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Interview

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「観光、新幹線で地域経済を盛上げよう」掲載号:2012年1月

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高向 巌札幌商工会議所会頭
山本 秀明小樽商工会議所会頭
川上 正宏倶知安商工会議所会頭 

 高向巖札幌商工会議所会頭、山本秀明小樽商工会議所会頭、川上正宏倶知安商工会議所会頭に集まってもらい、座談会をおこなった。テーマは観光を柱にしたまちづくり。そして着工決定の機運が盛り上がっている北海道新幹線の札幌延伸。談論風発、有意義な1時間だった。

原発事故の影響で外国人がた減り

i2――本日お集まりの3会頭の地元は、北海道を代表する観光都市であると同時に北海道新幹線の駅予定地でもありますね。まず倶知安商工会議所の川上正宏会頭にうかがいます。倶知安にはオーストラリア人を中心に外国人が大勢住んでいるようですが、3・11の東日本大震災以降、福島原発の風評被害の影響はどの程度ありましたか。
川上 震災前はかなり順調に観光客を伸ばしていましたが、日本は原発で危ないと言われると、見事にカラッポになりました。通常、3月は1月に次いでお客さんの多い時期です。ところが、3月15日すぎには本当にいなくなりました。しかも、観光客だけではなく、宿泊施設などに勤めている外国人の方もいなくなりました。家から電話がきて「すぐ帰ってこい」と言われたようですね。
――原発事故の直後には、東京からも外国人が逃げ出したくらいですものね。その後はどうなりましたか。
川上 冬のホワイトシーズンが終わり、夏のグリーンシーズンに入りますと、前年と比較して少々の減、ほんの数パーセントの減で推移しています。ただ、これからまたホワイトシーズンに入りますが、この予約状況はちょっと芳しくありません。いまのところの予想では外国の方は3割くらい減るのではないかとみられています。
――小樽商工会議所の山本秀明会頭のところはどうでしょう。小樽も当初、中国観光客がガタ減りしたという話を聞きましたが…
山本 2011年上半期の観光客の入り込み数は、約329万4400人で前年比約56万人減。対前年比85・5%でした。外国人の宿泊者は、半減以下です。10年の上期が約2万4850人で11年同期が約1万360人ですから、約1万4490人も減っています。こういう結果になったのも、6月くらいまで全然ダメだったからです。7、8、9月は微減で済んでいます。
シンガポール、中国と韓国からの観光客が特に戻りきれていません。一方、香港と台湾は比較的早めに回復しました。といっても約半減と数字はよくありません。ですが、中国は70%減、シンガポールに至っては73%減とあまりにひどすぎます。
――下半期になって外国人観光客は回復基調になっていませんか。
山本 少しずつは戻ってきています。いろいろと働きかけをおこなっていますからね。先般、台湾や中国からのエージェントを集めて、プロモーションをしました。しかし、なかなか一気に効果は出てきませんね。
――高向巖会頭、札幌の状況はどうですか。
高向 札幌も厳しいですね。そんな中、台湾が国を挙げて応援しようという姿勢を示してくれたのがありがたいですね。ほかはいけません。中国観光客は帰ってきませんね。これは原発の風評被害ですね。名前が東日本大震災ですから、外国の方は北海道も東日本だから心配だと思ってしまう。
われわれは「札幌は福島から600キロも離れている。東京は福島から200キロ。東京だって安全なのだから、いわんや札幌をや」と言っているのですが、距離感がいまひとつ理解していただけない。それに「こっちは安全ですよ」とは言いにくい。東北の人に失礼だと思って遠慮してしまいますからね。
――しかし、このまま外国人観光客が減ったままではいけませんね。
高向 ですから、外国からエージェントや新聞社の人を呼んでPRしたり、北海道にいる留学生を集めて、「祖国の人々に、あなた方が安全だと言ってください」と頼んだりしています。その効果は出てくると思いますよ。
山本 2010年に小樽市と韓国ソウル特別区の江西(カンソ)区は姉妹提携を結びました。11年9月に私どもと市長が江西区に行き、「北海道は大丈夫だ。小樽は食べ物もおいしいし、まったく安全だ」とアピールしてきました。
小樽では2月に「雪あかりの路」というイベントを毎年おこなっています。このときに韓国人のボランティアが100人くらい来てくれると思います。私たちはいまからその対応をおこなっています。彼らが口コミでPRしてくれるとありがたいですね。
高向 口コミはいいね。効果がありますよ
――中国や韓国はネット社会ですから、ブログやツイッターは効果がありそうですね。東洋のサンモリッツと呼ばれる倶知安は、スキーシーズンが正念場だというお話だったですね。
川上 私たちはニセコプロモーションボード(NPB)という一般社団法人を07年9月に設立し、観光プロモーション活動をおこなっています。ここでは外国からのお客さんと外国人従業員に対して、日本の中の北海道の位置関係を説明した文書を配布しています。  比羅夫地区を中心に外国人の住民登録は冬季500人を超えています。夏は300人くらいです。
――外国人の方が過ごしやすいということで、リゾート地として大人気。このご時世に地価の上昇率がトップだったんですよね。
川上 ちょっと前になりますが、3年連続で地価上昇率日本一になりました。一時期、その言葉だけが跳びはねていたのですが、いまは落ち着いてきています。泊原発の30キロ圏内にあるということの影響で、土地の取り引きが鈍ってきたというのが現実です。

観光分野でも小樽・後志連携

――3自治体とも観光を見据えたまちづくりをおこなっていますね。
高向 着々とやっています。だが、まだ工夫が必要です。魅力を高めるという側面と観光業者の経営力を高めるという側面があります。魅力を高めれば大勢来ますが、それだけでもうかるわけではありません。
――地元の業者は何が足りないのですか。
高向 渉力が弱いということです。われわれ自身がもっとしたたかになるということと、1本の値段ではなく、複数の値段でうまく対応するとかね。そういう経営力を高めねばいかんと切実に思っています。
――いろんなイベントを札幌市は経済界とも連携しながらおこなっていますが、こういうものは効果があるのですか。
高向 既存のものは継続することが大事ですね。それ以外に何か魅力をというのが、これからの議論でしょうか。企業としてはやはり商品、サービスの単価を高めていくことが必要です。
――小樽の場合は、観光客はたくさん来るのだけれども、泊まり客が少ないというのが悩みですね。
山本 ここ数年の傾向ですと、小樽を訪れた人のうち泊まられた方は約9%です。基本的には夜のイベントをもっと活性化させなければなりません。小樽はススキノに比べるとホステスさんの数は少ないですが、飲み代の単価は安くて楽しい(笑い)。
それから小樽の場合は後志連携に活路を求めていくべきだと考えています。小樽から数時間で札幌に行ってしまうのではなく、小樽をキーに後志全域を回る、あるいはニセコを訪れた方が小樽に遊びに来る、こういう連携を模索していきたい。
いまは昼にすしを食べて帰ってしまう。それを夜に食べて泊まってほしい。それから宿泊施設の数が足りないので、増強していくということですね。
川上 後志と小樽の連携は、観光協会を主体に進んでいます。08年秋に国道393号線が開通し、小樽・赤井川・倶知安と行き来しやすくなり、この連携が始まっています。倶知安のホテルは宿泊が好調で、特にオーストラリアの方は非常に長期滞在します。平均でも7泊くらい。長い人は2週間、3週間いらっしゃいます。アジアの人はせいぜい3から4泊ですね。
以前はオーストラリアを中心に不動産投資がありましたが、ここ数年はアジア、しかも香港、マレーシア、シンガポールからがすごいですね。
いま私たちの課題は、ひらふスキー場周辺のにぎわいを倶知安の街中に呼び込むことです。そのため200円で1週間乗り放題のシャトルバスを運行し、アフタースキーは山から倶知安の街中に下りてきてもらうよう努力しています。
山本 そのうちの1泊ぐらい小樽に泊まってもらいたい。
川上 実際、6泊7泊していますと、ひらふでスキーを滑るだけではなく、小樽、札幌に出かける。
山本 以前、市長を含めオーストラリアにプロモーションをかけたことがあるのですが、小樽の政寿司に行ってもらって握りすしをPRしました。まさに「ニセコに来たときに、小樽にも寄ってください」という呼びかけをしたのです。
川上 バスを仕立てて小樽に行くことは何回もありますよ。
高向 小樽の海産物に余市、仁木の果物、倶知安のアスパラ、ジャガイモをつなげるといいですね。倶知安で大勢人を雇ってくれると、近隣の自治体も助かりますね。これは楽しみですね。

バイリンガルを育てよう

川上 倶知安はいま、バイリンガルな人を育てるのが課題ですね。会議所も3年間、1回100人規模の受講生で英会話教室をやりました。
高向 観光地になろうとしたら、英語または中国語を覚えなきゃね。札幌でもホテルに中国語を話せる人がいない。いても中国人留学生というのでは、いかんですよ。中国領事館の方にも言われるんですよ、「中国人が札幌に来ても、面倒見てくれるのはみんな中国人だ。もっと日本人と話がしたいよ」とね。
山本 小樽には商大があるので、韓国や中国からの留学生が結構います。また、高向会頭がおっしゃった余市との連携では、余市では梅がたくさん採れるのにあまり活用されていなかったので、小樽の酒造メーカーとワイン醸造所に協力してもらい、梅ワインと梅酒をつくっています。12年に発売します。
高向 いいね。これは農商工連携だ。
山本 その代わり、地元でつくったものは地元で飲めということです。
――小樽商大と地元経済界の連携は盛んですね。
山本 かなりいろいろな交流をしています。いま小樽観光大学校というものをつくって、おもてなしの心だとか、高度化などを図っているのですが、カリキュラムを組む際にも商大の教授に入ってもらって進めています。これもオール小樽でやることを考えていて、学校長は市長がなっています。運営は商工会議所です。

北海道の食で経済活性化

――高向会頭は道商連の会頭でもいらっしゃるので、北海道経済の活性化にどのように取り組むべきだと考えていますか。
高向 北海道がこれから生きていく手段が食と観光であることは、みんなが意識しているんですよ。だが、それを具体的やる人が少ない。具体的な知恵が少ない。これはわれわれ自身の問題です。
知恵を出して新しいことをやってみる。財政か金融か出どころは別として、トライする人にはおカネを出してあげて応援する。失敗したら返さなくていい。その代わり、もうけたら倍返しね、と。そういう仕組みをつくらないとね。
商工会議所にはこぢんまりですが、ただで貸してくれる制度があるんですよ。この前、札幌にきて中国人富裕層相手の通訳・ガイド業を始める女性に60万円くらい出したそうです。最近は中国映画「非誠勿擾」で道東が有名になりましたが、それより前に高倉健・中野良子主演の「君よ憤怒の河を渉れ」という映画が大ヒットし、中国人の中年はよく知っている。そのロケ地は日高の三石なんですね。彼女はそこに中国人を連れて行って大変喜ばれているそうです。
料理も生のものばかり食べさせるのではなく、加工したり、もっと手を加えた料理にすべきですね。私は付加価値という言葉は好きではないのですが、そういうことですね。アメリカのニューイングランドに魚介類をベースにした料理があります。典型的なのがクラムチャウダーです。いろいろ工夫すれば、いい料理ができるはずです。
最近、甘いものは成功していますね。でも、それをもっと全国ベースにしなければいけませんね。
――小樽は古いまちですから、醸造業をはじめ食品加工業はいっぱいあるんですよね。
山本 200カイリ以前は、海産物の食品加工業がたくさんありましたが、いまはかなり落ち込んでいます。そこでいまプロジェクトを組んで松前漬けに対抗し、漁獲高が戻ってきたニシンを利用して「小樽漬け」を製品化しようとしています。日本一のシャコも利用してシャコ辣油を商品化しました。
農産物は後志連携でやっていきたいと考えています。
高向 小樽にはもともと経営者がいっぱいいるんだから、後志に工場をつくればいいんですよ。
川上 倶知安は材料はいいんですよ。アスパラもいい、ジャガイモもうまい。後志は北海道で取れる農作物がすべて取れると言われるくらい豊かな農業地域です。ところが、まだ加工業がダメなんですよ。
高向 それは地元の人がやらなくても、外から連れてくればいい。ジャガイモがあるなら、地元でコロッケにして売ってくださいよ。ホワイトアスパラも工夫して売ってくださいよ。
川上 地元食材をつかったレストランはできてきているんですがね…
高向 外国人の方の経営する店に、本場の味を求めて札幌から人が押し寄せるようになるといいですよ。
――全道で小規模な商工業の起業家をもっと応援してほしいですね。

新幹線で生活が変わり新産業

高向 それこそ商工会議所の仕事だ。農工商連携で新しい仕事が生まれると思います。もっと水も売ろう。やることはいっぱいありますよ。
川上 資金の面でも支援する仕組みをつくっていくべきですね。
山本 能動的に仕掛けましょうよ。地元の人はなかなか投資しないんですよ。外から来る人たちと地元コミュニティーとの連携も、うまく図るべきです。
――北海道新幹線の札幌延伸着工が現実のものとなろうとしています。新幹線を活用したそれぞれのまちづくり、経済活性化について話し合っていただけますか。
川上 東北新幹線の沿線をはじめ、各地を視察してきましたが、駅ができても自治体の取り組み方によってずいぶん差ができていました。ただ単に駅ができただけでは何にもならない。ストロー現象で逆に人口が減ってしまうことだってあり得ます。
倶知安に降りてもらって何かをしてもらうということが大事になります。いま観光協会、商店連合会と会議所が打ち合わせをしておりまして、まず駅前の再開発をどのようにするか、スキー場の観光とどう結びつけるかということについて、構想を練っているところです。これが駅前再開発の最後の一大チャンスです。あとは一人ひとりの商店主が、どこまで対応してくれるかにかかっています。
山本 札幌と小樽では文化も街並みもまったく違います。それが絶対に生きてくると思います。
新幹線の1番の強みというのは、人の輸送も含めた大量の物流が定時におこなえるということです。いままでは来ていなかった東北からのお客さんが来やすくなるし、観光の誘致もしやすくなると思います。そして食の開発をすれば、宿泊と込みで売れる。付加価値もつけられる。
将来、温暖化になった時も、北海道は食糧基地として新幹線を使って物流をおこなうことができます。逆になぜいままで通さなかったのかと思います。
高向 九州新幹線のおかげで九州は大変便利になっています。近距離でも使えます。通勤、通学、観光に便利だ。遠いところも近くなる。倶知安まで札幌から15分ですよ。これは人が行きますよ。われわれの生活が変わります。生活が変われば新しい商売が生まれます。新しい変化に順応すれば、必ずビジネスチャンスが生まれます。
川上 札幌で勤め、倶知安に住んで新幹線通勤。空気も水も食べ物もうまい。  高向 いままで掛け声だけでお付き合いが少し希薄だった東北がぐっと近くなります。
――本日はお忙しい中、本当にありがとうございます。

=ききて/酒井雅広=