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Interview

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「中小メーカーを守り商品力を高める」掲載号:2009年11月

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田中茂治 日本アクセス 社長

1952年3月7日愛知県生まれ。74年名古屋大学卒業。同年、伊藤忠商事入社。2002年執行役員食料カンパニープレジデント補佐。06年代表取締役常務取締役食料カンパニープレジデントを経て、今年6月17日から現職。

 日本アクセスは「雪印アクセス」が前身の大手卸業者。今年6月に就任した田中茂治社長は「次世代卸」をビジョンに掲げ、取引先の体力強化や、親会社の伊藤忠商事の商社機能を活用した卸機能の拡充に取り組んでいる。

小売業に対する供給責任を果たす

――7月に発表された本年度第1四半期を見ると、好調なスタートを切ったようですね。
田中そうですね。6月までは好調でした。要因は昨年の上期までの値上げで、いい意味でのインパクトができたということです。
ただ、7月以降は非常に厳しい環境になってきています。お客さまの販売実績が上がらなければ、卸の実績も上がりません。前年実績をキープするのも、なかなか大変な状況です。消費者の低価格志向、節約志向でマーケットも冷え込んでいます。
――2010年までの中期計画「スプレッド2010」を展開されます。その目標と現況についてお聞かせ下さい。
田中ビジョンとして掲げていますのは「次世代卸」という言葉で、2010年までを基盤確立期間と位置 づけております。経営体質を筋肉質にするということです。最初の1年間が終わった段階で、大きな課題の1つだった販売コストのムダの削減なども、計画通り に進んでいます。システムの入れ替えもやりました。社内の業務改革を含め業務の合理化も、良い効果が出てきています。
売り上げは、第1四半期は上々ですが、上半期で見れば、前年並みです。ただ、収益は、いま言ったような効果が出ていて、目標の利益は達成できる見通しです。
――キリンとサントリーが経営統合の交渉に入りました。メーカーの側で経営統合や企業合同が進んでいます。こうした動きは御社にも影響をもたらすのではないですか。
田中キリンさんとサントリーさんの場合は、海外市場開発や基盤強化を目標に経営統合されるようです が、2つの企業が統合することで、販路や製造などについても、よりコストダウンができるよう合理化を進めてくるでしょう。それはマーケットに顕在化する低 価格志向に対する1つの答えであり、手段です。
卸は小売業の購買代理機能とメーカーの販売代理機能の両方を持っている業態ですので、メーカーの販売力が強くなることは歓迎すべきことです。
ただ、当社がお付き合いさせていただいているメーカーは、ほとんどが中小で8500社もあります。プレーヤーが多いのです。しかも、需要が縮小していく中で、数の集約が進んできています。
――由々しき問題ですね。
田中いままでも過当競争といいながら、流通3層(メーカー、卸、小売り)が利益を分かち合って生き延びてきました。しかし近年、大きな変化が起き、各層のプレーヤー全員が生き残れる状況ではなくなった。中小メーカーの先行きというのは、大きな問題になると思っています。
卸には小売りに対する供給責任があります。一生懸命推奨してお願いして納入させてもらっていたメーカーの商品が、ある日突然、残念ながら倒産して、明日 から商品が入らないなんてことがあってはいけないわけです。メーカーの再編という流れの中で、それを黙って見ているわけにはいきません。たくさんの中小の メーカーと取引しているのだから、彼らの体質を強化していかなければならないと思います。
――どのような強化策を考えていますか。
田中お互いに情報を持っている中で、いろいろと有益なものがあるわけです。例えばA社とB社の製品の原材料が同じもので仕入れ先も同じだとすれば「共同購入してコストダウンを図ってはどうですか」とかね。
情報を有効に共有、活用し、コーディネーターとしての役割を担っていく。また、優秀な技術を持ったメーカーは、ファイナンスも含めてサポートしていく。小売りの方たちとも相談しながら、中小メーカーを守り、生かす方策を考えていきたいと思っています。

全体の最適化が卸の最大の役目

――御社は、商流、物流、金流の従来からの卸の基本機能に加え、“情報流”を提唱されていますね。
田中言葉にしたら“情報流”になるのでしょうけど、情報なんてものはそこら中に遍在しています。要は、それをどうやって集約して経営に生かすかということなんです。
今日(10月1日)は、会社の創立記念日なんで、社員の前で、「やっぱり現場だ。現場力を強化しよう」という話をしました。
現場には情報がたくさん集まってくるわけです。現場は生き物です。毎日、変化しています。現場の情報に基づいた経営をしていかなければなりません。現場をおろそかにすると、変化に対応できなくなり負けてしまいます。
――現場からの情報を、どのように活用されているのですか。
田中例えば、デマンドチェーンコーディネーターと言っていますが、川下(小売り)のデマンド(要求)をつかんで、川上(メーカー)に流す。市場を活性化してくれるのはメーカーだけです。小売りも卸も顕在化するニーズには対応できますが、市場を活性化する機能は持っていない。
ですから、われわれが情報を提供し、メーカーにはその情報に基づいて、市場を活性化できるような商品開発をしていただく。つまり、マーケティング戦略の お手伝いです。  もう1つは消費者のレスポンス(反応)があるはずなので、それをフィードバックさせる。そこのところで需要予測というものができます。これができれば、 生産リスク、販売リスクといったものを少なくできます。マーチャンダイジングに基づき、全体の最適化に貢献するというのが、私どもの役目であり、それが卸 の最大の機能だと思っています。

商社機能の活用で大きく広がる商機

――食品流通業界においても、親会社の伊藤忠商事の役割は大きいものがあります。グループ内の連携は、どのようになっていますか。
田中伊藤忠商事全体では、エネルギーやら機械、繊維、雑貨、食品といろいろなものをやっています。そうした伊藤忠の商社機能を活用することで、繊維だろうが機械だろうが、そういったものをリテールサポートの中で提案できます。
例えば、取引先メーカーの工場には機械設備があるなど、食品関係に限らずさまざまな需要があるはずです。 お互いに活用しようという気になれば、いろいろ とビジネスチャンスがあり、お客さまから見ても使い勝手が広がってくる可能性があります。伊藤忠が持つ機能を使いながら、さまざまな事業を展開できる。こ れは、大きなアドバンテージです。
――いま、農業が非常に見直されてきています。農業は北海道の主力産業ですが、そういう観点から北海道への期待や注文を一言お願いします。
田中北海道は、当社の前身である雪印のふるさとでもあり、われわれにとっては非常に親しみを感じる地 域です。北海道の農水産物などについては、日本アクセス北海道が窓口になってやっています。消費者は北海道のものが大好きです。品質がいいですからね。食 料自給率も約200%もあり、まさに日本の食料基地です。もっともっと、農業を拡大してもらって、自給率300%、400%を達成してもらいたい。
当社もただ北海道から原材料を供給するだけじゃなくて、それを現地で加工し付加価値を高めたものを全国に供給していきます。
本日、社員に向け発表したのですが、今度、沖縄に拠点をつくります。これで初めて全国ネットになるんですよ。生鮮についても全国300カ所にある物流センターをもっともっと活用して、鮮度を保ちながら供給する。そういうポテンシャルは、当社が一番あると自負しています。

=ききて/構成坂井=