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Interview

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「統合パワーで“感動百貨店”をつくりあげる」掲載号:2011年6月

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杉浦進 札幌丸井三越 代表取締役社長執行役員

 札幌・大通に店を構える老舗百貨店、丸井今井と札幌三越が経営統合し、4月1日、新会社「札幌丸井三越」が誕生した。長きにわたりライバルだった両店をどう融和させ、リードしていくのか。就任したばかりの杉浦進社長に聞いた。

自粛ムードの中で誕生セールが好調

――1974年に伊勢丹に入社し、相模原店長、新潟伊勢丹社長、小倉伊勢丹社長、立川店長などを経て、2010年に新潟伊勢丹と新潟三越が統合してできた新潟三越伊勢丹の初代社長を務め、本年4月1日に誕生した新会社「札幌丸井三越」社長に就任されました。これまで北海道での勤務経験はありますか。
杉浦 今回が初めてです。北海道へは25年ほど前に家族で旅行に来たことがあります。道内各地をドライブしながら回ったのですが、札幌には1日だけ滞在して、時計台や北海道大学、大倉山ジャンプ場などを観光したり、ラーメンを食べたりしました。
――現在は単身赴任ですか。
杉浦 埼玉県出身で、自宅も埼玉にあります。前任地の新潟でも2年間、単身赴任でしたから、身の回りのことは大体はこなせるようになりました。
――伊勢丹では05年から丸井今井に対する経営支援をおこなっていましたが、どんな印象を持っていましたか。
杉浦 05年当時は新潟伊勢丹の社長をしていました。丸井今井は伊勢丹の共同仕入れシステム「全日本デパートメント開発機構(ADOグループ)」の幹事店だったので知っていました。
ただ、店を訪れたことはなく、そのころはまさか自分が札幌に来ることになるとは思ってませんでしたから詳しいことは知りませんでした。ですが、北海道にある長い歴史を持つ店という印象を持っていました。
――就任直前の3月11日に東日本大震災が発生しましたが、売り上げへの影響はありますか。
杉浦 震災の影響もあり、3月の両店の売上高は、前年同期比で1割以上落ち込みました。しかし、経営統合した4月1日からの約半月間だけをみると、2店舗の売上高合計は3%増となりました。
要因としては、まず札幌丸井三越の誕生記念のフェアとして開催したセールが好調だったことがあげられます。震災後の自粛ムードで消費が低迷する中、セール初日には両店を合わせて、前年を3割近く上回る約8万人のお客さまにご来店いただきました。
また、3月に札幌駅前通地下歩行空間が開通しましたが、これによって、札幌駅から大通方面へ向かう人の流れが増えたこともプラスに働いたと思います。全体としては、まずまずのスタートが切れたと思っています。
――地下歩行空間は実際に歩いてみて、どんな感想ですか。
杉浦 私がこちらに来たときにはもう開通していましたから、開通前との比較ができないのですが、周りのみなさんのご意見では、予想よりも通行量が多いというようなことをよく耳にします。実際に、丸井今井、三越の両店とも来店者数が増えており、開通によるプラス効果が今後も続くよう期待しています。

統合後のかじ取りは新潟に続き2度目

――札幌の百貨店は、大通地区とJR札幌駅地区が競い合う構図が続いており、ここ数年は、大丸札幌店をはじめとする駅前ゾーンに大通がやや押され気味です。駅前ゾーンついての率直な感想は。
杉浦 札幌に引っ越してから札幌駅周辺の商業施設を見て回りましたが、百貨店、シネマコンプレックス、飲食店、家電量販店などが、あれほどの規模でまとまってあるというのはすごいことだと思います。
地下歩行空間の開通によって、札幌駅と大通の間の人の行き来が非常に活発化していますから、これが札幌の中心部全体の活性化につながっていけばいいですね。
――異なる歴史を持つ会社同士の統合後のかじ取りをおこなうのは新潟に続き2度目ですが、統合を終えてどんな感想ですか。
杉浦 企業が継続的に発展、拡大していくために、言い換えれば、ここ札幌で生き残っていくために、丸井今井と三越はこのたび経営統合という選択肢を選びました。ご支援いただいているお客さまや取引先のみなさまにとって、また、われわれ従業員にとっても、「両社が統合してよかった」と思ってもらえるような会社をこれからつくりあげていかなければならない。その責任を、いま痛感しています。

“地域一番店”収益確保が課題

――業界再編によりいまは同じ三越伊勢丹ホールディングス(東京)傘下になったとはいえ、79年にわたる長年のライバル同士が1つの会社になるというのは、簡単なことではないと思います。どう従業員を束ね、社内の融合を図っていきますか。
杉浦 基本的な考え方としては、丸井今井も三越も同じ百貨店であり、両店とも「お客さま第一」ということでやってきたということです。その点は少しも違いがない。その意味で、従業員みんなが1つの気持ちになれると思っています。そのことをまず、市民のみなさんにも理解していただきたいと思います。
そうはいっても、2つの会社では歴史や背景、文化、社風が違います。そこで従業員によく言っているのが、自分たちが何を考えているか、お互いが活発に意見を出し合ってほしいということです。
あまりよく知らない人に自分の意見を言うのは、結構、勇気がいるものです。「もしかしたら、自分は間違っているのかもしれない」と考えてしまったりするからです。
そうしたときに「私はこう思うけれど、あなたはどうですか」と積極的に話し合うことによって、お互いがさらに理解を深めていくことができる。時にはぶつかり合うこともあるかもしれません。でも、よいものをつくりあげるときには、それも必要なことだと思います。
今回の統合に向けて、両社では1年以上かけて準備に取り組んできました。その中でもっとも大切にしてきたのが、お互いのコミュニケーションです。担当者が毎月定期的に会議を開いたり、社内報等の情報発信を共通化したりして、さまざまなレベルでの情報共有を図ってきました。
また、百貨店は会社によって業務フロー、つまり仕事の進め方が結構違います。三越と伊勢丹が経営統合したときも業務フローの統一が大きな課題になりましたが、丸井今井と三越の間でもこれを同じにしていくつもりです。このことがさらなる情報の共有化をもたらし、売上増にもつながっていくと思います。
今回の統合により、本当の意味で私たちは“1つのチーム”になったわけですから、力を合わせてよい店をつくりあげていきたいと思います。
――今回、統合したことで、両店の年間売上高の合計は700億円を超える規模となり、“地域一番店”になります。今後どう効率化をおこない、収益確保を図っていくかが大きな課題ですね。
杉浦 今年2月には両社の物流センターを統合し、札幌市中央区で丸井今井が所有する自社ビルに一本化しました。これにより、大幅な経費削減が見込めます。また、これまで両社で別々だった本部機能や外商部も一本化しました。
そのほかの業務の効率化については、統合に向けて昨年から1年以上かけて準備作業を続けてきましたから、いま新たに何かを始めるというよりも、すでに多くの計画がスタートしています。今後は、それら一つひとつの計画を着実に実行し、検証しながら、きちんと成果に結びつけていくことが大事だと考えています。
――顧客へのサービス面での具体的な変化はありますか。
杉浦 三越伊勢丹グループ共通の会員カード「エムアイカード」のシステムを、三越では昨年4月、丸井今井では昨年10月に導入しました。これまで三越には「三越カード」が、丸井今井には「クレオクラブ・アイカード」がありましたが、これをエムアイカードに切り替えていただくことでカード1枚で両店を買い回ることができるようになり、利便性が大いに高まります。顧客情報を一元化することで、お客さまに対する、より細かなサービスを提供することもできるようになります。
また、すでに昨年6月に両店共通で使える「食品フロアポイントカード」を導入し、お客さまからご好評をいただいていますが、4月1日からは、それぞれの店で買った商品を手荷物預かり所や駐車場受付などで一括して受け取ることができる「ポーターサービス」や、両店で買った商品を一緒に配送する「同送サービス」、駐車場サービスの共通化などを「らくらくショッピング」として開始しました。

築き上げてきた信頼関係を継続

――両店の人事交流は進みますか。
杉浦 4月の人事異動では、婦人服と食品とリビングの中の4つの売り場で、両店の担当者が入れ替わっています。今後はさらに積極的におこなっていくつもりです。
――札幌三越は呉服や美術品に強く、丸井今井は服飾雑貨や道産食品の品ぞろえが豊富だといわれます。お互いの強みをどう生かしていきますか。
杉浦 丸井今井と三越では当然、顧客層が異なります。例えば衣料品、食品、服飾雑貨、リビングなどの商品群にも違いがあるし、催事の内容にもそれぞれ特徴がある。
例えば、丸井今井のお客さまには支持されてても、三越のお客さまには受け入れられない商品はあるし、その逆もあります。どういうジャンルに強いか、どういう点をお客さまに評価していただいているかなど、いろいろな分析ができると思います。
両店が一緒になり、システムが1つになったことで顧客情報を共有化し、お客さまから支持いただいている要素にしっかり対応していくことができる。そのことが両店の強みを、より強くすることにつながっていくと考えています。
――新たなスタートを迎え、今後どんな店をめざしますか。
杉浦 みなさんに夢を提供するのが、百貨店の使命だと思っています。
私が伊勢丹に入社したときは20歳そこそこでしたから、当時はどこまで考えていたのかはわかりませんが、お客さまに喜んでいただきたい一心で働いていました。笑顔で「ありがとう」と言っていただいたときは、本当にうれしかったのを覚えています。
お買い物をしてお客さまにハッピーな気持ちになっていただく、あるいは、地域でいろいろな催し物をおこなうことによって新しい商品を提案する。そうした地道な積み重ねの一つひとつを着実にやり続けることが、ひいては、お客さまからの信頼感を得ることにもつながっていくと考えています。
丸井今井が創業139年、三越が札幌に進出して79年。率直に、その時間の重み、お客さまとの間に築き上げてきた信頼関係は大変なものがあると思います。
これが、われわれが持っているベースとしての“強み”です。それらをしっかり継続して、お客さまとの絆をさらに深くしていくことが、われわれが目指す“大通感動百貨店”の実現につながっていくと考えています。北海道のみなさんから「この店があってよかった」と思っていただけるような、地域に愛される百貨店を目指して頑張っていきます。

=ききて/安藤由紀=