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Interview

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「北海道を観光特区に」?地元のことは地元に任せろ?
景観・健康・環境の3Kが北海道観光活性化のキーワード
掲載号:2010年4月号

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坂本眞一 北海道観光振興機構会長

北海道の目指すべき有力な道が、観光立国だ。北海道には、景観・健康・環境という自然に備わったポテンシャルがある。これを生かさない手はない。そこで、北海道観光のけん引車である道観光振興機構の坂本眞一会長に話を聞いた。

各界から観光立国アドバイザー

――北海道観光振興機構がスタートして2年になります。前身の北海道観光連盟とは何が違うのですか。
坂本 道観連は、予算も企画も計画も道庁が主体で、道の観光局が作成したプランに基づいて、プロモーションをしたり、全道の観光協会と連絡連携したりする実行部隊。道庁の下部組織のような存在でした。
また、道観連時代の観光は、キャリアー(運送業)、エージェント(旅行代理店)、旅館が中心となり、それにお土産屋さんなども加わるという非常に狭い範囲での観光を意味していました。
しかし、「それではいけない」「観光はもっと幅の広いもので、北海道の基幹産業として組織を見直さなければならない」という反省のもとに、観光振興機構 は生まれたのです。まず、1.オール北海道の力を結集して観光に当たる2.機動性、即効性、専門性を持った指導者がいる組織にする3.官主導ではなく、民 間主導で観光行政を担う―という3つの基本理念をつくりました。
観光戦略機能は、道に代わって観光振興機構が担います。また、諸外国は国を挙げて観光をやっています。スポーツ・文化・芸術・医療と観光を結ぶコーディネート機能を果たさなければなりません。
iv2  これまで一番劣っていたマーケティングをしっかりすることも重要です。こちらが意図的な質問項目をつくり、答えを導き出すようなことではダメです。旅行者の気持ちになって、北海道に来るお客さまの実態を把握しなければなりません。
このようなことを踏まえ、国内外に向け効果的なプロモーションもしていきます。
そして、地域が主体となってお客さまをお迎えする、あるいは情報を発信する。こうしたことを積極的にバックアップしていきます。
――この間、どんなことをやってきたのですか。
坂本 まず、みなさんに議論していただき、観光立国として北海道が先鞭をつけるにふさわしい5年間の 中期計画をつくりました。そして、それで本当にいいのか検証するために、観光立国アドバイザーボードといって、道内外の観光行政に興味を持っていらっしゃ るみなさんから意見をいただいています。例えば、産業観光に非常に詳しいJR東海初代社長の須田寛さん、由布院温泉「玉の湯」の桑野和泉社長、日本交通公 社の新倉武一会長、北海道大学観光学高等研究センター長の石森秀三さんらに集まってもらいました。
道内で観光行政に携わっているのは男性ばかりです。しかし、旅に出る人は女性が主体なのです。男性はそれについていくというケースが多い。ですから、女性の意見をもっと聞かなければなりません。道内の女性アドバイザーを各界から8人委嘱しました。
また、コーディネート機能について言えば、いま観光の世界で注目されているのは景観・健康・環境の3Kです。そのすべてを兼ね備えているのが北海道なん です。これを総合力でPRし、世界中の人たちにアピールするにはどうしたらいいのか。これまでにない人たちとのコラボレーションが必要です。

医療と環境のコラボに注目

いま声をかけているのが、お医者さん、医療関係なんですよ。「北海道に来てスギ花粉症を治しましょう」というのは、いまや有名な話ですが、ただ温泉に入 るだけではなく、医学的に解明された温泉の効能を生かしましょうとか、いろいろな医学の分野と観光を結びつける。健康な体をつくる、体質改善をする、メタ ボを解消するなど、さまざまなことが可能だと思います。そういうほかの業種と観光とのコラボレーションが、これからは重要です。
また、いまや情報はパンフレットやテレビなどではなく、インターネットで得ています。観光のPRでもIT産業とのコラボレーションをどうしてもやらなければなりません。
これまでは団体旅行が主流でしたが、現在は個人・グループが多くなっています。旅行の質も単なる個人・グループではなく、ほとんどの方が明確な目的を 持っていらっしゃいます。例えば高齢者であれば、たいていの観光地は旅行済みで、何かを学びたい、何か体験したいと考えています。そういった希望にマッチ した企画をしなければなりません。ですから、PR、プロモーション活動もバリエーションに富んだものを各地域と一緒になってそろえようとしています。
「観光は遊びだ」と思いがちですが、そうじゃない。観光は幅が広いんです。海外からお客さまをお招きしたら、北海道にいながら海外の方がおカネを落として くれます。「北海道に輸出産業はない」と言われますが、北海道にとって観光こそ最大の輸出産業なのです。そういう意識改革をまず道民の方々にやってもらわ なければならないと思います。これも大きなプロモーションです。
――北海道の観光の現状をご覧になって、どんな課題が残されていると思いますか。
坂本 北海道観光は伸び悩んでいます。しかし、北海道にもっと多くのお客さまに来ていただくため、大 きく分けて3つのことをしています。  1つは、海外戦略です。特に、中国や台湾、香港、韓国の人たちはものすごく北海道に対して魅力を感じてくれています。海外にプロモーション活動に行く と、ほかの県は自分の県がどこにあるのかを説明するだけで大変ですが、私たちは「北海道から来ました」と言うだけでわかってもらえます。北海道にはポテン シャルがあるのです。  これからは特に、中国の富裕層に的を絞っていきます。映画も「非誠勿擾」がヒットしてますからね。中国から来る飛行機の乗り入れ制限を新千歳空港はして いますが、国際線ターミナルが完成するのに合わせて、発着枠を広げてもらいます。いままで中国の飛行機は土日しか乗り入れできなかったのですが、火、水、 金曜日の午後、土、日となります。できれば、ロシアの飛行機も含め乗り入れ制限は撤廃してもらいたいですね。
もう1つはビザの問題です。中国からの旅行者は、収入がいくら以上で資産はこのくらいなきゃダメだとなっています。また、北京、上海などの市民権を持っ ていなければなりません。こういうことは、向こうの人たちにとっては侮辱ですよ。このような法的なバリアーを取り除きながら、中国の人たちにたくさん来て もらおうと考えています。

ゆとりツーリズムを逆提案

2番目は、国内のお客さまに北海道へ来てもらうことです。この経済情勢の中でなかなか難しいことですが、人生の最後を楽しく過ごそうと考えている団塊の 世代の人たちに、もっと細かいプランを提案していきます。東京や大阪のエージェント任せにしない。広い北海道を2泊や3泊で回るような無茶な旅行はもうや めよう。こういうことで、自分たちの地域に2泊も3泊もしてくれるようなメニューを自分たちでつくってもらっています。ゆとりツーリズムを提案し、逆に東 京などのエージェントに売り込もうとしています。
北海道の観光客の約87%は道民です。道民のみなさんに、北海道の良さや課題を認識していただけなければ、道外のお客さまに北海道の良さをわかってはもらえません。したがって、3つ目の課題は、道民の北海道旅行の促進です。
――中国の富裕層対策はどうなっていますか。
坂本 本当の富裕層は1億人、日本人と同レベルの生活をしている人も3億人います。向こうの人から も、「日本に行きたい人たちは、ある一定以上のレベルの人だから、そこに向けてPRしなさい」と言われています。そこで、中国の映画会社、テレビ会社に来 てもらって、彼らの目から見た北海道を撮ってもらって、北海道をPRしてもらう。おカネはわれわれが出します。
韓国の人たちはゴルフ、スキーなど、スポーツに関心があります。中国の人たちは歴史、文化、そして買い物です。アジアの人たちのリピーターが北海道でいいと評価しているのは、景色、温泉、食べ物もそうですが、1番は人だそうです。
中国の富裕層は、自分の両親、兄弟、子供たちに北海道を旅行させたいと思っています。でも、親兄弟はビザの制限で入国しづらいのが現状です。これを何とかしなければなりません。
それと、本当の富裕層が北海道に来たいという最大の理由は、健康管理です。「いいお医者さんにかかりたい」「人間ドックに入りたい」「それならいくら払ってもいい」と思っています。

新幹線は文化・芸術も運ぶ

――北海道の観光を一気に盛り上げる起死回生策はありませんか。
坂本 必要なのは意識改革ですね。北海道人がそれぞれの立場で総合力を発揮すれば、北海道は観光で物が食えます。
極端に言えば、雪を見てロマンを感じないのは北海道人だけですよ。東南アジアの人などは、雪を見たら喜んで飛び込みますからね。
道内の観光は新しい方向を目指さなければなりません。単なる観光で終わってはダメなのです。これから大事なのは地域とのふれあいです。それが長期滞在、そして夏は北海道、冬は東京となり、最終的には転居、移住につながってほしい。
北海道の観光は夏と冬の稼働率が2・5倍くらい違います。この差をどうやって埋めるべきか。これが最大の課題です。私は新幹線がカギだと思っています。 新幹線は人や物だけではなく、文化や芸術も運んでくるのです。海外の一流の芸術家は東京まで来ている。しかし、冬の北海道にはなかなか来ない。飛行機がス トップしたら、公演は中止になり、大赤字になるからです。天候に左右されにくい安全な交通機関である新幹線が必要なのです。
テーマ別の観光整備もしなければなりません。馬でもいい、花でもいい、港町、文化財でもいい。シーニックバイウエイ、道路そのものだっていいんですよ。テーマをはっきりさせず、ただ「来てください」と言っても理解されません。
また、北海道ブランドをもっと正確に、きっちりランク付けをすべきです。
こういった課題の根本的かつ最終的な解決策は、道州制特区による北海道観光の規制緩和です。北海道観光に関する権限は全部、北海道自身に任せてほしい。
そうすると、1.新しい観光の施設をつくる際は課税の特例を設ける2.海外からのいい投資は受け入れる3.飛行機の発着料の軽減4.地方空港の CIQ(税関、出入国管理、検疫5.知識人や専門家ら外国人労働者の受け入れ6.免税店の設置7.カジノの設置―などが、北海道自身の判断と責任で行える ようになります。

=ききて/酒井雅広=