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Interview

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「夢」を主語に挑戦するまちへ掲載号:2016年6月

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鈴木直道 夕張市長
岡村光浩 三井不動産リアルティ札幌社長 

「ミッション・インポッシブル」――4年前、外国特派員協会で記者会見した鈴木直道夕張市長は再生計画を記者からそう評された。しかし、鈴木市政は〝不可能〟の壁を打ち破り、いま新たな段階に進む。
◎夕張市長 鈴木直道(写真右)すずき・なおみち/1981年埼玉県出身。高校卒業後、東京都庁に入庁。働きながら法政大学に通い、2004年卒業。08年に夕張市に派遣。11年4月の夕張市長選で初当選。現在2期目。
◎三井不動産リアルティ札幌社長 岡村光浩(写真左)おかむら・みつひろ/1965年東京都生まれ。88年三井不動産販売(現三井不動産リアルティ)入社。2011年リパーク事業本部事業推進部長などを経て、16年4月に三井不動産リアルティ札幌社長就任。

財政再建と地域再生 両立を進めていく

夕張市は3月、財政破綻から10年を迎え、再生に向けて新たな段階に移行しようとしている。その象徴的な取り組みの1つが、市が所有するホテルマウントレースイなど3施設の民間への売却だ。市から売買仲介業務の委託を受けた三井不動産リアルティ札幌の岡村光浩社長と鈴木市長が、夕張再生について語り合った。
◆    ◆
――岡村社長は鈴木市長の著書「夕張再生市長」をお読みになったそうですね。
岡村 ええ、読ませていただきました。アンケートや座談会などを通じて市政課題を浮き彫りにして優先順位をつけ、着実にスピード感を持って取り組まれていることがよくわかりました。その上で、将来のために次の産業振興にも手を打っています。ゴーイング・コンサーンという言葉がありますが、われわれ民間企業も成長を持続するために常に次の手を考えています。そうしたところに共通点を感じました。鈴木市政の取り組みは民間企業のわれわれにとっても、参考になる部分がたくさんありました。
鈴木 夕張市が日本唯一の財政再建団体になった時から数えると、この3月で10年を迎えました。外国人記者からは「ミッション・インポッシブル」と言われましたが、この間、95億円を返済しました。
一方、緊縮財政を徹底した結果、人口減少に歯止めがかからず、財政破綻した時と比較すると人口は3割減です。財政再建一辺倒、ここが非常に大きな問題です。10年を節目に財政再建と地域再生との両立に向け、新たな段階に移行していきます。
人口減少、少子高齢化、財政難という同じ課題を抱える自治体は少なくありません。夕張市の取り組みはモデルになり得るでしょう。
岡村 確かに夕張市の抱える課題は、全国に共通しています。横浜市の古くからの分譲地に住んでいた時の話ですが、町内会は高齢の方が多く、夏祭りが実施できないと中止になったことがありました。いろんな地域で、高齢化のひずみが生じているのかなと実感しました。
鈴木 夕張市の高齢化率は約49%。高齢化の先進地域です。そこでどういう医療・介護サービスを展開できるか。とりわけ財政的に厳しい制約がある中、どうやって最高の効果を生み出すか。夕張の取り組みは今後、他の自治体にとってヒントになると思います。

子育ての充実と次世代への投資

――今年度はどのような取り組みをするのですか。
鈴木 来年度に今の再生計画を抜本的に見直しますが、今年度からできる部分については着手していきます。基金から約5億円取り崩し、さらにふるさと納税の部分も1億円ほど使って積極予算を組みました。子育て環境の充実を中心とした次世代への投資に舵を切ります。
アンケート調査をおこなった結果、市外から夕張に通っている方が800人以上おり、若い世代から、住環境が整っているのなら、夕張市に住みたいという声が多かった。今後、住環境や親子が集える場所などの整備を進めていきたい。例えば、子育て支援センターを含む複合施設の建設を考えています。財源については、全国初の政府認定を目指すニトリからの企業版ふるさと納税を有効に活用していきたいと思います。
――今回、お2人に対談していただいている理由の1つに、市が所有するホテルマウントレースイなどの売却があります。仲介業務を三井不動産リアルティに委託されました。施設売却の決断に至った経緯は。
鈴木 マウントレースイのホテルやスキー場などは、財政破綻を契機に指定管理者制度の下、加森観光の子会社・夕張リゾートに運営をお願いしてきました。この10年間、加森観光の力によって多くの観光客が訪れ、大変なご貢献をいただきました。
施設売却に踏み切ったのは、そもそも論として、宿泊施設などを市が保有するのはどうなのか、という視点からです。指定管理者制度では、施設を改修するにもその都度、市の判断が必要になります。しかし、観光分野においては、民間の発想でスピード感をもってやってもらったほうがいいのではないでしょうか。民間のノウハウが最大限発揮されるには、施設自体も民間事業者に任せたほうがいいと判断しました。
そんな中、実績に加え、夕張の将来ビジョンに強い思いを持って臨んでいただけるということで、三井不動産リアルティに売買仲介業務を委託することになりました。
このホテルとスキー場は冬場になると、300人規模の雇用を生みます。瞬間風速ではありますが、市にとって最大の雇用の場でもあり、ぜひ長期にわたって運営を続ける事業者に公募に応じてほしいと考えています。
岡村 北海道はいま、海外にも注目されているエリアです。当社は三井不動産グループとして海外も含め、幅広いネットワークを有しています。そうした点も夕張市から評価していただき、委託先に選んでいただいたのではないでしょうか。
鈴木市長がお話しになられたように売却先の選定では金額だけではなく、夕張のまちづくりにどう積極的にかかわっていただけるかがポイントになると考えています。夕張市としっかり協議を重ねながら作業を進めていきます。
――売却先公募の内容は。
鈴木 詳しい内容については、
市のホームページに「夕張市特定財産売却公募について」として掲載しています。すでに募集は始まっており、6月末まで受け付けています。
ところで今年度から、地方創生の総合戦略に基づき、いろんな切り口で観光面も新規事業を始めます。
石炭博物館は今年度から2年間かけてリニューアルする予定です。映画「幸福の黄色いハンカチ」のロケ地である想い出ひろばは多くの観光客が足を運ぶ場所ですが、松竹と山田洋次監督のご協力をいただきながら強化します。また、清水沢地区のエコミュージアムプロジェクトの中では、炭鉱住宅を改修し、宿泊体験にも取り組みます。

夕張の良さを生かしたまちづくり

――多くの事業をスタートするのですね。
鈴木 さまざまな事業は、公募を経て決まる民間事業者が、ホテルマウントレースイなどの施設を取得するタイミングと重なります。
総合戦略の中では「『夢』を主語に挑戦するまちへ」を掲げました。夕張のイメージを大きく変える。そんな意欲を持ち、一緒にまちづくりに挑戦していただける企業に応募してほしい。
総合戦略の中では「現代版一山一家」という言葉も掲げました。かつて炭鉱には全国各地から人が集まり、ヤマごとに家族のような共同体ができあがっていました。こうした歴史的な背景が、夕張市民のつながりの強さの根底にあると思っています。
炭鉱はなくなりましたが、まち丸ごとが1つのヤマであり、家族なんだと。そうしたポリシーをまちづくりで実践していきたい。
岡村 不動産仲介をする事業者として、夕張は大変魅力的なまちだと思います。風光明媚な環境や、札幌、新千歳空港からの距離感もちょうどいいという地理的条件だけが理由ではありません。若い方あるいは老後の移住先を探している方も、住民同士の横のつながりがある地域は魅力的に映ります。
ホテルマウントレースイ

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