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Interview

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「市庁舎移転、断水補償、副市長人事」小谷毎彦が激白 掲載号:2009年10月号

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小谷毎彦 北見市長

 オホーツク圏の中核都市・北見市がいま、数々の難問を抱えている。最大の懸案事項である市庁舎問題、2年前に起きた断水事故の補償、副市長人事などについて、昨年12月に就任した小谷毎彦市長に話を聞いた。

当選翌日に副市長4人が辞表提出

――昨年12月の当選直後、副市長4人が全員辞職し、現在も副市長がいない状態が続いていますね。
小谷  当選の翌日、副市長、収入役、公営企業管理者の6人が退職願をもって私のところへ来まし た。引き継ぎの問題もあるので、私は「もう少し考えてもらえないか」と言いましたが、市長が代わったということで職務を続ける意思がないようでしたので、 仕方なく退職してもらいました。
収入役は自治法上、置かなくてもいいので廃止して、公営企業管理者の任命は議会の議決は必要ないので、新たに選任しました。副市長は4人から2人に削減 したいという思いがあり、状況が整えば、9月の議会を含めて削減案を提案するつもりです。理解が得られるように頑張りたい。
――市長になって驚いたことは。
小谷  市職員、北見市議、道議という形で行政とはかかわってきたので、市長の役割というものはわ かっているつもりでいたけれども、いざ就任してみて、職務の重大さを痛感しました。また、時間のなさにビックリしました。いまは半年以上たって慣れてきた ので、やっと少し北見全体を見る余裕が出てきたと自分では思っています。
――市にとっての最大の懸案事項は、市役所庁舎の移転問題ですが、さすがに老朽化が目立ちますね。
小谷  この市庁舎は、1955年につくられた築50年を超える建物です。道内に35ある市の中で も、これだけ古い庁舎があるところは珍しいのではないでしょうか。「北海道遺産になるかもしれない」などと冗談を言う人までいます。冬は重油をたいて集中 暖房で暖めていますが、それでは間に合わないので、各部屋ごとにガスストーブを置いています。
i6  私は1991年に北見市議になりましたが、そのころから庁舎建て替えの話がありました。私は庁舎建設調査特別委員会のメンバーでもあった。本当は十数年前に新庁舎を建てているはずだったわけですが、いまだに建っていません。
いま市庁舎がある場所は、隣接する北見赤十字病院(日赤)の改築のために土地を提供しようと考えていますので、どこかに建て替えないと市役所は行き場が なくなってしまいます。  日赤側は隣接地に完全に新しい病院を建ててしまってから移ろうとしています。スクラップしながらビルドすれば、いまの病院の敷地を活用できますが、患者 さんや医療機器を移動したりするのにばく大なお金がかかる。日赤の人は「建設費を3倍かければできるかもしれません」という話をしていました。いまの場所 だけでは難しいということで、用地を提供することを考えています。
「郊外のもっと広い土地に日赤を移してはどうか」という意見もありますが、利便性などから考えて、市民にとって現在地と隣接する市庁舎所在地に建て替えするのが一番いいと思います。
――市長選では、神田孝次前市長が北見駅前にある「まちきた大通ビル」(コミュニティプラザ・パラボ)を耐震改修し、増築した上で市庁舎を移転、現在の庁舎跡地を日赤に売却するという計画を主張。一方、小谷 市長は現在地での建て替えによるコンパクト市庁舎を掲げました。
小谷  前市長が掲げた移転案は議会で3分の2の賛成が得られず、前市長が市民に「信を問う」と辞任し、市長選挙になりました。
結果として私が当選したわけですから、まちきたビルへの移転は市民の承認を得られなかったということ。ですから、私としては、まちきたビルに移る選択はできないと思っています。公約を曲げなければいけない大きな理由があれば別ですが、いまのところは考えられません。

市庁舎は1カ所でなくてもいい

――市庁舎問題の是非だけではなく、12年間の神田市政に対しNOの審判を下した市民も多かったのでは。
小谷  この市庁舎問題に対し、それぞれ公約をもって戦ったわけです。どういう形であろうと、移転案が「否」、コンパクトな方式で建てたいという私の主張が「是」とされたと、私自身は考えています。
まちきたビルは、築25年以上たっている建物です。前市長の移転案では耐震化の大改修をした上で増築するということでしたが、増築すると後からまた、古い部分をどうするのかという問題が出てくるわけです。
まちきたビルは現在、分庁舎として教育委員会、企業局などが4、5階に入って使っていますが、商業スペースとビジネススペースをどう整理するのか、という問題も議論されてこなかった。
それで私としては、議会にも提案しているように、「分庁舎方式」で進めていきたいと考えています。1カ所にすることができればそれが一番いい。でも、い まは電子決裁やIT技術などが進んでいますから、必ずしも1カ所にまとまっていないと仕事ができないということはないと思っています。
まず、現庁舎の土地は日赤に一部を提供するので、この場所に市役所を単独で建てるということは難しい。ほかの場所に新たに建て替えをするということにな ると、現在使っているまちきたビルは、空きスペースになってしまう。テナントで埋められればいいですが、この経済事情ではそれも難しい。
さらに、06年に合併した旧端野町には、建てて数年しかたっていない新しい庁舎があります。駐車場も広く、距離でいうとここから6キロ。車なら10分くらいで行けます。現在も総合庁舎として使っていますので、そこを市庁舎の一部として使えないかと考えています。
コストや既存施設の活用など、いろんな条件を考えていくと、現在地に建てる新庁舎、まちきたビル、旧端野町役場の3カ所に分ける案が一番いいのではないかと思います。議会の理解を得るのはこれからです。

少数与党でも「話せば思いは通じる」

――与党議員は8人。対する野党は3会派合わせて21人。9月議会でも、厳しい展開が予想されますが…
小谷  まちきたビルに移るには、議会が3分の2を制して議員提案にするしか道はない。もしそれが実際に通れば、それが民意かもしれないので、こちらとしても対応せざるを得ない。しかし、いまはそういう状況ではないと思っています。
前市長の提案した移転条例案は、3分の2に1票足りず否決された。ですが、「3分の2」というのは数字上の話だけではなく、「多くの人が理解している」 ということを表すのが本来の意味だと考えています。この市庁舎問題を、多くの人が納得できる形にしないといけないと思います。
少数与党ということでは確かに厳しい状況ですが、議員のみなさんも北見をよくしようとしている人たちですから、話し合っていけば思いが通じるのではないかと思っています。より多くの方々と話し合うことが大事だと思います。
――日赤の改築計画はいつごろ出ますか。
小谷  今秋くらいをめどにわかると思います。
――今後、住民アンケートなどを行う予定は。
小谷  必要があればやらなければなりませんが、まだ住民投票条例をつくっていません。この住民投 票条例の制定は、私の公約にも掲げたものです。制定を目指しているまちづくり基本条例の中に、住民投票をすることができるという条文があり、これができれ ば、それにともなって住民投票条例を制定できます。
ただし、これには時間が必要です。別な方法で市民の意向を確認することもできますが、いずれにしても予算がともなう話なので議会の了承を得ないといけません。
――07年6月に起きた断水事故の補償問題には、どう対応していきますか。
小谷  断水で損害を被った方々で補償を求めている人がいます。だが、いまの状況では、すべての市民の方に法律上の損害賠償をすることはできないのではないか、と思っています。
事業者である市としての一番の責務は、今後同じような事故が起きないようにするにはどうしたらいいか、再発防止をどうするかということで、それについてはいま部署で詰めています。
札幌では豊平峡ダムなどが水がめの役割を果たしています。ところが、北見のように川から直接、取水しているところは水がめがない。それで、6月に川の水をいったんためておく円形のドーム施設が2つ完成しました。
これにより、川が汚濁して取水を止めても、丸1日は給水を続けることができるようになりました。市民に節水を呼びかければ、もう少し長くすることができると思います。
それから、浄水場から北見市内に配水する水道管が1本しかなく、破損すれば水を送ることができなくなる。そこで、もう1本のバイパスをつくる工事を近々始めます。こうした取り組みで、安全性能は格段にアップしたと思います。
実は断水事故があったとき、私はすぐには知らなくて、昼のニュースを見て初めて知ったんです。給水場所などの情報も、市民にきちんと伝わっていないよう に感じました。結局3回断水しましたが、あとの2回も情報伝達の反省点などが生かされていなかった。非常時の市民対応をスムーズに行うことも大事なこと で、力を入れていきたい。

総延長110キロ日本一長い自治体

――地域経済の活性策は。
小谷  北見市は農林水産業がさかんなところですから、そこから出てくる1次産品を地域で活用していきたいと思います。
企業誘致も大事で、それはそれで力を入れますが、このご時世ですからなかなか厳しい。そこで産学官で連携し、1次産業と2次産業の中間、われわれは1・5次産業と呼んでいますが、ここでとれる農産品、海産品を使った産業おこしを行っていきたい。
例えば、北見は日本一のタマネギの産地です。そのタマネギの加工を行っている市の出資企業・グリーンズ北見のような会社を、もっとつくれないかと思っています。
また、06年には北見市、端野町、常呂町、留辺蘂町の旧1市3町が合併して、石北峠からオホーツク海、サロマ湖までを含む新しい北見市が誕生しました。
総延長は110キロ。自治体の長さでは日本一です。110キロといえば、直線距離に直すと札幌から深川くらいまでの長さ。それが1つの市なわけです。
それだけに地域ごとにいろんな歴史、文化がある。夏の間はいろんな場所でお祭りが行われました。留辺蘂の夏まつり、温根湯の温泉まつり、常呂のふるさと まつり、端野の太陽まつり、北見のぼんちまつりなど。それぞれのお祭りに、それぞれのよさがある。こうしたものを積極的にPRして、観光客の入り込みを 図っていきたい。
――道東圏は中国人観光客の間でも人気が高まっていますね。
小谷  例えば、道路標識が中国語対応になっていないところもまだある。こうした問題は北見だけで やれるものではありません。網走管内全体でどう人を呼び込むかということが、大事になってきます。北見は人口12万6000人のオホーツク圏の中核都市で すから、リーダーシップをとって、周辺市町と連携をはかっていかなければならないと思います。
――ところで、道議時代に比べるとかなりスマートになられましたね。
小谷  突然の選挙で1カ月間、まちじゅうを歩いたのがかなりききました。でも、いまはちょっと戻りつつあります。就任してからは休みがほとんどありませんが、時間があれば、女房と一緒に温泉へ入りに行っています。

=ききて/安藤由起=