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Interview

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「防災・減災ニューディール」を推し進める掲載号:2013年7月

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大田昭宏 国土交通大臣

 早急な大地震対策、橋や道路の老朽化対策、経済活性化の推進――これら3つの要素を含んだ政策が、太田昭宏国土交通大臣が推し進める「防災・減災ニューディール」だ。どんな日本をつくろうとしているのか、ズバリ聞く

今年は「メンテナンス元年」

――5月20日、自民・公明両党が、いわゆる国土強靭化基本法案を衆議院に提出しました。
大田 正式名称は「防災・減災等に資する国土強靭化基本法案」といいます。議員立法です。国土を強靭化しなくてはいけないという自民党の意見と、防災・減災につながる事業で景気を刺激する防災・減災ニューディール政策をおこなうべきという公明党の意見がドッキングしたものです。
私は昨年2月から、公明党の防災・減災ニューディールを主導してきました。その背景の1つには、わが国は脆弱な国土であり、首都直下地震、南海トラフ地震という非常に大規模な地震が近い将来起こると予測されている。これは早急に備えなければいけない。国民は東日本大震災で相当、意識していると思います。
もう1つは、現在の社会インフラの多くは1960年代以降の高度成長期につくられたため、経年劣化しています。安全な社会を維持するためには、社会資本の適切な維持・管理と更新が必要です。昨年12月、山梨県大月市の中央自動車道笹子トンネルで、コンクリートの天井板が落下し、走行中の自動車が巻き込まれるという大事故が起きました。老朽化対策、メンテナンス、長寿命化、耐震化というものを、早急に図っていかなければなりません。私は本年を「メンテナンス元年」と位置づけ、防災・減災ニューディールを強力に推し進めていきます。
――国土強靭化に10年で200兆円投入するという話もあります。
大田 そういうことを話している人もいるようですが、金額がいくらかという話ではありません。どのくらい老朽化対策、メンテナンスにお金がかかるのか、財政が制約されている中で、どうお金を工面するのか。さらに世界の都市間競争が激しくなっている中で勝ち抜いていける強い都市をどうつくっていくのか。いろんな課題があります。各地域からさまざまな要請がありますが、とてもすべてにお応えできるという状況ではありません。中身を相当絞り込んで、優先順位をつけてやっていかなければならないというのが率直なところです。
i2――5月15日には92兆6000億円の2013年度予算が成立。うち公共事業費は5兆3000億円です。2月に13兆円規模の補正予算が組まれ、うち公共事業費は2兆4000億円。これらの予算に先ほど言われたメンテナンス元年の意志が反映されているのですか。
大田 まったくそのとおりです。補正予算の中でいうと、公共事業費のうち防災・減災、老朽化対策、メンテナンス、これらに使われるのが1兆1000億円。比率としてはかなり多い。予算が通ったのは2月ですが、ここまでにかなりの入札がおこなわれ、執行されているという状況です。おそらく6月になると、さらに執行が進むと思います。
――補正と本予算を合わせると公共事業費は7兆7000億円になります。
大田 いわゆる15カ月予算といわれるものですが、15カ月でこなす7兆7000億円という金額はこれまでもだいたいそれくらいです。民主党政権になった最初の年である09年度は本予算だけで約7兆円でした。
――ここにきて、やっと仕事は出てきたのですが、この間の建設不況で職人や機材の不足、復興需要を受けての資材高騰などの話も聞こえてきます。
大田 確かに、被災地では一部の資材、生コンクリート等は高騰していますが、全国で見るとそうではない状況です。職人の不足、とくに若い労働力が減った背景には公共事業予算が削られてきた中で、持続的に仕事ができないと企業側が思って、採用をとどめてきたという要素はあると思います。職人さんが高齢化して、やめる人も多くなったこともあります。
――少なくとも今後10年くらいは、防災・減災ニューディールで将来の見通しがきくようになる。
大田 この数年間に傷んできた企業が、急激に仕事が増えるというよりは、減ったことに歯止めがかかって将来の計算ができるようになったということです。未来に希望が持てると前向きになれます。業界からは「やっと明るくなりました、しっかりやっていきます」という声を多くいただくようになりました。

空港民営化はコンセッション方式で

――被災地の話が出ました。横浜国立大学名誉教授の宮脇昭さんが震災がれきを使って「森の防波堤」をつくろうと提唱しています。
大田 私は「緑の防災・減災」、それから「緑の防潮堤」を進めようと思っています。地震があった場合、都市部の密集市街地での火災は大変な脅威です。火を遮断するという意味で緑は重要な役割を果たします。道路幅を広くしてまちをつくり直すのには時間がかかる。木を植えることで防災・減災に資する。それが都市部における「緑の防災・減災」です。
「緑の防潮堤」も進めます。宮城県に岩沼市というところがあります。そこに宮脇先生の言う「森の防潮堤」をつくります。6月30日の予定ですが、国交省と宮城県と岩沼市が主催する植樹の式典には私も出席する予定です。もちろん、宮脇先生も一緒です。
津波には高さがあります。今回の防潮堤は数十年から百数十年に1回という津波に対応するものです。1000年に1回の津波に対応するという高さではありません。コンクリート等で高さを確保し、その陸側に土でマウンドをしっかりつくって、そこに木を植える。木は根が下に相当伸びる照葉樹。その土地には古来から自生している照葉樹があります。そうした木を利用する。シイ、タブノキ、カシなどの木です。
――震災がれきを利用して入れると。
大田 がれきといっても、いろんながれきがあります。土になるものもあれば、コンクリート片のようなものもある。基本的に堤防を弱くする有機物は入れません。有機物ではない使えるがれきは使います。そういうことをよく考えた上で、われわれはやろうとしている。
――空港民営化についての考え方は。
大田 空港に限らず、民営化の手法はあらゆるところで使おうと思っています。民間資金を利用して公共施設の整備と公共サービスの提供をゆだねるPFIとか、官民パートナーシップのPPPなどを積極的に使っていきたい。さらにはコンセッションという方式も考えています。ある特定の地理的範囲や事業範囲において、事業者が免許や契約によって運営権を与えられた上でおこなわれる事業方式のことです。空港でのコンセッションを可能とする法案をいま国会で審議していただいている途中です。
まだ法律は通っていませんが、空港でコンセッション方式をやろうという動きは出てきているようです。現状、明確に手をあげているのは仙台空港。法律が通ると1つのモデルになるのだと思います。空港だけということではなく、近くの都市の再生・再開発、活性化ということを含めて考えているようです。
――法律の成立は。
大田 いま衆議院を通っています。参議院でこれから審議していただきます。今国会の会期末までには、なんとしても成立させていただきたいと思っています。

道新幹線工期前倒しは与党で検討中

――北海道新幹線の札幌延伸ですが、計画では22年先の2035年です。工期短縮の可能性は。
大田 工期の前倒しについては、地元からの強いご要望があるということはよく承知しています。そのためには技術的課題の解決、財源のスキームの見直しなど、さまざまな課題があります。北海道新幹線を始めとして、昨年着工した3区間の工期の前倒しなど、全体の見直しについて、与党でいま検討が始まっています。私としては、その状況を踏まえて対処していきたいと思っています。
――前倒しに対して前向きな検討と考えていいのか。
大田 当然、北海道、北陸、九州3区間全体の財源は計算された上で認可・着工となっています。そういう中で北海道は2035年と決められた。前倒しにはいま申し上げた財源スキームの見直し、あるいは工事施工上の技術的課題の解決、そうしたものが前提としてなければならない。そこを、まず与党間で検討しているということです。
――昨年来、事故が頻発しているJR北海道ですが、先般社長人事が国交省の承認を得ました。
大田 公共交通は何よりも安全の確保ということが大事な問題です。昨年11月、JR北海道は安全基本計画をつくりました。5つの柱があって、1つは企業風土の改革、2番目に車両・施設等の持続的な保守体系の構築、3番目に安全管理体制の機能強化、4番目に人材の育成、5番目に現場力の強化。これらを柱とする安全確保に向けた総合的な取り組みは、まだ緒についたばかり。これがきちんと実行されれば、事故はなくなると思います。そういう意味では新たな経営陣のもと、会社一丸となって安全基本計画を強く推進してもらいたいと期待しています。
――参議院選挙が目前に迫っています。今回の選挙は何を問うものでしょう。
大田 政府の人間としてではなく、個人的な意見として申し上げます。日本の再建を大きな柱に、昨年の衆議院選挙を戦いました。多くの国民のみなさんからの支持をいただき、自公連立政権として安倍晋三内閣がスタートを切りました。それから半年間の安倍内閣の評価が問われるのだと思います。
日本の再建には、経済の再建、東北の再建があります。経済の再建については〝3本の矢〟ということでスタートを切っています。東北の再建については、この3月から4月にかけて、災害公営住宅の完成や道路の開通など、さまざまな復 興事業が実を結んできています。同時に、災害に対する危機管理も大事なことです。まさに防災・減災への取り組みも問われています。
いずれにせよ、この半年間、政治家自身、政党自身がどういう責任ある行動をとってきたか。それを見ていただいて判断をいただくというのが、今回の参議院選挙ではないかと思います。

=ききて/鈴木正紀=