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Interview

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「北海道の感動百貨店を目指す」
今年度が新生丸井の正念場
掲載号:2010年5月号

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関根純 札幌丸井今井社長

新生・札幌丸井今井が初年度を順調に滑り終えた。しかし、同社の関根純社長は「今年度が正念場」と気を引き締める。10月には伊勢丹のシステム導入が控えている。三越伊勢丹HD入りの成果が本格的に現れるのはそこからだ。

10年3月期は営業黒字の見通し

――昨年8月1日に新生「札幌丸井今井」がスタートしました。3月期までは8カ月間しかありませんでしたが、当初の目標は売上高280億円と黒字化でした。この数字はクリアできたのですか。
関根 月別の売り上げでは依然として前年同月に届かないという状態が続いています。しかし、事業構造改革により、損益分岐点は大幅に下がりました。まだ確定はしておりませんが、おおむね想定通りの営業利益の黒字を確保できる見通しです。
三越伊勢丹ホールディングスの100%子会社ですから、以前のように経営破たんをして、ご迷惑をおかけするようなことはありません。しかし、こういう時 代ですから、長期的に赤字が続くようなことがあれば、ほかの都市の例を見ても、この札幌から撤退ということもあり得るわけです。
そうした中、初年度に営業黒字が出る見通しだということは、次につながる第一歩になったと思っています。
でも、これを継続していかなければなりません。これまでできなかった伊勢丹のシステムの導入を10月をメドに行います。これには初期投資とランニングコストが相当かかります。ここをクリアして営業利益を出していきたいと思います。
4月から始まった今年度が札幌丸井今井の正念場です。
――新しい丸井今井の魅力はどういった点ですか。
iv2 関根 昨年8月1日に新会社がスタートした時点でも逆に、「われわれは何も変わりません。安心してください」と申し上げました。私どもは北海道の百貨店です。経営母体が変わったところで、「道産子百貨店である」という原点を忘れることはありません。
経営破たんしたということで、企業価値が大きく毀損してしまいました。お客さまの信頼であるとか、お取引先さまの私たちに対する信用、並びに従業員の自 信も大きく損なわれてしまいました。ゼロからのスタートとよく言いますが、われわれは大きなマイナスからのスタートでした。したがって、「できるだけ早 く、ゼロの地点まで戻すという作業をまずしなければならない」と話しました。
北海道の企業としての原点をまず取り戻すということです。
また、昨年の秋からもう一度お客さまのニーズを見直すことに取り組んでいます。アンケート調査をしたり、モニター調査を今年2月に実施しました。あらた めて自分たちを裸にして、何が問題であり、何が重要なのか、お客さまが望んでいることは何なのか、われわれは何をなすべきか―を見つめ直す作業を行ってい ます。そこから今後のあるべき姿を提示していきたいと考えています。
まだまだ経済状況は厳しく、お客さまの信頼を100%取り戻したという状態でもありません。
しかし、従業員に明るさが戻り、先行きに光が見えてきたのかなと思います。非常に遅々とはしていますが、回復の兆しにあることは実感できています。
10月に行う予定のシステム導入で、本格的に伊勢丹の力を引き出し、丸井今井をもう一度立て直していきます。
ただ、大規模改装など、積極的に投資をしても、早急なリターンは期待できません。いまは逆に自分たちを見つめ直すいい時期だと思っています。

グループで売り上げ1番の商品も

――売り場やテナントの変更はありましたか。
関根 春先は化粧品のブランドをかなり入れ替えました。婦人服売り場でも部分的な手直しを行ってきました。4月以降、まず早急にやらなければいけないことは、レストラン街の再構築です。
――一条館と大通館というA館B館方式をとっていますが…
関根 大通館は比較的新しいのですが、一条館は大正時代に建てられたものです。経済的環境が整えば、いずれは建て替える必要があるのかなと思います。しかし、今日の明日のという問題ではないと思いますよ。
ただし、設備投資としては先に大通館に集中させることになるでしょう。一条館は地下1階から5階まで手直しをしておりますので、いまのところ大きく変える予定はありません。
iv3?  食品は特に頑張っています。リビング関係もお客さまの評価が高く堅調です。私どもにとっていま一番大きな課題は、婦人服関係でお客さまをどうやって取り戻すかということです。
また、大事なのは百貨店としての接客をどこまできちんとできるかです。従業員のモチベーションを高め、元気を出して、笑顔でお客さまに接していかなければなりません。おカネを使わなくてもできることは、まだまだたくさんあるはずです。
――伊勢丹のノウハウを今後、どのように取り入れていく予定ですか。
関根 2005年11月にわれわれが来て、伊勢丹の営業の仕組みを導入しました。仕事をシステマチックにするというフレームはで、きています。しかし、計画をつくるのに精いっぱいで中身はまだまだともなっていません。そこに磨きをかけるためにも伊勢丹の力が必要です。
新会社スタート以前は13%の出資ですから、どうしても伊勢丹から提供されるものも限定的でした。
だが、昨年8月からHDの100%子会社になりましたので、ほとんど伊勢丹と同じ仕組みで動くようになりました。
具体的には、伊勢丹が開発した「オンリー・アイ」商品の発注会に、この3月からフル参加させてもらい、丸井今井も「オンリー・アイ」キャンペーンを行いました。
この結果、本・支店を通じて丸井今井が売り上げナンバーワンになった商品もありました。一条館6階で現在も販売中の「ヘアタオル」がそれです。このほか にも、「アクアスキュータム」の「マイクロサテンコート」や「円果天」の月餅などは目標をクリアしました。現場のバイヤーにとっても、ものすごく自信がつ いた出来事でした。
10月以降は、在庫管理や売り上げ情報が一元化されますので、商品の受注発注もやりやすくなると思います。伊勢丹で開発した商品を導入しやすくなります。
伊勢丹では、新宿本店は世界ナンバーワンのファッションストア、地方店は地域密着の一番店を目指しています。役割が違いますし、商品のアイテムも異なっています。
丸井今井に対して、伊勢丹の支店グループ統括部も「強力に後押しをする」体制となりますので、商品供給に限らず、あらゆる面で連携が深まると思います。

「きたキッチン」の成功体験を生かす

――逆に北海道から全国に発信するものがあってもいいですね。
iv4 関根 地下街のオーロラタウンの「きたキッチン」は、お客さまから大変よい評価をいただいています。 また、「きたキッチン」の成功が認められ、東京・有楽町の「北海道どさんこプラザ」の運営も委託されることになっています。当社の100%子会社の「北海 道百科」が「どさんこプラザ」の運営や道産品の商品開発を行っており、3月31日に伊勢丹の相模原店にオープンした「どさんこプラザ」にも寄与しました。
「きたキッチン」は食のコンセプトショップに昇華しました。ショップ開設以来、いろいろな生産者の方からお話しをいただいており、道外の百貨店も含めたバイヤーとのチャンネルもできました。
「きたキッチン」の成功は、食品の売り方によい影響を与えたし、人を育てることができました。1つの成功プロセスが、ほかの商品アイテムにも生きています。
北海道の商品はブランド力も人気もあるので、北海道発信をもっと進めていきたいと考えています。
丸井今井が目指す百貨店像のキーワードは、「北海道の感動百貨店」です。お客さまがここに来るとワクワクするような店にしていきたいと思っています。
長い間、「丸井さん」と呼ばれ、親しまれかわいがっていただきました。それがこの店の最大の長所であるわけですから、これをもっと生かし、突き詰めてい きます。逆に弱いところは「ワクワク感がない」「新しいものを発見できない」というのが、お客さまの声ですから、これを真摯に受け止めていかなければなり ません。
強いところを伸ばし、悪いところを改善していけば、「北海道の感動百貨店」になれると思います。

三越と一緒に大通を活性化

――大丸を含めた札幌駅の商業施設をどう思いますか。
関根 私は全国でいろんな店にかかわってきましたが、京都駅に伊勢丹を出したのは十数年前になります。
大丸さんもすごいと思いますが、札幌駅そのものの集客性が京都以上にあって、北海道で1番の商業施設になっています。映画館もあれば、家電量販店もあ り、本屋もあり、あそこで全部そろってしまうという面があります。まさにワンストップショッピングが可能なエリアになっています。私も京都伊勢丹にいたと きは同じことを考えました。
この札幌駅の商業エリアに対して、札幌三越と一緒にどう戦うのかということが大切です。
――丸井今井と三越は同じHDの傘下ですからね。
関根 札幌三越も4月1日から独立した現地法人になり、札幌丸井今井とは兄弟会社になりました。これはより、グループの総力を挙げて戦っていける体制となるので、われわれにとってチャンスです。
10月以降は、グループ共通のハウスカードである「エムアイカード」をお持ちの方は、どちらの店舗でお買い物をされても、同じ条件で同じ優待が受けられます。また、4月から両社で「エムアイ友の会」の会員を募集するなど、両店での共同施策がスタートしています。
三越とわたしどもが共同戦線を張ることで、地域を巻き込み、南一条・大通地区を活性化させていきたいと考えていますので、ぜひ大通に足を運んでいただきたいと思います。

=ききて/酒井雅広=