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Interview

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「内需主導の経済を実現し、生活と景気をよくする」掲載号:2012年3月

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志位和夫 日本共産党委員長

 地方議会選挙の結果などを見ると、共産党が元気になっている。そこで、共産党はどんな政策を打ち出しているのか、志位和夫委員長にTPPや消費税問題を中心に聞いた。また、道内の問題を畠山和也氏に語ってもらった。

TPPは日本にとって亡国の政策だ

――共産党はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に反対していますが、なぜですか。
志位 第1は、いま東日本大震災の被災地では復興のための懸命な努力が続けられているのに、TPPは最大の障害になっている。被災地の最大の産業は、第1次産業ですから、それに対する大打撃になります。「TPPの話を聞いただけで復興への意欲が損なわれてしまう」と現地のみなさんがおっしゃっています。
第2は、日本の食と農の荒廃をまねく。TPPは例外のない関税の撤廃をうたっています。その一方で、政府は食料自給率を50%に上げることを目標としています。この2つはどうやったら両立するんですか。何度も政府をただしていますが、答えは返ってきません。
また、国内農業の大規模化を言っていますが、平均耕地面積22ヘクタールの北海道でも、平均200ヘクタールのアメリカには到底かないません。オーストラリアは1500ヘクタールですよ。北海道でも太刀打ちできないものが、日本のほかの地域でどんなに大規模化したところで、国内農業はほとんどつぶされてしまいます。とくにコメは90%も壊されてしまう。40%にまで下がった日本の食料自給率を13%にまで押し下げてしまいます。これはまったく許容できません。
道の試算では、北海道経済もTPPが実行されると第1次産業と関連産業を含めると2・1兆円の損失、17万人の雇用減になります。
第3は、食と農に限らず、日本の経済と暮らしの全分野にわたって、アメリカ型ルールを押しつけられるという問題です。TPPでは非関税障壁の撤廃が原則です。端的に言うと、アメリカの多国籍企業が日本で商売する場合に、邪魔な規制は全部取り払えというものです。
例えば、食品安全の基準を規制緩和しろ、と。混合診療を全面解禁してアメリカの医療大企業が自由にもうけられるようにする。さらに政府調達の分野でも、アメリカの企業が政府や自治体の公共事業に参入できるようにする。
i2こういう仕掛けもあります。いわゆる「毒素条項」といって、アメリカの企業が日本で商売をする場合に邪魔なルールがあれば、日本政府を相手に訴えることができるのです。
こうなると、日本の経済主権そのものが全部アメリカに取られてしまうということになります。甚大な影響が全分野に及びます。
第4は、政府はTPPの唯一の正当づけの理由のように、世界とアジアの成長を取り込むと言っていますが、TPP9カ国の中に日本が入ったとしても、GDPでいくと日米で約9割を占めることになります。事実上、日米FTA( 自由貿易協定)と変わらないわけです。もっとはっきり言えば、関税ゼロの日米FTAということになる。
では、TPPに参加したといっても、対米輸出が伸びるでしょうか。
対米輸出の障害となっているのは関税ではありません。アメリカが円高、ドル安政策をとっているからですよ。円高ドル安をテコに対日輸出攻勢をかけようというのが、オバマ政権の政策なのです。
日本は世界の経済成長を取り込むどころか、アメリカの対日輸出戦略にのみ込まれて、雇用を失い経済も衰退してしまいます。
TPP参加は日本の食料主権、経済主権をアメリカに売り渡す亡国の政策です。
――輸出型企業にTPPはプラスになりますか。
志位 プラスの要素は見当たらないですね。対米輸出の障害はアメリカの為替政策です。TPPによって国内市場がアメリカ企業に開放されたら、内需がうんと冷え込む、家計が冷え込む、そしてますます日本では物が売れなくなります。アメリカへの輸出が増える見込みもありません。
――では、誰が得をするのですか。
志位 一番得をするのはアメリカの多国籍企業ですね。日本の財界は彼らといろんな面で折り合いをつけようとしてTPP推進に動いていると思います。アメリカに従属する形でいろいろなもうけ仕事を世界中に広げようというのが、日本の財界の戦略ですからね。
――日本政府にはどんなメリットがありますか。
志位 アメリカの覚えがめでたくなるという一心でやっているとしか思えませんね。野田内閣で言えば、昨年9月の日米首脳会談でオバマ大統領から「結果を出せ」と尻をたたかれ、それで暴走を始めたのがTPPと普天間の米軍基地の「辺野古移設」です。アメリカに忠誠を誓うことで自分の政権の延命を図ろうとしているのです。そのために日本の農業、経済、北海道の産業をアメリカに売り渡していいのでしょうか。
――TPPの一番の問題点は、日本の国の形、制度がアメリカと一緒になることだと思うのですが…
志位 日米構造協議でアメリカ型の経済を押しつけてくる、そのあとはUSTR(アメリカ通商代表部)が毎年のように対日経済要求書を突きつけてきました。このような流れのもとで郵政民営化や派遣労働の自由化を進めるなど、アメリカ型の新自由主義で日本を染め上げてきました。TPPはいわばそれらの総仕上げです。日本が日本でなくなる、経済的にはアメリカの1つの州になってしまう。それくらいの大きな問題だと思っています。

税と社会保障の一体改悪に反対

――税と社会保障の一体改革について、見解をお聞かせください。
志位 この問題はよく考えてみる必要があります。社会保障を抜本的に改革するというときには、負担をどうするのか、真剣に議論しなければならないと思います。ただ、いま言われている消費税増税論には、そもそも議論に堪えない3つの大問題があります。
第1は、ムダ遣いを続けながら大増税をしようとしていることです。その象徴が八ツ場ダム。あれは民主党がマニフェストでやめると言った筆頭ですけれど、工事再開を決めました。1メートル1億円といわれる東京外環道は、総事業費が約1兆2800億円にのぼる見込みで40年以上も凍結していたのに、工事にゴーサインを出しました。
今度の政府予算をみると、あれだけの原発事故を起こしながら原発推進予算を4200億円もつけています。米軍への「思いやり」予算は、相変わらず1300億円を超え、米軍再編予算を含めれば2600億円を超える予算を計上しています。政党助成金の320億円は「身を切る」と言いながら、手もつけようとしない。また、大企業と富裕層向けの1・7兆円の新たな減税のばらまきをやろうとしています。
第2に、社会保障を削りながら増税だ、というのもおかしい。消費税を上げるときに政府はこれまで、「とにかく社会保障のためにお願いします」と言ってきました。ところが、今回の税と社会保障の一体改革の中身を見たら、社会保障がよくなる中身なんてなにもないじゃないですか。
まず出てきているのは、年金支給額の削減です。何年かかけて3・7%削る。来年度だけでも1・2%削る。これはお年寄りにはこたえますよ。その先には医療費の窓口負担増が待ち構えている。いまの3割に定額負担を乗っけようとしている。しかも、年金の支給開始年齢を68から70歳に繰り延べするという。
改悪のメニューばかり並べています。これでは税と社会保障の一体改悪ですよ。社会保障をこれだけよくします、というメニューがあるのならまだ少しは考える余地はあるという人がいるかもしれませんが、これでは考える余地のない議論にならざるを得ない。
3つ目は、日本経済の問題です。1997年に9兆円負担増というのがあって、消費税を2%引き上げ5%にし、医療費の負担を増やし、特別減税を打ち切りました。あのときに、橋本龍太郎総理とずいぶん論戦をしたことを思い出すのですが、当時はそれでも景気が少しよくなりかけていたんですよ。ところが、9兆円負担増で所得増を奪ったので、家計の底が抜けて大不況になった。
今度は例えば5%消費税を上げれば、13兆円の増税です。さらに年金の支給減で2兆円。その他をあわせると、約16兆円の負担増です。9兆円でペッチャンコになった。いまはあのときに比べずっと景気が悪いんですよ。極端に需要が冷え込んでいる、家計も苦しい、失業者も多い、非正規雇用も広がる、しかも大震災で苦しんでいる、こういった中で16兆円もの負担増をかぶせたらどうなりますか。経済も景気も暮らしも全部、底が抜けてしまいますよ。
そうなれば税収も減って、財政危機はもっとひどくなる。こういう悪循環にはまって、日本経済を突き落とすことになります。97年も消費税を増税したけれども、結局、税収が落っこちてしまったので借金を増やした。したがって、今回のやり方は大義がない。即刻中止すべきだと思います。
i4――一体改革という名の下、増税をのむかのまないか二者択一を迫っている。
志位 私たちはちゃんと別の選択肢を提起しています。社会保障の財源を考える際に、まずは、大型公共事業、軍事費、政党助成金、原発推進費などのムダ遣いを聖域を設けず一掃する。次に、増税するならまず富裕層と大企業からと言いたい。例えば、富裕層向けの証券優遇税制はいまだに10%です。本則に戻したら20%ですね。欧米並みにしたら30%ですよ。だから富裕層、つまり大資産家にまず負担を求めるべきです。260兆円の内部留保を持っている大企業にも応分の負担を求めるべきです。
こうしたことをおこなった上で、ヨーロッパ並みの社会保障の拡充に本格的に踏み出すならば、国民全体で、力に応じて支えるということが必要になってくると思います。その際の税金のあり方は、消費税という逆進性の強い、所得の少ない人に一番重くのしかかる不公平税制ではなくて、応能負担、累進課税の強化によってまかなっていくべきです。

内需拡大で経済を立ち直らせる

志位 それと同時並行で、賃金を上げることが必要です。中小企業に対する手当てをきちんとやりながら、時給1000円以上に最低賃金を引き上げる。あるいは労働者派遣法を改正して正社員が当たり前の社会にしていく。働く人の賃金を上げ、人間らしい労働を保証していくことによって、内需を温めていく。そのことによって日本経済が健全な成長の軌道に乗るようにし、税収増を図っていくべきです。
世界的規模での過剰生産と過少消費のギャップが、経済不況をまねいています。所得を上げ、家計を応援し、内需を拡大すること以外では、世界各国とも経済は立ち直りません。
――失礼ですが、共産党だけではまだそういった政策を実行させるには至らないと思いますが…
志位 TPPのほうは、私どもは「一点共闘」と言ってきたのですが、TPP参加反対という一点で協力しようということでずいぶんやってきまして、農協、漁協、森林組合といった第1次産業の方々をはじめ、医師会、自治体などの関係者など、本当に幅広い方々と一緒に活動しています。  とくに北海道に行きますと、知事さんも経済界もそうですね。文字通り党派の垣根を越えて北海道の場合は、オール北海道でTPP反対の動きになっています。これは大変大事なことです。沖縄もそうですね。
国民世論を高めて、また超党派でやれるような局面をつくっていきたいと思います。いまTPP参加は最終的に国会が承認しなければ通りません。まだまだ先の長い戦いになると思いますが、最後まで頑張ります。
東アジアでのしっかりとした対等平等な経済主権を守る、食料主権を守る、こういった経済関係を築き上げた上で、アメリカとも対等公正な貿易関係を結んでいくことが大事だと考えています。ASEANプラス日本、中国、韓国はモンスーン気候で食べるものも共通しています。ここでまず緩やかな協力関係を築き上げるべきです。幕末のような不平等条約をまた結ぶのではなく、アメリカとも対等平等な交易をすればいいんですよ。
――先ほど委員長は北海道について言及されましたが、共産党の衆院比例北海道ブロック候補予定者で道政策委員長の畠山和也さんは、北海道の現状をどう見ていますか。
畠山 東京や本州の工業ベルト地帯と、北海道が同じ道を歩む必要はありません。他地域からの企業呼び込みではなく、地域にある資源を生かす方向こそ活路だと思います。本州の大手企業を頂点とした「ピラミッド型」の産業構造ではなく、北海道の各地域での独自性を発揮した「積み上げ型」の産業構造への挑戦が必要です。東日本大震災からも、北海道の位置づけは鮮明になったと思います。大震災で、農漁村が日本経済や国民生活を維持するうえで大きな役割を持っていることを再確認したのではないでしょうか。
――では、どうやって北海道経済を立て直しますか。
畠山 北海道も含む日本経済全体の立て直しには内需振興が大事です。賃金引き上げや雇用の安定が必要ですが、雇用を創出するには3つの分野で政策の充実が必要です。
1つは農林漁業が北海道の基幹産業であることを明確にして、関連業種へと合わせた支援を強めることです。食料不足が世界的課題になっている中、国民への食料安定供給や自然環境保全が大前提です。その上で農水産物加工の研究・開発を、さらに進めることです。いまは農家や漁師も経営が苦しく後継者不足に苦心しています。土台から支えることを急ぐべきです。新規就農者への支援制度も必要ではないでしょうか。水産・林業でも同様です。研究体制の強化も大事です。水産資源が減る中で増養殖にかける水産関係者の思いは強いですし、昆布については研究者が限られていると聞きます。付加価値を考えるうえでも「急がば回れ」で足元をしっかり固めることが大切だと思います。
2つ目に「命を守る雇用」の創出です。ハード面では災害対策、ソフト面では社会保障になります。現存の建築物でも耐震補強が必要ですし、民間住宅では耐震化も含めたリフォームの需要が期待できます。また、「医療・福祉の町づくり」で雇用を生み出すことにも取り組んでいくべきです。
3つ目は、再生可能エネルギーの普及です。下川町や美幌町のように、森林資源などを生かしている自治体も道内にはあります。沼田町では雪氷エネルギーを使った貯蔵施設をつくり、それを「雪中米」というブランド化にもつなげています。太陽光や風力、小型水力、地熱、家畜糞尿をはじめとするバイオマスなど、地域ごとの特徴もあります。先進的な地域は、住民と行政、研究者が話し合いを積み重ねることから出発しています。初期投資や普及費用の助成、電力会社による買取価格の設定、地熱や水力利用の場合の権利の調整、研究・開発の思い切った助成など、国として地域の創意を生かす対策を進めれば普及は可能です。
経済振興と地域社会維持を別々に議論するのでなく、一体にデザインしていくことが問われているのではないでしょうか。

北海道でなんとしても1議席確保

――北海道の共産党は優等生ですか。
志位 そうです。昔は小笠原貞子さんや高崎裕子さんが4人区の参院地方区で堂々と当選を果たしていました。衆院比例は8人区なんだから、取れないわけがない。畠山さんには頑張って、どうしても北海道で議席を確保してもらいたい。
民主党も自民党もダメというのが、いまの世論です。2大政党制の大崩壊が始まっています。政治を元から変えることを訴えている政党が求められています。
――ところで委員長、大企業はダメですか。
志位 ダメなんて言ってませんよ。しかし、社会のことを考えずに、自分のもうけだけ考え、どんどん派遣切りをする、クビ切りをする、賃下げを好き勝手にやる、こういった身勝手、横暴はよくない。
労働者に対する責任、中小企業に対する責任、環境に対する責任、社会保障に対する責任など、社会的責任をきちんと果たしていただきたいということです。力があるんですから。また、そうすることが最終的には企業としての評価を高めることになります。

=ききて/鈴木正紀=