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Interview

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「道民生活を守り生き残るのはオレたちだ」
スーパーは3極構造から2極へ
掲載号:2009年5月

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横山 清社長(アークス)
大見 秀明理事長(コープさっぽろ) 

景気低迷の中、流通・小売業を取り巻く状況も厳しい。だが、北海道の食品スーパー業界にあって、横山清社長のアークスグループと大見英明理事長のコープさっぽろは、好調だ。“勝ち組”の2人に、元気の秘訣と業界の現状を対談で語ってもらった。

生き方の変化にも対応し、安さ追求

――道内では大手スーパーチェーンの新規出店にブレーキがかかっている中、アークスグループとコープさっぽろだけが、拡大しています。まず、お2人の目には道内の流通・小売業の現状がどう映っているのか、お聞かせ願います。
arcs_coop2横山 私は1年ちょっとで後期高齢者の仲間入りだから、若くて頭のいい人から先に…(笑い)
大見 道内で食品を売っている小売業界は、マーケットの半分(7000億円)をイオン、コープさっぽ ろ、アークスグループの3社が占めています。やはり小売業の寡占化が進み、3極構造になっていると言えます。1995年のイギリスがちょうど同じ状況で、 テスコ、セインズベリー、アスダの3社で50%を占めていました。
しかし、いまやテスコがシェア27%を超えるところまでいっています。道内も競争の原理からいって、何らかの形で2極になるのが今後の道筋だと思います。その中で私どもは何としても北海道で生き残りたいと考えています。
横山 大見さんの言うとおりです。だが、それよりも何よりも一番心配なのは、北海道がどうなるかということです。人がまったくいなくなることはないにしても、これからは大変です。
私の体験から申し上げますと、(戦前に)歌志内村字下芦別に生まれ、戦争が始まり、小学校2年生のときに村から町になり、4年生で敗戦です。高校2年生 のときに芦別は市になりました。当時はエネルギーといえば石炭の時代です。私は高校を卒業し2年間、明治芦別炭鉱に勤め、その後、大学に進みました。私が 成人になるくらいまでの間に、芦別は村から町になり、市になりました。産業も農林業から鉱業プラス土建業というようにガラリと変わりました。
芦別が市になったときの人口は7万9000人を超えていました。当時、夕張市は12万人です。それがいまやこんな状況です。昭和20年ころの北海道の人 口は300万人台です。住人の平均年齢が上がっているのは問題ですが、いまは大変だといいながらも、560万人います。私は景気循環だけを考えるのではな く、社会循環10年説を唱えているんです。なぜなら、10年ごとに人間の生き方は変わっていくと思うからです。
こで北海道のマーケットがどうなっているかといえば、3グループで7000億から8000億円くらいやっている。それがどんどんシュリンク(収縮)してい き、3つが2つになる。ただ、1つにはならないでしょう。必ずまた形を変え、どこかが出てきます。企業清算なんて究極の償却で、リセットしてもう1回やり 直せば、かえって有利になったりもしますからね。
供給態勢はどうするのか。価格体系はどう変化していくか。職が先か給料が先かというほど、景気が悪化しています。ここを抜けられるかどうかのはざまです。
arcs_coop3 こういうことを言うと顰蹙(ひんしゅく)を買うかもしれませんが、地方百貨店という形態が困難な状況の中で、バブル崩壊と拓銀破たんの影響を受けて丸井 さんは経営が傾いた。今回で3度破たんしたようなものです。今度も10年前とまた同じテーマ、同じような問題に直面しているわけですよ。
さて、そこでわれわれはどうなのかといえば、イオングループと私どもの企業規模は月とすっぽんですが、個々の店舗が隣り合わせたときはいい勝負になって います。「あそこではダメだが、あの山の陰ではこっちが勝っている。あの谷の底では対等だ。ここでは生協と引き分けだ」。こういうことをしながら、何年持 つかです。我慢比べですよ。  最終的にはあるレンジでそこを突き抜けて、新しい社会体制に順応した者が、大見さんがおっしゃったように“勝ち残る”のではなく、“生き残る”のだと思 います。
若い人に先に言ってもらったのはこういうことを言いたかったからです。先の見えてる者と先の見えない者は、先のまだ見えない人のほうが断然強いのですから。(笑い)

弱者にも満足してもらえるよう努力

――道民の生活が苦しくなっていることに対応したのだと思いますが、コープさっぽろもアークスも何十品目もの商品価格を下げましたね。この状況の中でプライスダウンに踏み切るというのは、自分の体力を奪うことにつながるんじゃないんですか。
大見 コープさっぽろは98年に事実上の破たんをして、2度とそうならないように頑張っているんです が、地域1番になりたいものだと、この10年間で組合員さんの声に応えて店舗の売り場構成、商品構成などをずっと改善してきました。ところが、去年の9月 の第1週に急に売上が落ちたのです。なぜ、そんなことが起きたのか。当時、灯油の値段が高騰し1リットル120円ぐらいになるなどしていたので、節約モー ドに入ったのだろうと思います。
arcs_coop4 コープさっぽろは普通のサラリーマン層より、少し所得が高い層に多く利用していただいています。しかし一方、例えば年金生活者で、自分で家賃を払ってい る人もいるんですね。そういう人たちは灯油代からはじまって食生活も節約しなければならない。そう考えたとき、コープさっぽろは営業上、弱者と言われる人 たちに満足いただけるような努力をしてこなかったのではないかと思ったのです。これではいけない。
なおかつ、リーマンショックがあり、11月の赤字報道でトヨタショックがあり、派遣切りが行われるという中で、ただでさえ老齢化で人口構成に問題がある 北海道の経済は、輪をかけて悪くなっています。消費のパイも落ちています。住んでいる人たちが生活に困っているわけです。
こういった状況に対応できなければ、自己満足な小売業になってしまいます。そこで何らかの形で低価格の食材を提供する努力を、この局面だからこそしなけ ればならないと考えました。豆腐を39円にするなど、本当に基礎になる食材を中心に値下げを行いました。1食100円の具材で食事をできるようにするには どうするかという発想からです。例えば、三十数円という具材であれば、100円で3つ買え、1食ができます。
こういうことは、もともとコープさっぽろがやらなければならなかったことなのです。ですから、今年の2月中旬から始めさせてもらいました。
――横山さんのところも値下げを実施しましたね。
横山 われわれは元来、いい物を安くという精神でやっていますから。ビッグハウスで1物3価を実現し、 15年目に入りました。安く売るためには要素があるわけです。安く仕入れるか、コストを下げるかですが、その両方をやってきました。あのころは「ただでさ え競争が激しくて安売りしているところで、1番売れ筋の主要商品をまだ安売りするのはおかしいんじゃないか。こんなものは一時的にはうけても、お客さんに すぐ飽きられる。安ければいい世の中じゃない」と言われたものです。ところが、同業者の予想に反して爆発的に売れました。ビッグハウス第1号の札幌・太平 店は粗利14%を切ってもいいから2年間はやってみようと決意し始めましたが、14%でも黒字が出ました。現在、ビッグハウス33店舗の平均粗利率は 16%そこそこですよ。それで3・3%以上の利益が出るのです。
「どうしてそんなことができるのか」とよく聞かれるので、こう答えることにしています。「社長の給料が安いからです」と。(笑い)
最初にビッグハウスをやったときも円高で、デフレ傾向でした。その中でさらに安くしたのだから、みなさんが「うまくいくはずがない」と言ったのです。ところが、消費者にそういうニーズがしっかりあって、それに答えたから成功したのです。
arcs_coop5 去年、食材がバーンと値上がりしたので、私は「インフレファイター」「われら生活防衛隊」を宣言しました。これは効きましたね。生協さんも売れないから 値下げしたのではない。生活を守るためにはどうすればいいのか、1食あたりのコストをどうやって下げるのかと真剣に考えて実施した。私もそのような生協さ んの考え方に賛成です。
ただ、何千品目も一気に下げるためには仕掛けがいります。いま、あなたは「アークスも値下げしたでしょう」とおっしゃいましたが、私どもはずーっとそれをやってきています。食に関する新しい価格体系ができると新しい生活体系ができる、と私は考えています。
この15年間に2回、社長年頭所感で「新生活革命」という言葉を使っています。デフレが続き、いままで50円だったものが30円になったら、賃金も含めてどんな生活になるだろうと考えたからです。
ここにはいないもう1極(イオングループ)は全国の新聞に、反省の広告を打っていました。おカネもあり、人もいて、スケールも大きい、あらゆる面で優れている企業に「すいません」と反省されたら、私たちはグレるしかない。(笑い)
あの広告は(1)お客さんのいい物をより安くという要求に配慮していなかったので、これからはもっとニーズに応えます(2)サービスもそれにしたがって 強化します(3)競合他社の優れたところに学んで、必ず生協に取られた売上やシェアを取り戻す。アークスの生意気なヤツもやっつけてやる―と言っているよ うなものです。いままでのやり方ではうまくいかないので、反省しているでしょうが、本当はリベンジ宣言と認識しています。
――大見さんは横山さんとアークスグループをどんなふうに見ていますか。
大見 そもそも横山さんは、経営者として私よりはるかに一流です。実際に企業活動をして剰余を出す体質をつくっています。会社運営も堅実的ですし、事業の組み立て方も学ぶところが多いですよ。参考にさせてもらっています。
横山 経営者とは何か。オルガナイザーと同一ではないが、オルガナイザーの面を持っていなければなりま せん。大見さんはオルガナイザーとしても極めて優秀な人です。もう1極は大企業です。私のところは中小企業です。そして生協にはNPOとしても役割があり ます。コープさっぽろの根底には、「1人は100万人のために、100万人は1人のために」という精神があるので強いのですよ。
大見さんは企業の売上高をベースに、販売力、組織力、持続力などを測ると3極だと言っています。例えいまもうからなくても、ある一定のマスを持っていれ ば、プラスの力を持つからです。北海道では売上高3000億円がクリティカルマスの限界です。3極がすべて3000億ずつ計9000億円を達成することを できないとすれば、1極が降りるか、破たんするか、あるいは形を変えるしかない。

1度地獄を見た生協は強い

――最近、アークスとコープさっぽろの店舗がぶつかり合うケースが増えているのではないですか。なかでも驚いたのは、コープさっぽろが室蘭の志賀綜合食料品店と資本・業務提携したことです。
大見 いまから6年前に室蘭生協が破たんしているんですよ。そのときはデスクロージャーしてもらえなかったので、支援ができなかった。室蘭の組合員さんにしてみれば出資金を台無しにされ、迷惑をおかけした経緯があります。
しかし、苫小牧から函館までの店舗展開を考える上で、室蘭がすぽっと抜け、飛び地になっていました。でも、物流は苫小牧から函館に向け走っています。空 白地図を埋めたいと考えていましたが、私たちが新規で参入すれば、室蘭エリアでの競争はもっと激しくなります。そんなときに室蘭の志賀さんとの話は、組み 替えだし、小売業間の摩擦もリスクも少ない方法だと思いました。また、室蘭で生協が頑張りたいとの思いもありました。
横山 経済行為からいえば、生協だろうと株式会社だろうと有限会社であろうと関係ない。今回のことは戦略的に極めて優れた手法だと思いますよ。「生協が民間企業と…」と思うと意外かもしれませんが、生協は子会社をいっぱい持っています。
生協と店舗が競合すると言われましたが、他社ともぶつかり合うし、いまや自店競合も大変な問題です。アークスグループの子会社の社長が困っているのも、そこなんですよ。また、本州大手が巨費を投じてつくったGSMだって最近、競争に負けて閉店しています。
大見 2400億円規模で3つあるんですから、どこかでぶつかりますよ。さきほど3000億円がマスメリットが出る最大のポイントだという話がありましたが、私もそう思います。これからはぶつからないように出る方が難しいと思います。
arcs_coop6横山 多店舗展開というのは競争と生死のはざまを繰り返していくようなものなんです。あらゆる産業がそ うです。ただ、メーカーは品質と価格を競って、戦い終わって日が暮れてみれば、死屍累々の中、1人だけしっかりと立っているという現象が起こりうる。トヨ タや味の素がそうです。
しかし、食品スーパーはまだ混沌の時代です。だから、大見さんは「いまの状況を3極と仮に言うのであらば、将来のあるべき姿は2極ではないか」と主張し ているのです。流通業界はまさに地獄絵図です。血の海地獄でバタバタしている亡者は、私です。はい上がろうと思ったら、赤鬼・生協さんや青鬼・イオンさん が邪魔をする。(笑い)
ところが、コープさっぽろは、10年前に1度つぶれかかったのに、精神的に強くて生協運動に身を投じて辞めなかった人たちがたくさんいる。これはすごいことです。1度地獄を経験した人たちが残っているということは強みです。

ここが勝負どころ バージョンアップ

大見 横山さんのところはスーパーマーケットのモデルケースをつくってきました。その成功体験が脅威です。
横山大見さんも、ここが勝負のしどころです。勝負といっても資本でするのか、ストックもマネー、人材、販売技法などいろいろあります。マーチャンダイジングについて独自の分析力がある大見さんはここ数年、自信を持っていたはずです。だが、この1年は様子が変わった。
大見 この半年ですね。ちょっとビックリしました。
横山 だから、ここで技術的な転換を図り、バージョンアップをしなければならないはずです。
大見 バージョンアップが原価改善なんですよ。いま「敵はコープさっぽろだ」と言っています。750 社くらいある取引先に、「うちの無駄は何か。過剰な水準や質をもう1回ゼロに戻して見直してください」とお願いしています。そうすればコストも下がるし、 いろいろな手続き上の複雑さもシンプルになるだろうということで、提案を求めています。
そうしたら、出てくる出てくる。10年間リストラをやってきたと思っていましたが、全然ダメ。まだまだ無駄ですとか、手続き費用の部分などがいっぱいあります。
ただ、1つ言っておきたいのは、私どもがコスト改善・改善をするのですが、私どもとつながる取引先も一緒になってやるということなんです。小売が集約化 されてコスト構造を下げていくだけではなく、中間流通やメーカーも、北海道において物をつくり、物流させるトータルな中で一緒に改善に取り組み、競争力を 持ってくださいという話でして、「一律値段を下げろ」などと言っているわけではありません。
横山 1店舗や2店舗ならともかく、ビッグハウスとそのバージョンアップ型のスーパーアークスを合わ せ40店舗で、売上高約1000億円、粗利16%、税前利益3・3%を出しているのは、わが社だけです。この十何年、常に社会情勢に合わせ安く売り続け、 利益を出す体質づくりをしてきました。そこに生協が手をつけ始めたというのは、ちょっと困るね。
生協はコスト改善7%を目標にしているようですが、私たちと生協はお隣同士のようなものだから、ジーっと様子を見て、生協が目標を達成したら、私たちもそれ以上の条件で頑張ろうと思っています。
お手並み拝見です。

=ききて/進行酒井雅広=