとより、浅学非才の身です。各分野での経験豊富な副会長をはじめ、会員と一緒になって知恵を絞り、道庁や他の経済団体などと連携を図りながら、北海道経済の発展に全力で取り組んでいきます。

まずは大内前会長の路線を引き継ぎ、さらなる拡大・強化に努めてまいりたいと思っています。

――道内の経済状況をどのように捉えていますか。

高橋 今年7月の時点では、緩やかに回復しているものと認識しています。

需要面で見ると、前年割れが続き懸念していた公共投資が緩やかな増加に転じました。これは道内の経済にとって好材料です。

また、設備投資も高水準で推移しており、個人消費も雇用や所得環境の改善を背景に回復しています。

電気機械や鉄鋼などを中心に生産が緩やかに増加しており、雇用・所得の面でも有効求人倍率が昨年9月に初めて1倍を超えました。今年7月も1・05倍と前年同月を0・09ポイント上回るなど、労働需給が着実に改善しています。

その一方で、職種による雇用のミスマッチや地方での人手不足は深刻です。

フード特区を継続し食産業を振興

――現状から見えてくる北海道経済の課題は何だと考えられていますか。

高橋 道内総生産は1996年度の20・7兆円をピークにマイナス成長傾向が続いています。国土面積の22%を占めながらも、国民総生産に占める割合は4%弱に過ぎません。

基本的に、わが国の発展に対する北海道の貢献度が低下しているのではないかと危惧しています。北海道の相対的な地位をいかに高めていくかは大きな課題です。

また、北海道のみならず国全体が抱える大きな問題として、人口減少・少子高齢化があります。特に北海道は人口減少のペースが全国と比べ10年早いといわれています。黙っていると、地域自体が消滅する可能性があります。

〝産学官金労言〟が力を結集してこの問題に正面からぶつかり「北海道創生」を実現していかなければならないと考えています。

――課題解決のため、道経連はどのような取り組みをしていきますか。

高橋 経済の面から北海道の強みや可能性を引き出していくことが重要です。大内前会長が策定に参画した「北海道創生総合戦略」にも描かれていますが、他地域と比べ優位性のある「食と観光」を中心に稼ぐ力を引き出していく。

これに加えて、力強い経済をつくりだす「ものづくり」産業の振興もしていく必要があります。

「食・観光・ものづくり」の3本柱で北海道の活性化に取り組んでいきます。

食ではいかに道内で付加価値を付けて道外、海外へ売っていくかが課題です。安心・安全で付加価値の高い商品を生み出し、フード特区事業などと連携して、食の輸出を拡大していきたいと思っています。

2011年12月に国から指定を受けたフード特区ですが、これまで道や関係自治体、経済団体などが連携し総合特区制度に基づく支援措置を活用するなどしてきました。

成果として、北海道独自の食品機能性表示制度「ヘルシーDo」の創設や、大規模植物工場の建設、農水産品の輸出施設の整備などがあげられます。

道産食品の輸出に対する関心も高まり、プレーヤーも広がりを見せてきています。国は総合特区制度を今後も継続することとしたところです。

フード特区の今後については、現在検討を進めています。道経連としては北海道の食産業の振興に向けて、国からの支援を引き出すという観点から、フード特区制度の延長が認められることは、大変有意義なことであると考えています。

――観光では道内空港の民営化へ向けた議論が本格化しています。

高橋 道内の観光業の大きな課題の一つが、受け入れ体制の整備です。そういった中で道内空港の民間委託は観光を通じた地域活性化の起爆剤としてしっかりと取り組んでいきます。

道経連は今年3月、道内空港の民間委託の方向性についての考え方を取りまとめました。

そこに示したとおり、空港経営を担うSPC(特別目的会社)については、道内企業が主要な役割を担えるようなコンソーシアム(共同事業体)を構成することが望ましいと思っています。

今年5月には道内4経済団体による「道内空港民間委託研究会」が立ちあがりました。道経連はこれを主導し、会員に対して先行事例や事業リスクなど実務的な情報を提供していきます。

また研究会の成果を踏まえ、国や道などの実施主体へ道内経済界としての期待、要請を発信するなど、道内空港の民間委託を推進していきます。

「日本版M-City」に注目

――ものづくり産業にはどのような支援をおこなっていきますか。

高橋 道内の製造業比率を高めていくため、企業誘致や人材育成を進めたいと思っています。道内の技術系の大学を卒業した人には、道内の企業に就職していただけるような環境づくりが大事だと感じています。現在、理系の大学を卒業した人の6割は本州で就職します。高専も含めてです。学生と企業の接点を増やすなど、地道な取り組みが必要です。

――道内経済の活性化策として、ご自身がお持ちのアイデアはありますか。

高橋 大いに期待しているのは2026年冬季五輪・パラリンピックの北海道・札幌への招致と、北海道新幹線札幌延伸の前倒しです。道経連としてもその実現に注力していきます。

また、将来に向けて明るいテーマを持ち、新しいことに取り組んでいきたいと考えています。

一つは航空宇宙産業の育成です。中でも鹿児島県の種子島に続く新射場の誘致は北海道に優位性があり、国の航空宇宙産業の振興に貢献できる一大事業だと認識しています。

ロボット技術やICTを活用した〝スマート農業〟の実用化にも注目しています。農業の生産性を飛躍的に高める可能性を秘めています。GPS測位システムを使った無人トラクターなどはすでに実用化に向けて試作車ができています。

私も試乗しましたが、でこぼこな道でも真っすぐ動きます。それも3台同時に自動走行ができる。

さらに自動車の自動走行システムの実証試験施設の整備も進めていきたい分野です。各自動車メーカーは自動走行にかかる実証試験に力を入れています。その試験は今後、積雪凍結路面など劣悪な交通環境への対応など高度化していきます。

市街地などを摸した実証試験施設である「日本版M―City」を設けるには寒冷で広大な土地を有する北海道が最適です。道内でも整備を望む声が上がっています。

――泊原発の再稼働についてのお考えを聞かせてください。

高橋 北電は原子力と海外炭火力を中心とした電源多様化を進め、燃料費の低減と効率化の成果を原資として、1986年以降、14度にわたり電気料金の引き下げを実施してきました。その結果、2011年度には1985年度と比較して約34%の電気料金の低減、他の地域と遜色のない料金水準を実現しました。

ただ、東日本大震災を契機に泊発電所の全基停止が長期化することになり、節電要請が繰り返しおこなわれ、電気料金も2度値上げされました。

経済界としては電力の安定供給と料金の値下げを早期に実現していただく必要があります。泊発電所については、安全の確保を大前提に、自治体や住民の理解を得た上で、速やかに発電を再開していただきたいと考えています。

=ききて/松田尚也=