民主党は内部分裂で自滅した
――3月16日に民主党北海道の新代表に就任されました。民主党は先の衆院選で道内の小選挙区で全敗、2年前の知事選でも大敗しています。北海道は民主党王国と言われてきましたが、現在の状況をどのように考えていますか。
横路 北海道の場合、今回の衆院選はさまざまな要素が重なったと思いますが、自民党との戦いは政策論争で負けたという感じがまったくない。政策論争になっていないし、政権を取っていた3年3カ月の間も、自民党から政策提起を受けて議論したということはほとんどなかった。
自民党は解散を叫んでいただけで、とくに特例公債法を人質にするという、やってはならぬ手法を使ったのです。予算というのは歳出が中心ですが、歳入の裏付けがなければ組めない。したがって、国税や地方税、特例公債法の関係なども年度内に採決するということで、20年間協力してやってきました。ところが、自民党は昨年と一昨年、2度にわたり禁じ手を使い、菅さんと野田さんが追い詰められたのです。
――予算案は参院で否決され、両院協議会で交渉が決裂しても、30日たてば自動成立します。一方、特例公債法は参院で否決されると、再度、衆院で3分の2以上の賛成がなければ可決できません。つまり、特例公債法が未成立だと、予算は成立しても、原資が確保できないという事態に陥るわけですね。
横路 歳入の4割は赤字国債ですから、特例公債法が可決されないと、10月、11月に予算の執行ができなくなるので、今度のような選挙になったのです。
今回の衆院選では、民主党も自民党も票を減らし、その分、第三極といわれる維新、みんなの党、そして北海道では大地に票が流れました。私たちとしてはやった政策は正しかったと思っています。
――政策は正しかったけれども、理解されなかったから敗れたと言うのは、負け惜しみみたいですね。
横路 そんなことは言ってません。なぜ負けたかを一言でいえば、民主党内の内部分裂に尽きます。要するに政策論争で負けたのではなく、自分たちが崩壊したのです。自民党が得票を伸ばしたわけではなく、3年前より減らしているのですから。
――せっかく政権を取ったのに、なぜこんなことになったのですか。
横路 よくわかりませんね。ただ、小沢一郎さんが、消費税を党内の権力抗争の材料に使ってしまった。
――それは、小沢さんが仕掛けたということですか。
横路 そうですよ。小沢さんがああいう指示・指令を出さなければ、(消費税導入については)何時間も何日間も徹底的に議論したのですから、落ち着くところに落ち着いたと思います。
ただし、もともとはということをいえば、自公政権のときに、年金の国庫負担を3分の1から2分の1にし、財源を消費税にすると法律で決めたのですが、その当時は消費税についてあまり議論したわけじゃありません。
結局、財政が厳しい中で、消費税の増税は必要だというのは、その通りなのですが、もっと違う形で問題提起をすべきでした。(3年前の参院選で)菅さんもやや唐突に消費税増税をおっしゃったと思います。
――2009年夏の総選挙で民主党は、マニフェストで増税に反対したのではないのですか。
横路 マニフェストでは消費税に触れていません。その点は誤解されています。私は前回の総選挙でも、懇談会等で税負担はやらざるを得ないと話していました。
日本の社会保障は、家庭で家族が面倒を見る、企業が福利厚生で面倒を見る、この2本立てで成り立っていました。そのため、政府の社会保障の支出、負担は、アメリカ並み。(先進国クラブといわれる)OECD34カ国の中で、税負担は一番低いほうです。 日本では、夫がサラリーマン、妻が専業主婦、子どもが2人というのが、社会保障や税を考える上で、一般的なモデルとなっています。昔は夫の給料だけで一応生活ができていたのです。そのベースになっているのは、終身雇用、年功序列制です。
ところが、小泉・竹中ラインがアメリカ的市場主義、いわゆる新自由主義政策を導入した。雇用が流動化すれば、会社を移りながら給料は上がっていく。日本はあまりにも悪しき平等主義だ。力の強い人間をもっと強くし、金持ちをつくれば、しずくが垂れてきて下を引っ張り上げる―というトリクルダウン理論を展開しました。ところが、しずくは全然落ちて来ないで、金持ちと貧乏人に二極化してしまった。
家族構成も変わった。いま一番多い家族構成は、単独世帯です。そして、夫婦と子ども、夫婦世帯、三世代と続きます。いまから50年前は、三世代と夫婦と子どもの家庭が合わせて8割でした。いまは4割です。圧倒的に単独世代が増えたわけだから、年を取ったら誰が面倒を見るのかということが問題になります。
それでどうするかということになり、公共的サービスの提供が必要になったのです。そのためには負担が必要です。これが消費税を上げなければならない理屈の社会的背景です。民主党はだから消費税増税を提起したのです。
――それをちゃんと国民に説明しましたか?
横路 しましたよ。消費税増税は国民に負担を強いるものですが、では、このままでいいのでしょうか。昔は若い人が結婚できたんです。将来、収入が上がっていくという見通しがあったからです。子どもを産むこともできました。いまはどうですか。小泉・竹中政策の結果、非正規雇用は35・2%、1800万人もいます。年収200万円以下が増えています。35歳未満の男性の未婚率は48%です。子どもがどんどん減っていき、最大の問題は人口減少です。
50年後には4000万人減ります。日本全国平均で減るわけではないので、過疎地はさらに減ります。国土交通省の調査によると、2015年に人の住んでいるところの2割は、40年後に人がゼロになります。しかし、人がまばらになっても、医療も福祉も、子どもがいれば教育も提供しなければなりません。
だから、われわれは社会保障と税の一体改革ということを提起しました。少子化対策としては、雇用を安定させるため、労働契約法、労働者派遣法を改正し、非正規を解消するか、非正規であっても差別をなくする、そして女性の社会参加を増やすために保育機能を充実する―ということをやってきたのです。
正しい政策なんですよ。それを自民党は、3歳までは子どもに親が寄り添わなきゃいけない、民主党が言うような社会が子どもを育てるというのは間違った政策だ、と主張したのです。
いま私たちは国会で、子どもの貧困防止法案、介護職等の人材確保法案を用意しています。