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Interview

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「地域経済を下支え 中小企業支援に全力」掲載号:2009年10月号

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吉澤 慶信 北海道信用保証協会会長

保証債務残高が初めて1兆円突破

――昨年秋のリーマンショック以降、業務は多忙を極めているのでは。
吉澤 昨年9月の世界的な金融危機に対応するため、政府は中小企業への金融支援を柱にすえて政策を展開してきました。その主要な事業が昨年10月31日にスタートした緊急保証制度です。
この制度がちょうど年末、年度末という資金需要期とも重なったこともあり、昨年度の後半、大変なペースで活用されました。協会では急きょ派遣社員を雇い 入れ、職員にも頑張ってもらい、業務時間の延長、休日対応も行ったほどです。社内体制を審査の周辺業務を支援する形に一時的にシフトしました。  ――緊急保証制度の利用はどのくらい多かったのですか
。  吉澤 昨年11月から5カ月間は月ベースで3000案件、500億円の扱いがありました。緊急保証制度案件だけでです。今年度に入ってからも、ペース自体は昨年度よりは多少下がりましたが、依然として緊急保証の申し込みは多いです。  ――緊急保証制度も含めた全体としての昨年度実績は。
吉澤 緊急保証制度がずいぶんと伸びた結果、昨年度の保証実績額は過去最高の6855億円でした。保証債務残高も1兆461億円となり、初めて1兆円を超えました。
i6 ――過去最高の実績だったということですが、言い換えれば中小企業に対する保証協会の役割がそれだけ増したわけです。改めて保証協会の機能についてお考えをお願いします。
吉澤 地域経済の担い手として頑張っている中小企業の資金確保をスムーズにするため、金融機関からの 借り入れに対し債務保証するのがわれわれの仕事です。周知のように北海道経済は大変厳しく、中小企業のみなさまも経営が厳しい。そんな中、保証が付くこと で必要な運転資金を早急に確保できるわけですから、保証協会は中小企業にとって使いごたえのある存在だと、思いますね。   もう一点としては地場の中小企業への金融支援を積極的に実行することで、地域経済の下支えを果たしていると考えています。
――緊急保証制度がスタートした直後の昨年12月、会長に就任しましたが、特に意識していることはありますか。
吉澤 私としては保証協会の役割をできるだけ多くの方に知ってもらいたいと思っています。北海道信用保証協会はちょうど60年の歴史がありますが、これまでは一般にはあまり知られてきませんでした。金融機関の裏方役をやってきたと言っていいでしょう。  しかし、今回の経済悪化、緊急保証のなかでは地域経済の安定・維持のためにかなり表に出て仕事をしているという印象があります。保証協会が自らの役割を果たし、地域経済に貢献しているという点については、大変やりがいのある時期だと思います。
協会としては「顔の見える協会」、「信頼される協会」をテーマに掲げてやっていきたい。今まで以上にディスクロージャーを徹底し、頑張っていきます。

中小企業の実情を理解して審査する

――金融機関が中小企業に融資する際、信用保証協会の保証が付くか否かが、非常に大きなポイントになっています。どのような点に留意して審査業務を遂行していますか。
吉澤 金融機関とは事前に十分にコミュニケーションをとり、事前の協議のなかで融資姿勢や保証姿勢を取りまとめていくことを心がけています。
また、保証の申し込みに対し、単に「イエス」「ノー」で回答するのでは不十分です。例えば、こういう条件を満たせばいくらまでなら保証できますよ、といった投げかけをします。そういう提案をこちら側から積極的に金融機関にさせていただいています。
それから、中小企業はこれだけ厳しい環境にさらされ続けているわけです。正直なところ保証が難しいのではないかと思われる案件も出てまいります。
しかし、単純に申請書をなぞるような審査ではいけません。その企業の置かれている実情を理解し、企業が持っている技術力、さまざまなノウハウが十分生かされるような形での支援をしていくように考え、審査を実行してます。

全国2番目の件数流動資産担保保証

――緊急保証制度は信用保証協会がリスクを全て負う仕組みです。そこに目をつけて、金融機関がプロパー融資の付け替えに利用しているのではないか、とする見方もありますが…。
吉澤 およそ10年前の金融安定化保証のとき、銀行の貸し渋り・貸しはがしが叫ばれ、本州方面の一部で保証制度のそうした付け替え利用の噂はありました。
しかし、国は金融機関や私ども保証協会に対し、厳重に指示を出しています。もしそういったことがあれば当局は金融機関に極めて厳重な指導を行うでしょう。
――緊急保証以外の保証制度にはどのようなものがあるのですか。
吉澤 最近の経済情勢、金融事情に合わせいろんな制度ができています。再挑戦支援、事業再生、事業承継、流動資産を担保にした流動資産担保融資(ABL)保証といったものがあります。それぞれ企業の実情にあわせて制度を活用してほしい。
例えば、最近は特に返済財源がなくて苦慮している中小企業は多い。その場合、借換保証制度というものがあります。今までの保証協会付き融資をできるだけ一本化して金利負担を軽減し、それにより資金繰りを円滑化させるのです。
――事業再生のコンサルタントから、その借換保証は「使える制度」だと、聞いたことがあります。
吉澤 ただ、やはり今は圧倒的にニーズが高いのが当面の資金繰りへの手当てに対応する緊急保証制度ですね。総体の保証制度のなかで緊急保証が6割を占め、借換保証と併用する場合もあります。
――さきほど挙げられたABL保証はどんな制度ですか。
吉澤 売掛債権や棚卸資産を担保にした融資に対する保証です。比較的新しい制度で利用実績はまだ多くはない。大半が売掛債権を担保対象にした形で昨年度は76億円でした。
ただ、道内の金融機関は積極的に流動資産担保融資に取り組んでいますね。全国の信用保証協会のなかでは件数では2番目、保証額では4番目ぐらいでしょう。
――ABL保証は不動産を持たない企業にとって、有効な保証制度ですね。事業承継への保証制度については。
吉澤 制度ができたばかりですし、事業承継の保証制度はいろいろと条件もありまして、実績はまだありません。
しかし、企業数がどんどん減っていますから、事業承継、企業再生、再挑戦を支援する取り組みが今後、ますます重要になってくると考えています。

中小企業再生支援協議会とも連携

――他機関とはどのような連携を。
吉澤 中小企業を経営指導しているいろんな機関がありますが、各機関と連携して中小企業の経営安定化を図ることが大切だと考えています。経営指導と金融支援、この2つが合いまっていくことが重要です。
今、ご存じのように道内には中小企業再生支援協議会が発足しておりますが、連携をとり、できるだけの協力をしています。場合によっては求償権を放棄する案件もあります。再生支援協議会が策定する再生計画にのっとり、関係する機関がそれぞれ協力支援する一環としてです。
そのほか、各金融機関の再生支援部門とも連携をとり、私どもも事業再生のための保証をするケースもあります。
――再生支援協議会絡みの案件は多いのですか。
吉澤 求償権を放棄した案件は多くはありません。むしろ再生支援協議会が策定した計画に従い、リスケ(返済条件の緩和)に協力したケースの方が多いです。昨年度はそうした案件が33件ありました。
――ここ数年、北海道でも大型の倒産が続発しました。北海道信用保証協会ではどのような対応をされたのですか。
吉澤 小売業の地方店舗閉鎖が地元の中小企業に大きく影響を与えています。大きな建設業の倒産劇もあ りました。保証協会では下請け、取引先に影響が広がらないよう、国あるいは道の指定を受けた倒産案件について、債権を持っている中小企業に保証を行ってい ます。また、対応窓口を本店ならびに全支店に設け、金融相談に乗っています。
――窓口以外の相談は。
吉澤 フリーダイヤルによる経営相談もやっています。中小企業診断士資格を有する専任職員が対応しております。それから、商工会議所などの経済団体に月に6回程度出向く、1日出張相談もずっと続けております。
――そうした金融相談のニーズは高いでしょうね。
吉澤 そうですね。相談件数は増えています。昨年度は窓口相談が170件、フリーダイヤル相談が510件といずれも件数が伸びました。
協会としては中小企業支援を充実させるため、協会内の人材養成にこれまで以上力を注ぎ、中小企業診断士を増やしていきたいと考えています。ちょうど今も職員1人が資格取得のために出張中ですし、2人が勉強中です。

代位弁済額が上昇昨年度341億円

――緊急保証制度は中小企業の延命措置として役割を果たしていると思います。しかし、なかなか景気回復の見通しがつかない。実感としては。
吉澤 うーん…。保証業務における事故、いわゆる代位弁済はかなり増えているのが実情です。昨年度の代位弁済額は341億円で過去最高だった07年度をさらに56%も上回りました。
――代位弁済額が落ち着く気配はないのですか。
吉澤 今年度に入っても残念ながら、引き続き代位弁済額が高いペースで推移しています。
代位弁済の資金は国の保険で一般的には8割分まかないますが、北海道の場合、支払っている保険料よりも、もらう保険金の方が圧倒的に多い。ですから国の保険収支には大変、ご迷惑をかけている形です。
――そうかといって保証の蛇口を閉めるわけにはいかないですよね。
吉澤 もちろんです。今の北海道の経済なり、中小企業の経営実態をみれば、できるだけ金融支援をしていくというのがまず第一ですから。
ただ、中小企業がこれから長期にわたって経営を維持・安定していくためには、根本的な問題として地域経済が良くなってくれないといけません。それぞれの関係機関でそうした方策・政策を積極的にやっていただきたい。

=ききて/野口晋一=