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Interview

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「沖縄と北海道は共通の問題意識を抱える」掲載号:2020年1月

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玉城デニー 沖縄県知事

「米軍の基地問題は沖縄県だけの問題ではない」――玉城デニー沖縄県知事はこう呼びかけながら全国行脚(キャラバン)をおこなっている。11月には札幌市でも開催。沖縄が抱える喫緊の問題や焼失した首里城再建への思いを聞いた。

米軍基地問題は他人事ではない

――今回のキャラバンの目的を教えてください。

玉城 「We love OKINAWAトークキャラバン」と銘打って、シンポジウムを全国各地で開催しています。19年6月の東京を皮切りに大阪、名古屋と回り、11月には札幌に来ました。このキャラバンを通じて、沖縄県の米軍基地問題の現状や日米地位協定の課題などを知ってもらいたいのです。これらは沖縄だけの問題と捉えられがちです。でも、実はその他都道府県に住んでいる全国のみなさんにもかかわる事案である。こういう問題提起と情報提供を兼ねておこなっています。

在日米軍のあり方や日米地位協定で定めた項目は、米軍に対して原則として自国の法律が適用されません。基地の管理権も米軍に委ねている状況です。これらはすべて日米安全保障条約に基づくものです。

しかし、沖縄県の調査によると、イタリア・ドイツ・ベルギー・イギリスやオーストラリアでは、いずれの国も自国の法律を適用している。さらに、基地の管理権も米軍と協議をした上で、受け入れ国が持っており、日本とはまったく逆の状況になっています。

例えば、米軍の施設専有面積では、全国の中で沖縄が最も過重負担を強いられています。ところが、自衛隊と米軍の共用施設で最も広い面積を持つのが北海道。その共用施設の広さが2番目なのは沖縄です。

北海道と沖縄は、米軍や自衛隊のことも含めて共通認識を持てる部分がたくさんあるのではないかという期待があります。

――札幌でのシンポジウム(11月19日)では、道民がイメージしやすいように具体例をあげて話していました。

玉城 沖縄本島の大きさは、札幌市と同じくらいであると説明しました。この沖縄本島に国内の米軍基地の70%が置かれている。これを札幌市に当てはめて考えていただきたい。地図を広げて70%分を塗りつぶしてみると、米軍基地が占める面積の大きさを実感していただけると思います。

第2次世界大戦において沖縄では、軍と住人を巻き込んだ非常に苛烈な戦いがおこなわれました。沖縄県糸満市の平和記念公園内に「平和の礎」を設置しています。この慰霊碑には、国の区別なく沖縄戦で亡くなられた人たちの名前が刻まれています。その数は身元の照合が取れ、遺族の了承を得られた人だけ約23万人分。実は沖縄戦で亡くなられた犠牲者の出身地は、沖縄に次いで北海道の方が多かった。

このような悲惨な戦争を二度と起こしてはいけないという思いも共有できるのではないかと思っていました。「沖縄のことを他人ごとではなく、自分事として置き換えてください」という思いを道民のみなさんにはとくに共感してもらえると信じています。

問題だらけの辺野古移設

――基地問題で喫緊の課題は辺野古移設。現状を教えてください。

玉城 まず仲井眞弘多氏が沖縄県知事時代に埋め立て建設の承認をしました。その後、18年8月末に前知事の翁長雄志氏がその決定には瑕疵があるということで、承認を取り消しました。ところが、その決定に対して国が承認取り消しは認められないと提訴。その後、最高裁で沖縄県が敗訴しました。その結果、埋め立て工事が続けられています。

しかし、その工事中に移設予定地の海底地盤が、マヨネーズ並みに軟弱なものであることが判明しました。そのため、大規模な改良工事が必要となりました。さらに地下深くには2つの活断層が存在しているのではないかという専門家の指摘もあります。

対策として、国は岩盤改良工事をするために7万7000本の砂杭(サンドバイル)を打ち込んでいます。われわれはこの作業によって、環境破壊の影響が出ると国に協議を申し出ていますが、一顧だにせず、粛々と埋め立てを進めています。

そのため、沖縄県として埋め立て工事を了承していないことを理由とし、19年8月に埋め立て承認を撤回しました。しかし、沖縄防衛局が「撤回は無効である」と石井啓一国土交通大臣(当時)に執行停止を申し出た。石井国交大臣はそれを採決。国は沖縄県の承認撤回を取り消しました。

県としても“正しいやり方ではない”と抗議しているものの、国は話し合いに応じません。やむなく関与取り消し訴訟という形で司法に提起せざるを得ない状況となりました。その結果、現在は最高裁に上告受理を申し立てています。

対立ではなく対話での解決要求

――沖縄県はどのようなことを国に訴えているのでしょうか。

玉城 現在、訴訟が進んでいる中でも工事は継続されています。護岸で仕切られた範囲内に土砂を投入しているのですが、その量は工事全体から見てわずか1%余りにすぎません。「工事が進んでいるのでもう無理だろう。そのまま進めた方がいいのではないか」と思いがちですが、中断は可能です。

例えば道路工事の場合、全長5区間の内の1区間だけを部分開通させることができます。ところが、この埋め立て工事は全体の工事が完了しない限り、一部分だけの使用開始は不可能。したがって、多岐にわたる問題点がいまだに説明もされず、解決にはまったくいたってないまま、浅瀬の埋め立てのみが先におこなわれているのです。

われわれはこのやり方を到底認めることはできません。国には一度、工事を中断して沖縄県側と真摯に話し合いをするようにと、対話による解決をずっと求め続けています。

――沖縄は政府のほかにアメリカも交えた3者協議を求めています。

玉城 外交安全保障は国の専権事項。日本政府はアメリカ政府と普天間基地の移設先として辺野古が唯一という手段で合意をしています。両国政府はわれわれの要求に耳を傾けず、解決を探るための協議の場をつくるという方向性で一致しないのが現状です。非常に残念でなりません。

首里城の再建沖縄旅行が一助

――沖縄の代名詞ともいえる首里城が10月31日に焼失しました。観光へのダメージは。

玉城 首里城は沖縄県民の“心のよりどころ”だったので、大きな穴が空いたような喪失感に見舞われています。観光面でいうと、各旅行会社からは首里城に代わる観光コースを提案してくださいと要望を受けています。幸いなことに現在、クルーズ船の寄港キャンセルなどは発生していません。

本来、首里城の見学でお迎えする予定だったメニューを沖縄空手会館、琉球王国玉泉洞などの観光景勝地に転換することで、何とか新たな拠点をつくっていこうと考えています。

焼失によって首里城一帯の観光客数は少し減っていますが、沖縄観光全体での来県者数には大きな影響はないと捉えています。

――国内外で再建に向けた支援の輪が広がっている。

玉城 那覇市はふるさと納税を利用したクラウドファンディングを通じて再建への寄付金を受けつけており、すでに5億円以上が寄せられています。県でもふるさと納税を利用した窓口を開設させていただきました。これまでに1億8000万円の寄付が寄せられています。県民や首里城にお心をお寄せいただいた方々のご意見を賜りながら、目標額や期間を設定したいと考えてます。

――道民が沖縄を訪れること自体が再建の一助になりますか。

玉城 もちろんです。食事・買い物・レンタカー代などが沖縄の観光経済の収入となります。沖縄はアジアをはじめとする海外からの観光需要の取り込みによって観光客数が12年度の592万人から999万人(18年度)まで増加しています。観光収入も3997億円から7335億円となっています。そしてこれらが再建費につながりますから。

=ききて/佐藤裕樹=