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Interview

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「内需拡大・景気浮揚は賃上げと正規雇用で!」掲載号:2009年1月

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髙柳薫 連合北海道会長

それでなくとも道内経済は悪化しているのに、米国発の金融危機が追い打ちをかける。新卒採用の内定取り消しや非正規労働者の雇い止め・解雇、さらには労働条件の切り下げなどが相次ぐ雇用情勢。 髙柳薫連合北海道会長はこの難局にどう立ち向かうのか。

着実に進む非正規雇用者の組織化

--------2008年の連合運動は、非常に社会性を持った取り組みが多かったという印象があります。
髙柳ありがとうございます。私が07年に連合北海道会長に就任したとき「すべての働くものに信頼され、頼りがいのある労働組合として、社会的影響力を高める連合運動の構築を」ということを申し上げました。
まさに08年はその実践をしました。具体的には、連合北海道非正規労働センターを中心に社会問題化している非正規労働者の課題、ストップ・ザ・格差社会全 道キャラバン行動、07年来、灯油・物価高騰などの対策を求める道民運動、地域医療を守り後期高齢者医療制度の廃止を求める運動など、連合にとどまらず、 各自治体、生協や消費者団体、経済団体などへの協力要請等々、社会的影響を意識して種々取り組んできました。
--------労働環境はますますきびしさを増しています。
髙柳国などが発表する労働に関する数値を見ると、いずれも大変きびしい。総務省がまとめた07年の 就業構造基本調査によると、全雇用労働者の35.5%が非正規労働者と発表しました。すなわち働く人の3人に1人はパートか、アルバイトか、派遣か、契約 か、そのうちのどれかということ。もちろん過去最高の数字です。非正規雇用の比率は北海道の場合もっと高く38.2%です。
--------どんどんその比率は上がってきていると。
髙柳ここ20年くらい前から徐々に上がってきています。とくにこの10年間は、政治も経済界も市場原理主義を肯定し、すっかり雇用形態がゆがんでしまった。
--------将来は非正規雇用が70%から80%になると言う経営者もいるようです。確かに今のような景気の状況では非正規雇用が増える傾向に歯止めがかかる感じはまったくありません。
髙柳厚生労働省の発表ですが、派遣労働者の51・6%が「他の就業形態に変わりたい」と答えています。彼らの希望の形態は「正社員」が91.9%。すなわち派遣社員のほぼ半数は正社員になりたいと思っている。
--------非正規が増えると、連合北海道の組織率は変化するんですか。
髙柳道内の全雇用者約204万人のうち、労働組合の加入者数は約36万5000人。組織率でいうと18・1%です。これは非正規も含んでいる数字。
連合北海道加盟組合員数だけをみると26万5000人なので、組織率は13.0%になる。非正規の状況ですが、先の通り204万人のうち38.2%が非正規とすると、その数は約78万人。
連合では07年10月から08年9月までの1年で1万631人の非正規雇用者を新たに組織化した。まだまだごく一部です。
--------07年10月、全国の地方組織に先駆けて、非正規雇用者を総合的に支援する「非正規労働センター」を設置しました。その効果が出ているのでは。
髙柳非正規への取り組みは、連合内にもともとある「組織拡大局」と新設の「非正規労働センター」がセット。やはりそれぞれの産別が頑張ってくれたということだと思います。 同じ職場に正規と非正規がいる。そこにはやはり格差がある。それをどう解消するかということで、積極的に働きかけてくれたのだと思います。

雇用も賃上げも二兎を追う闘い追求

--------連合はこの間「賃金の減少で、消費が刺激されないから景気はよくならない。だから給料を上げて、内需拡大の政策に転換すべきだ」と訴えてきた。経営者側の考え方は変わってきましたか。
髙柳変わってないように感じます。08年の最低賃金をいくらにするかという経営者側の議論を見ても、自分の会社の経営にかかわる問題だから簡単に議論に乗ってこない。 08春闘でも政府から賃上げ、内需拡大を求められたものの黙殺です。次の春闘も現状の景気動向から見ると、きわめてきびしいものになりそう。また「雇用」か「賃上げ」かみたいな二者択一を迫ってくるのではないか。
--------そうした言い分をどう喝破しますか。
髙柳外需依存がいまの日本の経済構造です。マクロ経済を内需型経済に転換し、総合生活改善の取り組みをする。内需経済型に方向転換をいまきちんとやらないといけない。 外需もダメ、設備投資もダメ。その2つがダメで、残るは個人消費を刺激するしかない。
企業側も貯め込んでいるところは当然出してもらうけれども、そうじゃないところもがんばって、国内経済を少し考えてもらわないと。民間給与の総額は9年連続マイナス。 「いざなぎ景気越え」といわれたときですら減少していた。
いいときも出さない、悪いときも出さない、それでは理屈が通らない。賃金を含めた労働諸条件を改善し、格差の是正に努めることも重要です。 とくに08年度見通しの物価上昇に見合うベースアップなど、賃金改善の具体的目標を掲げる。われわれは「雇用」も「賃上げ」も二兎を追う闘いを追求していきます。
--------しかし、世の中は100年に一度ともいわれる金融危機です。
髙柳内閣府が発表した08年7~9月期の国内総生産は年率0.4%減。7年ぶりの2四半期連続マイナスの成長で、経済財政政策担当大臣も「景気は後退局面」と認めている。 要因は金融危機による世界経済の減速で、日本経済を支えてきた外需が低迷。企業の設備投資も大幅に落ち込み、個人消費も生活必需品はゼロ成長だと。
この景気の動向は雇用にも深刻な影響をもたらしつつあります。輸出産業を中心に派遣労働者、有期契約労働者、パート労働者などの非正規労働者が、雇い止め、解雇ほか、採用内定取り消しなどが多発している状況です。 消費者物価は08年9月に入り、やや歯止めがかかったといわれているものの、前年同月比で2.3%の上昇、7月、8月の上昇は2.4%で、依然として高い伸びを示しています。 なお北海道は7月3.9%、8月4.0%、9月3.4%と、全国平均と比較しても際立って高く、14カ月連続の上昇となっています。
確かに、この時期になって灯油の値段が下がり、少しほっとしていますが、物価上昇がおさまったわけではありません。その上昇分も、給与で手当てされていない人が大半でしょう。

道内大学生も内定取り消しの被害

--------求人の状況も悪化しているようですね。
髙柳北海道労働局によると、08年9月の道内の有効求人倍率は0.47倍。同10月は0.45倍と0.02ポイント減。 前年同月比では0.10ポイント減と大幅に落ち込んでいます。
有効求人倍率が前年同月を下回ったのはこれで15カ月連続。下げ幅は同4月から連続で拡大し、有効求人数5万368人も24カ月連続で下回っています。
--------かなり深刻ですね。
髙柳高校生も非常にきびしい状況です。08年9月の時点で1万122人の高校生が就職を希望していますが、内定はまだ2138人。内定率は全道で21.1%に過ぎません。
--------景気悪化のせいで非正規の解雇や雇い止め問題などが顕著になってきていると私も聞いています。
髙柳とくに輸出産業を中心にそういう傾向が出てきているようです。就職の内定取り消しの問題も出てきている。
--------道内に輸出産業は少ないようにも思えますが。
髙柳そうは言っても、景気が冷え込んでいると全体に経済が沈滞してくる。雇用調整を行うというのが経営者側の言い分です。
--------先般、08年10月から09年3月までの間に、今の仕事を失う非正規労働者は道内で308人というような報道も出ていましたね。
髙柳麻生太郎首相も日本経団連の御手洗冨士夫会長ら経済界首脳に雇用安定化への協力を求めていますが、どれほどの影響力があるか甚だ疑問です。
--------内定取り消しは。
髙柳道内大学の学生が道外企業から内定を取り消されていたという事実が厚生労働省の全国調査で明らかになりましたが、今のところ道内企業が内定を取り消したという話は聞いていない。ただ景気回復の兆しが見えない中、今後さらに内定取り消しが増える可能性は否定できない。

国の言いなりで地方を切り捨てる道

--------こうした状況下で連合として取り組まなければならないところは。
髙柳1つには経営側にきちんといまの経済のあり方について方向転換を迫るということ。これは一企業一産業でできる話ではない。 トータルでやる。政治・行政も含めて日本のあるべき姿を誘導する方向で議論しないといけない。産業構造の転換とか、環境問題だとか、新エネルギーの研究・開発だとか、 これからの北海道に必要なセクションはいろいろあるのだから、人も金もそちらにシフトするように、企業がダメであれば行政が誘導する。国はそういうところにこそ財政出動をするべきだと思います。
--------確かにお金の使い方が間違っています。
髙柳たとえば大学もそうでしょう。国は基礎研究のところに金を出さなくなってきています。しかし、基礎がしっかりしていないところにいいものは生まれない。 本来、そういうところにこそ行政はきちんと金を出してバックアップする。長期スパンの投資をしないと、いい人材もいい研究も生まれてこない。そうなると今度は企業が大変になるんだと思います。
--------これは政治を変えるか、それとも国民一人ひとりが変わるか、そうでもしないとこの難局は乗り切れないのかもしれませんね。
髙柳今の状況だと、まず政治を変えて、財政出動のあり方を変えないと、今のままの税金の使われ方では、まったく展望は見いだせません。
--------道政も停滞している。
髙柳日本における北海道の役割、位置づけ、そのことについてきちんと踏まえた上でどうするのかというところが、今の道のかじ取りでは見えません。
たとえば、自給率からいっても北海道は食料基地だと。食料の供給基地であるためには何が必要なのか。自然環境も必要だし、クリーンな新エネルギーも必要かもしれない。いろんな可能性があるにもかかわらず、戦略的な政策は何ひとつ感じられない。
--------そもそも道は、北海道は農業だといいながら、地方で農業ができない環境をどんどんつくっている。
髙柳国の言いなりで地方切り捨てをどんどん進め、医療も学校も公共交通機関もみんな無くなって、どうやって田舎で暮らせというのでしょう。 そういう地域に農家の担い手を住まわせるということにはならない。まったく策がないといわざるを得ません。
開発局問題も支庁再編問題も同じです。道の役割、支庁の役割、各自治体の役割をきちんと議論した上で、どの組織が必要でどの組織は必要ないのか。はじめに組織論があるべきではない。 とくに開発局は、地方分権の中で財源も含め地方でやれることは地方でやるということになれば、廃止という議論が出て当然でしょう。しかし、いまそういう議論にはなっていない。

=ききて/鈴木正紀=