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Interview

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「二刀流・大谷の実力はダルと糸井」掲載号:2013年4月

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栗山英樹 北海道日本ハムファイターズ監督

 今シーズンのファイターズは〝ポスト糸井嘉男・田中賢介〟の行方や、二刀流・大谷翔平選手の起用方法など、話題に事欠かない。パ・リーグ連覇、日本一を目指す栗山英樹監督を直撃した。         (取材日=3月4日)

新タイプのセカンド、ライトを育成

――昨シーズンは、監督1年目でパ・リーグを制覇しました。しかし、「達成感よりも、悔しさしか残っていない」と振り返っていますね。
栗山 リーグ優勝後、日本シリーズに進むことが最低限の使命と考えて、クライマックスシリーズを戦いました。ところが、日本シリーズでジャイアンツにやられると、悔しい思いしか残りませんでした。勝負ごとはやっぱり負けちゃいけない。
もちろん選手たちは本当に頑張ってくれました。チームにとってリーグ優勝は大きな意味があったと思います。
――シーズン終了後、球団に辞表を提出したと聞いていますが…
栗山 はい。それは、ペナントレースが始まる前から決めていました。12球団すべて、日本一を目指して戦っているわけです。その過程の評価は、僕がすることではありません。最後に勝つことができなかったので、進退を伺ったということです。
――日本一を目指す上で大切な春季キャンプが終わりました。栗山監督の採点は「マイナス10点」と辛口ですね。
栗山 昨年のキャンプもゼロ点でしたから。今年は、そこより10点低いということです。当然ですが、キャンプはシーズンを戦うためのものです。若い選手にとっては将来のためという意味合いもあります。
本当にキャンプがよかったのか悪かったのかは、シーズンが終わるまでわかりません。もっと言うと、1年だけでは評価できないものだと考えています。そのため、点数は低くなってしまいます。
――野手陣では、昨年までレギュラーだった田中賢介選手、糸井嘉男選手が抜けました。
栗山 賢介と嘉男は、3割を打てて、盗塁もできる。数字に表れない守備力も含めて、あれだけ計算ができる選手は、そう簡単に出てきません。
彼らの代わり、穴を埋めるという考え方は持っていません。新しいタイプのセカンド、ライトをつくっていきます。何年後か先のファイターズの戦い方を思い描いた時、その軸になる選手を育成していきます。
i2――ライトについては、オリックスから移籍してきた赤田将吾選手のほか、杉谷拳士選手、鵜久森淳志選手などを候補としています。
栗山 中堅の赤田は実績がありますよね。シーズンを通して、計算ができる選手です。若手の中で一番安定感が増したのは、淳志かなと思います。打撃でもアピールしてくれていますよ。
――鵜久森選手は、具体的にどのような部分が成長しましたか。
栗山 例えば、変化球が得意な右投手と対戦しても、体が崩されにくくなりました。ボール球を振らずに我慢して、自分が打ちやすいカウントに持っていくことができています。試合に出場し続ければ、ある程度の数字を残せるレベルまできています。
――セカンドに関しては。
栗山 このポジションは本当に競争ですね。杉谷、西川遙輝、中島卓也といった若手だけではなく、中堅の今浪隆博もいます。シーズン途中で、誰かが突出してきて、レギュラーをつかんでくれることを願っています。

新加入の大引はスラッガータイプ

――内野では、大引啓次選手が加入しました。
栗山 (金子)誠がオフに手術をしました。そういう意味でも、大引の加入は心強いですし、内野陣の層の厚みが増しました。
12球団を見渡しても、「ショートの守備がうまい」と言われる選手は、数少ないですよね。その中で、大引は球界屈指の守備力を持っている一人です。そこに対する信頼感はものすごくあります。
大引はつなぎ役のイメージがありますが、僕はスラッガー系の打者という印象です。そのよさをどのように引き出していくのか。そのことを考えています。
――金子選手と同じく手術をした小谷野栄一選手が、一軍に合流しました。
栗山 栄一はシーズン開幕に合わせてリハビリに取り組んできました。このまま順調にいってくれればいいと願っています。ただ、故障明けなので、少し遅れることも想定しなければいけないとも思っています。
――入団2年目の近藤健介選手が、キャンプ、オープン戦で打撃をアピールしています。
栗山 昨年の日本シリーズで、代打として起用しました。決して将来を考えて送り込んだわけではなく、その時点で一番能力を発揮してくれると信じて使いました。今年は、昨年以上にバッティングがよくなっていますよね。
近藤のほかに、ツル(鶴岡慎也)と(大野)奨太がいます。捕手陣のレベルが球界一であることは、間違いありません。
――近藤選手が加わることで、捕手のレギュラー争いが熾烈になりますね。
栗山 ドシッと構える正捕手がいれば理想的かもしれません。昨シーズンは、投手との相性を考えて、マスクをかぶらせるケースが多かったですね。今シーズンもそうした起用方法になると思います。いまから頭を悩ませています。
――やはり、4番は今年も中田翔選手ですか。
栗山 もちろんです。翔は昨シーズンの終盤「4番とはなんたるや」ということを肌で感じてくれたと思います。
昨年の打率、ホームラン、打点のどの結果を見ても、翔の能力からすれば納得いくものではありません。本人も数字的な物足りなさを感じています。ここ一番で試合を決める一打を打てればいいのですが、打率が低いということは、そういう場面で打てる確率も下がってしまいます。
4番がチームを勝たせるとはどういう意味なのか。翔がそれを感じてもらえるシーズンになればうれしいですね。

開幕投手は忍耐強い武田勝を指名

――続いて投手陣ですが、開幕ピッチャーには武田勝選手を指名しました。
栗山 キャンプ中、勝に手紙を書いて開幕投手を伝えました。中身は勝のものなので私から詳しく言えませんが、「頼むよ」といった内容です。
――昨シーズン大活躍した吉川光夫投手と迷いませんでしたか。
栗山 確かに吉川という名前も頭をよぎりました。将来的な流れを考えると、吉川という選択肢もありました。開幕投手はエース同士で戦う試合が続きます。打線もそう簡単に相手チームのエースを打つことはできません。開幕投手にはシーズンを通して、かなりの忍耐が強いられます。その中で、一番我慢できるのは勝だと思いました。
――先発ローテーションは、武田選手、吉川選手のほか、ウルフ選手、木佐貫選手の名前があげられます。5、6番手はどうしますか。
栗山 ローテーションは6人で回す予定です。先発の候補は、谷元圭介、多田野数人、中村勝、森内壽春に、新人の屋宜照悟、新垣勇人などもいます。誰が頭角を現してくれるのか注目しています。
――北海道出身のルーキー・鍵谷陽平選手に期待する声も大きいです。
栗山 鍵谷は球に力がありますよね。マウンドで堂々としていますし、精神的にも強い選手です。そのあたりは、とても信頼感があります。
――大谷翔平選手は、どのような起用方法を考えていますか。「プロの世界では、二刀流は難しい」という声もありますが…
栗山 キャンプから、僕も翔平も、二刀流ができると信じて前に進んできました。それを、どのような形で実現していくのか。シーズンの中で、探っていきたいと考えています。
翔平を投手、野手のどちらで起用するにしても、体の状態を見ながらというのが大前提です。
――キャンプ中、大谷選手のプレーを間近で見て、どのような点が素晴らしいと感じましたか。
栗山 翔平はホームランバッターのイメージが強いですが、打撃フォームはやわらかいし、打率を残せるバッターでもあります。そういう意味で、タイプとしては嘉男に似ています。
翔平はチームのエースになれるし、主軸の3番を打てる実力を持った選手です。投げるときはダルビッシュ有、バッターでは嘉男を見る感覚で、翔平を応援してほしいです。
――投手の場合は先発ではなく、中継ぎですか。
栗山 それも体の状態と、1軍で投げる準備がどこまで進んでいるかによります。守備に関しては外野を考えています。
――開幕1軍の可能性は。
栗山 周囲に遠慮せず、翔平が本気でポジションを〝奪いにいく〟という気持ちになれるかどうかです。あとは、自分の中でやってもらうだけです。1軍をつかめるかは本人次第です。

ひたむきで熱い野球を見せる

――コーチ陣も大幅に入れ替わりました。
栗山 新コーチ陣には、選手たちに心の熱さを注入してほしい。そういう意味では、みんな一生懸命やってくれていますよ。
――とくに千葉ロッテのエースだった黒木知宏投手コーチは、現役時代から熱い男でした。
栗山 投手の場合は、技術はもとより、戦う姿勢が大切になります。当然、打たれることもあります。弱気になっているとき、ジョニー(黒木)が、心の部分をケアしてくれることを期待しています。
――今年は北海道移転後、10シーズン目という節目です。3月1日の記念イベントでは「本当の意味で今年からの10年が大切になる」と挨拶しました。
栗山 北海道のみなさんは、ファイターズにすごく注目してくださっています。最初は話題性もありました。いまは強いチームなので、応援してくださるという側面もあります。
強くても弱くても、ファイターズが存在することによって、道民のみなさんが元気になったり、何か楽しみを持つことができるようにならなければいけない。
本当の意味で、北海道の人たちに自分たちのチームだと認識してもらうための10年間になります。そのために、フロント、現場として何ができるのか。何をしなければいけないのかを考え、行動していきます。
――そのスタートとなる2013年は、どのような野球を見せてくれますか。
栗山 今年は「純・ひたむきに」というスローガンを掲げています。
いま一度、北海道に来て「地域に認めてもらう」「愛されるんだ」と、がむしゃらになった原点に立ち返る。そのとき以上に必死になって野球に取り組みます。その姿がなければ、ファンのみなさんに思いが伝わらない気がします。そのためには、試合中の一つひとつのプレーだけではなく、練習やファンサービスに取り組む姿勢も大切です。
今年は日本一をとるという宿題があります。他チームに追われる立場というような意識はありません。昨年以上に必死になって一試合一試合をとりにいかなければ、優勝争いから脱落する怖さを持っています。
われわれは、熱い気持ちでひたむきに野球に取り組み、昨年以上に何かを感じてもらえるチームになります。「ファイターズの試合をドームに見に行きたい」と思ってもらえるような雰囲気を、ぜひつくっていきたい。ペナントレース開幕を楽しみに待っていてほしいですね。

=ききて/前田圭祐=