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Interview

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「自己改革を進め、
組合員の負託に応える」
掲載号:2017年10月

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内田和幸 ホクレン会長

昨年来の農協改革や貿易交渉の行方など、日本の農業界は荒波のただ中にある。総取扱高1兆5000億円、JAグループ北海道の中核であるホクレン新会長の内田和幸氏に、今後の北海道農業、そして現代農家と農協とのあり方を聞いた。

販売、購買、営農支援の三位一体

内田和幸氏は1949年4月12日、空知管内長沼町生まれ。北海道酪農学園短期大学卒業。2001年4月にながぬま農協理事を経て04年6月同組合長、10年5月に空知農協連合会会長。14年6月にJA北海道中央会副会長としてグループ常勤役員入りし、同月にJAながぬま会長。今年6月の役員改選で、ホクレン会長に就任した。

   ◇    ◇

――農家の3代目として生まれました。

内田 小さいころは農耕用の馬や家畜を飼っていましたので、その餌やりや農作業をよく手伝っていました。長男ということもあって、後を継ぐことには何の迷いもありませんでしたね。

――コメどころの生まれですね。

内田 私の家は畑作が中心でしたが、長沼町全体では畑が2500ヘクタールに対して、コメは9000ヘクタール。低地帯で水害を受けやすい土地柄ということで、できるだけコメをつくることで、水害や湿害に対応しようという歴史があった。ただ1970年からの減反政策で、私たちにも減反が割り当てられて、水害の恐れがある中でも転換を迫られました。いち早く行政や農業団体とともに、用排水の整備や基盤整備に取り組んできました。その成果が今になって現れてきていると思います。

――農協理事になって2期目の2004年に、組合長へ就任しました。

内田 非常に大きな責任を背負ったと感じました。農協と組合員の信頼関係をどう強固にしていくか。組合員のための組織ですから、その考え方や思いを農協の運営にどう反映させていくかを大切にしていました。それは14年に道中央会副会長になってからも、そしてホクレン会長となった今も思いは変わりません。

――ホクレンの主な役割には、農家が生産された農畜産物の販売事業と、農業資材を農協へ供給する購買事業、そして農家への営農支援の3つがあります。

内田 ホクレンは「事業改革プラン」を掲げて組織の改革に取り組んできました。どれも、生産者の所得向上に、ホクレンとしてどう貢献できるかということが基本にあります。

販売事業は生産者から委託された農畜産物を、どれだけ価値を高めて販売していくかが重要です。具体的には共計(共同計算)と共販(共同販売)の仕組みを強みとして、安定的な販路の確保と、産地、取引先双方の結びつきの強化をおこないます。また価格の決定プロセスが明確な契約取引の実行、買い取りの強化、商品開発、ブランド化にも、これまでよりさらに力を入れて取り組みます。

また海外輸出においては、人口減少や少子高齢化を背景に、将来的に国内の流通だけでは供給過剰になるおそれのある品目は、生産基盤の強化と付加価値向上を目的として取り組みます。

――農業資材を生産者へ販売する、購買事業については。

内田 一層のコスト削減に取り組みます。具体的には肥料や飼料、農薬の価格引き下げについては、予約購買を基本とし、高成分肥料など低コスト資材の開発と提案、ジェネリック農薬の取り扱いなどが上げられます。飼料については関連会社と機能の合理化もおこないます。ICTを活用した省力化、コスト低減に寄与するスマート農業についての実証と技術普及の推進など、新技術の活用と普及を進めます。

Aコープやホクレンショップなど、地域の生活を支える事業についても、利便性を考慮して小型移動販売車や小型店舗「Aマート」への転換を図るなど、ローコスト運営に取り組みます。

――15年から営農支援の取り組みについても強化しています。

内田 高品質な作物をより多く生産してもらえるよう、ホクレンの各支所に「営農支援室」を設けました。JAグループ、関係機関とも連携しながら、販売、購買、営農支援の三位一体とする事業運営で組合員のみなさんに貢献していきたいと考えています。

他県と違う独自の取り組みもする

――今年8月に施行された「農業競争力強化支援法」は、ホクレンと同じJAの経済組織である全農に対し、構造改革を迫る内容です。

内田 われわれも組合員から選ばれる組織としてあるべき姿を目指し、自己改革にすでに取り組んできており、今後さらにスピード感をもって取り進めて参ります。

北海道は専業農家が75%を占めていて、他県とは農業者の構成がまったく異なっています。道内には道内の事情があり、全国一律での取り組みと合致するかといえば、必ずしもそうではありません。JAグループ北海道として、道内の組合員・農協に対してどう貢献できるか。そのためには、私たちだけが独自の取り組みをすることももちろんあります。ホクレンとしても、その中で役割をしっかり果たします。

――農家が競争力を持つ、つまり「もうかる農業」を目指すため、ホクレンとしてはどう取り組むのでしょうか。

内田 農協の経営コストをどれだけ下げて、委託された農産物をどれだけ高く売るか。それには、私は“役割分担”が大切だと思います。組合員のみなさんとわれわれが、農業所得の向上を図るために何をどうするのか。組合員、各農協、そしてホクレンなどの連合会が、それぞれの立場でできることがあります。大切なのは、みんなが同じ方向を向いて取り組むということです。

――各都道府県中央会やその役員ごとに、改革派、保守派といった色分けが取りざたされることもありました。道内の組合員にも、同じようにさまざまな意見があります。

内田 地域の農業を支えているのは組合員であり農業者です。そして、組合員がやれない、やらないことを農協組織が担っています。多様な意見があるけれど、個々の意見が農業の振興にいいことであれば率先して取り組んでいきますし、われわれの側から組合員に提案をすることも多い。

たとえば国内の需要に対して供給量が足りない場合は、組合員に増産を提案して、取り組んでいただくわけです。われわれと組合員がお互いに提案をし、意見を聞く、この関係を大切にしていきたい。

――農協に頼らない、という農家も増えてきているのでは。

内田 組合員であっても経営者ですから、どのような選択をするのも私は自由だと思います。私たちの立場からこうあるべきだ、ということは言えないし、独自に販売手法、購買手法を開拓していることを否定するわけでもありません。私たちがするべきことは、系統結集により協同の力を十分に発揮していくことであり、農畜産物の安定生産、安定供給はもとより、個々の組合員のみなさんとともに努力した結果が価値として農業所得向上に反映されるよう、組合員・農協の負託に応えて参ります。

――農畜産物の海外輸出については。

内田 国内の需要に対して供給が満たされている品目については、北海道の生産基盤をさらに強固にして、維持するために、輸出を考える必要もあると思います。日本国内だけでなく海外からも多くの観光客が訪れて、北海道の食材を食べていただいていて、おいしいと評価されています、品質と価値を高めて、そうした声や期待に応えていく必要があります。

これからの農業は絶対に良くなる

――ご自身の中にある農業者としての思いは。

内田 私はもともと、農業が好きですし、自分の性格に合っていると思っています。農業以外の職業に就こうと考えたこともありません。それは組合長になっても、連合会役員になっても変わっていません。農家のみなさんも、農業という職を選んだ以上はその思いを貫徹していただきたいと思っています。そして、農業を志した人たちに、もっと応えられるようなJAグループでなければならないと思っています。

農業は自然相手の職業ですから、農家はそれぞれ、過酷な条件の中で努力されています。それでも自然災害ですべてがダメになることもあり得ます。昨年の台風による災害はまさにそうでした。そのような時でもくじけずに頑張ってほしいというメッセージを、農協、JAグループは発信してきました。

――農家の担い手は全体として減少していますが、一方で新規就農者も増えています。

内田 少子高齢化の中で、農家の人口が減って、担い手が減っていて、ということは仲間がだんだん少なくなっていくということです。そういう中で、自分が選んだ職業に取り組むことは、強い思いと意志が必要だということですし、そうでないと続けられない。

厳しさをどう乗り越えて行くか、それはやっぱり精神力だとある人がいっていたのを覚えています。それは農業に限ったことではなくてスポーツなどでも同じことです。

これからの農業は必ずよくなりますし、将来性がある産業だと私は思います。15年11月の第28回JA北海道大会で決議した「北海道550万人と共に創る『力強い農業』、『豊かな魅力ある農村』」を、どのようにつくっていくか。それには、農業者だけが議論をしていてもダメ。食と農との連携、つまりわれわれがつくったものを実際買って食べていただいている消費者とも、つながりを持ちながら進めていくことが必要です。さまざまな声をいただきながら農畜産物を生産していく、そこに農業者としての誇りを持って取り組むことが大事だと思っています。

=ききて/清水大輔=