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Interview

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「品揃えと奥行きを広げることが専門店の生き残る道」掲載号:2009年12月

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髙木哲実 タワーレコード 社長 

(たかぎ・てつみ)1950年7月24日東京都出身。75年3月京都大学卒業。同年西武百貨店入社。2001年取締役企画室長、06年取締役店舗構造改革推進担当を経て07年3月からタワーレコード社長。今年4月からナップスタージャパンの社長も兼務している。

タワーレコードは、外資系CDメガストア(大型小売店)チェーンのナンバーワン企業だ。インターネットによる音楽配信事業やオンライン販売にもいち早く取り組み、アメリカのタワーレコードが倒産した後も売り上げを伸ばし続けている。

お客さまから得た信頼が最大の強み

――日本に進出して、ちょうど30年になりますね。
髙木 アメリカにあったタワーレコードの卸部門として、1979年に進出しました。まもなく「日本でのリテール(小売り)の可能性をさぐる」ということになって80年に札幌に1号店を出店。札幌での成功をもとに81年、渋谷に現在の原型となる店を出し、80年代から90年代にかけて全国主要都市に大型店を出しました。現在、ランドマークになっている渋谷店は2代目で、95年に宇田川町から、いまの神南に移転しました。売り場面積約5000平方メートルは、CD・音楽専門店ではほぼ世界最大になります。
99年からは郊外のショッピングセンター(SC)に出店を始めました。これが1つの転機だと思いますが、SCブームの流れに合わせて出店し、現在81店舗です。90年代中頃は毎年7、8店舗増やしました。それにより、日本における外資系のメガストアチェーンとして成立したと思います。
――この間に本家・アメリカのタワーレコードは倒産してしまいましたね。
髙木 よくインターネットでの音楽配信事業の影響で倒産したと言われますが、その認識は間違いです。いまでこそCDのパッケージの売り上げと配信の比率は約8対2ですが、1つは日本と違って再販制度がないので価格競争一辺倒になったこと。ウォルマートなどがCDを扱い始めたおかげで価格破壊が起こった時に、専門性で対抗するのでなく同じ土俵で戦ってしまった。しかし、価格対応力がなかったので、CD以外のさまざまな商品に手を広げ、専門性を失ってしまった。そのために人材も流出した。これが最大の要因です。
そうなってから配信とオンライン通販が有力な音楽コンテンツ入手手段として出てきて、その動きに対応しきれなかった。
――本家と違い、日本のタワーは元気です。その秘密はどこにあるのですか。
髙木 再販制度というのが大きな要素の1つでもあるとは思いますが、競合他社とわれわれと何が違うかというと、品ぞろえの幅と奥行きだと思っています。
売れるものだけ売るというのは大間違いです。それももちろん置いておかなければなりませんが、われわれが売っていかなければならないものや、音楽ファンにとってなくてはならないものというのが絶対にある。そういった品ぞろえの幅と奥行きの深さがないと専門店とは言えません。
それともう1つはプレゼンテーションの仕方です。手書きポップもそうですが、お客さまに良い音楽を送り届けたいという音楽好きの思いがある。だから、ストアプレイというものをすごく大事にしています。残念ながら音楽というものは、聞いていただかないとそのよさがわからない。「いまかけている音源はこれです」と、モニターを用意して、お客さまに見せる仕組みでやっているのは、当社だけです。お客さまを見て何をどうプレゼンするか。それが大事だと思っています。
もう1つ大事なのは、お客さまからの信頼です。当社の場合、アーティストやメーカーとの間で信頼感ができています。それがお客さまからの信頼につながっています。「品ぞろえと奥行き」と言うのは簡単ですけど、在庫も増えますので経営的には負荷が高くなる。その負荷をのみ込んで利益を出すには、お客さまからの信頼をいただかなければなりません。それをしっかりとしたバランスで維持・拡大していっているということが最大の強みだと思っています。
――CD以外の商品で、品ぞろえと奥行きを広げるのは難しくありませんか。
髙木 どの商品が売れるか重点分析をして、売れるものに集中していくというのは、企業の利益の最大ボリュームを確保する上で大事だと思います。でも、それでお客さまにご満足いただけるかと言えば、満足していただけない。お客さまはいろいろな価値観をお持ちです。売れ線商品に絞っていくだけではそれに応えていけない。
音楽は代替がきかないからわかりやすいだけで食品でもアパレルでも、個々のお客さまの価値観にとって代替がきかないのは同じです。幅と奥行きというのは、どんな分野でも必要です。

今後も店売りを中心にやっていく

――音楽配信事業大手のナップスター社と提携して配信事業もやっていますが、CDと比較して、どういう状況になっていますか。
髙木 配信はまだまだこれからです。市場として急成長を遂げてきた配信ですが、昨年ぐらいから鈍化しています。双方利点があるのでうまく使い分けているという印象を持っています。
配信には携帯電話とパソコン(PC)がありますが、市場の比率は携帯9に対しPC1です。携帯の配信は着うたから始まっています。メーンユーザーは若年層、女性、ライトユーザーです。そういうお客さまと接点を持つという点において、携帯は重要なツールです。
PCのお客さまは、もう少し年齢が上になります。ナップスターにおいてはPCもかなりの比率を占めています。なぜなら、いま洋楽中心に900万曲が聴き放題なのですが、そこに近づいてくるのは、結構なへービーユーザーが主体です。ナップスターで聴きまくってからCDを買いに来る方もいます。同じ配信でも、両極端なお客さまを同時に抱えているわけです。  どこの地方にも音楽のヘビーユーザーがいます。その方々の要望に応えられる渋谷店クラスの店をすべての地域にそろえるのは難しいものがあります。そのためにオンラインサイトが生きてきます。店売り、配信、オンライン。3つとも重要な武器だと思っています。
――今後の販売・経営戦略について教えて下さい。
髙木 やっぱり店売りが主体だと思っています。店舗が稼ぎ頭ですし売り上げのボリュームもそうです。これが盤石でなければどうしようもないので、ここの改革をいま一生懸命進めています。81店舗にもなりましたので、標準的な小型店舗群でチェーンストアオペレーションの導入を図っています。これは商品の品ぞろえや販売戦略をそれぞれの店舗の判断に任せるのではなく、本部で一本化し、商品調達や販売の効率化を図るというものです。
当社の場合、店の品ぞろえを常に最上な状態にしておかなければなりません。この手法を入れて、品ぞろえを強化し効率も上げ体質強化していくということを、今年度下期から来年度にかけて進めています。
それと並行して、オンラインショッピングをしっかりしたものに変えています。タワーらしい専門性と奥行きを持ったサイトにしようということで、例えば地域のライブ情報を載せたり、アーティストやCDの情報などCDだけでなく、いろいろな情報が取得できる音楽情報の総合サイトにしようとしています。
いまの時代、さまざまな分野に音楽が浸透していくチャンスが広がっています。われわれとしてはそこに入っていきたい。それにはブランドを強くして信頼を高めていくことが重要です。それをベースに異業種にも広げていくという展望を持ちたいと思っています。
――道内での店舗戦略は。
髙木 店舗網を広げるということについては現時点で材料はありませんが、SCの1テナントとして出店する可能性はあると思います。ただ、いまはSCに元気がないので、既存施設のリニューアルで出ていくというのが、1つの手でしょう。そういう形での北海道出店はあると思います。

=ききて/坂井=