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Interview

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「原発ゼロ」世話人掲載号:2012年10月

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阿部 知子 衆議院議員

「原発依存ゼロ」「再処理ゼロ」「再生可能エネルギーへの大胆な転換」などを具体的政策に、超党派の国会議員有志による「原発ゼロの会」が発足。当初5人だったメンバーは9月6日現在、91人にまで増えている。世話人の1人、阿部知子衆議院議員(社民党)を直撃した。

地震に津波に活断層、不安は当然

――現在「原発ゼロの会」の世話人は8党派10人で構成されています。3月27日の設立時は5人でしたね。
阿部 設立は、東京電力・福島第1原子力発電所の事故から1年が経過し、まだ十分な事故の検証も終わっていないのに再稼働問題が浮上していたころです。多くの国民はそのことに違和感を持っていた。国の原子力政策に対し、国民の側に広範な意識の変容があるのに、それを受け止める政治の側に具体的な取り組みがない。この事実を私たちは強く意識しました。
戦後、原発をつくり続けて54基。うち4基は事故で廃炉になりましたが、まだ50基もある。日本は地震列島。それだけでなく活断層の問題も出てきました。地震に津波に活断層。国民の不安は当然です。
では、すでにあるものをゼロにしていくには、どうすればいいのか。原発をつくるときには、実に緻密な補助金が準備されていて、計画段階から立地自治体に対する支援策があり、いよいよ動き出せばそれに見合う補助金、古くなれば少し補助金をかさ上げするとか、とにかくつくること、動かすことに関しては財政措置も、立法措置も本当によくできている。でも、撤退するときのノウハウは何もありません。国民が原発をゼロにしてほしいと望んでいるとき、どうやって実現したらいいのか。有権者の声を代弁する私たちが応えなければなりません。そこで「原発ゼロの会」を発足させ、7つの具体的政策(原発依存ゼロ、再処理ゼロ、立地自治体支援、省エネ政策推進、再生可能エネルギーへの大胆な転換、新しい経済社会構造への転換、国民に開かれた議論の仕組みづくり)を取りまとめ、仮称「原発ゼロ推進法案」として議員立法で国会に提出します。
――当初のメンバーは自民党衆院議員の河野太郎さん、民主党衆院議員の近藤昭一さん、みんなの党衆院議員の山内康一さん、公明党参院議員の加藤修一さん、それに阿部さんでした。
阿部 河野さんは、自民党の中で奇人変人と言われながら、経済合理性の面からも一貫して反原発の姿勢を鮮明にしていました。再処理には莫大な費用がかかるという視点です。あと始末ができない。これこそ次世代への最大の負担です。燃やせば燃やすほど、放射性物質濃度の高いものがどんどんできる。再処理をしてプルトニウムを取り出せば、原子爆弾になるし、核拡散になるし、さらに汚染も広がる。こうした問題に河野さんは熱心でしたので声をかけました。
i2――阿部さんが。
阿部 そうです。所属する社民党だけで「原発ゼロは党の掲げる旗です」とやってもいい。でも、ずっと反対してきて、事故はある、全電源喪失もある、経年炉の福島第1も危ないと言ってきました。でも、いざ事故が起こればお手上げでした。SPEEDIも知識としては知っていたけれど、迅速に避難に生かしたりはできなかった。
3・11以後、国民の側も、それまでのややイデオロギー中心の脱原発から、現実の選択肢としての脱原発に大きく変わってきたと思います。そんな国民に広がった思いに応えるには、もう政党なんて言っていられない。党利党略でなく、もっとみんなで戦後体制を考えましょうと思って、河野さんに声をかけたのです。
そのほか、民主党の中では、以前から原発はなくしていったほうがいいと主張していた環境副大臣だった近藤さん、自然エネルギー促進議員連盟のまとめ役をしていただいた公明党の加藤さんに声をかけました。
――山内さんにも声をかけられた。
阿部 みんなの党と社民党の主張は、真っ逆さまのところが多いのですが、脱原発や発送電分離などは一緒です。最初は、私の隣の選挙区で考え方もよく知っている浅尾慶一郎さんに声をかけました。でもなかなか時間がとれないということで、山内さんに参加してもらいました。
――その後、世話人は10人。道内選出議員もいます。
阿部 近藤さんが逢坂誠二さんを誘いました。原発は立地自治体の問題もどうにかしないと解決しません。そのためにも自治体のことをよく知った人に入っていただきたいと思っていて、ニセコ町長も経験されている逢坂さんにも世話人になっていただいた。
河野さんは自民党内で若手に話をされることが多く長谷川岳さんを誘ってくださった。長谷川さんが加わることで、会の運営も非常にアクティブになりました。
その後も、とにかく国会の立法機能を何とかしようと、日本共産党衆院議員の笠井亮さん、新党きづな衆院議員の斎藤恭紀さん、国民の生活が第一からは党決定で派遣すると衆院議員の太田和美さんが加入してくれています。

国会にエネルギーを論ずる場がない

――阿部さんがこの取り組みに深くかかわっているのは、医師というバックグラウンドがあるからのように思うのですが。
阿部 私は小児科医師で、雇われでしたけど千葉徳洲会病院の院長も務めさせていただいたことがあります。現在も徳洲会グループの湘南鎌倉総合病院で週に1度、非常勤で子どもたちを診ています。また、医師の立場でJICA(国際協力機構)の仕事をしていたこともあります。支援を求められた地域に、医療と電気と水の専門家がチームを組んで調査に入るんです。どうしてこの3つか。それは地域を成り立たせていくために不可欠な要素だからです。
医療も地域を支える産業です。産業というのは儲けの意味だけではなくて、雇用があるし、健康を支え、生活も支えられる。地震や津波は家や家族を失ったりするけど、残された者の未来は残ります。でも同じ地域の産業としての原発は事故が起きれば取り返しはつきません。未来を奪ってしまう。いまの原発労働者も何十年も被曝し続けながら、ある限度になると切り捨てられていく。どう考えても非倫理的です。
――ゼロの会は、これまでどんな活動をしてきているのですか。
阿部 設立時から欠かさず毎週木曜日朝7時15分から定例会合を開いています。出席率は毎回8割くらい。そこで政府から出てくるエネルギー関係の政策の議論や有識者などからのヒアリングなどをおこなっています。驚くべき話ですが、国会にはこうした問題を論ずる場がまったくありません。社会保障と税の一体改革には特別委員会があります。でも〝エネルギー政策特別委員会〟はないのです。エネルギーって国家そのものですよ。日本のエネルギーの4割をまかなう原発であんな大事故が起こったのにで す。それに代わるものとして「国会エネルギー調査会(準備会)」を15回開いています。国会で論ずる場がないということは、残念ながら官僚のみなさんの閉 じたサイクルの中で方針が出されてしまうということです。もちろん、官僚には優れた部分もあります。細かい点では政治家が及ばない点もある。でも大方針を 決める政治が関与しないと、やはりおかしなことになってしまう。

現存50基中28基は即時廃炉にすべき

――6月28日には第1版目の「原発危険度ランキング」を公表しました。
阿部 初めての試みでした。ドイツのように、危険なものから順番に廃炉にしていくという道筋に向けた議論を深める〝たたき台〟として出しました。炉の専門家とか、専門的知見を持つ「原子力資料情報室」、原子力安全・保安院などからの情報提供に基づき、評価をおこないました。原子炉、地盤、人口密集地、過去の事故歴等々を含めて点数化し、ランキングした。
これには必ず批判は出ます。でもあえてやったのは、何よりもリアルでありたいと思うからです。原発に対して賛成も反対もあるでしょうけど、どちらの立場でも「危険なものは嫌だ」というのは同じでしょう。そのことに誰も答えていない。
――9月6日には第2版を公表しています。
阿部 活断層の上にある原発、東日本大震災や中越沖地震などで被災した原発は即時廃炉が望ましいと別表にしました。活断層の調査は今も進んでいますので、即廃炉はもっと増えてくると思います。
この危険度ランキングは下位だから安全という意味ではありません。またこの評価手法が完璧だとも考えていません。今後もよりよいものにするために努力していきます。
――9月6日現在、メンバーは衆参合わせて91人。
阿部 そうです。実はゼロの会へ入会するためにはある要求をのんでもらわなければなりません。原発ゼロに向けた政策づくりの議論に積極的に参加してもらうのは当然ですが、その意思を有権者たる国民に対する自らの政治公約とすること。すなわち、次期選挙で立候補するときは、現状ある原発の全廃炉と再処理ゼロを政治公約として表明してもらうということを要求しているのです。
そこで有権者に、この候補者は原発ゼロを政治公約にしていると、ひと目でわかってもらえるように、デザインを公募して1つのマークをつくりました。それが8月30日に発表した「原発ゼロマーク」です。

再稼働に自然界が無言の警告と抗議

――脚本家の倉本聰さんがコンセプトを提案したそうですね。
阿部 大飯原発3号機が再稼働となったときのことです。出力100%に達する寸前に、大量発生した水クラゲが海水注入口に押し寄せ、出力の上昇ができなかった。倉本さんはその事実を知り、これは自然界の無言の警告、抗議のように感じられたそうです。そこで原発ゼロマークには、クラゲをモチーフにしたらいいのではというご提案をいただきました。
この提案を受けて、福島に在住の小中学生からクラゲのイラストを公募し、53点の応募の中から福島県在住の小学4年生、後藤駿介君の作品が採用されました。ゼロの会のメンバーは、このマークを選挙時の宣伝物などに使用して戦うことになります。
――毎週金曜日、国会周辺でおこなわれている反原発デモをどう思いますか。
阿部 国会は空洞化していますが、国民の側は空洞化していないということだと思います。いまの国会には信義がない。法律もつくれない、審議もない、だから官僚が独走する。官僚に任せておいて原発をゼロにしていくための施策など出るはずがありません。官僚機構というのは、昨日までのことを明日につなぐのが最も得意な人たちで構成されている組織です。何かをやめるとか、軌道修正するとか、できるはずがありません。官僚に対して政治がなすべきことは、明確なメッセージを伝えること。民主党は政権交代を果たしましたが、結局何もできなかった。官僚に対してのメッセージの出し方が悪かったんだろうと思います。
――国民からすると、ゼロの会は、どうしようもない国政の中で唯一の希望なのだと思います。
阿部 そうなれるべく頑張りますよ。党利党略じゃない。国民の思いにどう応えるか。そういう議員がたくさんいないと官僚に勝てません。

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=ききて/鈴木正紀=