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Interview

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「地域の特性を生かすのが真の地方分権。北海道にはポテンシャルがある」掲載号:2009年4月

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増田 寛也 4月、道顧問に就任 前総務相

岩手県知事時代「戦う知事」「ものを言う知事」と言われた増田寛也前総務大臣が4月1日、道顧問に就任する。そこで増田氏に北海道への期待、地方分権・自治のあり方、道州制などについて聞いた。(取材は3月3日、東京市政調査会で行った)

1次産業に大きな可能性を秘める

--------北海道の現状をどのように感じていますか。
増田 北海道はいろいろな可能性を秘めていると思います。私が北海道に行くたびにいつも感じていたこと は、1戸あたりの耕地面積が広いということです。昨年、十勝に行った時も聞いたが、1戸あたりの平均耕地面積が北海道全体ではいま、17から18ヘクター ルではないでしょうか。十勝はそのちょうど倍あり、立派な経営をしている農家が随分ありました。いま、地方で一番問題なのは、1次産業が衰退していること です。しかし、その1次産業を本当に“業”として進めていく上でもっとも可能性を持っているのは北海道の農業ではないかと思っています。漁業もそうです。
あと、ものづくりにしても、自動車産業が厳しい状況になっていますが、トヨタの苫小牧を中心に、だんだん形ができつつあり、大きな可能性を秘めていま す。確かに瞬間的には昨年秋からの経済危機があり、各地域も大変な状況になっています。消費が落ちています。タイムラグがあるので、今年はもっと各地域が 冷え込むのは事実でしょう。しかし、全世界的なことです。いかにそこから早く抜け出し、本来の成長軌道に戻すかである。その意味では北海道は、ポテンシャ ルを秘めた大地ではないかと思っています。
特に道として行政がまとまっているというのは魅力です。北東北の3県で、共同事業をやりたいと考えたことがありますが、そう思いながらも、どうしても隣 同士というのは互いに足を引っ張ったりするものです。でも、北海道は1つです。歴史的にも独立した地域である。まとまりという意味で、これからのチャンス を生かしていける地域だと思います。
masuda2  --------逆に広すぎて困るということもあります。
増田 人口密度を見ても北海道は確か1平方キロメートルあたりの人口が69から70人ぐらいで、岩手は 91ぐらいです。北海道と岩手だけが二けたで、3番目が秋田。しかし、ヨーロッパの平均から見るとそれでも岩手はオーストリアと同じくらいです。東京は現 在、5400から5500人になっています。日本の場合は東京に1極集中し過ぎている。
日本を強くしていくためには、東京以外に国土の中でいくつかの核をつくり、それをエンジン役にして地域を引っ張り、全体に成果を広げていくべきだという のが、私の持論です。核となるのは、ブロックの中で見れば札幌、仙台、あるいは西に行けば福岡です。その際、地域、地域にあった産業を考えていくことが重 要だと思います。

もっと議会の力を生かすべき

--------「戦う知事」と言われた増田さんの目から見て、地方自治がなぜ重要なのですか。
増田 地方自治、地方分権が本当にうまくなり立つために地域で非常に重要な存在は、道庁、市役所、役場 です。これは地域の1つの中心である。政治的中心でもあるし、そこが商売、経済の中心でもある。それを運営している行政というハンドリングは、ものすごく 重要です。間違えればとんでもないことになってしまう。ですから、それをうまく生かしていくためにも、行政には細心の注意が必要ですが、それだけではダ メ。例えば、行政の暴走をしっかりと監視する必要があります。その役割を担うのは議会です。
このようなことを申し上げると北海道や夕張の方に失礼かもしれませんが、やはり夕張のようになっては、手遅れになる。そうなる前に本来、夕張市議会がきちんと、それを未然に防ぐためにもっとチェックしていれば良かったのです。
行政と同時に議会、いわゆる立法サイト、国で言えば国会、地方で言えば条例を制定する議会がしっかりと機能を発揮する。行政と議会の両方が車の両輪のごとくうまく機能していくと、分権というのはかなり進んで行きます。
いままでともすれば分権というのは、中央省庁と地方の戦いと思われがちでした。役所同士がお互いの仕事量を分かち合うためにやっており、行政の世界の中 だけで語られるところがあった。これからの時代の本当の分権というのは、それだけでなく、立法面のことも考える必要があります。いままで議会、議員活動は 片隅に追いやられていました。国会に立法権があるように、地方議会もその機能をしっかり果たせるように一生懸命頑張ってもらう。また、その議会の構成は議 員ですが、彼らは住民の代弁者です。住民はいい議員を選ぶ。議員の活動をしっかりと監視する。そうすることで住民にとっていい議会ができることになりま す。そうすると、本当の意味での分権が根付きます。そこから初めて、地域でいろいろな知恵が出てきます。

平成の大合併は一区切りがついた

--------分権すると何が良いのですか。
増田 基準は時代によって変わると私は思っています。戦後の混乱時に分権を唱えても的外れだ。その時は 国が主導的に国家の骨格、骨組みをつくって行く時代だったと思う。現在、インフラを見ても全部が出来上がっているわけではない。国の仕事もまだまだ残って いる。それに今回の金融危機では国の役割が大きい。国の出番というのは相変わらずあります。ただ、政策が成熟してきた国家では、北海道は北海道なりの特質 や資源をもっと生かしたやり方がある。九州は九州なりに資源を生かすやり方がある。それを北海道から九州まで含めて全国一律の農林行政の網のもとで考える のはやはり時代に反するのではないでしょうか。
北海道の産業振興は、最終的に北海道の人が考えるべきです。ただし、国の責任は当然あります。要はその線引きです。いままでの行政は、ほとんどが国が主 導でやってきた。それをいかに地方の、北海道の人たちに北海道の良さを考えてもらうようにバトンタッチするか。そこが分権の大きな意味であり、分権の良い ところです。
 ――市町村合併はもっと進めるべきですか。
増田 私自身の個人的な考えはもう打ち止めにするしかないと思っています。2000年に合併特例法を施 行しましたが、効果が十分ではないため、05年にまた5年間の時限立法で新・合併特例法を決め、計10年近く合併促進を図ってきました。全国の市町村はも う1800を切るくらいの数になっています。もう法律で誘導して行くやり方はほぼ限界に来ています。今後は、この10年間で合併したところの検証に移って 行くべきです。そしてまた違うやり方で市町村の財政強化を図ればいい。合併をしなくても広域連合とか違うやり方があるので、私個人としては、合併はここら で1回打ち切ってもいいのではないかと思っています。

道州制特区には限界がある

――道州制について考えを聞かせてください。
増田 いま都道府県でやっていた仕事がそのまま道州に移るというのは、道州制の本質ではない。仕事の中 でそういったものも数多く含まれるが、本来、道州制というのは、国の多くの仕事が道州に移り、いままで都道府県でやっていた仕事を、できる限り市町村が担 えるようにするものです。 道州制と都道府県合併の決定的な違いは、都道府県合併がいまの枠組みで、いまの国の仕事を前提として、その中で都道府県の仕事 をいくつかまとめようということであるのに対し、道州制はただ都道府県が集まるのではなく、国の仕事を引き寄せるのです。だから道州制は、霞が関がほとん ど解体していることが前提の仕組みだと思います。
道州制が本当にうまく行くためには、市町村がそれなりの形で実力を持ったほうがいい。市町村が都道府県の仕事をかなり担えるようになっていた方が良い。 ただ、北海道の場合には、まだ市町村がそこまで力がなくて、相変わらず道庁がやることがあってもいいのではないかと私は思っています。そこをどうするか は、まさにそれぞれの地域で決めればいい。
一方で、北海道が独り立ちできるレベルにあるかという議論があるでしょうが、北海道は大変な力がある。サイズとしてはちょうどいい大きさです。
いま大事なのは、北海道の経済を強くするため、「ほかの地域にこれだけは絶対負けない。だからこれに関しては自分たちで高く売る」と考え、力を磨くこと です。産業政策も独自のものをもっともっと極めていくことです。北海道という道州で産業集積を磨き上げていくことをやるべきではないか。北海道には磨けば 光るものがたくさんあります。それだけ技術も進んでいます。その技術により、北海道のコメはこの10年の間に衝撃的によくなりました。
分権の話はいま、分権委員会でいろいろやっているが、それはかなり制度的な話です。それはこれから進める上で必要なことだが、制度の話はそれだけで終わ る。あとは、それをどのように生かすかです。分権で自由度の増した、その制度を使って、いかに地域の人たちにとっての成果を出すかです。結局、そこが見え ないと分権をして何がいいのかということになってしまいます。
――道は道州制特区で何年も国と話し合ってきましたが、目立った権限移譲が行われていません。
増田 小手先の戦いというか、すなわち特区であるからです。道州制は大きな制度の根幹からの転換です。 しかし、特区は一点突破である。その一点でいい結果を出そうというもの。道州制はもっともっと大きな話。革命的な話です。特区は医療、福祉、観光などの分 野で、ある地域にやってもらい、いい結果がでたら全国的に展開しようというもの。特区は本来の道州制に行くまでの前段の話です。一点突破というのは道州制 にはなじまない。道州制特区がその後の道州制に結びつける筋道としては見えてきません。道州制本来の方に近づいていくという話であれば別ですが…

=ききて/酒井雅広=