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Interview

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「北海道活性化のカギは国際化」
高村巖に3期目の豊富を聞く
掲載号:2010年12月号

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高向 巖 札幌商工会議所会頭

札幌商工会議所の高向巖会頭体制が3期目に入った。これまでも農商工連携の推進、観光産業の活性化、新幹線誘致運動などに手腕を発揮してきたが、次の3年間は何を重点にするのか。再任直後の高向会頭を直撃した。

青木、滝沢副会頭は国際的にも活躍

――昨日(11月1日)の臨時議員総会で高向会頭の続投が決まりました。また、副会頭には青木雅典ホーム企画センター 社長、岩田圭剛岩田地崎建設社長、滝沢靖六札幌オーバーシーズコンサルタント社長、星野恭亮旭イノベックス社長が再任、似鳥昭雄ニトリ社長と布施光章 DORAL(ドラール)会長が新任。専務には常務だった荒木啓文氏が昇格しました。そこでこの人事の意味をお聞きしたいと思います。
まず、退任説も出ていた75歳の青木、滝沢両副会頭をなぜ再任したのですか。

高向 これから3年間、札幌商工会議所は何をするのかということが、その答えになると思います。
今、われわれはデフレ、国内経済の空洞化、円高の影響下に置かれています。こういう状況の中で北海道の企業はどうすればいいのか。やはり道内企業も国際化をしなければなりません。そのことを今後の札商活動の中心に置くべきだと考えています。
その点、滝沢さんは貿易のご商売をしていらっしゃるし、青木さんは北海道日中友好協会の会長です。したがって、こういった方面の活躍を生かし、引き続き札商副会頭の仕事をしていただくようお願いしました。

似鳥副会頭に期待する中央人脈

――似鳥さんと布施さんを新たに起用した理由は?
高向 似鳥さんは、国際化の成功例です。中国、インドネシア、ベトナムに出先も持っていらっしゃる。商工会議所としても似鳥さんに知恵を貸してほしいということです。また、似鳥さんの事業そのものは東京中心ですが、東京の政界・官界とも非常にお付き合いがあるようなので、われわれが中央に要請活動する際に側面支援をしていただきたい。
布施さんは商工会議所の事務局と一体になって北海道新幹線の札幌延伸のため、署名活動、その他イベントを一生懸命やってくださった人です。札幌延伸までもう一息だと思っていますから、そちらのほうを仕切ってほしいと思っています。
――専務には、事務方から荒木さんを昇格させましたね。
高向 事務局の人事は、普通の会社の人事と同じだと思います。ですから、若返りを図るということで、向井慎一さんから、次の世代で仕事もでき、人望もある荒木さんになっていただきました。事務局内部の意見も聞きましたし、札商の会員の意見も聞き、そのようにいたしました。
i2――3期目にあたっての新しいキャッチコピーはどういうものですか。
高向 商工会議所の正式な書面には、「地域企業に活力を与える商工会議所」ということをうたっていますが、その中でも重点は「国際化」です。
――そこで、3期目の抱負を語っていただきたいのですが…
高向 今の北海道に対する私の時代認識は、開発援助の時代から自主自立の時代に変わる過渡期だと思っています。北海道開発庁がなくなり、北海道東北開発公庫がなくなり、北海道拓殖銀行がなくなりました。国の支援の態勢が変わったということもありますが、北海道は自主自立の道を歩み始めるべきです。その自立のための努力を今、北海道はしているところです。
自立するためにはどうすればいいかといえば、それは北海道が得意な分野、つまり食と観光をもっと推し進めることです。もう一息だと思うんですよ。ある意味ではテークオフの入り口、直前まで来ていると思います。
食の分野では、農商工連携、コメチェンなども一生懸命やっています。北海道も変わってきましたよね。具体的な成果もさることながら、道民の意識が変わるということが、一番大事なことなのです。
観光についても、商工会議所なりに勉強し、こうしたらいいのではないかという構想も少しずつ出しており、次の時代に向け準備を進めてきました。こちらも、もう一息だと思っています。
というのも、この分野でも国際化で大きく飛躍したいと考えているからです。その仕事を次の3年間でしたいと思っています。

TPPは慎重であるべき

――高向会頭の時代になってから、農商工連携というものに非常に力を入れています。ただ今、農業界で大きな問題となっているのが、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定=本誌42ページ参照)への対応です。中央の経済団体は総じてTPP締結に賛成のようですが、札商や道商連はこの問題にどのような姿勢で臨みますか。
高向 これまでもFTA(自由貿易協定)に対する札幌商工会議所や北海道商工会議所連合会のスタンスは、はっきりと示しています。それは「慎重であってほしい」というものです。今回のこの状況下でのTPPに対しても、スタンスは基本的に同じです。
日本は貿易立国ですから、貿易の自由化は大事です。しかし、同時に食糧安保も非常に重要です。一方が他方より重要だということはないと思います。
i3貿易自由化をするためには、農業政策をしっかり打ち立てなければいけません。そう強く思っています。今は非常に不安定な状況です。今後、日本の農業はどうするのか。そして食糧安全保障はどうするのか。それが確立しているのならば、いいんですよ、貿易自由化で。それをしないで、貿易自由化をしてしまい、日本の農業が崩壊してしまうようなことでは困ります。
ですから私は、先に農業政策の確立、食糧安全保障の確立、これができたところで、貿易自由化を本格的にやるべきだと思います。いまはあまりにも1つの方向だけにしか目が行ってません。日本の食糧安全保障をどうするのですか。このことを忘れてはいけない。
日本商工会議所は貿易自由化に賛成し、全国ベースでもそういう意思表明をしていますが、われわれ北海道としては少し違った意見表明になると思います。
第2次世界大戦後は、ブレトン・ウッズ体制、貿易の自由化、GATT(関税貿易一般協定)、為替の自由化、IMF(国際通貨基金)ということでしたね。そのときと今とを考え合わせてみると、1ドル=360円から80円になっていますね。
これだけ為替相場が違っていて、日本の農業に「負けるな」と言うのは、おかしいですよ。農業だってものすごく努力しています。しかし、為替相場が原因で内外格差ができて、日本の農業は苦しい状況になっています。農産物にかかる関税は確かに高い水準ですよ。だが、それだけをみて「過保護だ」というのは、おかしい。為替相場がそもそもおかしいのです。ということは、経済の仕組みでどこかにおかしいところがあるのでしょうね。
だから、農業だけに今の問題の解決を押しつけてはならない。

食糧安保上も農業は重要

最近、こんな意見を聞きました。
「日本の農業も国内の土地が狭いというのならば、外国に土地を買って、そこで農業をやって、そこから輸入してはどうか」
この話は基本的なところで、間違っています。国境があるんですよ。いざとなったときに、日本の外でやっている農場は日本政府や日本国民の思うようにはなりませんよ。輸出禁止になったらどうするのですか。あまりにも諸国民の正義に期待するというのは、国際政治の現実を知らない人だと思いますね。やはり最低限度のことは、自分で守れるようにしておかないと、国際社会では生きていけない。日本国内で東京都と北海道が分業体制をしても構わない。北海道は農業をやって、東京が機械工業をやっても心配はありませんよ。しかし、他国との関係ではそれがあるわけですよ。
――札幌、北海道の商工会議所は、北海道の産業特性にあった独自の判断をするというのは、誠に時宜にかなっていると思いますね。
i4高向 農村が崩壊すれば、各地の都市も崩壊するんですよ。田畑が荒れれば、観光も崩壊するのです。農業の問題は、われわれの問題でもあるのです。
――北海道新幹線の札幌延伸は絶対に必要だという認識ですよね。
高向 新幹線は自民党政権の時に半分だけつくると約束してくれたわけですが、民主党政権になって白紙撤回になり、そのままです。そしてわれわれの要請活動に対しては比較的クールな反応です。ただ、重要なことはわれわれの情熱を示すことです。ニーズを訴えることです。したがって、強力に働きかけていきます。
道民の要求ということで60万人の署名を近いうちに国土交通大臣へ届けて、お願いしようと思います。日本国の姿として、「新幹線は日本の背骨」という考え方を政府も持ってもらいたい。
辺境の土地を無視していると、国境が危なくなります。北海道に新幹線があれば、「ここまでオレの領土だ」と明々白々に見えるでしょう。

新幹線の経済波及効果は膨大

――北海道新幹線の経済効果はどのくらいですか。
高向 1兆円を投下したら、波及効果は2兆円になります。また、将来にわたって得られる利益は毎年10%です。それ以上の細かい数字は、残念ながらわれわれは素人なので持っていませんが、いままで新幹線をつくって赤字だという話は聞いたことがありません。おそらくいい数字になると思いますよ。
しかも、北海道新幹線は東北や北関東と北海道の結びつきを強くします。これによる経済効果も非常に大きいと思います。北海道観光に果たす役割も大きくなります。
――北海道経済活性化のために札商はどんな役割を果たしていきますか。
高向 観光分野では中国からの観光客が期待されます。来たお客さんの接遇はホテル、土産物店、バス会社などがするわけで、彼らは商工会議所の会員企業ですので、会議所として観光分野で何ができるかを真剣に研究しています。先日、ある中国人の方と話をしたところ、「中国人を迎え入れようとしているのに、日本側に中国語を話せる人がほとんどいないですね。北海道のこと、日本のことを説明するなら日本人が中国語で説明した方が自国のためにもいいですよ」と言われました。これは必須のことで、会議所の仕事だと思いました。
また、札商は2つの側面を持っています。企業の代表として意見を言うこと。もう1つは、企業のかかえる問題を解消するため、経営の助言や金融の助言をするなど応援をすることです。これらは日ごろの地道な活動として地道にやっていきます。残念ながら倒産や廃業も増えてくると思いますが、それを事業再生の方向に持っていくよう努力をしたい。つまり企業が転身を図れるようにしたいと思います。

=ききて/酒井雅広=